2008.06.07

カジノドライヴ挫石 出走か回避か迫られる判断

米クラシック、ベルモントS(現地時間7日)に出走するカジノドライヴは6日朝、左後肢の挫石を発症していることが判明した。現在、冷却と加温を繰り返したり、塩に浸すなどの治療を行うなどして、患部は回復に向かっているという。ブラッドホース誌によれば、多田信尊マネージャーは「スクラッチはしていない。出走することを予定している」と話しているが、最終的な決定は当日まで持ち越される。5日、カジノドライヴは激しい降雨のため前日に中止した最終追い切りを行い、順調な仕上がりをアピールしていた。しかし、翌朝、歩様が硬いことから馬場での調教を控え、検査したところ挫石が見つかった。挫石は何か踏むなどして、ひづめの裏に血豆ができるもの。去年、ウオッカも血豆(蹄球炎)のため馬場入りを数日間、中止して凱旋門賞挑戦を見送っている。

今年のベルモントSは二冠馬ビッグブラウンによる、30年ぶりの三冠制覇なるか大きな注目が集まっている。一方、カジノドライヴも姉ラグストゥリッチズ、兄ジャジルに続くベルモントS兄弟三連覇の記録がかかっていて、ビッグブラウンの三冠を阻止するライバルとして2番人気に支持されている。そのため、アメリカのファンにとって外国の馬というより、日本人が所有している内国産馬というイメージの方が強いようだ。前哨戦のピーターパンSを圧勝した後、陣営は本番で騎乗を依頼していた武豊に断りを入れ、プラードへの乗り替わりを決めたのも、現地のファンへの配慮が皆無だったとは言えまい。藤沢師と山本英俊オーナーが「武豊降板」の経緯を丁寧に報道陣向けに説明した異例のリリースは、複雑な事情を感じさせた。

馬優先主義を標榜してきた藤沢師。かつて、ヤマトダマシイという素質馬を故障させてしたった経験から「一勝より一生」と、どんな大レースでも万全の状態でなければ出走させないポリシーを貫いてきた。最後のチャンスかもしれない米クラシックの大舞台。藤沢師はカジノドライヴの状態を見極めながら、ギリギリの選択を迫られることになる。なお、6日、同競馬場のヒルプリンスS(G3)に参戦した帯同馬、スパークキャンドルは 7頭立て7着に敗れている。

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2008.06.06

ディヴァインライトの大出世 娘ナタゴラは仏ダービー3着

去年、日本では64年ぶりのダービー制覇を成し遂げたウオッカが競馬界に衝撃をもたらしたが、海の向こう、フランスでも 91年ぶりの仏ダービー優勝をめざした牝馬が大きな話題を呼んだ。芦毛のナタゴラ。日本から輸出されたディヴァインライトを父に持つ。ナタゴラは去年10月、チェヴァリーパークS(6F)を勝って、欧州の最優秀2歳牝馬に選ばれた。今年は距離不安が囁かれながらも1番人気で英1000ギニー(8F)に挑戦。見事な逃げ切り勝ちを収めて、日本産種牡馬の産駒として初めて欧州クラシック優勝を果たした。そして、今月1日、敢えて牡馬に挑んだ仏ダービー(芝2100)。デットーリを背にしたナタゴラは3番手で先行。残り300で先頭に立つと、後続との激しい叩きあいに応戦。スタミナ切れを起こしながらも差し返す勝負根性を見せる。最後は無敗馬ヴィジョンデタらに交わされ 3着に敗れたものの、1番人気ハイロックに先着する大健闘だった。

>>イギリス1000ギニー(youtube)
>>フランスダービー(youtube)

ナタゴラはディヴァインライトの仏初年度産駒。日本で繁殖を集めることができなかった同馬は、 2004年にアグネスカミカゼとセットでまとめ売りされた。だが、サンデーサイレンスの直仔とはいえ、極東のスプリントG12着の実績しかないディヴァインライトを種付けしようというフランス人は奇特だった。初年度の種付け数は8頭。その中の 1勝馬のレーナミクサという無名馬との間からナタゴラが誕生したのだから、馬産は本当に不思議なものだ。実はディヴァインライトだが、去年の暮れ、トルコナショナルスタッドからオファーを受けて、今春から新天地で種牡馬生活を始めている。トルコ競馬の認知度は低いが、欧米から数々の名馬を買い入れている新興国。ディヴァインライトの種付け料は破格の7000ドル、交配相手も80頭を超えるという(異端血統最前線)。日本に置いておけば廃馬になっていたかもしれず、まるで夢のようなサクセスストーリーではないか。

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2008.04.17

ミスターピンク・内田利雄 マカオG1を制覇!

13日、元宇都宮競馬のトップジョッキー、内田利雄が海外G1初勝利を飾った。現在、マカオに遠征中の内田利はタイパ競馬場で行われた「マカオホンコントロフィー」(芝1500)でシュプリームヒーローに騎乗。道中は中団で力を溜めると、直線では外から鋭い脚を爆発させて先行勢を差しきった。 12番人気(14頭中)の低評価を覆す見事な手綱さばきだった。日本人騎手でマカオ重賞を制しているのは、去年の内田利を含めて岡部幸雄、岡部誠と3人いるが、 G1を勝ったのは初めて。日本競馬史に残る記念碑となったが、 ミスターピンクの愛称通り、勝負服もピンクだったのはさすがだ。

内田利は宇都宮競馬廃止後、各地の地方競馬場で短期免許を取得して活躍の場を求めてきた。現役でいることにこだわり続ける、流浪のジョッキーだ。 3年前、宇都宮競馬で最後のレースが行われた際には、大粒の涙を流した内田利。当時、短期免許のような形で各地で騎乗する道はなく、引退も覚悟した。それだけに海外でのG1勝利は感慨深いものがある。オフィシャルブログでは「『Mr.PINK海外G1ジョッキー』と呼んで下さい(●^o^●)」と、本人もおどけながら喜びを表している。マカオでの騎乗は5月24日まで。凱旋帰国も楽しみだ。

>> ピンクなBlog(オフィシャルブログ)
>>レース映像(youtube)
>>>宇都宮競馬最後の日 その魂は消えることなく(2005.3)

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2008.03.27

日本勢のチャンスは? ドバイWC出走馬が確定

29日(土)に行われるドバイワールドカップ諸競走の出馬表が確定した。日の丸勢が参戦するのはシーマ・クラシックを除く3レース。このうち最も早くスタートが切られるUAEダービー(日本時間23:15)には全日本2歳優駿を勝ったイイデケンシンが挑む。共同通信杯で大敗するなど芝では能力の限界を見せたものの、ダートでは2戦2勝。もちろん、ドバイと日本のダートは異質のものだが、ハナに立てるスピードと気性はUAEダービーでは有利。オナーデヴィルロイヤルヴィンテージなど地元UAE勢の優位は揺るがないが、去年、5着だったビクトリーテツニー以上の成績を期待したい。 11頭立ての大外枠を引いたので、藤田は思い切ってスタートして押して押してハナを奪うか。多くが南半球産馬で59キロの酷量を背負うなか、北半球産馬の軽量55キロを活かせれば。

芝1777メートルのドバイ・デューティ・フリー(24:55)はウォッカ、アドマイヤオーラの大駒が参戦。両馬ともマイルより中距離に適性があるタイプだが、ドバイの芝はヨーロッパほどではないにしろ、日本より時計のかかる重い馬場。余分なスタミナを求められることを考えれば、シーマ・クラシックよりこちらを選んだ決断は間違っていない。ウォッカ陣営はある程度、先行させるつもりのようで、乗り替わった武豊の手綱さばきは要注目。アドマイヤオーラも目下の充実振りからは近藤軍団の連覇があっておかしくない。こちらは切れ味を大事にするレースが目標。ライバルは英1000ギニー馬・フィンスケールビオ、去年アドマイヤムーンの2着だったリンガリか。敵わないレベルではなく、ここが最も日本が金メダルに近い一戦になる。

メインレース、ドバイ・ワールドカップは総大将・ヴァーミリアンが2年続けての挑戦する。去年はインヴァソールから15馬身差の4着。石坂師は「もう二度とヴァーミリアンを連れてドバイに来ることはない」と世界の壁を痛感したそうだが、昨秋から馬が一変。それまでとは比較にならないほど強さを増して、師に再トライを決意させた。しかし、今年の相手もタフだ。カーリンはBCクラシックを制して年度代表馬にも選ばれた米最強馬。2月末にはドバイでステップレースを楽勝しており、体調、輸送面でも大きなアドバンテージがある。馬券発売があれば、単勝1倍台の本命というところだろう。この他では、前哨戦のマクトゥームチャレンジを勝ったゴドルフィンのジャリル、去年2着だったプレミアムタップらがいるが、カーリンとの実力差は開いている。どこまでヴァーミリアンがカーリンに肉薄できるのか。父の夢を継いで、悔いのない競馬をしてほしい。

>>「ドバイ・ワールド・カップ」出馬表確定(JRA)

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2007.10.04

あの狂乱から1年 ひっそりと凱旋門賞展望

去年、6000人ものファンが日本から駆けつけ、日本中が歴史的瞬間を見ようとテレビの前に陣取ったフランス・凱旋門賞。あの狂乱から一年。今年、ディープインパクトのリベンジを果たすはずだったウオッカは外傷のアクシデントで計画を白紙に戻し、メイショウサムソンは馬インフルエンザという想定外の不運に見舞われて渡航を断念した。日本馬の出ない凱旋門賞は、多くの国内のファンにとっては関心のない異国のレースに過ぎないようだ。それでも、目を向けてみれば、今年も欧州を代表する名馬が激突する屈指の好レースになりそうだ。もし斤量の軽いウオッカの差し脚が炸裂していたなら、もしメイショウサムソンが先行力を活かしてロングスパートをかけていたら。そんなことを想像しながら、レースを観てみるのも面白いかもしれない。

7日に行われる凱旋門賞で、ブックメーカーの1番人気となっているのが英ダービー馬・オーソライズド。去年、ディープインパクトを差しきったレイルリンクも3歳馬だったが、凱旋門賞は兎角、斤量に恵まれる3歳馬が非常に有利だ。オーソライズドの前走は英・インターナショナルS。ここで古馬最強のディラントーマスに1馬身差をつけて勝利した。ディラントーマスはキングジョージを圧勝、先月の愛チャンピオンSも連覇を果たしており、これを降したオーソライズドの強さは本物だろう。死角があるとすれば、地元イギリス以外で出走したことはなく、凱旋門賞がアウェイ初体験となるところ。但し、父はエルコンドルパサーを破って凱旋門賞を勝ったモンジュー、鞍上はデットリーだけに杞憂に終わる可能性も高い。 ディラントーマスは条件的に巻き返しは厳しいか。

オーソライズドのライバルは、やはり3歳馬。愛ダービー馬のソルジャーオブフォーチュンとパリ大賞典を勝ったザンベージサンの2頭だ。ソルジャーオブフォーチュンは本番と相性の良いニエユ賞を2分25秒6の好タイムで勝利。硬い馬場にも適性があることを証明した。一方、人気を集めながら3着に敗れたザンベージサンは、あくまでひと叩きの感が強く、逆転の目は十分にありそうだ。サムソンが出走を予定していたフォワ賞からは欧州最優秀3歳牝馬のマンデシャが参戦する。勝ち馬のマンデュロはレース後に骨折が判明、引退する残念な結果になっただけに健闘を期待したい。ここに日本の2頭の姿がないのは悔やまれるところだが、両馬ともジャパンカップをめざす予定で、ぜひ凱旋門賞馬には府中に来てもらって頂上決戦といきたいものだ。

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2007.05.04

ユートピア カムズバック! 強豪蹴散らす米重賞制覇

去年5月、現役G1馬として初めて海外へトレードされたユートピアが、今月2日に米・ベルモントパーク競馬場で行われた G3ウエストチェスターH(8ハロン)に出走。ゴドルフィンマイル優勝以来、一年以上の休み明けもものともせず、後続に1馬身差をつけて復帰緒戦を飾った。勝ちタイムは1分33秒23。ユートピアは好スタートで2番手につけると、直線では一旦は3番手に後退したものの、再び内から盛り返して先頭でゴールした。ゴドルフィンのロイヤルブルーの勝負服と"Utopia comes back"の実況が実に心地よかった。ユートピアは 02年に全日本2歳優駿を勝ってから、6年連続の重賞勝利を成し遂げたことになる。

今回、人気を集めていたサンキングは、ドバイWCを圧倒的な強さで制したインヴァソールとハナ差の競馬をしたことがある強豪。前哨戦とはいえ、こうしたG1級のライバルをユートピアが降したことは、日本競馬にとっても非常に価値のあることだ。馬場への適性さえ間違っていなければ、ある程度のレベルに達した馬なら米ダートでも高レベルで互角の戦いができることが証明されたのではないか。ドバイで素質と適性を見出し、アメリカへと運んだゴドルフィンの相馬眼にも敬服するばかりだ。ユートピアは28日に行われるG1メトロポリタンHに参戦する予定。米G1戦線で旋風を巻き起こして、現役日本馬のトレードを活性化させてほしい。

>>レース映像・ウエストチェスターH

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2007.03.29

展望・ドバイWCデイ 再び起きるか日の丸旋風

世界の祭典、ドバイ・ワールドカップデイの季節がやってきた。去年はハーツクライ、ユートピアが勝利をあげて日の丸旋風を巻き起こしたが、今年も日本代表の8頭が世界の強豪と対決する。既に枠順も発表されており、 31日夜(日本時間22時40分~26時30分)に行われる6レースが非常に楽しみだ。日本馬5頭を載せた貨物機が輸送トラブルのため、7時間遅れて到着するハプニングもあったが、これは恒例行事のようなもの。 JRAのリポートによれば、最終追い切り後、どの馬も好調さを維持していると報じられており、日本馬を中心に簡単なレース展望をしながら祭りの始まりを待つとしよう。
>>「ドバイ・ワールド・カップ・デイ」~出馬表~(JRA)

メインのドバイワールドカップ(ダ2000)にはエルコンドルパサーの遺児、ヴァーミリアン(ルメール)が参戦する。前走の川崎記念では一昨年のドバイWCで6着だったアジュディミツオーに6馬身差をつける圧勝劇。エル基地ならずとも期待は高まるが、今年は怪物2頭が大きく立ちはだかる。 BCクラシックを含めGⅠ4連勝を記録した米年度代表馬インヴァソールと、同馬に去年のUAEダービーで土を付けたディスクリートキャットだ。現地ではキャットが出走回避するとの噂も流れているそうだが(東スポ)、これはゴドルフィンがブラフをかけているだけだろう。このレースが歴史に残る、世紀の一騎打ちになるのは間違いない。ヴァーミリアンは7頭立ての少頭数を活かして何処まで食い込めるか。

ハーツクライが逃げ切ったシーマクラシック(芝2400)に挑むのは、メルボルンC2着のポップロック(ペリエ)。有馬記念でディープインパクトの2着、京都記念でアドマイヤムーンの2着と好走して、メルボルンCが決してフロックでなかったことを証明した。鞍上のペリエにとっても、ポップロックは愛着のある馬に違いない。若き日、ペリエは同馬の父、エリシオの手綱を取って凱旋門賞を制しているからだ。エリシオ自身はドバイWCのために現地入りしながら、レースが延期されたため出走を取り消した因縁もある。父の雪辱を晴らすことができるか。シーマクラシックには南アフリカからスシサンという日本語っぽい馬が出走しているが、実はフジキセキ産駒。この馬の健闘も祈りたい。

今年、日本勢が最も金メダルに近いと言われているレースがデューティフリー(芝1777)アドマイヤムーン(武豊)、ダイワメジャー(安藤勝)の2頭が参戦する。去年の暮れの香港C、ムーンは凱旋門賞2着だったプライドに及ばず2着に敗れたが、猛然と追い込んでの短頭差は内容的には勝ち馬を上回っていた。もし、ここにプライドの名前があれば不動の本命だろうし、距離短縮はスピード能力の長けたムーンにとって大歓迎。あとは武豊の手綱次第か。天皇賞秋、マイルCSを連覇し、距離不向きの有馬記念3着に踏ん張ったダイワメジャーが最大のライバル。だが、日本馬ワンツーを願うのは贅沢すぎるか。 BCマイル馬のミエスクズアプルーヴァル、サンタアニタHを連覇したラヴァマン、ジェニュイン産駒のポンペイルーラーとライバルたちは骨っぽい。

ゴールデンシャヒーン(ダ1200)アグネスジェダイ(武豊)、シーキングザベスト(福永)の森厩舎の2騎だが、さすがに家賃が高い。このレース、ジェダイは去年6着と好走したが、今年はどちらかの入着があれば両手をあげて喝采しよう。 UAEダービー(ダ1800)は現地の前哨戦で2着だったビクトリーテツニー(武豊)が駒を進めた。相手関係はともかく、叩いた上積みはありそう。こちらも入着すれば御の字。ユートピアがあっと言わせたゴドルフィンマイル(ダ1600)にはフサイチリシャール(スミヨン)。相手関係は他のレースと比べると格段に楽に見える。京都金杯13着からの参戦となるが、型にはまったときの強さは折り紙付きで、気分良く行ければ好勝負になろう。クロフネの仔がドバイの砂を走るというのも感慨深いではないか。

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2006.12.11

弱り目に何とやら ほろ苦かった香港遠征

10日に行われた香港国際競走4レースは、日本勢にとってはほろ苦い結果になってしまった。最も惜しかったのが香港カップ(2000メートル)。凱旋門賞2着のプライドを猛然とアドマイヤムーン(武豊)が追い詰めたものの、わずかハナ差だけ届かなかった。あとゴールが数メートル先であったらと悔やまずにいられない。ムーンは直線入り口で進路がなくなったものの、外の福永がコースをあけ、数テンポ遅れの追い出しになった。ディープインパクトのリベンジならず。しかし、やはりムーンは2000は相当強い。来年へとつながるレースになったのではないか。

ウィジャボードが取り消して、チャンスと思われたヴァーズ(2400メートル)は、ソングオブウインドが最後方から追い込んで4着。逃げたアドマイヤメインはブービー負け。その後、ソングは右前脚屈腱を負傷していることが明らかになった。世界の壁は厚い。香港勢を軽視しすぎたのではないか。マイルのダンスインザムードは全く伸びを欠く12着。馬場が合わないのか。スプリントのシーイズトウショウは追走いっぱいで大敗。メイショウボーラーは馬体に異常はないのにスタートから走ろうとせず競走を中止した。

怪我に競走中止とツキにも見放された感じの日本勢だったが、弱り目に祟り目とはこのことか。6日のインターナショナル・ジョッキーズ・チャンピオンシップに参戦した武豊が落馬事故の審議対象となり、騎乗停止処分を受けることになった。制裁期間の先送り措置で有馬記念の騎乗は可能になったが、後味の良くない香港遠征になってしまった。また、スプリントで本命視されていたテイクオーバーターゲットは薬物が検出されたため、出走することが叶わなかった。今年の香港は何とも慌しかったようだ。

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2006.12.09

香港国際競走 世界のトップに胸を借りる4レース

10日、香港の沙田競馬場では4つの国際GⅠが行われる香港国際競走を迎える。メルボルンCを制したデルタブルースが出走を希望しながら、 JRAから検疫の便宜が受けられず断念するという一騒動もあった。それでも菊花賞馬ソングオブウインド、ダービー2着アドマイヤメイン、天皇賞秋3着アドマイヤムーンなど、有馬記念に参戦すれば人気になったであろう馬が遠征を選んだのは、香港の価値が高まっていると解することもできる。凱旋門賞でディープに先着したプライドもジャパンカップをパスして、こちらを選択した。もう少し日本は危機感を募らせるべきかもしれない。

まずは香港ヴァーズ(2400メートル)から見てみよう。まともな競馬になれば、ジャパンカップでも3着した女傑ウィジャボードの圧勝だろう。だが、9日に左前脚に痛みを発症し、出走取り消しとなるアクシデント。思わぬチャンスが巡ってきたのが、日本馬ソングオブウインド(武幸)、アドマイヤメイン(武豊)の2頭。ソングは前々日の計量で468キロと馬体を減らしているのが気がかりだが、ラジオNIKKEI賞は同じ体重で2着している。メインは菊花賞と同じような逃げを打つと思われる。武豊がどんなラップを刻むのか、追い込みにかけるソングとの武兄弟の戦略が見所だ。

香港カップ(2000メートル)には凱旋門賞2着、英チャンピオンS圧勝と波に乗るプライドが人気を集める。このレースは去年もクビ差で2着しており、本格化した今なら他馬を寄せつけまい。ハリケーンランをことごとく打ち負かしてきたのだから、比較で言えばハーツクライ以上。去年の覇者、香港のヴェンジャノブレインにリベンジを果たす。日本からはアドマイヤムーン(武豊)とディアデラノビア(福永)がプライドに胸を借りる。弥生賞、札幌記念を快勝しているようにムーンにとって、この距離はベスト。平坦コースも合っており、世界のトップにどこまで迫れるか。

香港マイル(1600メートル)はダンスインザムードに期待がかかる。長く活躍してきた同馬も、ここが引退レース。米GⅢ勝ちとGⅠ2勝は、いずれもマイル戦だった。国内ではダイワメジャーに煮え湯を飲まされてきただけに、天敵のいない海外で有終の美を飾りたいところ。実力的には充分なチャンスがある。但し、香港勢のマイル層も厚い。安田記念1、3着のブリッシュラックジョイフルウイナーに加え、新興勢力のアルマダ、フサイチペガサス産駒のフローラルペガサスも侮れない。イタリアのラモンティは時計に対応できるか。安田記念のラフプレーで悪名を轟かせたザデュークの走りも注目。

最後に香港スプリント。これまで直線1000メートルで施行されてきたが、今年から1200メートルの周回コースとなる。アベイユドロンシャン賞を勝ったデザートロードは直線競馬に慣れているし、北米で連勝してきたファーストパレードは右回りに戸惑わないか。となれば、スプリンターズSを優勝して転戦してきた豪州の賞金稼ぎ、テイクオーバーターゲットがここでも大威張りできる。復調気配のサイレントウィットネスが地元の意地を見せられるか。最近の国内スプリント路線のレベル低下からメイショウボーラー(福永)、シーイズトウショウ(池添)は難しいかもしれない。

香港国際諸競走の出馬表(JRA)

☆3R 香港ヴァーズ(芝2400メートル)
 14:00(日本時間15:00)
☆5R 香港スプリント(芝1200メートル)
 15:10(日本時間16:10)
☆7R 香港マイル(芝1600メートル)
 16:20(日本時間17:20)
☆8R 香港カップ(芝2000メートル)
 17:00(日本時間18:00)

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2006.12.04

フジキセキ産駒 南アフリカでクラシック制覇

幻の三冠馬と評されたフジキセキが種牡馬として初クラシック制覇を成し遂げた。しかも、舞台は南アフリカだというから驚きだ。 2日、ケニルワース競馬場で行われた同国のクラシック第一弾、ケープフィリーズギニー(3歳牝・芝1600)は、フジキセキ産駒のサンクラシーク(Sun Classique)が人気に応えて差しきり勝ちを収めた。サンクラシークはフジキセキがシャトル種牡馬として供用されているオーストラリア産馬。母の父は日本でもお馴染みラストタイクーンという配合だ。このような馬が遥か喜望峰を臨む異国で走っていると思うと、実に不思議な気分になる。

フジキセキだけでなく、サンデーサイレンス系の種牡馬は世界に広がりつつある。同じくオセアニアに供用されたバブルガムフェロータヤスツヨシは、現地でGⅠ馬を輩出している。一方、フランスにはローゼンカバリーアグネスカミカゼディヴァインライトが輸出されており、アメリカでも現地で競走生活を送ったフサイチゼノンエイシンマサムネが種牡馬入りしている。この他、ダーレーが日本に繁殖を移送して誕生させたレイマン(米国産)が来年からフランスで種牡馬入り。現役馬サイレントネームもアメリカで種牡馬となる予定だ。

かつて、名馬の墓場と揶揄された日本から、サンデーのネームヴァリューに助けられているとはいえ、日本産馬が輸出されて血を還元できるのは素晴らしいことだ。だが、例えば欧米に輸出されたサンデー産駒は競走成績は今一歩で、現地でも繁殖牝馬に恵まれているとは言い難い。国内でサンデー系が飽和状態になっていることを考えれば、競走成績や母系に恵まれたサンデー産駒を譲り渡しても良い頃ではないか。ハーツクライなど最適なケースだったと思う。ディープインパクトがスタッドインすれば、サンデー系サイアーのパイはさらに狭まるのだから。

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2006.12.03

9531勝 ラッセル・ベイズが歴代最多勝樹立

世界の歴代騎手、最多勝記録と言えば、ラフィット・ピンカイ・ジュニアが持つ9530勝が不滅の金字塔だった。しかし、アメリカは広い。 1日、カリフォルニア州ベイメドウズ競馬場で、ラッセル・ベイズ騎手がレコードとなる9531勝をあげた。ベイズは48歳。父ジョー・ヘイズもジョッキー。 74年にデビューして、4万2570回目の騎乗での記録達成だった。これまでベイズは7度の全米リーディングを獲得しているものの、米三大クラシックなど大レースに縁がないこともあって、日本での知名度は高くない。

評論家のアンドリュー・ベイヤー氏は「レベルの低い地方競馬場だから達成できたこと」(東京スポーツ)と辛口のコメントを出したそうだが、今年も350勝をあげている強靱な肉体と精神は、レベル云々を凌駕して賞賛されるべきだろう。日本の最多勝記録は鉄人・佐々木竹見の7153勝、中央所属では岡部幸雄の2981勝であることを考えてみればいい。ちなみに記録を破られたピンカイ(引退)は、世紀の瞬間を現地観戦して新記録を讃えたという。イチローとシスラー遺族の関係のようで清々しい。いつもスポーツの記録やタイトルは正々堂々とありたいものだ。

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2006.11.07

メルボルンC 歴史的な日本馬ワンツー

7日、フレミントン競馬場で行われたオーストラリア最大のレース、第146回メルボルンCは、岩田康誠騎乗のデルタブルース(栗東・角居)が優勝した。デルタブルースは好スタートを切ると、道中は2番手、3番手につけ、直線入り口では先頭に立った。ゴール前、外から同厩のポップロックが追い込んだものの、半頭差だけ抑えてゴールした。 3200メートルの勝ちタイムは3分21秒42。日本調教馬の海外GⅠ制覇は南半球では初めて。

デルタブルースは一昨年の菊花賞を制した生粋のステイヤー。だが、今春の天皇賞は10着に敗れるなど精彩を欠いていた。前哨戦のコーフィールドCは僅差3着に好走したものの、当日は7番人気。ポップロックが1番人気に推されていたのに対し、伏兵の域を出ていなかった。凱旋門賞のショックで、暗い雰囲気に覆われていた日本競馬にも元気を与えてくれる勝利になろう。

>>メルボルンCレース映像

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チベット競馬祭 民族の心を次の世代へ

チベットと聞いても、すぐに版図を思い浮かべることができる人は多くないだろう。現在、チベットという国は国際法上、存在していないからだ。だが、7世紀初頭にソンツェン・ガムポ王がチベットを統一して王国(吐蕃)を築いてから、ダライ・ラマ法王政権が中国政府の"平和解放"によって実権を失うまで、独自の文化と宗教で隆盛を誇ったチベットは北はモンゴル、南はネパールまで、強い影響力を与え続けてきた。今、そうしたチベット文化圏は中国ではチベット自治区、青海省、四川省など、インドではカシミール州などに分割、支配されている。

チベットは大部分を標高4000メートル以上の草原が占めている。夏は強烈な紫外線を含んだ日光が降り注ぐ一方、冬は氷点下20度を下回る凍てつく世界となる。厳しくも豊かな生命を育む大地で、人々はヤクを放牧し、大麦を栽培しながら、営みを続けてきた。高山植物が花を咲かせる6月から8月、あちらこちらの草原では祭りが開かれる。普段、広範囲に住む人々が年に一度、一堂に会して、数日間に渡って民族舞踊や音楽を披露する。祭りは昔から大切な出会いの場でもあった。その中で最も喝采を浴びるのが競馬だ。男たちは村の名誉を賭けて、馬に跨り勝負を決する。

私がチベット族の競馬祭を観たのは雲南省・香格里拉(シャングリラ)。標高3276メートル、チベット東部に位置する。シャングリラとは映画化された小説『失われた地平線』(ジェームス・ヒルトン)の舞台となったチベットの理想郷のこと。長らくデチェンと呼ばれた地域だったが、観光客を呼び込もうと自分たちの土地こそシャングリラだと宣言して、県名まで変更してしまった。旧暦の端午の節句、ここで競馬祭が開かれる。元々は吐蕃時代に騎兵隊の閲兵式として行われたものだという。政府は97年に競馬場を完成させ、観光の目玉にしようと考えた。

競馬祭の開幕を彩る少女たち 競馬場はたくさんの人で埋まった
カタを持って行進 内馬場からスタンドを見る

祭り当日、競馬場には遠く離れた地域に住むチベット族が、色とりどりの衣装を着飾って集まってきた。その数、数千人。芝生のスタンドは埋め尽くされた。共産党書記の開会宣言とともに、祭りが始まった。チベット女性たちの鮮やかな歌と舞踊が馬場で繰り広げられる。行進時に両手に掲げているのは『カタ』という薄いスカーフ状のシルクの布。祝いや別れの席で相手の幸せを祈って肩にかける神聖なものだ。近代化のなか、祭りの形は変わっていっても、民族の伝統を守ろうという人々の思いは強い。

そして、いよいよ競馬だ。馬はポニーのように小柄。大の男が乗ると可哀想にすら見えるが、タフさはサラブレッドを凌ぐようで力強く駆けていく。トラックを走って着順を争う普通の競馬のほか、流鏑馬など技を競うものなど数種類ある。最も誉れ高いとされるのが『カタ拾い』。直線走路の左右、地面に置かれたカタを騎手が大きく身を乗り出して拾っていく。自らバランスを崩しながら、片手で手綱を操って真っ直ぐに走らせるのは相当な技術が要される。息が合わなければ馬が寄れて、一枚も拾えない。優勝はタイムと拾えた枚数で決まる。

カタ拾いの優勝者は隣町から参加した青年だった。落馬の危険も顧みず、見事な手綱さばきで左右90度に身を傾けて多くのカタを拾い上げた。青年の勇気と技に人々から賞賛の拍手が巻き起こった。今、中国政府の西部大開発はチベットの姿を大きく変えようとしてる。各地へ中国人の移住が推進され、伝統的な街並みは中国風の近代的ビルになりつつある。だが、チベットの人々は、じっと民族の思いと信仰心を胸に秘めて、したたかに生き抜いていこうとしていた。きっと彼らは万難を排して、次の世代へと文化を受け継いでいくことだろう。

トラックを走る馬 カタを拾った瞬間
チベット茶を振る舞う 祭りにやってきた少女

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2006.10.04

2分26秒3 凱旋門賞のタイムは5秒速かった? 

近年で希に見る少頭数、ペースメーカーの不在、2番手で先行したディープインパクト、レース後の「スローになることを予想していました」という武豊と池江泰郎師のコメント、そして2分31秒70と発表された公式タイム。 2日の東京スポーツ一面で清水成駿は敗因についてこう分析している。「好天に恵まれたとはいえ、勝ちタイムは2分31秒70。ダービーを2分23秒3の速いタイムで楽勝したディープに、この深く重いロンシャンでも『跳びなさい』という方が、やはり無理難題であった」と。

凱旋門賞については、「上がりの速い直線だけの決着」(柏木集保)というのが衆目一致した評価だったし、それ故にディープは実力を出し切れずに終わったのではないかと指摘されもした。私自身、まったく疑うことはなかった。しかし、一夜明けて、レーシングポスト紙のサイトに掲載されたタイムは違った。 " Rail Link 2m 26.30s " なんと5秒以上も速いではないか。ディープが敗れたショックで気づかなかったが、映像を見直すとゴールした瞬間の時計は2分25~26秒だ。手元のストップウォッチで計測しても同じ。ラップの取り方が違っても5秒は狂わない。

ハナを切ったアイリッシュウェルズ、途中でディープの前に出たシロッコはともに馬群に沈んでいる。 1、2着のレイルリンク、プライドは後方で脚を溜めていた馬だ。先行勢で残ったのはディープだけ。京都の倍以上の高低差があり、芝も深いロンシャン。確かに時計の出る馬場だったが、スローと言えるだろうか。前後半とも1000メートル1分01秒ぐらいか?息の入らない厳しい流れだったようにも思える。その中をフォルスストレートで順位を上げ、ラスト400から追い出したとしたら、3キロの斤量差のある差し馬に交わされたのも不思議ではない。

フランスの主催者が発表した公式タイムは2分31秒70のまま。訂正されるのかどうかは知らないが、私たちがこの時計を頼りにしてレース結果をあれこれ批評することは避けた方が良さそうだ。負けたという事実は何も変わらないし、フランスのファンは時計など意味がないと言うのかもしれない。だが、同じ位置にいたBCターフ勝ち馬が惨敗を喫したレースで、最後まで踏みとどまって差し返す場面さえみせとすれば、日本のファンも少しは溜飲が下がるのではないだろうか。

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2006.10.02

再び世界へ歩みだそう ディープの挑戦を誇りにして

3着。残念な結果だったというのが素直な感想だろう。その上でディープインパクト陣営と武豊騎手には感謝の意を表わしたいし、ディープが日本代表として恥じぬ走りを見せてくれたことに誇りを持ちたい。レース後、武豊は相当なショックを受けていた様子だった。中継では合田直弘氏の質問に答える余力もなかったが、オフィシャルサイトにはまもなくコメントが掲載された。

最後の競り合いの場面、いつものディープインパクトなら、あそこからもう1枚の超トップギアが出てきて突き放していたはずですが、今日はそれがありませんでした。馬場や展開は思っていた通りでしたし、ディープの力を100%引き出せていたら、決して負けることはなかったと思うのです。本当に悔しいです。勝ちたかったです。(武豊日記)

レースは予想通り、少頭数でスローな流れ。ディープは普段より良いスタートを切ったため、アイリッシュウェルズの2番手を進むことになった。追い込みが身上のディープにとって、初めての正攻法の競馬だったが、先行することは陣営は想定していたようだ。坂の途中でシロッコを先に行かせ、3番手に下げる。課題とされていた折り合いはフォルスストレートでも欠くことはなく、 4角も充分な手応えでまわってきた。これまでにない優等生的なレースぶりは、違う馬を見ているようだった。

直線ではシロッコを前に見ながら、最大のライバルとされたハリケーンランを内に閉じこめる格好。武豊としては最高の形になったと思ったのではないか。この2頭を負かすには、ラスト400を過ぎて追い出したのも好判断だった。だが、解説の岡部幸雄が「まだまだ、まだまだ」と叫んでいたのは、ディープを徹底マークしていたレイルリンクが視野に入っていたからだろう。スローの上がり勝負なら、マークして仕掛ける馬の方が圧倒的に有利だ。斤量差もある。一度は差し返すファイトは見せたものの、ゴール前は脚があがった。

直線で追いだした時に突き放せなかったのは、武豊の敗戦の弁のように「ギアが出てこなかった」のか、スローで差がつかなかったのか、相対的な能力の問題なのか、断言はできない。但し、天皇賞春で発揮した驚異的なスタミナを引き出させられることなく、ロンシャン400メートルの瞬発力勝負に敗れたとは言えるだろう。そして、まるでシービーがルドルフとの対決で採った先行策と同じく、破天荒な競馬をしてきた馬が他馬を意識して"常識に適った"乗り方をしたことに、一抹の不完全燃焼感は求められるのかもしれない。

日本競馬界にとって、ディープ敗戦は大きな挫折となることは認めねばなるまい。ディープの超えられなかった世界の壁に、一から挑戦しなくてはならないのだ。しかし、5年、10年、20年の歳月をかけてでも、彼の地にスーパーホースを連れて行く気概を忘れずに歩んで行こう。ディープの偉業を糧にして…。最後につまらない繰り言になるが、重圧を背負った騎手に静かにするようたしなめさせたり、パドックで無神経にフラッシュを焚いていたファンは、何のためにフランスまで出かけたのか、良く考えてほしい。

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2006.09.30

ディープに熱狂する日本列島 国民的祭典を楽しもう!

一般メディアも巻き込んで、ヒートアップしていくディープインパクト報道。当初の「もしかしたら勝てるかもしれない」という控えめな評価が、「勝って当然」という興奮気味の雰囲気に変わりつつあるのは、ワールドカップのような国民的祭典になった証左。しかめ面をして憂う必要はなく、競馬ファンとしては喜ぶべきことではないか。過剰な期待は大きな落胆を引き起こすかもしれないが、そこはコアなファンがしっかり受け止めよう。どのような結果でもディープが歴史的な名馬であることには違いないのだから。日本中の関心を集める未曾有の海外挑戦を、勝利を信じて楽しんだ方が良いと思う。ディープと同時代にファンであったことに感謝しよう。 こんな出来事は人生で二度とないだろうから。

枠順も確定した。ディープは2番枠。ハリケーンランは1番枠、シロッコは6番枠だ。先行勢が外枠に入ったことで、ディープは先行集団を前に置きながら内々を進むことになりそうだ。ハリケーンランも同じような位置取りか。どちらが先のポジションを取るかは気になるところ。 28日の調教はリードホースを追いかける形で行われ、最後まで追い抜かずに我慢させる訓練を課した。勝負は時の運とはいえ、折り合いさえつけば実力は出し切ることができるはず。結果は自ずとついてくる。 30日にはダニエルウィルデンシュタイン賞(仏G2)に帯同馬のピカレスクコートが出走予定。武豊は同馬を含めて、凱旋門賞まで数鞍の騎乗機会があり、しっかり馬場の具合も確かめることができる。

28日から旅行会社の凱旋門賞ツアーも続々と出発している。当日、ロンシャンには数千人規模の日本人が押し寄せるとみられており、こうした現象は世界でも希有な出来事ではないだろうか。日本人向けマークカードも用意されたという。ロンドンのブックメーカーでは日本人男性がディープの単勝に360万円を投じて話題になっている(フサローなら平場で突っ込む程度の額かもしれないが)。 さらにAmazonでは 「ディープインパクト凱旋門賞制覇」 なる大型本の購入予約も始まった。出版元は日刊スポーツ。値段は950円。無事に発売されることを願って、今からレビューを書いておくのも悪くないかもしれない。

幻となった優勝記念本。予約した人はいた?

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2006.09.29

革命の時は来た 世界を決する武豊のゴーサイン

8頭立ての少頭数で行われることになった凱旋門賞。これで内ラチ沿い5頭分に敷かれるグリーンベルトを通ることも、難しいことではなくなった。だが、"紛れ"の可能性が低くなったのとは裏腹に、ディープインパクトが折り合いを欠かずに競馬ができるだろうかという心配は大きくなった。あからさまなラビットの出走もなく、今年はスローペースに落ち着くことは必至だ。レースは一団となって進むだろう。ロンシャンの難コースで武豊はどうディープの折り合いをつけるのか、そして、いつディープにゴーサインを出すのか、勝負を決する最大の見所になる。

ディープはどんなペースでも折り合いをつけられるタイプではない。菊花賞で口を割って手綱に抵抗した姿は覚えているファンも多いと思うが、古馬になってからも気性的な問題は完全に解消されたわけではなかった。圧勝した天皇賞春のレースぶりを思い出してほしい。出遅れて後方2番手につけたディープはがっちりと手綱を抑えられたものの、1コーナー過ぎで持って行かれポジションをあげていった。そして、ラスト1000メートル付近、坂の上りから凄い勢いで加速していくと、ラスト800で先行集団に取りつき、4角手前では先頭に躍り出た。

淀の坂は「ゆっくり上って下る」のがセオリー。坂下から一気に仕掛けると、どんな強い馬でも残り1ハロンで脚があがってしまう。武豊はレース後、「3コーナー手前で一気にペースが遅くなり、どうしようか迷った」と述べている。定石ならペースに合わせて抑えるのだろうが、武豊は無理に手綱を引くことより、ディープの気分を害さずにロングスパートさせる選択肢を採った。これが暴走にみえたリンカーンの横山典は「もらった」と思ったそうだ。ところが、ディープはラスト1000を57秒を切る驚異的なレコードで快勝してしまったのだ。スタミナも心肺能力もこれまでの一流馬とは桁が違った。

天皇賞春の勝利は数字的にも史上最強馬と確信させる、超弩級のパフォーマンスだった。その一方、能力任せのレースこそ、ディープの潜在能力を最大限に発揮する術だと証明することにもなったのではないか。では、凱旋門賞で武豊はどうディープを操るのか。京都とロンシャンは形状が良く似ていることが知られている。だが、高低差は京都の倍以上の10メートル。深い芝と相まって、要するスタミナはずっと大きい。上りから仕掛けていくのは論外だし、坂の頂点からゴールまでも1400メートルある。ここは馬をなだめて、じっと動かずにおらねば勝負すらできない。

坂を下り終えると、待っているのがフォルスストレート(偽りの直線)。この偽りの直線で加速の誘惑に負けてはならない。馬なりで徐々に順位をあげるのが理想的だ。しかし、ロンシャン初体験のディープが、一息つかせたい鞍上の思惑に従うことができるだろうか。それまで抑えられてきたディープは擬似直線で加速しようとする可能性が高いと思う。その時、武豊は我慢させるのか、ロングスパートに耐えられると信じて手綱を放つのか。もし、天皇賞春で底知れぬスタミナはロンシャンでも通用すると感じたのなら、タブーとされるロングスパートに賭ける判断をするのではないかと思う。

ロンシャンの直線は東京より長い533メートル。真の攻防はラスト300メートルで繰り広げられる。ディープは初めて潜在能力を限界まで引き出すことを求められることになる。トップジョッキー・武豊にとっても、一世一代の大舞台。12年前、1番人気のホワイトマズルに騎乗して、何もできないまま凱旋門賞を終えた屈辱を晴らす最後のチャンスだろう。馬群に包まれるような、悔いの残る中途半端なレースだけはしないはずだ。スピードシンボリの挑戦から37年。日本のホースマンの夢であり続けてきた凱旋門賞制覇は、現実のものとなると信じている。革命の時は近い。

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2006.09.28

凱旋門賞は8頭立て 史上2番目の少頭数に

10月1日にロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞の出走メンバーが発表された。出走馬は8頭。9日にセントレジャーを勝ったシックスティーズアイコンは、追加登録料の6万ユーロ(約888万円)を支払って参戦する。 8頭立ては1941年(ルパシャ)の7頭に次ぐ史上2番目の少頭数。最近では2000年(シンダー)が10頭立てで施行されたが、出走馬が一桁だったのは1946年(カルカラ)の9頭まで遡らねばならない。今年は三強のレベルの高さから、各陣営が自重したためとみられている。

  • ディープインパクト(宝塚記念・天皇賞春・菊花賞)
  • ハリケーンラン(凱旋門賞・キングジョージ)
  • シロッコ(BCターフ・コロネーションC)
  • プライド(サンクルー大賞)
  • ベストネーム(プランスドランジュ賞)
  • アイリッシュウェルズ(ドーヴィル大賞)
  • レイルリンク(パリ大賞典・ニエル賞)
  • シックスティーズアイコン(セントレジャー)

登録のあったヴェルメイユ賞馬・マンデシャはオペラ賞へ、英ダービー馬・サーバシーは英チャンピオンSへ向かう。なお、これによりスミヨン騎手はシロッコに、デットーリ騎手はシックスティーズアイコンに、ファロン騎手はハリケーンランに騎乗するものとみられている。枠順と騎手は29日に発表される。

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凱旋門賞 知っておきたいロンシャンのコース

凱旋門賞が行われるロンシャン競馬場の芝2400メートル。コースは右回り。その形態を頭に入れておけば、ディープインパクトとライバルたちの駆け引きや仕掛けもグッと楽しむことができるはず。きっちり予習しておきたい。 2400メートルのスタート地点は2角手前の風車下。ここから大外を回って、トラックをほぼ一周する。スタートから400メートルは平坦な直線だが、そこからゆったりした上り勾配が続き、3角過ぎから逆に下り坂になる。高低差は10メートル。 3-4角の中間点からゴールまで1000メートルはほぼ平坦だ。

ロンシャン外回りコースの最大の特徴は3-4角の中間にあるフォルスストレート。訳せば『偽りの直線』。本当の4角はまだ先にあるのに騙されて、直線と勘違いした馬が行きたがってしまうと、ゴール前で失速することになる。上って下って、長い平坦というコースは、京都競馬場と良く似ている。ロンシャンも淀と同じく、「ゆっくり上ってゆっくり下る」のがセオリーだ。4角まで一団で進んで、直線の叩き合いになることが多い。だが、私は追い込み脚質のディープに騎乗する武豊は、セオリーを無視するのではないかと密かに期待している。話の続きは翌日以降に。

ロンシャン競馬場コース図解

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2006.09.27

凱旋門賞 ディープの命運を握るロンシャンの馬場

今週末に迫ったディープインパクト凱旋門賞挑戦。ここまで順調に追い切りをこなし、ほぼ万全の体勢でレースに臨めそうだ。去年、BCターフを勝ち、今年はフォワ賞まで3連勝を飾っているシロッコが最大のライバル。キングジョージでハーツクライを降したハリケーンラン、3歳馬必勝パターンのニエル賞勝ちレールリンクまでが優勝可能性を秘めた馬になろう。ディープとの力関係を推測するのは極めて難しいが、完調のハーツなら何とか負かせただろう今年のハリケーンランよりは上、シロッコと同等、と評するのは判官贔屓が過ぎるだろうか。確かに下馬評は百家争鳴。しかし、陣営も専門家もブックメーカーも、走ってみなければ分からないというのが本音のところではないか。

能力的な比較を除いて、最も勝負を左右するファクターは馬場だろう。凱旋門賞は道悪で行われるケースが少なくない。良と不良では勝ちタイムが 10秒以上の差がついてしまう、まったく異質な競馬場となる(仏は欧州では軽い部類だが)。レースレコードは97年パントレセレブルの2分24秒6(良)。いちばん遅かったのは 99年モンジューの2分38秒5(不良)。後者はエルコンドルパサーが2着に敗れたレースだ。もし、良馬場であれば、7年前に日本馬は最高峰に到達していたと私は思っている。長期滞在して馬場にあった走りを体得し、日本では道悪は得意だったエルコンでさえ敗れたのだから、ディープにとっても当日までの天気が命運を左右すると言っていい。今週のパリの天気は予報会社によってまちまち。できれば一滴も降ってほしくない。

もうひとつ忘れてならないのは、ロンシャンは凱旋門賞当日、初めて馬場が全面開放されること。内の仮柵を撤去するため、新しい芝生、いわゆるグリーンベルトが出現するのだ。今年の凱旋門賞は10頭立て前後。折り合いを欠くのが怖い武豊は、いつもと同じようにディープを後方につけるだろう。直線、運良く内が開くことを想定することはできず、外を回すのは覚悟せねばならない。逆にフォワ賞で2番手から競馬を進めたシロッコはグリーンベルトの利を活かせる可能性が高い。但し、速い時計の決着にシロッコが対応できるかは未知数だ。いずれにせよ、こうしたファクターを克服して勝ってしまえば、ディープは文句なしの世界チャンピオンであり、その可能性も充分にあると思わせてくれる。凱旋門賞のゲートが開くのが待ち遠しい。

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2006.08.17

米・バーバロ 粉砕骨折と蹄葉炎から奇跡の快復

5月の米・プリークネスSのレース中に右後脚を骨折したバーバロ(Barbaro)が奇跡的な快復をみせている。バーバロはケンタッキーダービーを6馬身半差で圧勝。無傷の6連勝を飾って三冠確実と言われ、秋には凱旋門賞挑戦のプランも明らかにされたほどだった。しかし、プリークネスSでは発走後まもなく右後脚粉砕骨折を発症して競走中止。普通なら安楽死処分されるほどの重傷だったが、すぐにペンシルヴァニア州立大学ニューボルトンセンターに搬送され、長時間に及ぶ手術を受けて一命を取り留めた。27本のボルトと金属プレートを埋め込むオペだった。

だが、本当の闘いは術後から始まる。手術が成功すれば、馬は快方に向かうわけではない。最大の難敵は蹄葉炎だ。蹄は血液のポンプの役目を果たしている。骨折などで四肢の何れかの蹄に体重の負担がかかりすぎると、蹄内部の血液循環が悪化して壊死してしまう。かつて、術後のテンポイントは蹄葉炎を発症したため、苛酷な闘病生活の末、全身衰弱して死に至った。 7月、恐れていたことが起きた。バーバロは左後脚に重度の蹄葉炎を患い、生命の危機に陥ってしまった。しかし、懸命な加療と最新の獣医学、それに自身の強い精神力が、不治の病からバーバロを救った。バーバロは自らの脚で立ち上がり、蹄葉炎を克服したのだ。

現在、バーバロは順調に快復して、外に出て青草を食むまでになっている。もちろん、予断を許すことはできないが、一時と比べると未来は明るい。プリークネスS、プラド騎手は返し馬で後ろ脚の運びの不自然さをいぶかしがった。そして、バーバロはゲートでフライングをしたにも関わらず再スタートとなった。もし、という言葉は禁句だが、誰も予兆に対処しなかったのは残念なことだ。関係者は今後の教訓としてほしい。バーバロは経過が良好に推移しても、後ろ脚に負担のかかる種付けができるようになるまでには相当な時間が必要だろう。だが、いつかバーバロの子どもが父の果たせなかった三冠制覇に挑む姿を見てみたい。

>> "Barbaro walks outside, grazing on grass"(AP Sports)
>> 「バーバロ、右後脚骨折から順調に回復」(サンスポ)

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2006.07.30

欧州馬の底力 気を引き締めさせられた一戦

悔しいというよりは、良くやったという感情の方が上回ったキングジョージVI&クイーン・エリザベスDS。 3着という結果そのものは手放しで喜べるものではないが、欧州のチャンピオンとガチンコで勝負をして、決して恥ずかしくないレースができたことは素直に評価したい。と同時に、改めて欧州勢の底力を見せつけられたのも事実。アメリカンオークス、シーマクラシック、シンガポール国際Cと世界を席巻した最近の日本勢だったが、やはりGⅠの中のGⅠは簡単に手が届くものではなかった。

直線、ハーツクライが先頭に立った時は勝ったかと思ったが、残り100メートルで脚が上がった。内からハリケーンランが伸び、エレクトロキューショニストとの叩き合いにも後れをとった。敗因は幾つもあるだろう。休み明け、初コース、慣れない環