カテゴリー「レース回顧」の177件の記事

2009.06.12

安田記念回顧 ウオッカを勝利に導いた武豊の経験深さ

気の抜けたコーラのようになってしまうが、ごく簡単に安田記念の回顧を。最大の見せ場は、内で進路を失ったウオッカのラスト1ハロンであったのは間違いない。その瞬発力の高さには頭を垂れるしかなく、府中で観戦していた私も度肝を抜かれた。武豊は「自身の騎乗は誉められたものではない」「ウオッカが強いからこそ勝てた」と殊勝な態度だ。スーパーホーネットあたりが脚があれば、ウオッカは脚を余して惨敗という、ドバイ前哨戦を思わせる結果もありえた。しかし、そうならなかったのは陣営の運の強さもあるだろうが、慌てることなく進路が開くのをギリギリまで待っていた鞍上の経験の深さ故というのは忘れてはならない。それにしても、谷水オーナー、角居師、武豊という良識あるトリオが栄冠を掴む姿は、心から賛辞を送りたくなるものだ。本命にしたカンパニーは4着。外を回した横山典の騎乗は文句のないものだったが、ディープスカイファリダットも完璧な騎乗をした分、馬券圏内に入ることはできなかった。二強以外で本命馬を探した予想としては、ハズレても納得の行く結果だった。

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2009.06.03

日本ダービー回顧 天恵はノリとロジユニヴァースに降る

昼過ぎに家を出て、新宿から京王線で府中競馬場正門前駅をめざす。電車を降りるとひどい雨。傘を持って来なかった私は屋根のあるところまで、ホームを駆けねばならなかった。週半ばから降り続けた雨で重さを増した府中の馬場だが、日曜の午前には多少は良くなり、差し馬も届き始めていた。ところが、この直前の土砂降りでひどい状態に逆戻り。不良となった9レースの準オープン・むらさき賞は、前へつけた1番から3番の内枠の人気薄馬が上位を占めて、3連単58万円の波乱となった。そして迎えた日本ダービー。雨はあがったが、ファンも関係者も騎手さえも、この馬場がどんな結末を導くことになるのか、予測できなかったのではなかろうか。それ故、戦前に予想された戦法を急遽、変更する陣営は現れなかった。ハナを切ったのはジョーカプチーノ。逃げ宣言の武豊・リーチザクラウンより先に行くのなら、中途半端なポジションは許されない。藤岡康は馬の気のまま後続を引き離す。このドロドロ馬場で1000メートル1分を切る狂気の沙汰としか思えぬハイペース。離れたリーチザクラウンは実質的な単騎逃げの形に持ち込めたとはいえ、2番手の同馬にとっても決して楽な流れではない。

4角、すでに力尽きたジョーカプチーノが後退。先頭に立ったリーチザクラン、さらに内から3番手につけていた横山典・ロジユニヴァースが伸びてくる。中団から馬場の良い外へ出したのはアプレザンレーヴ。ところが、内田博幸のムチ空しく、脚が上がってしまっている。通常なら差し馬が脚を伸ばしてくる直線半ば、後続の有力馬は馬群でもがき続けていた。ある馬は直線に至る以前にスタミナが空になり、ある馬は彼方を走る先行勢に戦意を喪失し、ある馬は脚を取られながら詰まらぬ差を詰めようとした。だが、最内を通ったロジユニヴァースには迫れない。4馬身差の2着にリーチザクラウン。極端なスタミナ勝負になり、ポジションとコース取りの差が明暗を分けた。「もっとも運の良い馬が勝つ」と言われるダービー。天恵は横山典とロジユニヴァースに降り注いだ。さりとて、運の良さだけで片付けられない皐月賞1、2番人気のワンツー。前走、ロジユニヴァースが大きく調子を崩していた原因は分からないが、減らしてた馬体はしっかり追いきってプラス16キロと、勝負できるだけの体調には回復していた。おそらく管理する萩原師は皐月賞の責任を感じていたろうし、ダービー前も状態を疑問視する声もあった。黙して結果を残したのだから立派なものだ。

勝ちタイムはキングカメハメハより10秒以上遅い2分33秒7。レースの上がりは39秒7、ロジユニヴァース自身は39秒2。瞬発力に長ける馬たちにとっては、本当に厳しい競馬だった。1番人気の岩田・アンライバルドは12着。大外枠でポジション取りは上手くいかず、馬場も気にしていたようだ。母系の血統から重は鬼ではないかと思っていたが、これほど悪くなった馬場には対応できなかった。唯一、後方から脚を伸ばして掲示板を確保したのが蛯名・ナカヤマフェスタ。馬場適性、コース適性は高かったのだろうが、調子を取り戻せばこれだけ走れるという実力を証明した。アントニオバローズ、アプレザンレーヴも秋に期待を持たせる内容ではなかったか。レース後、引き上げてきた横山典はヘルメットを脱ぎ、馬上から一礼。初めてのダービー制覇をファンは大声援で出迎えた。1番人気・メジロライアンで2着に敗れ、批判に晒された若者が涙したダービーから19年。あの後、生まれた息子は騎手の卵に成長し、この日、父親と抱き合って喜びを分かち合ったそうだ。私も同じ歳月、競馬を共有させてもらったのか。「19年は長いけど、あっという間だったよな。おめでとう、ノリ」 そう思えただけで、雨中のダービー観戦は充分に価値のあるものだった。

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2009.05.26

オークス回顧 ”日本のザルカヴァ”誕生への期待感

「女ディープ」の呼称に、少々違和感を感じていたレース前。しかし、先行、内枠有利、それを加速する雨上がりの馬場という、明らかに本命馬は前に行くべき条件が揃った中、またしても殿一気の競馬に腹を据えた安藤勝とブエナビスタには、”英雄”の姿を重ねても良いかもしれない。ヴィーヴァヴォドカがハナ、デリキットピースが離れた番手。それをディアジーナが引っ張る馬群が追走する、この間も見たことがあるような展開が現前された。6ハロンは1分13秒5の前傾ラップだが、ディアジーナ以下はやや緩めのミドルペースではなかったか。ブエナビスタは後方3番手。折り合いに専念して、脚を溜めていた。理想的なポジションを取ったのはレッドディザイア。インコースを通り、直線も最高のタイミングでスパートを賭けた。一方、ブエナビスタは4角で内か外か判断を迷い、仕掛けが遅れるロス。それでも1頭だけ33秒台の上がりを繰り出す猛追で、レッドディザイアをハナ差しきった。これがハナ差で負けていたら安藤勝、一生の不覚となったかもしれないが、届いてしまったところにブエナビスタが生まれ持った運の強さがあるのだろう。勝ったからこそ語り継がれる歴史になる。レッドディザイアも例年なら二冠を取っていておかしくない実力馬と評価すべき。

上位2頭、ともに父はサンデー直仔であり、母の父はカーリアンである。さらにブエナビスタの祖母(アグサン)と、レッドの父の母(サトルチェンジ)は姉妹だ。実に似通った血の持ち主が、牝馬クラシックで覇を競ったことになる。サンデー産駒でも、スペシャルウィーク、マンハッタンカフェのステイヤータイプというのも興味深い。ディアジーナは5着。この馬らしい競馬はできた。距離は2000メートル前後が良いか。ダノンベルベールは9着。本来のデキになかった。ワイドサファイアの放馬は何とも。鞍上の岩田はダービーで恥辱を晴らせるか。優勝したブエナビスタは、凱旋門賞へ直行することが明らかになった。去年、ザルカヴァの凄まじい差し脚に現地で衝撃を受けた者としては、同じく後方一気の破壊力が武器の3歳牝馬に期待を寄せないわけにはいかない。凱旋門賞は斤量的に3歳馬が圧倒的に優遇されており、このタイミングが遠征にはベスト。スタートの悪さも欧州では標準だろうし、ディープのように不本意に前に行かされるリスクは少ないほうが良い。春二冠の牡馬が菊を捨てるの反発もあるだろうが、牝馬だったことは幸い。ロンシャンでは女ディープではなく、日本のザルカヴァとなってほしい。それだけのポテンシャルを示す、気分を高揚させられたオークスだった。

>>凱旋賞リポート 最強牝馬が誕生したロンシャンの一日(08.10)

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2009.05.20

ヴィクトリアマイル回顧 やはり内枠、先行勢で決まる

やはりウオッカの実力はダイワスカーレットという希代の名馬を除けば、同時代の牝馬たちとの差は歴然としている。そう改めて噛み締めさせられたのがヴィクトリアマイルでなかったか。逃げたわけでもなく、マイルG1で7馬身差は圧倒的だ。好枠を利した武豊の騎乗も非の打ちようがなかった。これで武豊が勝ってないG1はマイルCSと朝日杯のふたつ。時折、体調を心配する声も聞くが、しっかりケアをしてまだまだ現役であり続けてほしい。2着以下は展開と馬場に大きく左右された。戦前の予想通り、スローの流れ、内枠有利。NHKマイルCもそうだったが、分かっていても術中に嵌ってしまうのが競馬の怖いところ。終わってみれば、何のことはない内枠の先行勢が2、3着で3連単は800倍。そのつもりでウオッカ1着固定で買ったフォーメーションだったが、ブラボーデイジーは3着欄にしかマークなし。福島牝馬Sで単を取らせてもらった恩を忘れたのか。下手に点数を絞ると馬鹿を見る典型である。ところで京王杯SCをスズカゴーズウェイで制した後藤。勝利インタビューで「帰ってカプチーノを飲みたいです」と一言。こういう細かな期待に応える彼の所為は好きだ。

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2009.05.13

NHKマイルC回顧 展開の利だけでないジョーカプチーノ

NHKマイルCは10番人気ジョーカプチーノが勝利する波乱の結果となった。ハナを切ったのは逃げ宣言のゲットフルマークス。先行勢ではミッキーパンプキンが出遅れたため、すんなりとジョーカプチーノが離れた番手を気分良く追走する形ができた。人気馬ではフィフスペトルが5番手と前に行ったが、1~3番人気のブレイクランアウト、アイアンルック、サンカルロは揃って10番手以下の後方待機。 1000メートル通過は57秒2と逃げ馬のペース自体は遅くはなかった。しかし、4馬身ほど後ろにつけたジョーカプチーノ、先行集団はそこからさらに離れており、7ハロンの条件戦で1分20秒台が出ていた高速馬場を鑑みれば、勝ち馬には理想的なラップであり、ブレイクランアウト以下は32秒台の上がりを繰り出さねば届かない絶望的なポジションだったと言えるかもしれない。それはトップジョッキーたちは体感していたに違いないが、隊列が決まってしまっては動くに動けないのが競馬。あるいは高速馬場に幻惑された部分もあるだろうし、後方に固まっているライバルを牽制するのも当然だ。

4コーナーでも差はつまらなかった。残り400メートル。ジョーカプチーノの藤岡康は満を持して逃げ馬を交わす。アハルケテSで先行快勝していた藤岡康は馬場の感覚が掴めていて、同じ競馬をすると腹に決めていたのだろう。それにしてもゴールまで馬をもたすには十分なスタミナが必要な仕掛けだったが、マンハッタンカフェ、フサイチコンコルド、トウショウボーイとクラシック三冠のそれぞれの勝ち馬が重ねられた血統は一介のスプリンターを輩出したわけではなかった。最後まで脚があがることなく、1分32秒4のレースレコードで2馬身の差をつけてゴールを駆け抜けたのである。あらゆる条件が味方したのも確かだが、勝ち馬はファンが思っていたよりずっと強かった。生産牧場のハッピーモネファームはジョーカプチーノが生産第一号だそうで、ジョーの上田けい子オーナーの預託とはいえ快挙。2着にレッドスパーダ。横山典のお家芸は忘れたころにやってくる。3着グランプリエンゼル、4着マイネルエルフと先行勢が入線。そうしたなか、フィフスペトルは5着と伸び脚を欠いたのは意外だった。本来なら連対できた展開。連戦の疲れがあったのかもしれない。

後方勢の人気馬は揃って討ち死に。ただ最後方待機のワンカラットが33秒5で上がって6着まで押し上げたのと比較すると、ブレイクランアウトなどは実にだらしのない競馬だった。アイアンルックは4コーナーでサンカルロに寄られ、小牧が手綱を引くほどの不利。そのサンカルロは吉田豊がペースが遅かったのに慌てたのだろう。直線ではダイワプリベールの進路までカットする有様。もはやこれまでと潔く身を引いた小牧とは対照的に、あがきまくった結果が2度の進路妨害を引き起こしてしまった。併せ技で開催8日間の騎乗停止処分。ダイワプリベールの鞍上が後藤というのも因縁深い(参:2005.7.24)。ところで、後方待機の人気馬が着外に終わり、展開や馬場に利のあった人気薄の先行馬が勝ったことで、G1の勝負としては物足らないとの声も聞かれる。ここまで回顧してきた通り、様々な要素が絡み合っての結末ではあるが、シンボリルドルフと外国馬が牽制しあって逃げ切りを許したカツラギエースのJCのような物語性があるわけでもなく、プロレス的に敢闘精神が欠けていると騎手に野次が飛ぶのも理解できなくはない。馬券を外したファンの罵声も併せ呑むのが競馬である。

ところで、「ファンを規格化するバラエティ戦略」の拙エントリーへ、「WarEmblemの日記」さんよりトラックバックをいただいた。批判やご意見を賜るのは一ブロガーとして望外の喜びではあるが、正確な意図を読み取っていただければ、なお嬉しかった。拙記事では「ハシッテホシーノ」「チョリーッス」そのものを批判はしておらず、そうした事象がどのようにして生まれたのかを考察するのが主眼だった。「チョリーッス」が良いか悪いかを問うても正しい答えがでるわけではない。これは自戒8割だが、その問題に人々(自分)がなぜ疑問を持つのか、背景に隠されているものは何なのか、吟味することのほうが大切だと思う。そうでないと、「松岡ひどい」「そうでもない」「許してやれよ」などという不毛な水掛け論を巡ることになる。もう一つ、市井の競馬ブログなど競馬界全体からすれば、箸にも棒にもかからない存在にすぎない。その中で、影響力があるとかないとか、目糞鼻糞の違いである。ブログが生まれてから、先行者の優位性もほとんど消失した。各々が自身の言葉には責任を持ちつつ、思惟したことを臆することなく表現すればいいのではないだろうか。先方はトラバもコメント欄も設けておられないようなので、リンクを持ってお礼とご返答を通知させていただくことにしたい。

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2009.05.06

ルドルフ超えの困難さ かしわ記念でカネヒキリ敗れる

環境や条件、フィールドが異なれば、以前に生み出された記録を今のものと比べることは、客観的な公平さは保ちえないのかもしれない。しかし、イチローが張本勲の最多安打記録を超えたことが賞賛されたように、それが日本記録でも大リーグ記録でもない”プロ野球記録”だとしても、新しい境地が拓かれる瞬間に人々はまだ見ぬ光を感じるのかもしれない。シンボリルドルフが「7冠」の記録を樹立したのは1985年のこと。クラシック三冠、天皇賞、ジャパンカップ、2度の有馬記念。王道を歩み、最強馬の称号を手にした。皇帝の記録に並ぶ馬が現れたのは16年後。天皇賞3勝のテイエムオペラオーだ。抜群の安定感を誇った同馬はまだまだ力の衰えなく、ルドルフ超えは確実かと思われた。しかし、宝塚記念ではライバルたちの徹底したマークで馬群に包まれ敗れてしまう。決してローズが王貞治を過去のものにする56号を放つことが許されなかったように。その秋、オペラオーは天皇賞、ジャパンカップとも2着に敗れてターフを去った。空飛ぶサラブレッド、ディープインパクトも有馬記念や凱旋門賞の敗戦があって7冠に留まった。

一方、交流G1の整備により、8冠馬はダート路線からも生まれようとしている。アドマイヤドンは朝日杯と6つのダートG1を制して7冠を達成し、クラシックや天皇賞と比べれば、裏街道での記録更新が現実味を帯びることになった。ところが、ダートでもルドルフ超えは難しかった。アドマイヤドンはJCDでゴール直前でハナ差し返されて記録樹立を逃した。去年、南部杯3連覇で王手をかけたブルーコンコルドも1番人気に推されたJBCスプリントで4着。8冠は手が届かなかった。そして、再びダート路線でルドルフ超えを狙うのがカネヒキリだ。不治の病からカムバックし、去年12月からG13勝。前走のフェブラリーSで敗れたとはいえ、その内容は勝ちに等しかった。敵は自らの脚元だけ。昨日、カネヒキリはかしわ記念で単勝1.8倍の断然人気に支持され、8冠の偉業に挑んだ。4角手前、内で仕掛けが遅れたカネヒキリを尻目に、外からエスポワールシチーが一気にスピードアップして先頭へ。降りしきる雨で軽くなった馬場で、カネヒキリはエスポワールシチーを捕らえることができなかった。入線後、異常を感じた騎手は下馬。8冠の前には何が立ちふさがっているのか、背筋が寒くなった。カネヒキリは大事なければ帝王賞へ向かうとのこと。ジンクスを打ち破ってくれることを祈りたい。

※レース後、カネヒキリには左第3指骨々折が判明した。

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2009.05.04

天皇賞春回顧 高レベルだった日経賞組のワンツー

逃げ宣言のテイエムプリキュアが中途半端にペースを落としたため、離れた番手に控えるはずだったホクトスルタンが先頭を奪い、それを抑えの利かないシルクフェイマスが交わして1周目のスタンド前を通過。 1000メートル通過は60秒4、7ハロン目まで11秒台が5回刻まれる厳しい流れになった。有力馬はスクリーンヒーロー、アサクサキングスが先団、それを見るようにアルナスライン。マイネルキッツは内をロスなく周りながら、2周目の3コーナーでは2番手集団までスムーズに押し上げていく。直線、ホクトスルタンが後退。アサクサキングスも早々に手応えをなくす。それをマークしていたアルナスラインが外から伸びてくる。しかし、内をすくったマイネルキッツも脚色がいい。2頭は身体を併せる形になったが、内の経済コースを回した分、マイネルキッツがクビ差、凌ぎきった。3着は後方から差してきたドリームジャーニー。勝ち時計はあのディープインパクトのレコードと1秒差。スタミナが問われるステイヤーのためのレースだった。

終わってみれば、日経賞の1、2着がひっくり返っただけ。アルナスラインが勝った日経賞は前年のマツリダゴッホより内容的には濃いもので、私が本命を打った理由のひとつもそこにあった。それだけに3着のモンテクリスエスに印を回し、重賞未勝利とはいえマイネルキッツを軽視したのは予想下手としか言いようがない。鞍上の松岡正海は巧かった。関東の若手ではもっとも信頼できるジョッキーではと思っていたが、人気薄で気楽に乗れたとはいえ、内枠を最大限に生かす大一番での好騎乗。前走後、自ら天皇賞参戦を進言したというから、自信もあったのだろう。ラフィアンは八大競走初優勝で岡田総帥の喜びもひとしおのはずだ。一方、アルナスラインはレース中に右前を落鉄していたそうで、伸びきれなかったのはその辺りに原因があるのかもしれない。アサクサマークで外へ行ったのはしょうがない。ドリームジャーニーはカリカリしたところがありながら、直線は矢のような脚。宝塚記念が楽しみ。1番人気アサクサキングスは9着。ハイペースも向かなかったが、心配した通り、阪神大賞典の激戦は深い疲労を残していたようだ。

ところで、松岡の勝利インタビューが話題になっている。開口一番、中途半端なテンションで「チョリース」と二度、カメラに向けて発したのだ。これは”おバカ”女性タレントの決まりの挨拶だそうで、松岡は関東ローカル番組で、G1を勝ったらチョリースをやると約束していたよう。しばしば、アスリートがヒーローインタビューなどで約束事を実行するのを目にするが、内輪受けで多くのファンをしらけさせることから、最近は”公約禁止”を取材条件にするところもある。今回、私は天皇賞でタレントに指図された行為などするべきではないと、一瞬、不快に感じた。それは、かつて天皇誕生日に施行された勝ち抜け制レースであり、ホースマン最高の栄誉とされた歴史を特別視する価値観に囚われていたからだろう。だが、近年のレベルダウン、長距離軽視の風潮を鑑みれば、いかにも私の考えは古臭い。チョリースはオールドファンや関係者に向けた「たかが春天で背広で馬ひいてんじゃねーよ」という権威性の否定であり、血統のロマンなどという幻想に陥ったファンを覚醒させる一撃だったのだ。だから、松岡を非難する気にはなれない。ぜひ祝勝会で岡田総帥と「盾チョロイス」と盛り上がり、ダービーでも「世界のホースマンに松岡チョリース」とやってほしい。

土曜日は青葉賞が行われ、1番人気のアプレザンレーヴが期待に応えて快勝。前走の毎日杯は出遅れて3着に敗れたが、まずまずのスタートを切り外々を回って不利のないレースができた。最後の200メートルではトップカミングに競りかけられたが、そこから再度、力強く伸びたのは凄まじかった。高松宮記念のキングヘイロー-ローレルゲレイロ、皐月賞のネオユニヴァース-アンライバルド、と今年のトレンドは親子制覇らしいが、アプレザンレーヴもシンボリクリスエスと父子で青葉賞優勝。父はダービーでは2着だったが、その雪辱を果たせるか。内田博幸はセイウンワンダーというお手馬もいるが、アプレザンレーヴを選んでくるようならダービーは楽しみになる。同馬のオーナーはアンライバルドやブエナビスタと同じサンデーレーシングで、7週連続の重賞Vとこちらの記録も更新した。来週はダイバーシティの登録が新潟大賞典にある。最後に青葉賞2着馬だが、真っ裸でベロベロに大都会で酔っていた草なぎメンバーを思い出せば、マッパヴェロシティは抑えなくてはならない馬だった。

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2009.04.21

皐月賞回顧 凄まじい瞬発力にアンライバルド無敵

三強対決と言われた皐月賞。終わってみれば、一強の独壇場だった。レースは予想を上回るハイペース。ゴールデンチケット、アーリーロブスト、リーチザクラウンがハナを争い、2ハロン目は10秒8。その後も、11秒7から12秒2の息の入らないラップが刻まれていく。後ろからの脚質で、気性面に課題の残るアンライバルドにとっては望んだ展開となった。馬群を先導した3頭にはそれぞれハナに行きたい理由があった。福永アーリーは弥生賞で逃げず、後方から不可解な競馬で惨敗した前科があった。リーチザクラウンの武豊は単騎で行かないと折り合えないとの確信があったようで、レース後、「逃げた方がいいということが、やっと分かってもらえたでしょう」とコメント。きさらぎ賞で控えてほしいとの調教師の希望に沿わず、アナウンサーの質問にキレ気味に反論して話題になったが、武豊の真意は逃げなきゃしょうがないということだったらしい。ゴールデンチケットの川田には友道師に負い目ある。急遽、乗り替わった京都2歳Sでアンライバルドを制御できず、土をつけてしまったことだ。ここでしっかり借りを返さねばならなかった。

先行勢が壊滅する厳しい流れ。それにしても、アンライバルドの瞬発力は凄まじいの一言だ。4コーナー手前からスパートすると、一気に外を回って先頭に踊り出た。テレビで観ていた私には、まるで瞬間移動したかのように錯覚させられた。スプリングSでタフな競馬を強いられた経験が、本番で生きたのではないだろうか。とにかく、この馬だけが能力が違っていた。兄にフサイチコンコルド、ボーンキングがいて、母の父はサドラーズウェルズなのだから距離延長が良いのは当然で、皐月賞組からダービーで逆転する馬を見つけるのは至難だろう。2着は最後方強襲のトライアンフマーチ。母はキョウエイマーチ。3着セイウンワンダー、4着シェーンヴァルトとともに、実力は示したが展開の利もあった。7着フィフスペトルも最後方から末脚にかけたが、トライアンフマーチとは逆に内へ進路を取ったため前をさばくことができなかった。NHKマイルに行くなら勝負になりそうだ。ダービー2着候補はまだまだ混戦か。

さて、不可解なロジユニヴァースの大敗。最内枠は不利ではあったが、横山典は早めに外へ持ち出して、エンジンがかかれば何時でも脚を伸ばせるポジションにつけたいた。だが、4コーナーでは早々と手応えを失い、直線はズルズルと下がっていくしかなかった。横山典も追うのをやめてしまったほどだ。パドックでは落ち着いているように見えたが、マイナス10キロと札幌2歳Sを下回る馬体重。結果論だが、体調が急激に下降していたか、あるいは調整の失敗か。弥生賞上位入線組が揃って二桁着順に沈んだことを考えれば、弥生賞はレベルが低かったとも捉えざるを得ない。皐月賞で体調を崩し、ダービーで巻き返したアドマイヤベガという例もあるが、血統的にはスピードが勝ったタイプでもあり、次走で一変というのも難しいかもしれない。私の予想はさんざん迷った挙句、主体的に結論を導くことができず、ロジユニヴァースの人気と下馬評に頼って本命にしてしまった。その自由を放棄した精神性に恥じ入り、猛省せねばなるまい。

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2009.04.14

桜花賞回顧 ブエナビスタの能力を信じきった安藤勝

4角ではさすがに届かないのではないかと感じたブエナビスタ。終始、後方16番手。しかも、直線ではレッドディザイアとジェルミナルの間に開いた進路を閉められ、一旦、ブレーキをかけて立て直すロスがあったのだから尚更だ。だが、エンジンが違った。大外から33秒3の上がりを繰り出し、完璧なタイミングで先頭に立ったレッドディザイアをゴールでは半馬身、差し切っていた。阪神は内が悪く、外差しの馬場になっていたとはいえ、例年の桜花賞馬レベルでは差し負けていただろう。そして、1.2倍の人気を背負ってこんな大胆な競馬ができる鞍上にも驚きである。戦前、ブエナビスタはもう少し前でレースをするのではないかと思っていた。馬の力を信じると言うは易いが、安藤勝の心臓はどれほどの毛に覆われているのかと訝しくもなる。ブエナビスタの母、ビワハイジは早田牧場産。父スペシャルウィークは日高大洋牧場。判官びいきをすれば、これほどの馬が日高産でなかったのは少しばかり惜しいところか。

レッドディザイアはキャリアの浅さを考えると優れた内容。前2走よりスムーズな競馬ができた。マンハッタンカフェの仔だが、まだまだ伸びしろはある。現役時代は牝馬の名手として鳴らした松永幹師の管理馬で、調教師になっても女性の扱いには長けているようだ。3着にジェルミナル。チューリップ賞は不甲斐ない敗戦だったが、しっかり立て直した。ただ適距離はマイルだろうし、オークスで上位2頭を逆転するというタイプではない。フィリーズレビューを制したワンカラットが4着。脚を溜めて良く伸びてきた。能力はすべて発揮している。3番人気のダノンベルベールは8着。1枠が響いたのもあるし、体調も良くなかったか。期待していたツーデイズノーチスも全く見所なく惨敗。長距離輸送の影響か。桜で関東馬が走るのは難しい。同日の忘れな草賞ではデリキットピースが勝利。これで2戦2勝。オークスの伏兵になる。

桜花賞が行われる日の早朝、境勝太郎元調教師が心筋梗塞のため亡くなった。享年89歳。サクラユタカオー、チヨノオー、ホクトオー、バクシンオー、チトセオー、キャンドル、ローレルと、数々のサクラの名馬を育てた名伯楽。強気のコメントを出すことから、「境のラッパ」なる言葉も生まれた。引退後は美浦黄門の名でスポニチで馬体診断を行っていた。騎手時代はトサミツルで桜花賞を制したほか、オグリキャップやキョウエイマーチを子孫に送り出したクインナルビーで天皇賞秋も勝っている。名物トレーナー、桜に見送られながら旅立つ。安らかに。

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2009.04.07

大阪杯回顧 充実一途ドリームジャーニーが金星

大阪杯はディープスカイを徹底的にマークしたドリームジャーニーが差し切り勝ちで金星。だが、先に抜け出したディープスカイを直線で交わし、あっさりと勝利を収めるかと思いきや、ダービー馬の底力。休養明けのハンデも、59キロの斤量も跳ね返し、一度は差し返す強さを見せたのだ。最後はクビだけ遅れたが、負けて強しという内容だったのではないか。悲観することは何もない。勝ったドリームジャーニーは年を経て充実著しい。コースやディープマークが嵌ったのは事実だが、父ステイゴールドを彷彿とさせる弾丸のような差し脚が繰り出せるようになった。母の父はメジロマックイーン。有馬記念4着、菊花賞5着の実績もあり、身が入った今なら中距離馬の域を超えて春の天皇賞でも走りを見てみたいぐらいだ。3着にカワカミプリンセス。相手が強かっただけで、この馬も完全復調。ヴィクトリアマイルは優勝争いができる。マツリダゴッホはかかって7着。どこか歯車が狂ってしまった。

ダービー卿CTはタケミカヅチが新馬戦以来の勝利。荒れるハンデ戦、勝ち味の遅い、1番人気の、柴田善騎乗の同馬を本命にするファクターは私にはなかった。皐月賞2着の実績があるように勿論、力はG3では上位。今の馬場もゴールドアリュール産駒に合っているのだろう。以下、コンマ3秒差以内に8頭がひしめいたように、レースのアヤや枠順次第で、着順は幾らでも入れ替わる競馬だった。私が本命にした5着リザーブガードは直線で前が塞がって、脚を余す結果になってしまった。4着のキャプテンベガも同じような不利があり、陣営は歯軋りしているだろう。広い府中などで出走してくるようなら、忘れずに狙いたい。3着のマヤノライジンは12番人気だったが、同厩舎のマヤノツルギを差し置いて藤田を配してきたところから、勘のよいファンは勝負がかりに気づけたかもしれない。他、気になったレースは山吹賞でキタサンアミーゴが快勝。ダービー戦線に乗ってきそう。コーラルSのペプチドルビーは複勝圏にも入れないとは、がっかりする騎乗だった。

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2009.04.02

高松宮記念回顧 データ通りのローレルゲレイロ好走

馬券が外れるのはいつものこととは言え、まったく展開も結果もかすりもしないレースを回顧するというのは苦行に近いものだ。高松宮記念は中京コースの特性から速いペースで差し馬が台頭するとみてファリダットを本命にした。しかし、ローレルゲレイロが有利な内ラチ沿いを前半33秒1でマイペースの逃げ。直線も一度は交わされたスリープレスナイトを差し返して、父キングヘイローに続く父子制覇を成し遂げた。スタートで外から行く構えを見せたジョイフルハートを牽制してハナを奪った藤田の勝負強さが光ったレースだった。このレースは5歳馬、G1未勝利馬、マイルも走るスタミナのある馬が好走する傾向にあるが、ローレルゲレイロはデータ通りの馬だった。レース前に確認しておきながら、正反対の予想をしてしまうのだからどうしようもない。スプリンターズS以来のスリープレスナイトは想像以上に走った。順調なら能力差は歴然なのだろう。ファリダットは後方から大外を回して6着。今回は展開とコース取りに泣かされたが、やはりスプリンターの資質が高いのではないか。

日経賞は人気のネヴァブションがまったく伸びず7着に惨敗。前走のデキになかったとの横山典の敗戦の弁だが、不可思議な負け方だった。勝ったアルナスラインは内から好位につける積極的な先行策で、直線も坂上で危なげなく抜け出した。2着は松岡が好騎乗だったマイネルキッツ。レースレベル自体は高くはないのだろうが、アルナスラインはこの初重賞で一皮剥けると良い。休養明けのホクトスルタンは逃げて10着。一叩きの次走が天皇賞春というのは厳しいが、父系4代の盾制覇へ挑戦する体勢だけは整った。毎日杯はアイアンルックが1番人気に応えて快勝。中団で我慢して脚を溜め、直線で一気に爆発させる鮮やかな競馬だった。NHKマイルCも勝負になる。期待したアプレザンレーヴはゲートで大きく遅れ、直線だけ追い込んできたが3着。ダービーに向けて立て直してほしい。ところで、アルナスラインはアドマイヤベガ産駒、アイアンルックはアドマイヤボス産駒。スポニチによれば、兄弟種牡馬による同日重賞勝ちは 1961年のヤシママンナ、シマタカ以来だそうだ。こうした記録がすぐ引っ張りだせるのは凄い。

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2009.03.24

スプリングS回顧 アンライバルドが三強入りを宣言

ロジユニヴァース、リーチザクラウンと並んで、牡馬三強の一角に入れるかが注目されていたアンライバルド。荒れた上に外差しが決まりにくい馬場、それに強風まで加わって、フルゲートひしめくスプリングSは1番人気馬は順当に勝たせてもらえない雰囲気が漂っていた。レースはリスペクトキャットが宣言通りにハナへ。続いてレッドスパーダ、マイネルエルフらが続き、「意識して出していった」(後藤)のリクエストソングも前へ。アンライバルドは中団。あまり後ろに位置しては届かないとの鞍上の判断だった。中盤、ペースは13秒が3ハロン連続して刻まれるスローに落ちる。我慢できないリクエストソングは折り合いを欠いてしまう。口を割る馬も少なくなかった。アンライバルドも前半は頭をあげて行きたがる。悪条件のもと、ハイペースではないがタフな競馬になったのではなかろうか。

4角手前、アンライバルドの岩田が仕掛けていく。上がりの競馬。紛れる可能性もあるはずだが、アンライバルドの能力は抜けていた。豪快に追われると、瞬発力の違いで前を行くレッドスパーダを交わし、半馬身という着差以上の強さで勝利をものにした。決してアンライバルドにとって好ましい展開ではなかっただけに、今回の余裕を持っての勝ちはロジユニヴァースに叩きつける挑戦状としては十分なものになった。今年のクラシックは三強を中心にして進むだろう。これに毎日杯に臨むアプレザンレーヴが加われるかどうか。3着のフィフスペトルは内枠で何度もロスがあった。マイル路線ならトップクラスの馬だろう。リクエストソングは7着。終始、折り合いを欠いて力を出し切れなかった。もちろん、勝ち馬との差は歴然だが、この敗戦できさらぎ賞を戦ったリーチザクラウンの評価まで下げる必要はない。

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2009.03.17

Fレビュー回顧 ミクコロスモスは桜の切符を獲れず

フィリーズレビューは圧倒的人気を集めていたミクロコスモスが、桜への切符も取れず波乱となった。レースはダートで実績を積んできたラヴェリータが、1000メートル58秒5の速いペースで引っ張った。内、前々で流れに乗ったワンカラットが直線でも最内を抜け出して快勝。好位から差してきたアイアムカミノマゴが2着、早めに仕掛けたレディルージュが3着。これまでワンカラットは折り合いに苦労してきたが、今回はペースが速かったことが幸いした。 1400メートルの距離もベストのよう。トライアルの内容は優秀だが、1ハロン伸びる本番では余程巧く乗らないと、上位に食い込むのは難しいかもしれない。少なくともブエナビスタを脅かすような存在ではないだろう。ミクロコスモスは後方から直線一気にかけたが、思ったほどの脚はなかった。連戦の疲れと、前残りの馬場が敗因か。武豊らしからぬレースだった。オークスへ向けて立て直してほしい。

中山牝馬Sは引退レースとなるキストゥヘヴンが有終の美を飾った。好位につけてインから抜け出すという、不器用な追い込み馬のイメージを覆した。完璧なレース運びをした横山典、これで重賞騎乗機会4連勝。クラシックには最有力馬もいるし、今年はノリには逆らえない。2着は逃げの奇襲に出たピンクカメオ。不振にあえぐG1馬の実力を後藤が思い切った競馬で引き出した。3着のダンスオールナイトもこれが引退。エルコンドルパサーの遺児。貴重な血を次の世代へつないでもらいたい。キストゥもダンスも花婿はチチカステナンゴに決まっているそうだ。中京記念はサクラオリオンが大金星。ヤマニンキングリーとレッツゴーキリシマが本線だった私は涙目だ。アネモネSはツーデイズノーチスが休み明けをものともせず快勝。桜でも注意が必要だろう。本命にしたエイブルインレースは道悪はまったくダメだった。山桜賞ではピサノカルティエが立ち遅れながら、逃げ馬を豪快に差しきり勝ち。重賞級の能力はあるように見えるし、前走でこの馬を破ったアプレザンレーヴも相当、強いということだろうか。

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2009.03.10

弥生賞回顧 ダービーも射程に入れたロジユニヴァース

予想以上の強さを見せてくれたのではないだろうか。ロジユニヴァースがハナを切ったのは少し驚かされたが、決してかかっていったわけではない。アーリーロブストが先に行けなかったこともあって、あまり遅くなるようなら自分で先手を取ってしまえという横山典の強気の判断からだった。道中は13秒台が3ハロン刻まれたように、内容的には見るところのないスローペースになったが、4角で後続をじっくりと引き付けた上、そこから加速して楽々と突き放した能力は素晴らしいものがある。これで4戦4勝となったが、ディープインパクトやシンボリルドルフとは言わないまでも、過去無敗で弥生賞を制したアグネスタキオン、フジキセキあたりとは遜色ないものを秘めている気がする。先行脚質から多頭数でゴチャつく皐月賞でも問題はなく、その先のダービーすら射程に置いたと見て良い。この馬と出会えたことで、横山典にとっては19年前のメジロライアンの忘れものを受け取りに行くクラシックシーズンがやってきたのかもしれない。

2着には勝ち馬を追いかけたミッキーペトラ。展開に恵まれたとはいえ、よく粘った。田中勝の好騎乗だが、本番で同じような結果を期待するのは欲張りすぎというもの。3着は中央移籍2戦目のモエレエキスパート。中団から鋭く伸びてきた。札幌2歳Sではロジユニヴァースと僅差の競馬をしていたように地力はある。今回は時計のかかる馬場だったことが味方したが、速い時計に対応できるかが、この馬の課題になってこよう。京成杯を勝ったアーリーロブストは6着。道悪はからっきしダメなようで、フォームもバラバラ。持ち味の先行策を生かす機会もなく、何もできないまま競馬が終わってしまった感じだ。良馬場で再度、見直したい。2番人気の2歳チャンピオン、セイウンワンダーはまさかの8着大敗。 12キロの太め残りの馬体ではあったが、さすがに負けすぎか。だが、潜在能力があるのは間違いなく、父グラスワンダーから「大敗後にG1で一変」という遺伝子を受け継いでいるかもしれない。距離はマイルのほうが合っている。

西は桜花賞トライアルのチューリップ賞が行われた。こちらも断然の1番人気に推されたブエナビスタが単勝1.1倍のプレッシャーを跳ね返して快勝。最後方から馬なりで上がって行き、直線で粘る逃げ馬を差しきる牝馬らしからぬ芸当だった。同性の中では明らかに力が抜きん出ており、不利のないレースになれば桜、樫とも持っていくだろう。今回、前回と後ろからの競馬になったが、内で囲まれて動きを封じられるようなことだけは気をつけなければならない。名手、安藤勝は重々承知しているはずだから、トライアルで何かを試し、本番は違ったポジション取りもあり得る。サクラミモザが2着に残るレースだった反面、ブロードストリートやジェルミナルなど後ろから行った馬には厳しい展開だった。武豊を配して臨んだ関東馬、カウアイレーンは殿負け。馬体は16キロ減。パドックでは転倒もしたそうで、この時期の3歳牝馬の輸送は難しい。

土曜の中山で行われたオーシャンSも少し。ブログの予想通り、連闘のアーバニティが見事な勝利を収めた。しかし、3連単の買い目を絞ったばかりに、 12万馬券は手からすり抜けてしまった。本当に私には博才がない。アーバニティは道中は中団で内々を回り、直線半ばまでは前が壁になって追い出すことができなかったが、ひとたび進路が開くと矢のような伸びを見せて差し脚を爆発させた。前走も同条件を快勝しているように、中山1200は水が合っている。横山典の手綱さばきも、やはり素晴らしい。アーバニティはレガシーオブストレングスが22歳の時に産んだ仔で、兄弟にはスティンガーやサイレントハピネスらがいる。個人的には競馬を始めたばかりの頃、初仔のレガシーオブゼルダという馬を好きになって、スプリングSでは単勝を握り締めて応援した記憶がある。兄のハズレ馬券を18年ぶりに弟が返してくれたのかもしれないが、それもなかなか稀有なことと感謝しよう。

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2009.03.03

阪急杯回顧 血統で下がる人気は買い材料

阪急杯は公開した印の順番で入線。1着ビービーガルダン、2着ローレルゲレイロ、3着ドラゴンファング。予想通りの行った行ったの競馬である。しかし、こういう時に限って、馬券下手は400倍の3連単を買っていない。取れたのは単勝1110円馬連3330円。涙が出てくる。それにしてもスプリンターズSで3着だったビービーガルダンは7番人気と、軽視されすぎていた。少し時計のかかる馬場が得意なチーフベアハート産駒。同じ父のマーブルチーフも人気を集めない馬だったが、血統が地味というだけでオッズがつく馬は買い材料。今後も覚えておきたい。力もローレルゲレイロより上だろう。3番手を追走したドラゴンファングは直線では前の2頭に逆に引き離されてしまった。ただ、これが初めての重賞挑戦。去年4月以来の右回りということを考えれば3着は立派。もし高松宮記念に出走がかなうようなら心に留めておきたい馬だ。1番人気の良血ファリダットは7着。これほど勝ち味が遅いと人気では買いづらい。

中山記念は1番人気のカンパニーが連覇。1000メートル61秒9のスローペースを横山典・カンパニーは2番手追走。1コーナーでアドマイヤフジを制して、うまく番手のポジションを取った判断は見事だった。こうなると他馬は辛い。思い通りに仕掛けたカンパニーは、追い込んできたドリームジャーニーをクビ差、計算したかのように凌いだ。川田・アドマイヤフジから買った身としては、勝ち馬との間を抜けてきたドリームジャーニーの進路を閉められなかったのかと詮無い思いもしたが。土曜のアーリントンCはシンザン記念2着のダブルウェッジが勝利。こちらも前残りだったが、ハナを切ったジョーメテオだけはムキになって暴走して沈んでしまった。1番人気のアイアンルックは出遅れ。直線は外から凄い脚で追い込んだが4着まで。これがデビュー2戦目。展開の利もなかったことを考えると、将来は相当楽しみな逸材ではないか。2番人気のスーニーはブービーの大敗。5馬身差勝ちした暮れの全日本2歳優駿は現場で見ていたが、凄まじい楽勝だった。完全なダート馬ということだろう。これで芝への未練が断ち切れた。

気になった3歳戦も振り返っておこう。オープン・すみれSはスローで逃げたトップクリフォードが優勝。1番人気マッハヴェロシティはジリジリとしか伸びず3着。エアグルーヴの仔、フォゲッタブルも流れ込むように5着。武豊の「秋には良くなっていると思うよ」とのこと。レースレベルは高くなかった。500万・水仙賞は骨っぽいところと戦ってきたセイクリッドバレーが1着。個人的に期待していたネオレボルーションは3着。流れに乗り切れなかった。1番人気ダノンファントムは緩い流れでハナを切ったのに10着と惨敗。こちらも新興勢力の台頭なし。クラシック最終便の感があった阪神2000メートルの新馬戦はデュプリシトの仔、ニシノホウギョクがセンスの良く快勝。ダービーに間に合うか。また、調教師の引退セレモニーでは石山繁が駆けつけて、浜田光正師へ花束を贈呈。胸を打つ光景だった。日曜は新人騎手のデビュー日となり、松山弘平が初戦を含む2勝。かたや、1期上の大江原圭は未勝利のまま作田厩舎からフリーとなり、父や叔父のいる美浦へ戻ることになった。そんこんなで春競馬開幕である。

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2009.02.26

フェブラリーS回顧 世代交代はなされたのか?

数日遅れの回顧になるが、ことしの最初のG1、記録がてら振り返っておこう。私の本命は4歳馬、エスポワールシチー。2強の力が上位であると認めてはいたものの、データとしてフェブラリーSは4、5歳馬が圧倒的に強く、世代交代があるかもしれないとの考えだった。結果的には4歳馬のワンツーだったが、軸馬を間違えたのだから仕方がない。ゲートが開いて立ち遅れたのはサンライズバッカス。予想通りハナに立ったのは佐藤哲・エスポワールシチー。けれんみのない逃げで、1000メートル通過は58秒8。確かに速いペースだが、前走はラップを落としてゴール前で交わされたように、後続に脚を使わせてナンボのタイプ。ラスト1ハロンで捕まったが、馬券を買った方としては納得の行く競馬だった。勝ち馬とコンマ2秒差の4着というのは、相手が悪かったとしか言いようがない。近い将来、ゴールドアリュール産駒の初めてのG1勝ち馬となれるのではないだろうか。

そのエスポワールシチーを怒涛の勢いで差しきったのが、サクセスブロッケン、カジノドライヴ、カネヒキリの3頭。いずれも逃げ馬の直後にポジションを取っていた。ゴール板ではサクセスブロッケンがクビ差、先頭に出ていたが、これは鞍上・内田博幸のダートで馬を動かす巧さ故、という気がしてならない。レース後、内田が「こういった接戦では騎手の腕を試される」とコメントしていたのに嫌味はあるまいが、掲示板に載ったのは地方出身者3人、外国人1人とJRAの生え抜きジョッキーには苦い顛末。こうした厳しい流れのなかでも、馬を先行させて、長い直線もバテさせずに脚を持たせる技があるのかもしれない。2着は安藤勝のカジノドライヴ。前走、大幅に馬体が減って、戻してはきたものの、軽めの調教だったこともあって重い印は打てなかった。勝ち馬とクビ差の好走で、米G2勝ちが飾りではないことをアピール、次のドバイにも楽しみが広がった。新世代から2強を継ぐ馬たちが成長を見せてくれたのが何より嬉しい。

そして、3着にはG1最多勝記録がかかっていたカネヒキリ。2番枠を引いた時点で不利は大きいと感じていたが、ルメールが内々をロスなく回って先行させる理想的な競馬。それでも、直線は狭いスペースから脚を伸ばさねばならず、外から気持ちよく差してきたサクセスブロッケンらとは枠順の有利、不利の差があった。距離不足、連戦の疲れ、合わないペースといったものもあって、そうしたマイナス材料を勘案すれば、同タイムの3着は力負けと断じることはできないだろう。むしろ、王者健在を印象付けた感さえあり、4歳勢が胸を張って世代交代なったと言うためには、もう一度、カネヒキリを真っ向勝負で負かす必要がある。ただ、カネヒキリも脚元に爆弾を抱えている以上、休養して馬体を緩め、いちいちハードなトレーニングで仕上げ直すといったことはできず、騙し騙し連戦を重ねていくしかない。G1最多勝の新記録が樹立できれば、そこを引き際として良いと思うが、双方にとってチャンスは限られてくるかもしれない。

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2009.02.17

第壱話 決戦、きさらぎ賞 ”逃げちゃ駄目ですか?”

「逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ」先週半ば、追い切りで賑わう第4新栗東市のトレセンを調教師のハシグチ・コウジはぶつくさ呟きながら歩いていた。コウジは東西メインレースに汎用馬型決戦兵器を出撃させることになっていた。とりわけ、気にかけていたのは、きさらぎ賞に参戦するリーチザクラウンだ。未勝利戦を大差勝ち、続く千両賞も楽勝して世代ナンバーワンの呼び声を早くも獲得した。しかし、前走のラジオNIKKEI杯で同馬は思わぬ敗戦を喫してしまった。スピードの違いでハナを切ったものの、勝ち馬にマークされて差しきられてしまったのだ。この馬でどうしてもダービーを勝ちたいと願っていたコウジにはショックなレースだった。

数々の大レースを制してきたコウジも、ダービーだけは縁がない。ダンスインザダーク、ハーツクライといった有力馬も、あと一歩のところで勝利を逃してきた。各陣営とも究極の仕上げで臨む2400メートル戦。リーチザクラウンの能力があるとはいえ、ライバルたちの目標にされながら逃げ切るのは並大抵のことではない。中間、コウジは前に馬を置いて走るトレーニングを課して、好位からでも競馬ができるようリーチザクラウンに教え込むことにした。気性の強さは諸刃の剣。ムキになって暴走するリスクを背負いつつ、上手くコントロールできるのか。コウジは取り囲む報道陣にコメントを発した。「この一戦、いかに抑えられるかどうかに尽きる」と。

決戦当日。東のダイヤモンドSが先にスタート。コウジの指揮するフローテーションは1番人気、乗り込むのはルメールだ。 3400メートルの長距離戦は、大方の予想に反して速いラップが刻まれる。1マイルは1分37秒4、明らかなハイペースだ。ところが、フローテーションは抑えきれずハナへ立つ。「まさか…暴走!?」、コウジは思わず声をあげた。だが、止められない。「制御不能です」。かくして直線、フローテーションは完全に沈黙した。コウジは空を見上げた。「こんな時、どういう顔をすればいいのかわからないよ」。「ワラエバイイトオモウヨ」東から答えが聞こえた気がした。

きさらぎ賞は大丈夫だろうか。再びコウジは呟いた。「逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ」。ゲートが開く。リーチザクラウンとタケ・ユタカは周囲の出方を伺う。誰もハナを切ろうとはしない。もとより、「実戦は生き物ですからどうなるかわかりません」と控える競馬に懐疑的だったパイロット。主導権を握れとばかりにハナへ立つ。「逃げちゃ駄目だ。ダービーが、ダービーがぁー」。 1000メートル通過は61秒7のスローペース。第4コーナー、後続が一気に差をつめにかかる。「リクエストソング接近中、リクエストソング接近中」。タケがムチを入れる。リーチザクラウンはあっという間に3馬身半も突き放して圧勝した。どこか釈然としないコウジのもとに、次々と関係者が祝福を述べにやってきた。

一同「ワァー! ブラボーッ!」
ゴトウ「おめでとう」
マツパク「めでたいなぁ」
リイチ「おめでとさん!」
ダンス「ブヒブヒ、ブヒッヒーン!」
ワダ「シャーッ!」
C「ウルセーヨ、オイ!」

「ありがとう…」。引き上げてきた人馬を出迎えたコウジに、突然、タケが質問を投げかけた。「逃げちゃ駄目ですか?」。予想外の言葉にたじろぐコウジ。しかし、次の瞬間、コウジは腹にためていたものを爆発させた。「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、……逃げちゃ駄目だ!! ……やります。ダービーは僕が乗ります!!」「ええええ!!」「僕はリーチザクランのパイロット、ハシグチ・コウジです!」  ♪fly me to the moon... (完)

>>きさらぎ賞 勝利ジョッキーインタビュー(youtube)
>>新世紀エヴァンゲリオン 逃げちゃ駄目だTシャツ

※このエントリーは実在の人物・団体とは一切関係のない戯言です。

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2009.02.10

共同通信杯回顧 真価発揮ブレイクランアウト

かつてはダービー馬への登竜門とも言われた共同通信杯。今年は武豊のブレイクランアウトが素晴らしい能力を発揮して、クラシックへ名乗りを上げた。いちょうS、東京スポーツ杯、朝日杯と1番人気を裏切るもどかしいレースが続いていただけに、陣営は溜飲を下げた思いだろう。前走の朝日杯では3角から外をまくって脚を使う強引な競馬で差されていた。武豊が骨折の影響で充分に馬を御すことができなかったのではないかという見方もある。今回、武豊は中団の内々で脚を溜め、満を持して直線抜け出した。 1000メートル通過は60秒4の平均ペース。だが、上がり3ハロンは11秒台を連発して加速。結果はレースレコードだった。そうした流れのなか、ブレイクランアウトは持ったまま33秒6の上がりを繰り出して後続を寄せ付けなかったのだから恐れ入る。中距離馬としてスピード、スタミナが秀でているところを証明できたわけで、2歳時とは一皮も二皮も剥けた印象がある。

ブレイクランアウトの父はミスタープロスペクト直仔・スマートストライク。 2007年、2008年と北米のリーディングサイヤーに輝き、BCクラシックを制したカーリンらを輩出している。母の父はお馴染みフレンチデュピティで、もしかしたらダートも鬼かもしれない。ブレイクランアウトはダービーに照準を据えて、皐月賞かNHKマイルCのどちらかを選択する予定だ。リーチザクラウンというお手馬が武豊にいることを鑑みると、選択は後者の可能性が高いか。その武豊も先週の京都牝馬Sに続く重賞制覇となり、完全復活と言って良さそうだ。内田博、岩田らとのリーディング争いは、武豊が本領発揮してくれなければ面白くない。2着トーセンジョーダンは不利がありながら連を確保した。団子状態の中長距離戦では先行力が活きるはず。3番人気ブロスアンドコンズは入れ込んで競馬にならなかったよう。シェーンヴァルトは5着。57キロを背負っていたとはいえ、勝ち馬との力の差は歴然としてしまった。

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2009.01.20

日経新春杯回顧 ぶっちゃけありえた大逃走劇 !?

ひさしぶりに逃亡劇と表するに相応しい逃げ切り勝ちを重賞で見せてもらった気がする。日経新春杯のテイエムプリキュアだ。2歳女王のイメージが強いためか、あるいはオークス惨敗が想起させるのか、馬柱をじっくり眺めないと短距離馬のように勘違いしてしまう。しかし、5歳以降は長距離適性を見込まれて、2400メートル以上を中心にローテが組まれてきた。去年は日経新春杯3着、アルゼンチン共和国杯4着と、軽いハンデをもらえれば、G2レベルでも好走できるところを見せていた。それでも、13着の鳴尾記念、殿18着の愛知杯が日経新春杯に向けて軽ハンデを勝ち取るためのステップだと見抜かなければ、アタマで狙うことは難しかっただろう。しかも、これが繁殖入り前の引退レースとなれば、通常、メイチの仕上げとは捉えない。だが、阪神JF以来、24連敗と勝ち星に見放されても、現役にこだわってきた陣営の思いに想像を働かせねばならなかった。

テイエムプリキュアは49キロ、裸同然の斤量だ。3年目の荻野琢真はステッキを入れてハナへ立たせる。折からの雨でコースは得意の緩めの馬場へと変化していた。1番人気ヒカルカザブエ、有馬記念2着アドマイヤモナークら有力馬が後方で牽制しあうなか、プリキュアは必要以上にラップを落とさないマイペースの逃げ。3コーナー過ぎで7馬身、直線入り口では後続に10馬身差つけていた。気づいたときには遅すぎる、セーフティーリードだ。私の本命馬、ナムラマースが直線一気で追い込んできたものの、プリキュアは3馬身半前でゴールしていた。なぜヒモで抑えていないのか、買い材料はいくつもあったではないか、後悔してもアフターザカーニバルである。2着ナムラマースはクラシック戦線の上位を賑わしていた頃に復調しつつある。今後も好走するだろう。3着タガノエルシコは軽ハンデもあったが、良く伸びた。 58キロのアドマイヤモナークは早めに動いた分、伸びを欠いて5着。

京成杯はスローペースを番手で進んだ福永アーリーブロストが優勝。このレースは4コーナーでサンライズキールが故障発生、吉田隼人が投げ出されて頭部外傷、左ひじ部挫創のケガを負った。荒れてきた馬場、人も反応が鈍くなる寒さ、アクシデントも起きやすいのかもしれないが、大事故だけは避けてほしい。中団から追い上げたナカヤマフェスタが2着。落馬の影響でブレーキをかけたのが痛かった。3着は逃げた人気薄モエレビクトリー。4着には唯一、追い込んできたモンテトウルヌソル。中間、一頓挫あっての臨戦だったが、この展開で上位に食い込んできたのは力のある証拠か。京都で行われた2000メートルの新馬戦ではエアグルーヴの仔、フォゲッタブルがデビューして大いに注目を集めたものの、直線で伸び脚を欠いて5着に敗れた。初戦向きでないダンスインザダーク産駒とはいえ、物足りない結果だったのは正直なところ。勝ったのはシックスセンスの半弟、デルフォイ。大旋風のスペシャルウィーク産駒だった。

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2009.01.13

シンザン記念回顧 まだ奥があるアントニオバローズ

先週、京都で行われた3歳重賞、シンザン記念はアントニオバローズが粗削りな競馬ながら勝利した。スタートがタイミングが合わずに出遅れ。内枠から掛かり気味に3番手までポジションをあげていったが、物見をして集中力を欠いた走り。直線はムチを入れられても頭を上げて嫌がる仕草。ようやく本気モードになったのは、馬体を併せてから。グイグイと脚を伸ばすと、内で粘るダブルウェッジをクビだけ交わして、キャリア3戦目で重賞タイトルをものにした。まだまだ精神的には子どもで、能力を持て余している様子だが、ポテンシャルの高さは感じさせた。母の父はスタミナ豊富なキングマンボで、祖母もノーザンダンサーの半妹と、血統的な奥は深い。父はマンハッタンカフェで、血統からは距離が伸びても心配はない。今後の課題は気性面の成長なのは違いないが、キレさせないよう上手に成長させてほしい。鞍上が大舞台に強い角田とのコンビも楽しみだ。

アントニオバローズのほか、先週は条件クラスで面白そうな3歳牡馬が2頭、勝ちあがった。中京2000メートル、ビオラ賞(500万)で差しきり勝ちを収めたキタサンガイセン。当たり年のスペシャルウィーク産駒から、また新星の誕生だ。スタートで出遅れ後方からの競馬になったものの、他馬がスパートしても落ち着いて待機。直線は大外。前が壁になって立て直す不利があったが良く伸び、並んで相手を捻じ伏せた。これで2戦2勝。もう1頭は京都1800メートルの未勝利戦を2戦目で勝ちあがったアプレザンレーヴ。逃げ切って、危なげなく3馬身差。兄姉にナイアガラ、レーヴダムールと、仏G1馬の母は屑を出さない。父はシンボリクリスエス。大型馬で初戦こそ敗退したが、使われる毎に良くなっていきそうな雰囲気がある。池江郎厩舎は今週おろすフォゲッタブルという評判馬がいるが、アプレザンレーヴも看板馬の素質は十分。上記にあげた3頭は順調に行けばクラシックを賑わしてくれそうだ。

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2009.01.09

謹賀新年 2009年の競馬はまずまずのスタート

謹賀新年
新年、あけましておめでとうございます。旧年中は馬券日記オケラセラをご贔屓いただきまして、本当にありがとうございました。去年は非常にエキサイティングな競馬が繰り広げられましたが、今年もウオッカ、ダイワスカーレット、ディープスカイらの海外挑戦が予定されており、ファンには目の離せない一年になりそうです。馬耳東風時代から含めて、13年目のシーズンになります。相変わらず、気ままな更新になるかと思いますが、読者の方と一緒に競馬が楽しめたらありがたいなと願っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

ひとまず、年始の競馬を軽く回顧。先月28日に有馬記念が終わったばかりだというのに、2009年の開幕は間髪おかず、4日の中山から。正月開催が目玉の川崎あたりは渋い顔だろうが、JRAも地方への配慮などしていられないのも実状か。仕事があるので、朝、まとめて馬券を買っておく。中山1レース、新人最多勝記録を21年ぶりに更新した三浦皇成から流し馬券で運だめし。果敢に逃げて4番人気で2着に粘った。馬連1020円、安いけど縁起物の初的中。しかし、その後はハズレばかり。 5レースでは1番人気の柴田善が2角で射行し、北村宏を落馬させて失格に。後日、椎間板ヘルニアの手術のため、2ヶ月ほどの休養が発表されたが、最近は確かに乗れていなかった。 3歳の2000メートル戦、寒竹賞は安藤勝フォーレイカーに食指が伸びたものの、ひさびさを克服できず惨敗。しかし、初日の出S、圧倒的人気のダイワディライトから効率の良い買い目で3連単11,160円的中、初マンシュウ。昨秋から北村宏は覚醒したような安定したレースぶりだ。今年は100勝を超えるトップジョッキーの仲間入りを果たしそうな予感がする。

そして、メインは中山金杯。金だの、銀だの、富士だの、縁起の良い馬名から買えというのが昔からの慣わし。 1番人気オペラブラーボは買わないとして、アドマイヤフジ、ヤマニンキングリー、キングストレイル辺りが王道路線。戦ってきた相手を考えると、田中勝キングストレイルだろって、本命に。ところが、4角までは良い感じだったのに、そこからさっぱり伸びず。アドフジ-ヤマキンで決まって馬連で29倍もつくのか、アイタタタタ。やっぱ馬券はリアルタイムでオッズ確認しながら買わないと。。。3着に11番人気ミヤビランベリ。研究の池田勇孝は◎だった。私は彼の◎を見るためだけに専門紙は研究を買っているが、乗るところを見つけるのは難しい。 5日の馬券は2鞍。中山のジュニアCは5番人気、三浦アドバンスヘイローから流したが、相手を絞りすぎて抜けた。勝ち馬はマイルくらいの距離があったほうが良い。京都金杯は前走のキャピタルSでしこたま儲けさせてもらったタマモサポートに再度◎。この馬、東京、マイルがベストなんだけど、血統的に地味で人気を被らない。今の勢いなら京都でもと思ったら、今回も7番人気で2馬身差の勝利。だが、この日は馬連4090円だけ。晩成の血は父譲り。ともあれ、プラス発進の2009年、まずまずのスタートだった。

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2008.12.31

有馬記念回顧 37年ぶり最強牝馬Ⅴの衝撃

年末の競馬をまとめて。有馬記念はダイワスカーレットの圧巻の逃げ切り勝ち。誰も鈴をつけにいけなかったし、4コーナーで早めに競ってきたライバルたちは逆に潰されてしまった。ダイワスカーレットは3~4ハロン目に11秒台を刻んで後続を引き離し、中盤でペースを落とした。そして、残り1000メートルから11秒台を連発しながら一気に加速。並の一流馬であれば自滅してもおかしくないのだろうが、まったく後続を寄せ付けなかったのは改めて同馬の凄まじさを感じさせられた。天皇賞秋のウオッカ、ディープスカイとの死闘がいかにレベルの高いものだったか、ということも証明づける結果になったのではないか。また、勝って当たり前の空気もあったが、37年ぶりの牝馬による有馬記念制覇。しかも堂々の本命に推されてのものということも忘れてはなるまい。戦前、有馬記念を巡って最強馬決定戦であるべきかどうかが話題になり、お祭り的な存在であっていいのではないかという見方が多かった。私もそう思うが、今年の有馬記念に限っては最強馬1頭が自らその強さを誇示したという点において、最強馬決定戦になったようだ。

2着はアドマイヤモナーク。勝負は度外視した最後方待機が嵌った。どこぞのIT社長が山本モナ復帰絡みでチョイスして万馬券を取ったそうだが、「モナー来る」なんてサイン、思いついても買わない。というか、山本モナはTCKのキャラじゃないか。鞍上の川田は有馬記念後のトークショーで開口一番「すみません」と謝っていたが、個人的には全くその通りだ。3着はエアシェイディ。中山巧者で年齢を増すごとにパワーアップしてきた。二度成長するノーザンテーストの血がなせる技か。ジャパンカップを制したスクリーンヒーローは5着。ダイワスカーレットに勝負にいっての着順だから仕方がない。グラスワンダーの仔ではあるが、小回りより府中向きなのだろう。ただJCがフロックでないことだけは明らかになった。メイショウサムソンも頑張ったが、全盛時の力はなかった。レース後、高橋成師の目が涙で満たされていたことに、様々な苦難があったことを想像させられた。私が本命にしたフローテーションは9着。見せ場は充分だった。マツリダゴッホは後方の外に押しやられて凡走。デキも良くなかったが、乗り方も誉められたものでなかった。

師走の中山開催を振り返ると、落馬や故障が目についた。数字ではなく、あくまで個人的な印象での話だ。千葉テレビ杯では直線でショウカクが骨折し、エイダイタカラブネを巻き込んで落馬事故となった。コース上、注射一本をうたれた数秒後にバタンと倒れた光景は、かわいそうで見ていられなかった。師走Sではフラムドパシオンがレース中に腱を断裂。ゴールしたものの、再起不能のケガを負った。その2週前には北総Sで大楽勝の競馬を見せていただけに故障は残念極まりないが、最悪の事態だけは回避できたのは不幸中の幸いだった。2歳時の500万圧勝の衝撃、ドバイ遠征と夢を見せてくれた。種牡馬入りできれば嬉しい。阪神ではクラシックを占うラジオNIKKEI杯が行われ、大本命のリーチザクラウンロジユニヴァースに敗れた。本調子でなかったのと、逃げ馬にとって厳しい展開になったのが敗因だが、絶対的存在が消えたことでクラシックは再び混沌としてきた。最後に東京大賞典。カネヒキリヴァーミリアンとの素晴らしいマッチレースを制した。長い故障から復帰した同馬の飛躍、心に染み入るレースだった。

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2008.12.23

朝日杯FS回顧 上位拮抗で春のクラシックが楽しみに

2レース、単勝万馬券で人気薄を激走させたのを見て、最終週を前に騎乗停止を食らった岩田の気合いを感じていたのだが、朝日杯はその通りの結果になった。岩田・セイウンワンダーは新潟2歳S以来の競馬。馬体はプラス10キロだったが、増えたのは成長分。しっかり仕上げられていた。休養明けで入れ込みが心配だったが、むしろ順調に使われてきたはずの1番人気の武豊・ブレイクランアウトの方がテンションは高かった。先月、右腕を骨折して、朝日杯一鞍に絞って、この日に復帰した武豊。パドックで姿を現すと一斉に視線を集めた光景は、やはり武豊がいなければ競馬は始まらないといったスーパースター健在ぶりと、衰えぬオーラを痛感させられた。朝日杯は武豊にとって、まだ獲れていない数少ないG1のひとつ。そのチャンスを逃したくない気持ちが強かっただろうが、それ以上に、一日でも早くレースに乗りたいという湧き上がるような衝動があるのだろうなとも思った。

レースはゲットフルマークスツルマルジャパンがハナを争うなか、やはり先行勢には厳しい流れになった。セイウンワンダーは後方の内側で脚を溜めていた。ルメールのフィフスペトルがその前。ダッシュつかずに最後方からの競馬を強いられたブレイクランアウトは、 3コーナーから一気に進出していく。武豊がガチだったのは、4コーナーでフィフスペトルを外から被せて進路を塞いだところ。両馬ともキャロットクラブの持ち馬。同馬主の遠慮はない。一方、セイウンワンダーは武豊とルメールの攻防を余所に内をついて、直線、一気に抜け出した。坂上からフィフスペトルが猛追を見せるが、アタマ差だけ凌ぎきった。岩田の好騎乗は最大の勝因だが、もしフィフスペトルがスムーズな競馬ができていたら後先は分からなかったのではないか。結果的に脚の使いどころを誤ったブレイクランアウトを含めて、この距離では上位3頭の力の差はほとんどないのかもしれない。今週のラジオNIKKEI杯組のリーチザクラウンなどと、春に相まみえるのが楽しみになった。

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2008.12.09

JCダート回顧 またもやルメールの魔術が炸裂!

またもやルメールの魔術か。そう思わされたジャパンカップダート。ハナを叩いたサクセスブロッケン、番手ティンカップチャリスフリオーソらを見ながら、好位につけたルメールのカネヒキリ。向こう正面で内に潜り込むと、 4角ではティンカップ外に逃げると予測し、その通りにガラリと開いた最内に飛び込んだ。最後方につけていたメイショウトウコンが猛然と追い込んだが、カネヒキリがアタマだけ先着していた。ハーツクライ、リトルアマポーラに続く計算しつくされたルメール・マジック。あまりに芸術的な騎乗である。カネヒキリは3年前、JCDを勝ったものの、右前脚の屈腱炎で長期休養を余儀なくされた。前走の武蔵野Sで一叩きして状態が上向いていることは分かったが、JCDを勝ちきるまで復調しているとは思わなかった。ルメールの手綱さばきとともに、角居陣営の粘り強い仕上げを賞賛したい。

断然人気の岩田・ヴァーミリアンは3着。国内では一昨年のJCD以来の敗戦となった。 1角でフロストジャイアントと接触し、好位のポジションを取れなかった。道中は12番手まで下がり、折り合いにも苦労していたように見えた。外を回って伸びてきたが、スムーズな競馬をしたカネヒキリ、自分の競馬に徹したメイショウトウコンより脚色が劣ったのはやむを得まい。岩田は落馬負傷中の武豊に代わって手綱を任されたが、ジャパンカップのウオッカ同様、結果を残すことができなかった。注目のカジノドライヴは6着まで。好位から競馬ができたし、G1でも充分にやっていける力があることを証明した。逃げたサクセスブロッケンは失速して8着。息の入らない流れはきつかった。外国馬は12、13着、それにハ行で1頭取り消し。ジャパンカップもそうだが、国際招待の意義を考え直す時期が来ているのだろう。

また、今回のJCDでは前哨戦の武蔵野Sを勝ったキクノサリーレが除外されたことが一部で話題になっていた。現在、中央ではクラシックやNHKマイルCなどの3歳G1以外、トライアルレースの上位馬に優先出走権を与えていない(外国馬や地方馬に対する規定を除く)。中央では二つしかないダートG1には他の古馬G1よりも多くのメンバーが殺到し、交流重賞などで賞金を積み重ねてきた古豪がいることもあり、今後も前哨戦の勝ち馬が除外されるケースは出てくるだろう。前哨戦の位置づけをどう考えるかによるが、上がり馬がG1へ挑むチャンスを掴むトライアルレース的な性格が含まれているならば、JCD、フェブラリーSについては優勝馬ぐらいには優先出走権を与えても良いのではないかと考える。そちらの方が前哨戦も面白い。私見への批判は甘んじて受けるが、レーティング上位馬を出走可にしたように、あまりに原理原則に捕らわれるより発想は柔軟であって良いと思う。

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2008.12.02

JC回顧 勝負を決めた超スローG1での能力差

関係者には申し訳ないが、レースが終わった瞬間は、何とも言えない脱力感に覆われたというのが正直なところ。三世代のダービー馬、2頭の菊花賞馬、去年の有馬記念馬、欧州からやってきた外国馬…。彼らを倒してジャパンカップを制したのは、つい前の月まで条件戦を走っていた馬だったのだから。ハナを切ったのは横山典・ネヴァプション。先手を取ると思われていたルメール・アサクサキングスは中団に控えて、道中では12秒台後半が4ハロン続けて刻まれる緩いラップ。1000メートル通過は60秒8でジャパンカップには珍しい超スローペースの競馬になった。好スタートのウオッカは掛かってしまい、岩田がなだめるだけで精一杯に。不気味なほど静かな流れが、波乱を予感させた。そんな中、デムーロ・スクリーンヒーローは蛯名・マツリダゴッホの後ろ、5番手で完璧に折り合っていた。直線を向くと、スクリーンヒーローは長い脚を使って内のウオッカやマツリダを交わし、外から33秒8の脚で猛追してきた四位・ディープスカイを封じ込めた。勝ちタイムは2分25秒5。

道中は我慢比べ、直線は瞬発力の求められる勝負に。ディープスカイを除いて先行勢が上位を占める結果となり、それだけにディープ陣営にとっては悔しい展開だったかもしれない。オグリキャップのラストランとなった有馬記念も似たようなタイプの競馬だったと思うが、こうした流れの中で我慢する、あるいは前につけられる、というのも競走馬に問われる強さの一つである。ウオッカになくて勝ち馬にあったもの、ディープスカイになくて勝ち馬にあったもの、それが2008年11月30日の東京10レースでは必要だったということだろう。競馬は強い馬が勝つのではない、勝った馬が強いのだ。だから、スクリーンヒーローの強さを称えねばならない。それにしても、予断を持たずにレースができる外国人騎手は恐ろしい。同馬の祖母はダイナアクトレス。サンデー産駒の母ランニングヒロインは2戦0勝だったが、ペーパーで指名してデビュー戦を応援に行ったことを思い出した。そんなこともあり、同馬にはステージチャンプの切れ味強化タイプというイメージを持っていた。前走のア共和国杯は締め切られて当たり馬券を逃したのだが、この大一番で来るとは予測していなかった。

母ランニングヒロインのデビュー戦は8着

スクリーンヒーローの父はグラスワンダー。グランプリホースの印象が強烈なだけに、次走の有馬記念は人気の一角に支持されるだろう。また手綱はデムーロで、同馬がどんな展開でもG1級の力を備えているのか、試金石の一戦になる。ディープスカイは最速の上がりを披露したが、届かず2着まで。しかし、他のライバルに先着したのは大きな成果で、日本代表として胸を張って海外に挑むことができるのではないか。ウオッカは自滅気味になりながら3着に踏みとどまった。前走がハイペースだったので折り合いをつけられなかったのかもしれないが、今後は2000メートル以下に専念したほうが良さそうだ。 4着にマツリダゴッホ。東京でも走れるところを見せたというか、やはり走らなかったというべきか。いずれにしろ、有馬記念ではダイワスカーレットとの勝負が非常に楽しみだ。オウケンブルースリは望まない展開で5着。現状ではディープスカイには敵わないことも明らかになったが、古馬になっての成長力に期待したい。メイショウサムソンは伸び脚を欠いた。外国馬はパープルムーンの9着が最高。国際招待の意義に疑問を感じる残念な結果だった。

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2008.11.26

マイルCS回顧 及第点の騎乗では勝てぬG1の厳しさ

安田記念をウオッカ、スプリンターズSをスリープレスナイトが勝ったのに続いて、晩秋の短距離G1を制したのも牝馬、ブルーメンブラットだった。今年のマイルCSは前半も後半も46秒3という全く同じラップになったが、これは去年とほとんど同じ内容。どの馬も力を発揮できる一方で、極端な競馬をする馬には苦しい展開である。ブルーメンブラットは吉田豊が内々でロスなく折り合わせ、 4角でも前が開くと信じて内を突いた完璧な競馬。もちろん、前走でカワカミプリンセスを退けた充実度は目を見張るものがあったが、牡馬一線級を完封できたのは鞍上の腕によるところが大きい。ビシっとやっての10キロ増だそうだから、本当に調子も良いのだろう。キャロットクラブの所属馬で、来春以降は走れない規定があるため、 G1優勝を花道に繁殖入りするようだ。惜しい気もするが、亡き父、アドマイヤベガの血を次の世代へ繋いでほしい。

1番人気のスーパーホーネットは4分の3馬身届かず2着。外枠を引いて小細工のない競馬をする決心はついたようだったが、位置取りが後ろ過ぎた。 4角13番手から大外を回して直線一気。勝ち馬と同じ33秒9の脚を繰り出したが、最短距離から抜け出した相手は捕らえられなかった。一言で表せば「外を回して届かず」。かなり固くなっていたという藤岡佑介は及第点には達する競馬をしたと思うが、守りの姿勢が見えた分、勝ち切れないのがG1の厳しさなのだろう。次走の香港ではチャレンジャーの心構えで良い競馬をしてほしい。3着に高松宮記念馬、ファイングレイン。 NHKマイルで2着があるように距離は不安なかった。復調なった。4着は指定席なのかカンパニー。スタートして行き脚がつかない以上、G1では同じことの繰り返しか。カナダのラーイズアートニーはスピードについて行けず9着。今後も外国馬は勝てないのではないか。

先週は残念な事故も起きた。京都の新馬戦、1番人気セイウンアレースが故障を発症して競走中止。鞍上の武豊が投げ出され、後続の中村将、小原も巻き込まれて落馬した。武豊は右腕を骨折、小原は肝損傷、肺挫傷の怪我を負った。武豊が騎乗予定だったジャパンカップのメイショウサムソンは石橋守へ、JCDのヴァーミリアンは岩田へ、乗り替わりとなる。この時期に武豊の姿が消えるのは寂しいが、サムソンの鞍上に石橋が選ばれたのは不幸中の幸いだ。武豊はポルトフィーノに続いて2週連続の落馬。両レースとも不可抗力が原因でのものだけに、休んでリズムを取り戻してほしい。もう一つ、レベルは違うが、悲しい気持ちにさせられたのが、土曜深夜の競馬番組。お笑い芸人がジョキーマスターズの実況に挑戦する企画を偶然、目にしたが、佐々木竹見を「馴染みのない佐々木」と指し、「こいつが来ないからだよ」など、何度もコイツ呼ばわりしていた。バラエティと言えばそれまでだが、地方競馬の至宝である7000勝ジョッキー。テロップ一枚のフォローでも良いから、ほんの少し敬意を払ってもらいたかった。

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2008.11.18

エ女王杯回顧 ポルトフィーノがカラ馬で差しきり勝ち?

本来ならレース回顧というのは、勝ち馬か、1番人気馬を中心にすべきものかもしれない。だが、今年のエリザベス女王杯は間違いなく、リトルアマポーラでもカワカミプリンセスでもなく、ポルトフィーノという馬を語り継ぐレースになるだろう。ゲートで大きく躓いた同馬から、たまらず武豊が転げ落ちる。それから騎手を失ったポルトフィーノは自動運転、自らの意思で走ることになった。内へ大きく切れ込みながら1コーナーで先頭に立つと、馬群を6馬身ほど離して大逃げ。後続の騎手は集中力を乱されただろう。さすがに4コーナーでは大きく外へ逸走したものの、一転、直線では最後の攻防を繰り広げる馬群へ突進。先頭を行くカワカミプリンセスやリトルアマポーラの進路を横切りながら、ゴール板を駆け抜けた。それがテレビ中継では、外から鮮やかに勝ち馬を差しきっているかに見えるのは芸術的ですらあった。 G1史上初、カラ馬の1位入線である。記録に残らずともファンの記憶には刻まれた。

カラ馬の動きは予測することが難しく、レース中に事故が起きなかったのは安堵した。全周パトロールを見れば分かるが、直線など上位入線馬と接触しても不思議ない。落馬した武豊も両肩打撲で済み、大きなケガ人が出なかったのは幸いだった。それにしても、ポルトフィーノという馬は騒動を引き起こす天性の何かがあるのだろうか。良血エアグルーヴの仔として注目されたが、桜花賞はハ行で出走取消し、オークスは骨折で回避。秋華賞は19番目の出走順で除外、小島茂之師のブログが炎上するプロヴィナージュ騒動の渦中にいた。カラ馬が1位入線したレースとしては、ギャロップダイナの札幌日経賞、ワイドバトルの京阪杯が思い出されるが、両馬とも直線入り口では先頭に立って押し切る展開だった。差しきるのはより珍しい。カラ馬で勝ってしまう?馬は闘争本能に優れているのか、その後、ギャロップダイナはシンボリルドルフを負かして天皇賞秋を勝ち、ワイドバトルもオープン特別を2勝している。ポルトフィーノも期待大か。

勝ったリトルアマポーラは春からG1級の素質があると見込まれてきたが、不完全燃焼の敗戦を重ねてきた。乗り替わったルメールが、これまでの競馬とは打って変わった先行力で能力を出し切った。まさに有馬記念を制したハーツクライを再現するかのレース。素晴らしい腕だ。 2着に単勝1.8倍まで人気を集めたカワカミプリンセス。理想的なレースだったと思うが、勝ち馬をまったく捕らえられなかったのは全盛時より力が落ちているからか。横山典の2ゲッターぶりは健在だった。3着にベッラレイア。8番手からの競馬だったが、前にいる馬が残る展開ではここまで。自力でレースをつくれない弱さに殻を打ち破れなかった。4着にマイネレーツェルが入ったが、3歳世代も言われているほどレベル差はないことが証明された。馬券は久しぶりに単、馬連、3連単を総取り。ポルトフィーノが騎手を乗せていたら、ハズレだったかもしれない。

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2008.11.04

天皇賞秋回顧 2頭の名牝が死力尽くした歴史的勝負

恐らく今年のベストバウトになったであろう天皇賞秋。いや、競馬史上、屈指の名勝負として語り継がれるのは間違いない。現役最強の牝馬2頭が死力を尽くして闘い、わずか2センチ差の接戦を演じたのだから。レースは逃げたダイワスカーレットが最後までハイラップを刻んだ結果、驚異的なレコードで決着した。ハロンごとのタイムは「12.6-11.1-11.5-11.9-11.6-11.6-11.7-11.3-11.3-12.6」。最初と最後以外、すべて11秒台。勝ちタイムは1分57秒2。前半を58秒7で通過しながら、後半はそれを上回る58秒5でまとめたのだから、まったく恐れ入る。もちろん、ダイワスカーレットとしては、道中でラップを緩めたいところだったが、ウオッカと同厩のトーセンキャプテンに後ろからつつかれて、思うようにさせてもらえなかった。それでもゴールまで根を上げずに走りきったのは、身体能力だけでなく、精神面の強さが秀でていたからだろう。

勝ったウオッカディープスカイを内に見ながら、7番手からの競馬。結果的には最高の位置取りだった。速い流れになったことで、折り合いの心配が消えた。4角では少し外に振られたが、ディープスカイと馬体を併せて満を持して追い出した。最後はウオッカ自身も脚があがるほどのタフな競馬になったが、ディープスカイを競り落とし、ダイワスカーレットより先に出ていたのは、体調面の良さからだ。検量室前では1着の枠馬にダイワスカーレットが入り、関係者が喜びの表情を見せていたが、確かにフジテレビの中継だけ見ていると、ウオッカが遅れているように見えた。武豊自身「つとめて平静を装って、2着の枠場に入りましたが、内心は愕然としていました」と述べているほど。内外、離れていたこともあり、15分間に及ぶ長い写真判定が行われ、みんなのケイバの放送時間内に確定はなされなかった。軍配はウオッカ。JRA重賞の連敗を34で止めた武豊は苦しいシーズンだっただけに、今回の盾は格別なものになったに違いない。

次走、ウオッカはジャパンカップへ、ダイワスカーレットは有馬記念へ向かう。来春はともにドバイを視野に入れて現役を続行することが明らかになっているが、ウオッカ陣営にとっては、もう再戦はしたくないかもしれない。それほどダイワスカーレットの走りは空恐ろしいものがあった。休養明けを厭わず、エリザベス女王杯でなく天皇賞秋に参戦した松田国師らには素晴らしいレースを見せてくれたことに御礼申し上げたい。ディープスカイも非凡な能力を証明した。2番枠を意識して、普段より前目につけたのが脚を鈍らせることになったかもしれないが、脚質に幅が得られたのは大きな収穫だ。当初から最大の目標としているジャパンカップで、ウオッカを逆転できるか、非常に楽しみだ。 4着以下の馬たちも最大限の能力を発揮した。マイルCSでは中心になってくるはず。少し期待したアサクサキングスは8着。距離が伸びれば、もう少しやれそうだ。あとは厳しいレースだっただけに、全馬、無事に次のレースへ駒を進めてくれることを祈りたい。

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2008.10.21

秋華賞回顧 ネット批判を跳ね返す小島茂厩舎の大激走

競馬は何が起きるか分からない。今年の秋華賞は改めて当たり前のことを認識させられたレースだった。そして、主役となったのは馬というより、厩舎ではなかったか。勝ち馬ブラックエンブレムと3着プロヴィナージュを管理していた小島茂之厩舎だ。成績だけではない。「回避決定」と報じられてしまったプロヴィナージュ参戦でポルトフィーノが除外になったこと巡り、心ないファンの中傷がオフィシャルブログに殺到して炎上。「勝ち負けの対象にもならないダート馬」「出走させるのはただの自己満足だ」「どれだけの人が迷惑を被るのか分かっているのか」「ここまで周囲を振り回して散々な結果だったら叩かれますよ」。なかには小島茂師を批難するためだけにブログを立ち上げた者や、「競馬場でプロヴィナージュにブーイングをしよう」と呼びかけたポルトフィーノファンもいた。小島茂師の胸は悔しさで張り裂けそうだったに違いない。賞金を積み重ねて、ようやくたどり着いた晴れ舞台。馬は栗東に長期滞在させてスタッフは懸命の調整を続けてきた。それが、何故こんな言葉を浴びねばならないのか。

レースはエアパスカルが先頭を切り、佐藤哲プロヴィナージュが直後につける展開。向こう正面からはプロヴィナージュがハナを奪った。1000メートルは58秒7 。淀みないラップが後続の有力馬の脚をなし崩し的に消耗させていた。岩田ブラックエンブレムは中団の前方。直線では最内をついて、距離のロスなくスパートして1分58秒4の好タイムでゴールした。内枠を利して理想的なポジションを取れたこと、外を回らされた有力馬が追い込める展開にはならなかったことが勝因にあげられる。もちろん、馬の力があったこと、さらに栗東留学でパワーアップしたことが一番であるのは言うまでもない。渦中の馬となったプロヴィナージュは粘って3着。「今回は悪役だぞ!大丈夫か?」、小島茂師の騎乗依頼に「慣れてます」と引き受けた佐藤哲。無理にペースを落とさず、絶妙のタイミングで仕掛けた手綱は見事だった。それがブラックエンブレムのアシストになったばかりでなく、プロヴィナージュの能力の高さ、調子の良さを着順で証明した。そして、小島茂厩舎の名誉を守ることになった。三連単はG1史上最高の1098万馬券。複勝でも6200円。応援馬券を購入しようか迷って、買わなかった私は負け組みだ。だが、非常に痛快な気持ちになったのだから不思議なもの。

配当が示すように、予想難解の秋華賞だったが、10着の1番人気トールポピーまでコンマ5秒差のなかにひしめいており、ペースやコース取り、仕掛けのタイミングなど、少しでも違えばガラリと着順も入れ替わる力関係だったことが推察される。逆に言えば、どの馬でもゲートにさえ入ることができれば優勝するチャンスがあったということ。この点、プロヴィナージュの具合の良さを確かめて、出走に踏み切った小島茂師は賢明だった。一方で、仮に出走馬がビリ、ブービーに負けたとしても、その挑戦は正しかったのだと私たちファンは認識すべきだろう。どの馬が勝つか分からないのが競馬。秋華賞の前身である旧・エ女王杯で大穴をあけたサンドピアリスや、あっと驚くギャロップダイナにダイユウサクと、二桁人気馬がG1を制した例はいくらでもある。まして、ちょっとしたアヤさえあれば、複勝圏内に入る機会は充分にある。予想談義で「絶対に来るわけない」というフレーズを使うのは楽しみのうちだが、前評判の低さを理由に厩舎や馬主をまともに中傷するなど、良識がないと見られても仕方あるまい。

春、桜花賞の前、小島茂師は馬体の細化を懸念してブラックエンブレムの追い切りを行わず、同馬は惨敗した。今回、その反省を生かしてか、きっちりと追い切りで時計を出して栄冠を掴み取った。こうした情報はすべてブログで明らかにされており、ファンは小島茂師の試行錯誤を知ることができるとともに、おかしいと思えば馬券から外すなどこともできたわけだ。ファンのコメントにも誠実に応対していた小島流の情報発信は、ウェブの発達した時代だからこそ可能になったもので、ホースマンとファンの関係に指針を与えるモデルケースではないだろうか。それだけに、謂われない中傷に晒された騒動は残念だったが、ドラマ以上のストーリーで着地できたことは競馬の神様の救いがあったのかとも感じる。幸いなことに小島茂師はブログを続ける意向を発表し、「厩舎にとって好結果が出た事で、今回の一件を批判をされた方たちが肩身の狭い思いをしていることと思います」と、批難した相手を気遣っている。ちなみに「回避決定」を報じて騒動のきっかけをつくったスポーツ新聞各紙は、ブログ炎上の事実を切り取って美談に仕立てるのみで、自らの勇み足を省みているところは皆無だった。

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2008.07.28

フィールドベアー重賞制覇? 馬券は確定までお手元に

函館記念は本命にしたトーセンキャプテンが勝利。 2着は対抗のフィールドベアー、3着は連下のマンハッタンスカイで3連単も余裕でゲッツ! となるはずだったのに、海外からは馬券が買えない物悲しさ。欲目のない予想ほど当たるものだ。どんなレースぶりだったか映像を確認しようと、動画サイトで検索。トーセンキャプテンは最内をうまくついた藤岡の好プレーが勝利に導いたのか、我が予想も完璧だな、などと頷いていたところビックリ。ゴール前の実況、「内にトーセンキャプテンか、 まんなかフィールドベアーか、並んでゴールイン。 わずかにフィールドベアー! 重賞初制覇!」って。同馬は1番人気。単勝や馬単を持っていたファンの喜びは一瞬にして悲劇へ。それより、その場でトーセンキャプテンの当たり馬券を破り捨てる不幸がなかったことを祈るべきか。

勝ち馬を間違えた実況と言えば、大昔はオークスのサンキョウセッツ、近年は JCDのアドマイヤドン(馬単を持っていた私は奈落の底へ突き落とされた)が有名だが、函館記念も黒歴史入りか。実況していたのは北海道文化放送のYアナ。私が北海道に住んでいたときは、良くニュースなどで見かけた安定感あるアナだった気がする。ちなみにラジオNIKKEIでは「内を突いてトーセンキャプテン、フィールドベアー並んで入りました。どうでしょう、フィールドベアーか、トーセンキャプテンか」だった。やはり際どい着差は断定しないほうが良いのか。半馬身も差があるのに、どちらか分からないと実況されるのも興ざめだが。この日のレースは27時間テレビの合間に放送されたはず。その後、訂正が間に合ったのかなどどうでも良いことも確かめられないと気になるものだ。

>>'08函館記念レース映像

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2008.07.01

宝塚記念回顧 二枚腰発揮させた内田博幸の勝利

予想は公開しないほうが良く当たる。過去10年、しょうもない予想をネットに晒してきた経験から言うと、これは確かに真理である。先週の宝塚記念、仕事にかまけてG1なのにブログにUPできなかった。本命はメイショウサムソン、対抗はエイシンデュピティ。この2頭の馬連を大本線に、アドマイヤオーラとカンパニーを加えたBOX。それにエイシンから薄めに流す馬券を持っていた。ゴール後は「何でこういう時に予想をあげてないんだー!」と呻いてみたが、これで「当たったんですよ、実は本線で」などとブログに載せても、嫌味なだけの後出しジャンケンでしかない。それでも、ハズレ馬券ばかりつかみ続けてきた私は叫びたい。たった10倍の馬連であっても。。。 大本線的中! ビクトリー(方式)!!!

勝ったエイシンデュピティは重馬場は鬼のフレンチデュピティの仔。雨が降ったら産駒はレインボアンバーに変化すると、覚えておいたほうが良い。内田博幸がジワっとハナに立つ、燻し銀の騎乗で勝利に導いたが、直線で二枚腰を使って粘りきったのは馬の勝負根性もあるが、地方で培った技術が大きかったのではないか。 2着、メイショウサムソンは中団からまくっていく競馬。状態は戻っていたし、武豊の騎乗も悪くなかった。アサクサキングスと接触した不利は痛かったが、不思議と勝てたのにという感情は沸いてこない。今年、高橋成忠厩舎は中央未勝利(交流重賞1勝)。早くトンネルから抜け出してもらいたい。

3着にインティライミが入り、復活の狼煙。ディープインパクトがいなければ、ダービーの栄光に輝いた馬。こちらも重は得意だったし、馬体が絞れたのも好材料だった。 4着に伏兵サクラメガワンダー。2歳時はラジオたんぱ杯まで3連勝を飾ったほどの素質馬が、ようやくG1で力を発揮してくれた。グラスワンダーの仔でもあるし、ひさしぶりにサクラ軍団の活躍を見たいもの。秋が楽しみだ。 5着にアサクサキングス。NHKマイルCも惨敗したが、重はからっきしダメだった。直線、苦しがってよれたのも、そのせいだろう。カンパニーは8着。安田記念を回避した影響が残っていた。 2番人気ロックドゥカンブは左後繋靭帯を断裂して12着。キングジョージ登録もあった馬だが、非常に残念。アドマイヤオーラは殿負け。道悪で走る気を失っていた。

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2008.06.10

ウオッカ復権 賞賛すべき岩田康”独断先行”の大胆さ

ひさしぶりに溜飲の下がるレースだった。もちろん、一介のファンである私よりも、ウオッカの関係者の喜びは一方ならぬものだったに違いない。64年ぶりにダービーを制した女傑が一年ぶりの美酒。しかも混合G1である。この勝利はテン乗りだった岩田康誠の手綱さばきによるところが大きい。これまで折り合いを欠くことを恐れて、後ろからの競馬が続いていた。ダービーの残像が強く残っていたせいでもある。今回も陣営の指示は「控えて後ろから」。ところが、岩田は何度もウオッカのレースをビデオで見返し、前日にインコースの馬場状態を確かめた末、積極的に前に行くことを決めた。前走と正反対の戦法でだ。その結果が最内から早々と2頭を抜きさって先頭に立ち、そこから加速して後続を3馬身半突き放す圧勝劇だった。上がり3ハロンは11秒4、11秒4、12秒0。付け入る隙もない。

追い切りに乗った岩田が感じたのは、ウオッカのストライドの大きさだったと言う。その長所を活かすためには、窮屈な競馬を避けて、伸び伸びと走らせられるポジションを獲る必要がある。馬群で脚を溜めれば、持ち味が消える可能性も高い。ああ見えて、岩田はなかなかの頭脳派ジョッキーである。ウオッカの状態もかなり前走より良化していた。きっちり追いきり、輸送してのプラス8キロ。ダービーのディープスカイと重なる。私も含め、休ませたほうが良いのではという外野の声に臆することなく、安田記念へ向かった角居厩舎のファインプレーだ。岩田の独断先行策もそうだが、仮に敗れていれば大きな非難を浴びていたはず。しかし、リスクを恐れて8割の競馬をしたのでは G1は勝てない。通算の勝ち星は変わらないのに、大舞台でなかなか勝てない騎手との差は、リスクを取れるかとうかにあるのではないだろうか。計算し尽くした上での賭けが前提なのは言うまでもないが。

2着は香港のアルマダ。この馬も2番手につける積極策。やはり、ホワイトの手綱さばきは侮れない。伏兵を日本で好走させたのは何度目だろうか。3着はエイシンドーバー。ウオッカの後ろで福永が良い競馬をした。4着はエアシェイディ。すでに7歳になったが衰えはない。 G1では一歩足りないが。5着スズカフェニックス。いつもの後方待機で、いつものように脚を伸ばし、いつものようにマイルG1は入着。距離の壁があるのは理解できるが、武豊だからこそ違う競馬を見せてほしかった。騎手のコメントと同じく、観ているほうも「歯がゆい」。 1番人気に推されたスーパーホーネットは8着。出遅れて予定していた先行策が取れなかった。どこか人気の重圧もあったか。香港の総大将、グッドババは17着と惨敗。馬体は軽い調教でマイナス15キロと、調子を大きく落としていた。直前で下げたとはいえ、3番人気の5.1倍。持ち上げていた予想家の方々は、ファンから恨めしく思われても仕方があるまい。

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2008.06.04

常識覆す大外一気! ダービーを制した神がかり的騎乗

今年もダービーが終わった。戦国ダービーと言われたが、栄冠を勝ち取ったのは1番人気、四位洋文ディープスカイ。NHKマイルC馬が G1を連勝したことで、「日本ダービー」の威光が霞むことはなかった。距離不安が囁かれたディープスカイにとって、スローペースは望む展開だったかもしれない。強めの調教でプラス体重で出走できたのは、前走の反動もなく上り調子だった証拠。それにしても、最内枠を引きながら、直線は大外を回して追い込んでくるという、とても1番人気を背負った馬とは思えない手綱さばきには驚愕させられた。 4角は15番手。ダービーポジションもヘッタクレもあったものではない。それだけ、この世代では能力が抜きん出ていたということだし、常識を覆した騎乗は神がかり的だった。史上二人目となる四位のダービー連覇の前に、私の予想は完敗である。

2着は完璧なレース運びで、ようやく折り合いもついた小牧のスマイルジャック。皐月賞以外は複勝圏を外れたことはなく、12番人気は評価を落としすぎた。 この馬の祖母はカイウンテンシ。私が競馬を始めた頃、良く馬券を買っていた思い出深い馬だ。ぜひ、種牡馬になって、血統表に祖母の名も残してほしい。3着は武豊ブラックシェル。1コーナーで同厩舎の福永モンテクリスエスに進路をカットされ、序盤で馬が燃えてしまったことが響いた。武豊は2週続けての不利に怒り心頭。

「先週のオークスもそうだったが、騎手のマナーが最近は悪すぎる。厳しい競馬とラフプレーは違う。緊張感がない のか、これではファンが本当に離れてしまう。今まで積み重ねてきたことが、あの一瞬で終わってしまった」とぶ然とした表情だった。(ZAKZAK)

まったくの正論だと思うが、きちんと公の場で言い続けてほしい。別に福永に「福島に行け」と言う必要はないけれど。それにしても、怒りの対象が同厩舎の馬とは、多少はアドマイヤを見習うところもありやなしや。本命にしたマイネルチャールズ4着。成長力に欠けていた。仕上げの考え方にも拠るのだろうが、プラス体重にするために強めの調教を控えたのは、最高峰のレースを制するには物足りなかったのかもしれない。皐月賞と違って、今回は松岡の騎乗にも問題はなく、実力は出し切れたように思える。秋に期待しよう。

ディープスカイを除いて、5着レイボーペガサスまで皐月賞組が占めたわけだが、台風の目となった別路線組は厳しい結果が待っていた。青葉賞組はクリスタルウイング6着、アドマイヤコマンド7着、モンテクリスエス16着。アドマイヤコマンドは入れ込みも激しく、馬体も大幅に減った前走よりマイナス。青葉賞を激走した反動がありありだった。ゆっくり休養して再スタート、菊花賞は楽しみだ。京都新聞杯馬、メイショウクオリアはブービー。流れに乗れなかったが、現状はこの程度だろう。そして、3番人気に支持されたダート4連勝中のサクセスブロッケンは潔く18着。 4番手追走という正攻法の競馬ができたのだからスピードはある。先入観かもしれないが、パドックでは硬い芝を走らせるには怖い歩様に見えた。距離か芝適性か、敗因は分からないが、ダービーを盛り上げた陣営の挑戦には拍手を送りたい。

最後に触れておくべきか。場内の勝利インタビュー中、四位が観客に向けて「うるせえよ、おい」と発言したことが波紋を広げている。報道によれば、最前列にいた泥酔客が「しーい、しーい」とインタビューを遮るように大声を出し続けたことに、他のファンに迷惑になると四位がキレてしまったらしい。もちろん、公人として残念な行為であるし、テレビ中継で流れてしまったのは不幸だった。ダービーという特別なものを汚されたと憤るファンの気持ちも共感できる。ただ、擁護するつもりはないが、ダービーで1番人気馬に乗り、後方一気の大外ぶん回しという神業を繰り出した精神状態は、尋常なものではなかったのではと類推する。むしろ、インタビュアーの「みなさんのご迷惑になりますので少しお静かに願います」ぐらいの状況説明的フォローがあっても良かったのではと思う。

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2008.05.27

オークス疑惑の裁決? 騎乗停止も降着処分はなし

疑惑の裁決。今年のオークスはそう競馬史で記憶され続けるかもしれない。 1着となったトールポピーは直線で内に切れ込んで4頭の馬を妨害。長い審議となったものの、降着処分はなし。一方、鞍上の池添には2日間の騎乗停止処分が下った。問題となったのは残り400メートル付近。馬場中央から内に進路を取った際、押しやったレジネッタソーマジックを接触させた。その余波で後ろにいたオディールは追えなくなってしまった。それでも、池添は左ステッキを連打。さらに右へと寄れて行き、レジネッタ、ソーマジックを押しやり、後方にいたマイネレーツェルにも被害を与えた。 JRAは「斜行による被害は走行妨害には至らないが、継続的かつ修正動作の無い危険な騎乗である」というコメントを発表した。ジョッキーは処分を受けているのに、着順変更はない。ルール上は問題なく、2度の前例もあることとは言え、多くのファンが違和感を覚え、JRAの裁決に不信感を持つ人々が出てきても当たり前である。

JRAの処分は妥当だったのだろうか。パトロールビデオを見れば、一歩間違えれば重大な事故につながる、非常に危険な騎乗であったことは一目瞭然。一度目の押圧で修正することもなく、右に寄れる馬を左鞭を使って大きく斜行している。気づかなかったでは済まされない、意識してのラフプレーだ。 JRAは斜行がなくとも着順に変化はなかったとの判断で降着には及ばないとしたが、レジネッタが2着になった可能性は皆無か、誰も自信をもってないとは言い切れないだろう。少なくとも9着のマイネレーツェルの着順は違っていたはずだ。トールポピーも内への斜行がなければ、行き場は失われていた。「通常のレースならば降着」と生放送で断言した柏木集保の見解は正しい。私もこれが平場のレースであったなら、懲罰的な意味合いも込めて降着になったのではないかと思う。G1では多少の荒っぽい行為は許される、という考え方に立てば妥当性は見出せるだろうが、そこは価値判断だ。

そもそも、審議は密室で行われ、処分基準も曖昧で委員個人に任される裁量は大きい。裁決委員もJRA職員。宮仕えの本能として、G1優勝馬を降着させる面倒な責任を負いたくないのは自然なことだ。「できることなら降着処分を下したくない」という心理が働いたのは容易に想像がつく。池添の加害行為は横から寄せていったもので、被害馬の前に出て進路を遮るものではなかった。メジロマックイーンの天皇賞秋での1着降着は進路をカットして、他馬に急ブレーキを踏ませたもの。100%アウトだった。逆に、「トールポピーはセーフ」と裁決が強弁できる余地が残されていたわけで、そこに判断が拠っていった気がしてならない。当の池添はゴールでは派手なガッツポーズをして、ウイニングランまでしていた。審議の対象が自分であることは感じていたはず。敢えてパフォーマンスに興じることで、裁決の判断を鈍らせようとしたのか。ゴール後と確定後の表情の落差から、被害の深刻さまでは認識していなかったように見えるが。

しかし、今回の問題は処分基準の曖昧さだけに留まらない。「社台の馬だから降着にならなかったのではないか」という公正性への疑念を生じさせてしまったことは大きい。トールポピーの生産牧場はノーザンファーム。馬主は社台系のクラブ法人、キャロットファーム。ここに飛ぶ鳥を落とす角居厩舎のブランドも加わる。最も被害の大きかったレジネッタは社台RH、ソーマジックは吉田照哉の持ち馬で、優勝馬の栄誉を貶める立場にはない。不毛な陰謀論は控えるべきだと思うが、裁決に騎手が呼ばれても被害を強く訴えることは考えにくい。少なくとも昨秋の天皇賞のように「福島へ行け」とは言うまい。実際、被害を受けた小牧や安藤勝が裁決にどう話したかは分からないが、「社台の機嫌を損ねるようなことは言わなかったはず」とファンに思わせたのは確かだろう。公正性が揺らぐとは、ファンの信頼が揺らぐということだ。

今年のオークスは半数が社台グループの関連馬だった。これからも「社台の運動会」は10年、20年と続くかもしれない。それだけに、裁決という競馬の公正性を担保する要となる部分については、ファンが納得して受け入れられるシステムを作ってく必要があるだろう。裁決委員を利害関係のない外部の人間に任したり、審議の過程をフルオープンにすることもひとつの案だ、少なくとも、どんな基準で降着や過怠金の処分を下しているのか、線引きはどうしているのか、細かなところまで含めて内規などを公開することが先決だと考える。付けたしのような形になるが、桜花賞で見せ場なく敗れたトールポピーを短期間で立て直した角居厩舎と山元TCのスタッフに敬意を表したい。ジャングルポケット産駒らしく、東京コースの適性も高かった。兄フサイチホウオーの幻影に評価を下げていたが、妹は妹。次走、アメリカンオークスも楽しみだ。

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2008.05.21

ヴィクトリアM回顧 本調子欠くウオッカ2着に敗れる

ヴィクトリアマイルは上がり馬、エイジアンウインズが好位から抜け出す危なげない競馬で完勝した。手綱を取った藤田は「府中マイルG1は逃げ切れるほど甘くない」との考えで、前走の阪神牝馬Sを勝ったハナを切る競馬は絶対にしないと決めていたそうだ。騎手も巧かったし、馬も強かった。馬名の字面からはエイシン軍団の一員のような印象を受けるが、勝負服は懐かしい太田美實氏のもの。ウイニングチケットやロイヤルタッチでG1の常連だったが、最近はすっかり鳴りを潜めていた。G1勝ちは日本ダービー以来、15年ぶり2度目。もしかしたら、あの時のマサトコールを思い出したファンもいたかもしれない。フジキセキ産駒は去年のコイウタに続いてのヴィクトリアマイル優勝。今春、ドバイではサンクラシーク(南ア)が勝利したように、すばらしい種牡馬になった。 エイジアンウインズの次走は米・キャッシュコールマイル(7月5日)。好勝負できるはずだ。

1番人気に支持されたウオッカは4分の3馬身届かず2着。レースは1000メートル60秒通過のスローペースで、瞬発力勝負の差し比べとなった。武豊はウオッカの折り合いを気にして中団につけ、直線は坂を上ってから追い出した。かなり、待って待って、ゴーサインを出した感じだったが、勝ち馬を交わす脚は繰り出せなかった。この日の馬体は京都記念より16キロ少ない478キロ。ドバイ遠征の強行軍のためだろう、腹も巻き上がっているように見えた。フジのパドック解説、細江純子は「細い方が走る形かも」「決して状態は悪くない」と言っていたが、素人目にも調子を欠いていた。府中コース、マイルは、ウオッカにとって最高の条件ではあったが、厳しい状態で連を確保した実力は素晴らしい。ゆっくり休養させて、疲れを取ってほしい。 3着はブルーメンブラッド。一度は先頭に立つ競馬で、4着とは3馬身半差。すべてが向いたとはいえ、進化著しい。

さて、ファリダット、メイショウサムソン、ブラックシェルなど、春のG1で勝ちきれない武豊だが、ピーターパンSを圧勝したカジノドライヴ陣営から騎乗依頼を取り下げられていたことが明らかになった。「あまりにも強い勝ち方をしたので本当に乗せてもらえるのかと不安になるほどですが、どうやら大丈夫なようです。いまから、ドキドキしています」(武豊日記)と期待を公にしていただけに、ショックは大きいだろう。神懸り的な騎乗を見せられない今の武豊であれば、コースを熟知した地元の騎手に任せる方が勝利の可能性は広がるという判断か。せっかく凱旋門賞の名誉挽回の機会になるはずだったが、今となっては、前哨戦を乗らなかったことが悔やまれる。ライバルのビッグブラウンはプリークネスSを制して二冠を達成。ベルモントSはカジノとの無敗馬対決になるが、この歴史的なレースに出走する日本馬の背に、日本人騎手がいないのは少し残念ではある。

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2008.05.12

NHKマイルC回顧 頭抜けたディープスカイの瞬発力

荒れた馬場で切れ味が武器の馬は不利になるのではと言われたNHKマイルC。その懸念から私もディープスカイ、ブラックシェルの印をひとつずつ落とし、先行力あるレッツゴーキリシマを本命にした。だが、結果は真逆。ゴスホークケンが果敢に先手を取り、ダンツキッスイ、エイムアットビップが追いかける展開。先行勢は壊滅した。スタートが今ひとつだったディープスカイは後方3番手。馬場の良い外に各馬が集中するのを予測して、4角では馬群の内をつく。同じようなコースを先に抜け出したブラックシェルを残り200で交わすと、まったく危なげない走りでゴールを駆け抜けた。四位の「追えば必ず伸びる」という確信に基づいた好プレーが勝利に導いた。それだけの自信を鞍上に与えたのは、毎日杯でアドマイヤコマンドらを千切り捨てた瞬発力の高さだ。皐月賞に見向きもせず、NHKマイルC一本に絞った陣営の仕上げも完璧だった。

2着ブラックシェルは早め先頭の競馬で能力を出し切った。クロフネ産駒らしく、府中も合っている。以前から感じていたが、マイラーだろう。例年の松国ローテでダービーをめざすことになるが、馬券の対象になるまではどうか。3着はファルコンSを勝っているダノンゴーゴー。この馬も上位2頭と同じようなコースを通って追い込んできた。展開が向いたのは事実だが、14番人気は少し人気を下げすぎたか。2番人気ファリダットは大外から伸びて5着。先約から武豊はブラックシェルではなく、こちらを選んだのだろうが、府中マイルG1を乗り切るにはまだまだ底力が足りない印象だった。レッツゴーキリシマは道中こそスムーズに進めたものの、直線はぱったり。血統のイメージに相反して、悪い馬場は良くないのかもしれない。力も足りなかった。勝ったディープスカイはダービーも視野に入れている。混戦の今年は充分にチャンスもあるだろう

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2008.05.07

アドマイヤジュピタが盾制覇 作戦失敗が功を奏す?

トップホースたちが持てる力を余すところなく発揮した天皇賞春。最強馬決定戦の名に恥じないレースになったのではないだろうか。私もライブ観戦のため東京から現地へと赴いた。まず、向かったのはライスシャワーの慰霊碑。劇的な復活を遂げた、あの天皇賞から13年も経ったとは感慨深い。この日は多くの供物が供えられ、ライスシャワーがファンの心に生き続けていることを感じさせられた。今年、レースの鍵を握るとされたのは、関係者による決起集会まで開いたアドマイヤ軍団の行方。ところが、ペースをつくるはずの福永・アドマイヤメインは出遅れ。そして、番手近くからの競馬を想定していた岩田・アドマイヤジュピタもスタートで失敗してしまった。一方、横山典・ホクトスルタンが好スタートを切り、思い切ってハナを叩く。ホクトスルタンは1000メートルを1分1秒1で通過。淀みのないラップが刻まれ、どこかで13秒台に落として息を入れたいところ。だが、後ろからアドマイヤイメインがプレッシャーをかける。2000メートルは2分03秒だったが、先行勢には数字以上の厳しい流れになった。

夏の日差しとなった淀 慰霊碑を訪れる人は後を絶たない

直線、粘ったホクトスルタンは、ラスト1ハロンでスタミナが枯渇。その後ろにいた1番人気、四位・アサクサキングスが交わしにかかるが、こちらも伸びを欠いた。代わって先頭に立ったのは3角過ぎから進出してきていたアドマイヤジュピタ。だが、武豊・メイショウサムソンも盛り返す。壮絶な追い比べは、アタマだけジュピタに軍配が上がった。G1初挑戦で盾を制する偉業。本来の先行する競馬ではなく、見事な差し脚で勝利へ導いたのは、後方で折り合わせることに腹をくくった岩田のファインプレーだ。アドマイヤメインは殿負け。結果的に先行勢が壊滅したことを考えれば、出遅れのために先行争いに巻き込まれなかったのは幸いした。ホクトスルタンが格好の目標となったのも有利だった。多頭数出しの余計な作戦は良績につながらないことが大半。今回、2頭の出遅れによる作戦失敗が図らずも最高の結果を生んだと言えないか。もちろん、自ら勝ちに行ってサムソンをねじ伏せたのだから、ジュピタが天皇賞馬に相応しい実力を持っていたことに疑いはない。

アドマイヤ総帥、近藤利一は初めての盾制覇に人目を憚らずに涙した。本業は解体業。あくの強い馬主で好き嫌いの分かれるタイプだが、斜陽の競馬界に多額の資本と情熱を投下してくれていることは感謝せねばなるまい。ジュピタの父はスピード馬のフレンチデュピティ、母の父はライスシャワーを輩出したリアルシャダイ。母系が強く出たということか。天皇賞もステイヤーらしい戦いぶりだった。2着メイショウサムソンは不振から脱出。反動がなければ良い。 3着アサクサキングス、4着ホクトスルタンは展開次第では充分に勝てる力があるところを見せてくれた。とりわけ、メジロマックイーンから血の継承が期待されるホクトスルタンには、どこかでG1を獲得してほしい。来春の天皇賞まで待たなくとも、宝塚記念や有馬記念はチャンスがありそう。 9着ドリームパスポートは大型連休の渋滞に巻き込まれ、輸送に12時間もかかった影響が惨敗につながった。陣営のボーンヘッド。本命にしたポップロックは見せ場なく12着。敗因を教えてほしいものだ。

うるさい気性はいつものこと。アドマイヤジュピタ 復活を遂げたメイショウサムソン

決起集会を開いたアドマイヤ軍団 岩田は喜びを爆発させた

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2008.04.03

ドバイ・高松宮記念回顧 フジキセキの血が爆発

数日経って、ようやくドバイミーティングと高松宮記念のレースを観ることができた。二つのビッグイベントのキーワードは、予想もしなかった「フジキセキ」だった。残念ながらドバイに関しては、日本勢は結果を出すことができなかった。 UAEダービーはイイデケンシンが果敢にハナを切ったものの、直線入り口まで全力疾走させられて玉砕。気風の良すぎる負けっぷりだった。この時期、上位4頭を独占した南半球産馬との差は大きく、ドバイ諸競走で日本馬が最後まで勝てないのがUAEダービーかもしれない。イイデケンシンの次走はジャパンダートダービー。スピードに秀でたところは示せたので、国内に戻ればダート戦線を沸かせてくれる存在になるだろう。日本勢の出走がなかったシーマ・クラシックはフジキセキ産駒のサンクラシーク(南ア)が優勝。牝馬ながら先行押し切る強い競馬で、改めて世界にサンデーサイレンスの素晴らしさを伝えることになった。サンデー血脈還元を加速させるきっかけになれば。

最も金メダルが現実的だと言われたデューティ・フリーは、先行したウォッカが一旦は直線で先頭に立つ競馬で4着入線。道中、ポジションを取るために掛かり気味になったのが響いたのか、あるいは力負けだったのか分からないが、最後のひと踏ん張りが利かなかった。それでも、今後の光明を感じさせる好内容だったことは間違いなく、ダイワスカーレットとの宿敵対決第二幕が楽しみになった。同じレースに出走したアドマイヤオーラは後方のまま9着。閉じ込められて何もできなかった。ドバイ・ワールドカップに出走したヴァーミリアンは、まさかの殿負け。好スタートを切ったものの、途中からついていけなくなり、見せ場すらつくれなかった。精神的な脆さが出たのか、敗因を探すというレベルではないレースだった。勝ったカーリン(米)は他馬を寄せ付けない圧勝で、頂点の高さを仰ぎ見る強さに溜息が出た。

一方、中京で行われた高松宮記念は、1番人気のスズカフェニックスがスタートで躓いて落馬寸前の不利。スプリント戦の最内枠では致命的なアクシデントになった。レースはローレルゲレイロが下馬評通りハナを切り、前半33秒4の淀みないペースで引っ張る展開。直線、先に抜け出したのは4番手追走のキンシャサノキセキ。だが、それを目標にファイングレインが馬体を併せて追い詰める。ゴールではファイングレインがクビだけキンシャサノキセキに先着していた。両馬ともフジキセキ産駒。見事なワンツーフィニッシュだった。ファイングレインは1200メートルでは4戦無敗となり、名スプリンターの域に手をかけようとしている。高速馬場で追い込みは効かないと判断して前へつけた幸の好判断も光った。スズカフェニックスは32秒7の脚で追い上げて3着。鞍上の福永によると落鉄もしていたそうで、不運としか言いようがない。雪辱は秋のスプリンターズSでと言うことになる。

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2008.03.04

中山記念回顧 横山典のプロフェッショナルに脱帽

まったく横山典という男に驚かされたレースだった。戦前、カンパニーが楽々と2番手を追走するとは誰が予想しただろうか。私自身、カンパニーの力は以前から高く評価していて、 G1で単勝を買ったことも何度かある。しかし、いつもカンパニーは一歩足りないレースを繰り返していた。追い込み一辺倒の不器用な脚質が原因だ。だから、府中や新潟のような広いコースでは鮮やかな脚を炸裂させても、中山のようなコースでは勝ちきることが難しかった。とりわけ、中山記念は逃げ、先行馬が有利なレースで、本命を打つには躊躇せざるを得なかった。

横山典は馬場状態を考慮して、ゲートが開く前から積極策を取ることを決めていた。テン乗りにも関わらず、これまでと正反対の競馬をさせるのは勇気の要ることだっただろう。無理なポジション取りでリズムを崩して惨敗というケースも予測できたはずだ。リスクを恐れず、自らの責任で勝ちに行く競馬に挑んだ横山典は、真のプロフェッショナルと言えるのかもしれない。内田博幸の移籍が発奮材料になったか。新境地を開拓できたことで、カンパニーのG1優勝もグッと近づいた。 G2勝ち以上の収穫のあったレースになったのではないか。

2着は蛯名のエイシンドーバー。大外枠は不利かと思われたが、早めの仕掛けでしぶとく差してきた。こちらも騎手のファインプレー。逆に3着のエアシェイディは後方待機の位置取りが敗因になった。後藤は先行するつもりだったようだが、流れのアヤ、悲観する内容ではない。 5着には4角15番手から追い込んだアサカディフィート。前走の小倉大賞典勝ちはフロックではなかった。不向きな展開でこれだけの脚を使えるなら、10歳の今年もまだまだ活躍が続きそうだ。私が本命にしたコンゴウリキシオーは逃げて13着。状態が本物でなかった。馬体が減っていたのもマイナスだった。

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2008.02.19

きさらぎ賞回顧 再び人気馬撃沈で期待の先は?

またしても本命馬が沈んだ牡馬クラシック戦線。きさらぎ賞で単勝2.3倍の1番人気に推されたブラックシェルは、出遅れで最後方からの競馬を余儀なくされた。そのまま4コーナーでは大きく外に振られ、良く追い上げてきたものの7着が精一杯。スローペースの展開では武豊も為す術がなかった。また、この日はプラス10キロと馬体も締まっておらず、入れ込むところも見せていた。ブラックシェルにとっては不完全燃焼の競馬で、実力を評価することは難しい。ポンと出れば、あっさり押し切る力はありそうだが、行き脚のなさと気性面の幼さは今後の競馬に不安を残すことになった。

勝ったのはアグネスタキオン産駒のレインボーペガサス。前走は地方交流の全日本2歳優駿で、3走続けてダートを使われていた。荒れた馬場を息の長い脚を繰り出して、直線は横一線の状態から 3/4馬身だけ抜け出した。馬の力もあるが、ペリエの腕で勝たせた方が重いだろう。 2着は東京スポーツ杯3着など相手なりのレースをしてきたスマイルジャック。この馬が連対しているというのが、レースレベルを推し量る材料と言えよう。 3着に単穴に指名したヤマニンキングリー。広いコースで末脚を生かすのが向いている。本命にしたメイショウクオリアは先行して10着。切れ負け。

これで共同通信杯に続いて、 2週連続で1番人気馬が馬券圏内にも絡めず、牡馬クラシックは混迷を深めることになった。そうなると自然と下級条件に目が行くが、今週の府中では注目したい馬が出てきた。 1頭はセントポーリア賞(芝2000)を勝ったファビラスボーイ。名前からも分かる通り、母は秋華賞馬・ファビラスラフインで、父はジャングルポケット。まだ中身はしっかりしていないが、それで2戦2勝の素質は今後に期待を持たせる。もう1頭はオークスTRを勝ったサイレントハピネスの仔で、シンボリクリスエス産駒のサイレントフォース。新馬戦(芝1600)を持ったまま快勝した。父母と同じ藤沢和厩舎の管理馬。ポリトラック効果で関東馬の巻き返しがあるかもしれない

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2008.02.12

共同通信杯回顧 大本命が消えクラシックは混沌

雪のため、2週連続の開催中止に見舞われた東京開催。共同通信杯は翌日、月曜日に行われることになった。私事ながら、去年から土日が基本的に出社しなくてはならない勤務になり、なかなかリアルタイムではテレビ観戦すら覚束ない競馬ライフになってしまった。今年のクラシック戦線もライブで見ることは難しいだろうと思っていたが、休日の月曜日にダービーを占う共同通信杯が施行されるのは幸いとばかり、府中へと出かけることにした。もちろん、目的は断然の1番人気に推されたサダムイダテンの圧倒的強さを生で体感するためである。懸命の除雪作業が功を奏して、芝は良馬場。結果に言い訳はできない府中の千八となった。

サダムイダテンはピリッとしない感じでパドックを周回していたが、安藤勝が騎乗するとグイグイとリズムよく歩いていく。騎手が乗ると変わるタイプなのかと、不安を吹き消した。これまで雪の影響を受けた年の共同通信杯では、順延になった94年にナリタブライアンが、ダート変更になった98年にはエルコンドルパサーがレースを制している。「雪+共同通信杯=歴史的名馬」の方程式ができあがっていたわけだ。マイリーに祖を持つ華麗なる一族のサダムイダテンも、もしかしたら競馬史に名を刻む一頭かもしれないなどと、期待も高まってくる。単勝は1.5倍。続くスマートファルコンが6.7倍、サブジェクトが11.6倍だから、不動の一本かぶりである。

除雪、おつかれさまでした 人気のサダムイダテンだったが

レースは深いブリンカーをつけたショウナンアクロスが後続を離してハナを切り、番手に逃げ宣言をしたイイデケンシン。まずまずのスタートだったサダムイダテンは前走と同じく後方から。安藤勝は「不利のないように外目へ出せば勝てる」(ラジオNIKKEI)と考えていた。その言葉通り、4角は馬群の外を回して直線へ。先に抜け出したショウナンアルバらを捕らえようと、残り300で安藤勝は必死に追い出すが、サダムイダテンはジリジリとしか伸びない。内を突いたタケミカヅチマイネルスターリーらにも先着を許し、何とも期待はずれの5着に終わってしまった。今年のダービー馬の勝利を青田買いで見ておくという私の目的も雲散霧消である。

こうして負けてしまうと、やはりフォーティナイナーの血かと現金にも落胆してしまう。バテてはいないが、少なくとも芝G1を勝つようなギアが全くなかったからだ。ラジオNIKKI杯も道悪で時計がかかったのが実はプラスに働いていたのかとか、サブジェクトの惨敗を見るとレースレベルが低かったのかと…。まだ見限るには早計だが、牡馬クラシックは再び混沌としてきた。優勝したショウナンアルバは牝馬に興味を示さず種牡馬を退いたウォーエンブレム産駒。それでも去年、デビューした4頭はすべて勝ち上がるなど非凡な成績を残していたが、産駒数を考えると重賞勝ちは奇跡的だ。ショウナンアルバは気性面の荒さがネックのようだが、ぜひ種牡馬入りできるぐらいの成績を残してほしい。

マイネルスターリーは3着健闘 勝ったのは蛯名ショウナンアルバ

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2007.12.26

有馬記念回顧 出涸らしメンバーの古きよき凡戦?

祭りだ、マツリだ、マツリダゴッホ。鞍上の蛯名正さえ勝てるとは思わず、レース後は「“CKY”(超空気が読めない)ですいません」とコメントした 2007年の有馬記念。それでも、デルタブルースやコスモバルクより上の 9番人気だったのは、この馬の中山巧者ぶりをファンが覚えていたからだろうか。中山でG2を2勝。とりわけ、直線入り口で先頭に立って、5馬身差をつけて圧勝した AJCCは笑ってしまうほど強かった。しかし、春秋の天皇賞では二桁大敗を喫し、 G1では用無しとの評価が定まりつつあった。居並ぶG1馬のなかで、食指を伸ばせなかった自分を責める気にはならない。予想は完敗である。内でロスなく乗ったこと、落ち着いた流れで早め先頭に立ったことなど、蛯名の騎乗は非の打ち所がなかった。血統的にはスタミナの不安があるゴッホだが、ごまかしの利く中山2500は十分にこなせるコースだった。日経賞の敗戦で目を曇らされてしまった。ゴッホはサンデーサイレンスのラストクロップ。血の力、恐るべしだ。

この10年、ディープインパクト、ゼンノロブロイ、シンボリクリスエス、スペシャルウィークなど、天皇賞秋、ジャパンカップで好走した馬が、そのまま有馬記念でも連対するケースが多かった。だが、もともと有馬記念は出涸らし状態の馬たちが集まって、疲弊した人気馬が飛んで波乱になるのがディフォでさえあった。調教技術の進化や、血統レベルの向上によって、この辺りの傾向が解消されたように感じていたが、サンデー黄金期を過ぎて、再び一昔前に戻ったのだろうか。レースレベルは高くなくとも、それがオグリキャップが奇跡を起こしたような古きよき有馬記念の姿なのかもしれない。 8着のメイショウサムソンは好枠の利を全く生かせず、先行することもできなかった。 4コーナーで16番枠のウオッカより外を回ってくるなど、誰が予想しただろうか。秋2戦の反動としか言えない。ウオッカは前2走の反省から、中団で競馬をしたものの伸びを欠いて11着。大外枠も堪えたが、そもそも中山2500は適距離ではない。調子を取り戻して、来年はヴィクトリアマイル、安田記念を目指してはどうか。

ライバルのウオッカとは対照的に、ここでも連対を確保したのがダイワスカーレット。初めての関東遠征、2500も動じず、牡馬相手に善戦したのには驚かされた。最優秀3歳牝馬争いでも、ウオッカを完全に引き離してしまった。 3着はスカーレットの兄、ダイワメジャー。引退レースということもあって、安藤勝はスカーレットを選び、メジャーにはデムーロが騎乗。共倒れを防ぐため、いつもより後ろからの競馬になったが、早めのスパートで脚を伸ばした。もし、遠慮ないポジションを取れていれば、勝ったのはこちらだったかもしれない。菊花賞1番人気のロックドゥカンブは中団から差してきて4着。メジャーにクビ差なら来年が楽しみになった。距離の不安はなく、春の天皇賞でも十分に戦えると感じさせられた。 5着にポップロック。追い出してから反応がなかったとペリエ。この馬も出涸らしだったのだろう。 1000万すら勝ったことのないレゴラスは大健闘7着。「出遅れも想定内」との善臣の自信あふれたコメントが頼もしい。

一方、直線入り口で転倒寸前のシーンがあったのがドリームパスポート。必死に立て直して6着に食い込んだ。このアクシデントは他馬に影響されたものではなく、行き脚のついたドリームパスポートを高田がコントロールできず、前の馬に自ら追突してしまったことが原因。高田はこの御法について戒告処分を受けた。今年、高田はケガもあって0勝と不振に喘いでいたが、ずっと調教をつけてきたことや、これまで人気以上の着順に持ってきていた相性の良さもあり、大一番で松田博師から手綱を任された。だが、この起用は馬主のサラブレッドクラブセゾンの反対を押し切ってのものだったようだ。レース後、同馬は美浦・稲葉厩舎へ転厩することが明らかになった。同クラブはジョイ・サラブレッドクラブを譲り受けたセゾングループが運営しており、経営陣の中心には岡田繁幸総帥がいるとされる。高田-ドリパスのコンビを支持するファンは多かったが、残念ながら見納めとなりそうだ。

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2007.11.27

アドマイヤムーンJC制覇 ダーレーに初勝利もたらす

下馬評どおり、スローペースとなったジャパンカップ。前半6ハロンは1分12秒8だったが、これは今年のダービーとほぼ同じラップだ。勝ったアドマイヤムーン、2着のポップロックはいつもと違う前々での競馬で、内をロスなく立ち回った。岩田ムーンは追い出しを我慢して、一瞬の切れ味を最大限に活かすことができた。決して得意とは言えなクラシックディスタンスでG1制覇を成し遂げたことで、天皇賞秋の敗戦で落としていた評価を再びあげることができた。これで引退となるが、500万円の種付け料に恥じないラストランになったのではないか。ポップロックはペリエの好騎乗。レース前から穴気配を漂わせていたが、お陰でメイショウサムソン本命の私も馬連3660円を抑えることができた。そのサムソンは中団から外々を回る競馬。武豊は安全策を取ったのだろうが、上がり勝負の不向きなサムソンは差しきることは難しかった。天才と言えど、人気の重圧はあるものか。内容は最も強かったが、虎穴にいらずんばという奴である。

4着には最後方から追い込んだウオッカが入った。秋華賞での待機は理由があったが、今回の四位の位置取りには首をひねらざるを得ない。直線もサムソンのさらに外で、上がり33秒6は能力をフルに発揮できたと見ていい。府中は間違いなく合っているだけに、もう少し考えた騎乗をしてほしかった。 5着にはデルタブルース。使われて体調が上向いており、距離延長も良い結果につながった。有馬記念では馬券圏内に入ってくるかもしれない。角居厩舎は2、4、5着と3頭とも掲示板に乗ったことになる。外国馬はペイパブルの7着が最高。人気もなかったが、日本馬との実力差は歴然としていた。来年以降、どれだけの馬が来日してくれるのか、ディラントーマスの件も含めて心配になってしまう。 3番人気インティライミは伸びず10着。次はダービーのような先行力復活を試す競馬を見てみたい。天皇賞秋で斜行したコスモバルクは13着。今回は真っ直ぐ走った。乗り替わった松岡の「乗りやすい馬です」というコメントはどう理解しようか。

一方、土曜日に行われたジャパンカップダートは人気のヴァーミリアンがレコードで完勝。 JCとは対照的にエイシンロンバードキャンディデートらがハイペースで飛ばし、武豊のヴァーミリアンは中団で先行勢を眺めながら追走した。直線半ばでは横山典が内で完璧な競馬をしたフィールドルージュが先頭に踊り出るシーンもあったが、武豊はまったく慌てなかった。追い出しのタイミングを待って、ライバルを捻じ伏せる横綱競馬。馬に凄みが生まれてきた感じで、ドバイワールドカップ再挑戦が本当に楽しみになった。これでエルコンドルパサー後継として、繁殖にも恵まれるのではないか。離された3着にはフェブラリーS勝ち馬のサンライズバッカス。府中巧者の面目躍如か。 2番人気の3歳馬、ドラゴンファイヤーは6着。3角からヴァーミリアンを追ってあがっていったが、直線では詰め寄るだけの脚はなかった。今後の成長に期待したい。距離もマイルぐらいがいいか。

ところで、アドマイヤムーンのジャパンカップ優勝は、馬主登録後、ダーレー・ジャパン・ファーム(DJF)にとって記念すべき初勝利となった。DJFは高橋力代表が90%出資した生産法人だが、 11月1日に高橋氏は本家ダーレーからダーレー・ジャパンの代表解任通告を受けたことが話題になった。高橋氏は競馬ブックのインタビューのなかで、アドバイザーであるジョン・ファーガソン氏との方針の食い違いが背景にあることを示唆している。日本での急激な発展を望むファーガソン氏と、慎重に事を進めてきた高橋氏との間の溝は広がっていて、外国人スタッフが送り込まれるなど高橋氏の権限を弱める動きが進んでいるという。解任通告との関係性は不明だが、40億円で購入したムーンの天皇賞敗戦がひとつの引き鉄になっていたならば、 JCの同馬の勝利は高橋氏を勇気付けるものになっただろう。距離不向きのJC出走を強く推したのは高橋氏で、惨敗していれば責任を追及されていたからだ。そういう意味では高橋氏が大博打に勝ってダーレー内の影響力を回復したとすれば、今年のJCは競馬史の意外な部分も左右することになったのかもしれない。

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2007.11.12

エリザベス女王杯回顧 アンカツの術中に全馬策なし

エリザベス女王杯の当日、ファンの多くはがっくりと肩を落としたのではないだろうか。1番人気に支持されていたウオッカが取り消し。ダイワスカーレットとの再戦は持ち越されることになってしまった。原因は右後肢の蹄踵部に発生した違和感。ウオッカは脚を地面につけない状態だったという。夏、ウオッカは同じ右後肢に蹄球炎を発症、凱旋門賞遠征を断念している。その時との関連性は不明だが、今回の異変も外傷性のものであるとすれば、何とも不運としか言いようがない。取り消し時点で発売額の6割がウオッカ絡みの馬券だった。馬連や単複は返還されるが、枠連の購入者は背筋が凍っただろう。前日の京王杯、私はイイデケンシン流しの枠連を買って代用で的中。すっかり枠連の良さに目が行っていたが、取り消しのリスクを改めて思い知らされた。軽症ということなので、ジャパンカップで巻き返しを期待したい。

ウオッカ取り消しとなれば、ダイワスカーレットの敵はいない。それでも、モヤモヤした気分を晴らしたくなって、馬券はフサイチパンドラの単勝と連勝を買うことにした。レースはハナに行くと思われたアサヒライジングが出遅れ。ついている馬はどこまでもツキがある。ダイワスカーレットは楽にハナを奪うと、前半3ハロン36秒2という超スローのラップを刻む。そして後半、十八番になった早めペースアップ。この必殺技が決まると、少なくとも同性のライバルに付け入る隙はない。前年の覇者、フサイチパンドラが完璧なルメールの騎乗で並びかけようとするが、切れ味では勝負にならなかった。アサヒライジングの出遅れを最も恨んだのは、スタミナ勝負に持ち込みたかったフサイチ陣営ではないか。柴田善の責任ではないだろうが、レースの面白みも半減させた。

3着には一昨年、このレースを制したスイープトウショウが入った。気難しさから追いきりも満足にできなくなり、往年の力はなかったが良く健闘した。鶴留師はパドックで池添に「これが引退レースになる」ことを伝えたそうだ。角田を主戦として阪神JFまで戦った2歳戦、秋華賞での悲願G1奪取、ハーツクライを差しきった宝塚記念など、本当に息長く思い出深いレースを残してくれた馬だった。ウオッカのステイブルメイト、ディアデラノビアは4着。自分で動けない馬では仕方がない。デアリングハートは距離だろう。アンカツの術中に嵌った今年のエリザベス女王杯。どんな展開になってもダイワスカーレットの勝利は動かなかったと思える内容だったが、秋華賞の強さを知りながら、誰も鈴を付けに行こうとしなかったのも、不完全燃焼感が残ったG1だった一因かもしれない。

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2007.10.30

天皇賞秋回顧 己との闘いに克ったサムソン陣営

三強対決と注目を集めた天皇賞秋だったが、終わってみればメイショウサムソンの強さばかりが目立ったレースになった。前日の土砂降りで痛んだ馬場は予想外に回復し、荒れたラチ沿いを走らされる内枠の馬も不利はなくなった。むしろ、府中二千は外枠は不利という定石が活きたことで、絶好の位置に陣取ったサムソンは、最短コースを回って直線も思い通りに進路を取ることができた。兄弟子、石橋守から譲り受けた手綱とあって、武豊には些細なミスも許されない重圧がかかっていたはずだが、これ以上ない完璧な騎乗で優勝に導いた。馬インフルエンザにかかり、凱旋門賞を断念せざるを得なかった高橋成忠師にとっても、サムソンの仕上げには一方ならぬ心労を抱えていたはず。だが、サムソンは調子を崩すどころか、瀬戸口厩舎時代より馬体に身が入りパワーアップしていた。表彰式での高橋成師のはち切れんばかりの笑顔に観ているほうも嬉しくなった。ライバルに勝ったというより、自分自身との闘いに克った喜びではなかったか。春秋盾連覇で名実ともにサムソンは高橋成厩舎の馬となり、サムソンを託した松本好雄オーナーの決断は間違っていなかったことが証明された。来年の凱旋門賞に意欲を見せる陣営にエールを贈りたい。

反面、直線で少なくない馬が進路を妨害されて、力を出し切れなかったのは残念なことだった。きっかけは五十嵐コスモバルクがゴーサインを出されると、大きく外側によれたこと。コスモバルクは過去にも府中でこういう癖を見せている。直接、被害を蒙ったのは福永のカンパニー。結果は3着だったが、確かに不利がなければ2着はあったかもしれない。サムソン-カンパニーの馬券を持っていた私も悔しい思いをしたが、この程度の不利は競馬では珍しくない。コスモバルクの斜行に最も驚いたのは柴山エイシンデピュティだった。コスモバルクとは間が開いていたものの、馬が過剰に反応して外によれてしまった。そのため、岩田アドマイヤムーンや安藤勝ダイワメジャーは進路をカットされ、三強対決の二強が存分に力を発揮できない結果を招くことになった。もし、スムーズな競馬ができていれば、2着争いは混沌としていたかもしれない。だが、この日のムーンやメジャーにはサムソンを打ち負かすような雰囲気がなく、逆転するまでには及ばなかっただろう。実際、2着に来たアグネスアーク(前々日1番人気!)も同じく不利を受けていたこともある。すっきり負かせたはずのサムソンにとっても、せっかくの歴史的レースにケチがついてしまったのは惜しいことだ。

この斜行のお陰で、レース後の検量室は騒然とした雰囲気に包まれていたようだ。スーパー競馬では東原亜紀が「安藤勝がバカじゃないのかと怒っていた」と異例のリポート。岩田も「トップギアのときにガーンやもん。競馬にならん」と激怒。福永に至っては「五十嵐さんはG1に乗る騎手じゃない。(ローカルの)福島にでも行っていればいい」(時事ドットコム)と発言。批判の矢面に立たされたのは柴山でなく五十嵐だったが、裁決は柴山は降着の上、4日間騎乗停止。入着を果たした五十嵐は戒告と、罪の軽重は明暗を分けた。確かに一連の出来事の端緒はコスモバルクにあるが、エイシンに馬体をぶつけたわけではなく、被害馬との直接的な関係性を辿って処分を決めていくのならば納得できない判断ではない。かたや、安藤勝や岩田の怒りは理解できるが、福永のコメントは行きすぎだろう。地方騎手へ敵意を剥き出しにするのは構わないが、ローカル開催を見下す発言を公にしてしまうのはプロ失格ではないか。激昂して口走ってしまったにせよ、一流のプロ選手なら表向き弁えるべき姿勢があるはずだろう。それにコスモバルクの斜行癖を分かっているなら、武豊がしたように位置取りも違えたはずではなかったか。分かっていて不利を受けたことが、さらに腹立たしさを増したのかもしれないが。いずれにせよ、後味の悪さを残したことを福永は考えてみてほしい。

※補足:一部に意図が伝わっていない方がいるようだが、福永発言の問題点は実際に福島開催が人馬のレベルが低いかどうかということは全く関係ない。例えばイチローが「あのヘボピッチャー、アイランドリーグで投げてれば良い」という発言をした場合、プロとして時と場に相応しいコメントかどうか、置き換えてみれば分かることだ。

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2007.10.23

菊花賞回顧 クラシカルな正攻法、スタミナ勝負が決め手

強い馬が勝つ淀の三千メートル。今年の菊花賞を制したのはアサクサキングス。ダービー2着馬が菊の大輪を咲かすのは珍しいことではないが、順調なダービー馬が他のレースを選び、菊花賞不在となったのは史上初ではないか。レースはホクトスルタンが積極的にハナに立ち、上がり勝負には持ち込みたくない横山典がスローに落とさせない展開。折り合いを欠いたヴィクトリーらが先頭集団を形成するなか、アサクサキングスは離れた後続集団の先頭に。位置取りは理想的だったし、何より気分を害さずにレースを運べたのは良かった。直線入り口では寄れる場面もあったものの、アルナスラインの追撃をしぶとく振り切ってゴール。決してバテてはいなかった。菊花賞の伝統的な正攻法で挑み、持続的な脚を繰り出した馬が勝った昭和的なレースだったのではないだろうか。ダービーで武幸に、宝塚記念で福永に捨てられ、菊の鞍上はウオッカ主戦の四位とは不思議なもの。

アサクサキングスはホワイトマズル×サンデーという配合。母系から距離延長は歓迎できないのではないかとの見方もあったが、イングランディーレ、スマイルトゥモローを輩出したホワイトマズルのスタミナが十二分に伝わっていたようだ。来年の古馬路線を引っ張っていく存在に成長してくれるだろう。アサクサキングスの馬主は田原慶子氏。アサクサ軍団を長らく率いた夫の源一郎氏は今年1月に死去しており、最後の一冠で弔い合戦で勝利を果たしたことになる。すでに生産者である吉田照哉総帥が共同馬主になっていて、実質的には社台の馬ではあるが。アサクサキングスはクラシック二冠で3歳牡馬の頂点に立ったわけだが、牝馬のウオッカやダイワスカーレットを超えるパフォーマンスを見せなければ世代のトップとは認められない。ダービー2着馬が新興勢力を抑えたことは、ウオッカが依然として世代頂点にいることを意味し、次走のジャパンカップで文字通り雌雄を決することになる。

2着のアルナスラインはアタマ差の無念。春は骨折で戦線離脱したが、京都大賞典で3着に好走した力は本物だった。父はアドマイヤベガ、母の父はブルードメアサイアーとして優秀なエルグランセニョール。アサクサキングスと配合は逆だが、この馬もサンデーの瞬発力と欧州のスタミナを受け継いでいる。春の天皇賞で再びあっと言わせそうな予感がする。1番人気、南半球産のロックドゥカンブは後方から動いてきたものの3着まで。もう少し前に行ければ良かったのだろうが、マークされる立場では良くがんばったのではないか。上位2頭とは違って、明らかに距離は不向きだったことを考えると、先々が楽しみな結果になった。逃げたホクトスルタンは6着。マックの遺児ということで注目を集め続けるだろうし、何とか盾を取らせてあげたいというファンの思いが叶うと良いが。フサイチホウオーは8着と復活の兆し。適鞍で観てみたい。

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2007.10.16

秋華賞回顧 勝負を分けた中盤 ”13秒6”の緩ペース

三強対決で盛り上がった秋華賞。だが、終わってみれば、桜花賞馬・ダイワスカーレットの横綱競馬だった。勝負は3コーナー過ぎで決していた。5~6ハロンのラップは超鈍足の13秒6。この時、ウォッカは後方12番手。ベッラレイアは17番手のポジションだった。どんな鬼脚を繰り出しても、京都内回りで2番手から楽にスパートをかけたダイワスカーレットを捕らえられるはずもない。ダイワスカーレットのゴールまでの 3ハロンは、11秒3、11秒1、11秒5。安藤勝の仕掛けのタイミングも完璧としか言いようがない。スタートしてヒシアスペンが強引にハナに行ったため、テンだけ速くなり、馬群が縦長になったのもダイワスカーレットに味方した。中盤でラップが緩んでも、後続は動けない。一団の展開で、上がりだけの勝負になるのは、ダイワスカーレットにとって最も忌むべきところ。自ら動いて競馬をつくることができる脚質と柔軟性が、優勝をもたらしたと言って良いだろう。もちろん、それを生かした安藤勝の頭脳があればこそ。ヒシアスペンの中盤でのスローダウンも、番手に控えた瞬間に計算済みか。

結果的に3着に敗れたウオッカだが、力負けではない。鞍上の四位は自分に競馬を任せてくれるよう陣営に伝えていたそうだが、四位が何よりも優先したのは宝塚記念の敗戦ショックを払拭することだった。宝塚記念ではスタートから折り合いを欠いて惨敗に至った。秋華賞では外枠で前に壁がつくれなかった分、同じように口を割る素振りも見られたが、程なく折り合いをつけて道中を進むことができた。それと引き換えに位置取りは後方になり、最後は大外を回って進出してきたものの、格下のレインダンスに先着を許すことになった。ウオッカの上がりは33秒2。休み明けで反応が鈍かったと陣営はコメントしていたが、同馬の能力は発揮できたと見ていいのではないか。敗因は折り合いを第一にして、勝負は二の次にした四位の考え方にある。それも一つの選択であるから、非難するものではあるまい。四位にしてみれば、凱旋門賞で離れる可能性が高かった手綱が戻ってきたのだから、先を見据えた乗り方で陣営にアピールしたかったのかもしれない。

戦前より、自分の競馬に徹すると武豊が広言していたベッラレイアは4着。こちらは4角最後方から32秒9の上がりを繰り出した。返し馬から入れ込み気味で、武豊としては勝つか負けるか、乾坤一擲の競馬をしてみたというところだろう。だが、勝算はあまりに薄い舞台だった。外回りに変わるエリザベス女王杯なら、大きな上積みがあるはず。ナリタトップロードの娘だけに、何とか大きなところを取ってほしい思いはあるが、父同様、大一番で勝ちきれない馬になってしまいそうだ。三強以外に言及すると、2着レインダンスは武幸四郎も巧く流れに乗せたし、何より夏を越して馬体に身が入った。血統通りか。オークス馬・ローブデコルテは10着。馬インフルエンザの入厩制限で久々になったのが全て。NHKマイルC馬・ピンクカメオは14着。距離もコースも合わない。気になる次走だが、ウオッカはジャパンカップが有力視されている。秋華賞をステップレースにした成果を、大舞台での勝利につなげてほしい。

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2007.06.26

宝塚記念回顧 天は3歳牝馬に味方せず

勇気を持って宝塚記念に挑んだ3歳牝馬に天の祝福はなかった。前日から降り続いた雨は、切れ味勝負を得意とするウオッカにとって致命的な敗因をつくるものになった。前回のエントリーにも書いたように、スタミナ勝負になればメイショウサムソンらが俄然、有利になる。しかも、馬場のよい外に馬群が寄ったため、内枠のウオッカはスタートして壁をつくることができず、折り合いをつけることもかなわなかった。それでも直線半ばまで格好をつけたのは能力の非凡さの表れだろう。ダービー後の宝塚参戦はオーナーサイドの意向で調教師は想定外だったと聞く。凱旋門賞への影響を考えれば、使ったのは残念という感想にならざるを得ないが、前人未到の記録へ挑戦するオーナーの心意気があればこそ、牝馬のダービー制覇も成しえたわけで後から外野がとやかく言っても仕方がないというところだろう。

そのウオッカの渡仏日程が発表された。来月18日に栗東から美浦へ移動、検疫終了後の25日に成田空港から出発する。ステップレースは9月16日に行われるヴェルメイユ賞かニエユ賞になる予定で、その後、10月7日の凱旋門賞へと向かう。ディープインパクトのようなぶっつけではなく、現地で前哨戦を叩くことは馬にとっても陣営にとってもプラスになるはず。ダービー、宝塚と連戦した疲れが癒えてくれることを祈るばかりだ。同じく凱旋門賞へ参戦が決定しているメイショウサムソンは2着。ハイペースのなかでも、早めに仕掛けて行くいつもの競馬を見せてくれた。ゴール前は岩田が完璧な位置取りとタイミングで操ったアドマイヤムーンに遅れを取ったが、世界トップレベルの実力が証明されているムーンと内容的には互角以上の競馬をしたことに意義を感じる。負けて悔いなく凱旋門賞へと向かえるのではないか。

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2007.05.29

女帝誕生ダービー 次元違ったウオッカの末脚

次元が違ったとしか表現しようがない3馬身差のダービー優勝。それが64年ぶりの牝馬の勝ち馬だというから驚きを禁じえない。確かに1000メートル1分00秒5のスローに近い流れだったとはいえ、ただ1頭、33秒0の上がりを繰り出しているのは、ライバルたちと決定的な力の差があったということだろう。返す返す、それが牝馬だったのは驚愕すべきことだ。阪神JFやチューリップ賞での勝利も空恐ろしいものがあったが、それゆえウオッカはマイラーではないかという先入観もあった。だが、それは少なくとも"Jpn1レベル"では問題にならないものだったらしい。四位が中団のうちで巧く折り合わせ、直線でも慌てることなくスパートさせたのは好騎乗だった。ミッキーほどの厳かさはなかったが、馬上礼もよく似合っていた。 ウオッカの父、タニノギムレットは同じく谷水雄三氏の持ち馬。四位は皐月賞で降ろされた過去があったが、その娘の手綱を任せたオーナーの懐は深い。

出遅れたヴィクトリーに代わって、ハナを主張したのは福永アサクサキングス。マイペースで行けた時は強い。とはいえ、この馬を全く捕まえられなかった牡馬たちには、世代レベルに疑問を抱かざるを得ない。好位から差してきたアドマイヤオーラが3着。この馬の上がりは33秒7。特段の不利がなかっただけに、ウオッカとの差を余計に痛感させられる。瞬発力勝負の競馬になったことが幸いして、ドリームジャーニーが5着。最後方からの直線一気だが、やはり上がりはウオッカには届かない。断然の1番人気、フサイチホウオーは7着と惨敗した。返し馬からゲート入りまで、尋常でない入れ込み具合。レースでもかかったヴィクトリーに影響され、折り合いが全くつかなかった。ウオッカとの一騎打ちを観てみたかったが。ウオッカは凱旋門賞に登録があるが、ディープを苦しめた斤量問題は3歳牝馬には最も優位に働く。ぜひ挑戦してほしい。

今年の東京優駿は皇太子殿下がご観戦なされたわけだが、不謹慎にサインを探せば、愛子内親王の天皇即位を支持する「女帝誕生ダービー」だったと解釈することもできよう。また、多くの著名人も来場していたようだ。安倍首相は現役総理としては3人目となるダービー観戦に訪れており、昭恵夫人が牝馬狙いでウオッカ絡みの馬券を購入。首相もウオッカの複勝を買って、夫婦で的中させたという。小泉前首相の時もそうだったが、こうした要人が「馬券を外した」という話を聞かないのも逆に不思議な話ではある。フサイチホウオーの関口オーナーは真っ赤なベルサーチを着込み、亀田一家を引き連れての来場(ケイバ茶論)。これでは殿下御前の口取りはJRAも許すまい。一方、監督官庁の大臣として、皇太子殿下に招待状を送っていた松岡利勝農水相は金曜日に予定をキャンセル。月曜日に自ら命を絶った。舞台裏は大変なダービーだったのではないか。

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2007.05.23

遅ればせオークス回顧 責められぬ秋山のハナ差負け

ここ2、3ヶ月、リアルタイムでメインレースを観ることもままならないのだが、とうとう今週はダービーウィークを迎えてしまった。 G1シリーズが終わる頃にはプライベートも一息つけると思うが。読者に関係のない愚痴でお目を汚して失礼。記録用にオークスの感想。樫はスローの上がり勝負になることが多いが、今年は1000メートル59秒1というハイペースになった。武豊ザレマも前へと行ったことで、他の騎手も多少惑わされたところもあったかもしれない。秋山ベッラレイアは好位6番手からの競馬。フローラSの不味い騎乗を考えれば、 1番人気の今回は文句のない手綱さばきだったのではないか。なぜ追い込みに徹しないという批判は結果論だ。仕掛けのタイミングもハナ差負けなら責められない。

勝った福永ローブデコルテはベッラレイアを目標にして競馬ができたことが大きい。コジーン×シーキングザゴールドという馬にスタミナ勝負のオークスを勝たれたのだから、血統派はお手上げだろう。外国産馬による初めてのクラシック制覇となるが、ほとんど騒がれないのは時代の流れか。私が本命にしたミンティエアーは4着。力は出し切ったが、最後は脚色が同じになった。距離短縮なる秋華賞ではもっとやれる。一方、海外では田中勝シャドウゲイトがシンガポール国際航空カップでG1制覇。 2着も日本馬コスモバルク。皐月賞はJpn1だとすれば、これで本当のG1連敗ストップか。関東リーディングを眺めてみれば、トップにいるのもカッチー。この春は憑き物が落ちたような活躍だ。

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2007.05.09

マル外ダービーは昔話 NHKマイルは波乱の定番に

結果が出てみれば、なんとも見当はずれの予想をしてしまったものだと恥じ入るばかりだ。内の先行勢で決まるどころか、外から強襲した追い込み馬が勝ってしまったのだから弁解の余地もない。当日は仕事でレースを見ることができず、馬場や天気も確認できなかったが、府中に関しては「雨が降り続いていれば内外関係なく」、「乾き始めれば内有利」と捉えておけば良いのだろうか。いや、今回は内のほうが荒れていて、ムラマサノヨートーのような巧者でなければ伸びることはできなかった。いずれにしても、私には桜花賞14着の牝馬に本命を打つことはあり得なかった。

勝ったピンクカメオはスタートして13番手。勝負所では被されて最後方まで下がってしまった。しかし、内田博幸は慌てることなく馬場の良い大外へ持ち出すと、 34秒9の最速の上がりで17頭をごぼう抜きにした。一言で表わせば嵌ったということ。もう少し言うなら、時計のかかる馬場が得意なフレンチデュピティ産駒で、府中マイルで同じようにG1勝ちしたブラックホークの妹であるという血統的な背景。先行勢が崩れるようなハイペース。内田博という地方ナンバーワンジョッキーが最大限の能力を引き出す騎乗をしたことが勝因になるのだろう。マイネルハーティーのNZTやネイティヴハートのオーシャンSもそうだったが、ウチパクが無欲で追い込んだ時の伸び脚は神懸かり的だ。

私が本命にしたアサクサキングスは内を進んだものの、ズルズルと後退して11着。ホワイトマズル産駒だから重巧者ではないかと推測したが、ジェニュインを出した母系のほうが遺伝は強かったようで、雨が降る馬場は全く手も足も出なかった。 2着は先行勢で唯一踏ん張ったローレルゲレイロ。良馬場なら、この馬が突き抜けていたかもしれない。返す返すも勝利の女神に見放されていると言うべきか。3着に最低人気ムラマサノヨートー。小林淳が絡んで3連単はG1最高の973万円とは…。この馬もゲレイロと同じキングヘイロー産駒。土曜の新潟大賞典はフレンチデュピティ産駒のワンツーだったが、種牡馬の勢いというものは侮れない。8着マイネルシーガル、 10着ダイレクトキャッチは馬場に殺された。

シーキングザパール、エルコンドルパサー、クロフネ、イーグルカフェ…。創設当初はマル外ダービーと呼ばれたNHKマイルCだが、勝ち馬は01年のクロフネを最後に途絶えてしまっている。今年のマル外出走馬は、わずか3頭にすぎなかった、こうした背景には外国産馬のレベル低下やクラシック開放の影響があると言われているが、近年は皐月賞、桜花賞の負け組が中心を形成することもあるし、ダービーのステップとして使う陣営もある。 G1(Jpn1)に相応しい格を保つことができていないのが事実だろう。本来的な格付けの議論は置いておき、馬場の悪化しやすい時期というのもあって、これからは大荒れになるG1として定番化していくのかもしれない。

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2007.04.24

遅れてきた女神 二強に迫るベッラレイア

残り200メートルまでは、完全に連対圏内から消えたと思っていた。フローラS,1番人気だったベッラレイア。スタートが良かったのが災いしてスローペースで行きたがり、道中は内で馬群に包まれて動けず、4角を回って進路が壁になり、ようやく大外に持ち出した時には逃げ馬のリードは余裕があった。あらゆるところでロスに見舞われたレース、鞍上の秋山に笑顔がなかったように決して誉められる騎乗ではなかった。それでも、電光石火の鬼脚で差しきってしまったところに絶対能力の高さを感じる。父ナリタトップロード、祖父サッカーボーイを彷彿とさせる切れ味だ。亡き父に贈る産駒からの初重賞でもあった。

今回、ハナを切ったイクスキューズとはコンマ1秒差だったが、展開や不利を考えると能力差はかなり開いていると判断すべきだろう。桜花賞ではイクスキューズは追い込みの競馬をしており比較は難しいが、コンマ2秒先着していたカタマチボタンらより、その前にペッラレイアがいる場面は容易に想像できる。さらにコンマ8秒差前にいるダイワスカーレット、ウオッカにどこまで肉薄していたか。それぞれのイメージできる範囲によって、オークスの買い目は自然と決まってくるだろう。秋山はフローラSの経験を活かして、本番では悔いのないレースをさせてほしい。 2着ミンティエアーも予想以上に強い競馬をした。紛れがあれば、3連単の一角になろう、

そして、最終レース後、お待ちかねの「第1回ジョッキーマスターズ」が行われた。松永幹がイソノルーブルばりに先手を奪ったが、直線で内から抜け出した河内が現役時代と変わらぬ手綱さばきでトップでゴール。 4角で手綱を持って行かれた根本もご愛敬。杉本清の実況はトチリが多かったのは残念なところ。場内には残った4万6000人の観客が大いに盛り上がったようで、ファン心理を掴んだJRA総合企画部の大ホームランだった。こうしたコアなファンを大切にする姿勢があれば、決して競馬は支持を失わないだろう。レース後、2着だった本田は「今日は周囲の空気を読んで抑えました」「(次回は)空気を読まないで全力でやります」と、ネットでの評価を意識したコメントを連発。これもマスターズならではの趣だった。

>>「第1回ジョッキーマスターズ」結果とレース映像(JRA)

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2007.04.18

朝の来ない夜はない カッチー15年ぶりの美酒

田中勝春15年ぶりの中央GⅠ制覇となった皐月賞。「Jpn1だろ」などという無粋な突っ込みはやめにしよう。馬券の払い戻しの有無は別にして、ファンの多くはカッチーの勝利に惜しみない拍手を送ったのではなかろうか。平成4年、ヤマニンゼファーで安田記念を制してから、なんと139回もGⅠに騎乗しながら連敗が続いていた。あの時、まだ少年のような初々しさに満ちあふれていたカッチーも、気づけば三十半ばを過ぎた。周囲からGⅠ連敗の話題を毎回のように言われながら、決して腐ることなく黙々と目の前の仕事を片づけてきた。そんな姿が知られているから、騎乗依頼が止むことはなかったし、長い苦労の末に報われた優勝はファンを勇気づけたと思う。これで4年前にデムーロに頭を叩かれた悔しさは笑い話にできる。朝の来ない夜はない、そんな言葉をしみじみと感じさせてくれるレースだった。

レースは逃げ宣言をしていた松岡サンツェッペリンが主導権を握ろうとしたものの、カッチーは行きたがるヴィクトリーを抑えず、ハナを切らせた。この判断がレースの勝敗を決めた。1000メートルは59秒3。向こう上面では12秒台とラップが落ち着き、速すぎず、遅すぎず、先行勢には気持ちよく走れるペースになった。直線では一度はサンツェッペリンが先へ出たものの、ヴィクトリーが差しかえして勝利。最後はブライアンズタイム×トニービン、兄にリンカーンという血統の底力とカッチーの執念がハナ差だけヴィクトリーを先着させた。皐月賞の逃げ切りと言えば、古くはカブラヤオーやカツトップエース、近年ではミホノブルボン、サニーブライアン、セイウンスカイらが浮ぶが、彼らはいずれもクラシック二冠馬。ダイワメジャーも古馬GⅠを制している。ヴィクトリーの未来も明るい。

無敗馬、フサイチホウオーは33秒9の上がりを使いながら、同タイムの3着。文句なしに最も強い競馬をしたと言えよう。ホウオーは父ジャングルポケットと同じく共同通信杯から参戦し、2番人気、1番枠、そして3着。レース前から既視感はあったが、空恐ろしくなるぐらい酷似した結果になった。その既視感は続くようだ。ダービーでは父と同じく、1番人気に推されるだろう。競馬が血統のドラマなら、着順も一になるはずだ。今年はアグネスタキオンもクロフネもいないのだから。 1番人気アドマイヤオーラはスタートが悪く、後方からの競馬に。直線は伸びてきたものの、4着までが精一杯だった。こちらは去年のアドマイヤムーンとイメージが重なっていたが、やはり着順も同じだった。ちなみにムーンはダービーでは3番人気7着だ。

再びカッチーの話に返るが、これほどGⅠを勝てなかったのは何故かと糸をたぐり寄せてみると、 93年3月14日へと行き着く。この日、前年にコンビを組んで安田記念を制していたヤマニンゼファーは、距離の目処を立てようと1800メートルの中山記念に出走していた。しかし、カッチーは自厩舎のセキテイリュウオーに騎乗するよう迫られ、手綱を放さざるを得なかった。これはリュウオーにGⅠ級の能力があり、乗せ続けてやりたいという師匠の親心であったと言うが、ゼファーの安田記念連覇を新潟のターフヴィジョンで観ることになったカッチーの心境は察して余りある。この年の天皇賞秋では、リュウオーに騎乗、道中でムチを落とし、ゼファーにハナ差敗れもした。あれから、長い長い時間をかけて歯車は元に戻った。

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2007.04.10

桜花賞回顧 外回り新コースが分けた明と暗

三強対決で歴史に刻まれるレースになると前評判の高かった桜花賞。だが、期待が大きかっただけに、どこか物足りなさを感じたファンも多かったのではないだろうか。桜の女王に輝いたのは3番人気の安藤勝ダイワスカーレット。母スカーレットブーケのなし得なかったクラシック制覇の夢は、兄ダイワメジャーとともに二頭の子どもたちが果たすことになった。阪神の外回りマイルで施行された初めての桜花賞で大外18番に入った同馬が勝利を収めたことは、内外のハンデ差を解消した改修工事の成功をアピールする出来すぎたストーリーにも見える。

一方で、外回りマイルコースは道中のラップに大きな影響を与えることになった。 1000メートル通過は59秒8の超スロー。普段からペースが上がりにくい外回りマイルだが、逃げると思われていた柴田善ショウナンタレントが控えたこともあって、誰も積極的に主導権を握ろうとしない展開になってしまった。そして、この我慢比べから早々に脱落したのが武豊アストンマーチャン。前に馬を置けない外枠が仇になった。あれだけ口を割ってしまえば、直線の自滅は約束されたようなもの。全く予想不可能なことではなかったが、武豊というプラス要因はリスクを覆い隠してあまりあった。

ダイワスカーレットがチューリップ賞で完敗したウオッカを打ち負かしたのは、前走より体調が上向いていたのが第一。チューリップ賞、厳冬のエルフィンSを使ったウオッカは九分のデキだったなら、ダイワスカーレットは七分のデキ。それが本番では逆になっていたように思える。第二は早めのスパート。安藤勝は「瞬発力では劣る気がしたので、先に向こうに追わせる競馬にしようと考えていた」と述べている。チューリップ賞の直線でライバルを待って脚を測った経験が逆転につながった。ウオッカが九分のデキでも、今回の流れでは先着できなかったかもしれないが。

ダービー挑戦も仄めかしていたウオッカだが、次戦はチャレンジャーの立場でオークスに向かうことになろう。鞍上の四位は1番人気タニノギムレットで臨んだ皐月賞を騎乗ミスで取りこぼした苦い経験がある。今回、ギムレットの仔で再び断然人気を裏切る結末になったのだから、その悔しさは計り知れない。3着にはカタマチボタン。騎乗停止があけた藤田には静かだが、煮えたぎるような闘志が感じられる。 4着ローブデコルテ、5着イクスキューズは位置取りが後ろすぎたが、よく伸びてきている。 2頭とも2400というタイプではないが、樫も流れが緩くなるようなら複勝圏に来ても驚かない。

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2007.03.06

前哨戦で”凄み” ヒシアマゾンを彷彿とさせるウオッカ

先週、牡馬、牝馬とも今年のクラシックを占う上で最も重要な一戦となったであろうトライアルが行われた。土曜は下馬評から一騎打ちと目されていたチューリップ賞。 2歳女王ウオッカと有力牡馬を降してきたダイワスカーレットという、許されるなら桜花賞まで取っておきたかった直接対決だ。期待に違わず、直線はひさしぶりに凄いものを見せられた気分になった。 3着馬を6馬身も置き去りにして繰り広げられた2頭の叩き合いは、スローモーションを見ているかのような世界だったが、ウオッカに軍配が上がった。

ダイワスカーレットはマイペースの逃げ。直線、鞍上の安藤勝はライバルが来るのを待っていた。絶好の手応えでウオッカが並びかけると、安藤勝はムチを入れて追い出す。しかし、ウォッカの四位は慌てる素振りはなかった。必死に前へ出ようとするダイワスカーレットとは対照的に、ウオッカはムチも使うことなくクビだけ交わすと余裕を持ってゴールした。両馬は同じ馬体重だったが、筋骨隆々としたウォッカは一回り以上大きく見えた。男勝りという言葉が相応しい。ヒシアマゾンを彷彿とさせるレースぶりで、本当の楽しみは桜の後という気がしてならない。

弥生賞はインパーフェクト、サムライタイガースらが引っ張り、厳しいハイペースになった。道中も淀みがなく、底力が問われる展開になったのではないだろうか。そうしたなか、アドマイヤオーラは好位で折り合うと、早めに進出する正攻法の競馬。直線では外へよれる場面もあったものの、ココナッツパンチに抜かせない勝負根性で快勝した。これまでアドマイヤオーラはスローペースしか経験してこなかったが、厳しい流れを体験して勝利できたことは大きな収穫だ。皐月賞はフサイチホウオーと人気を分け合うことになろうが、中山二千ならアドマイヤオーラが先着する可能性も充分にある。

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2007.02.27

波乱のラストウィーク 誰か空気を読むものか

騎手、調教師が一斉に勇退する競馬のラストウィーク。ともすれば、不思議な力が働いて予定調和が演出されるケースも少なくない。しかし、今年のラストウィークはガチだった。それは主賓格としてスポットライトを浴びたのが本田優であったことと無関係ではない。空気を読まない騎手のラストライドに、周りが空気を読むなんてクソ食らえだ。ドキドキ、ハラハラ、唖然、騒然。隣で馬券を買ってる奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない。刺すか刺されるか。そんな殺伐としたラストウィークこそ、本田には相応しい。それは歴戦の調教師たちも同じだった。

土曜のアーリントンC、ファンが1番人気に支持したのは、本田騎乗のローレルゲレイロ。カワカミプリンセスと同じキングヘイロー産駒で、重賞勝利なら文句なしに盛り上がる最高の場面だ。直線で抜群の手応えで先頭をうかがうローレルゲレイロ。ところがだ。トーセンキャプテンの四位は譲らねえ。3着馬を4馬身後方に置き去りにして、ガチの叩き合い。しかも、差しかえして本田を負かしちまった。「おい、四位。これが河内祭りだったら殺されてるぞ!」ってなもんだ。日曜5レース、本田は4番人気の馬を大逃げさせて初勝利。マジにならなきゃ勝たせてくれない。

調教師だって、ご祝儀相場で1着が転がってくるほど甘くはない。土曜阪神、涙の中山大障害で有名になった瀬戸口-西谷の師弟コンビは、 1番人気に推されたものの、しっかり2着に降された。御大、伊藤雄にも容赦はない。名牝エアグルーヴの仔、イントゥザグルーヴ武豊を配した千里山特別。そんな洒落た演出は許さねぇと、絶妙のスパートでデムーロが叩きつぶす。毛唐はガチだって。もちろん、引退する調教師連中も引き下がれない。阪急杯は湯浅厩舎のエイシンドーバーが踏ん張りまくって1着同着! 阪神最終も瀬戸口&鹿戸幸のランデブーだ。

瀬戸口厩舎は競馬場の外でも大暴れ。障害に出走させたノボリハウツーだったが、レース中に騎手が落馬。空馬でゴールしたかと思えば、救急車を通すために開けていたゲートを潜り抜けて厩舎地区へ。さらに門を飛び出して、自動車が行き交う県道を疾走。ドライバーを唖然とさせた。そこへ立ちはだかったのが松元省師。偶然、同馬を見つけて、助手とともに取り押さえた。それにしても良く事故が起きなかったもの。何か起これば、引退式どころではなかった。オグリキャップに二冠馬2頭を手に入れた強運は健在だった。

引退する騎手、調教師たちが熱いバトルを繰り広げた、そんなガチンコ・ラストウィーク。だが、1人のジョッキーが虎視眈々と主役の座を奪い取ろうと爪を研いでいた。東のメイン、中山記念。いつにないロケットダッシュを決めたのは後藤と老雄ローエングリン。軽快に飛ばしまくると、直線半ばではセーフティーリード。そして、勝利ジョッキーインタビュー。「この馬のこと、僕は本当に大好きでした…。辛かったことも経験もしたけど、先生に恩返しができますっ…」涙を流す後藤ジョッキー。えー、そこでお前が持ってくのかよ。ホント、今年のラストウィークは下克上だったな。

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2007.02.13

ディープロス症候群? エイプスが背負った異常人気

「ディープ継ぐスターだ。エイプス飛ぶ」 きさらぎ賞当日のサンケイスポーツ一面トップの見出しだ。「ディープインパクトが去った競馬界にニュースターが出現した」から始まる記事でも、「ユタカの手を経てディープから受け継がれる最強馬の勲章」「ディープインパクトの時代が終わり、オーシャンエイプスの時代が始まる」など、これでもかというぐらいにディープ二世とばかりの賞賛が続く。しかし、これは決してサンスポだけが特別だったわけではない。他の競馬メディアもディープと比較して、エイプスの能力の高さを喧伝していた。その余波か、ヤフオクでは単勝馬券が数千円で取引されている。

結果的にエイプスは4着に敗れたわけだが、わずか1戦というキャリアの浅さを考えれば、GⅠ級の素質を感じさせる立派なものだった。現に同じキャリア1戦できさらぎ賞で3着だったハーツクライは海外GⅠまで制している。私自身、エイプスの新馬戦での勝ち方にワクワクさせられ、フサイチホウオーの好敵手出現かと「天馬再来?」なるエントリーをあげた。「今週のデータ解析」でもデータを無視して◎。だが、単勝1.3倍は尋常でないオッズだった。それこそディープを持ち出せば、ジャパンカップと同じ支持率だったことになる。申し訳ないが、私は単穴にしたアサクサキングスの単勝を買わせてもらった。

私が「天馬再来?」としたのは、同じ年明けデビューで春のクラシックを席巻したトウショウボーイの敬称を拝借してのものだった。ディープとエイプスの共通点は少ない。鞍上ぐらいではないか。とにかくディープと結びつければ売り上げがあがるという商業主義的な報道にはうんざりだし、もし世論がディープに代わる英雄を欲しているのなら目を覚ますべきだろう。 10年、20年に一度の逸材を求めて、デビューで大差勝ちする馬が出る度にディープ、ディープと一喜一憂しては身が持つまい。その反動か、たかだか2戦目で4着に敗れたぐらいで、「飛ばなかった」「敗因が分からない」など過度な落胆をしているのも合点がいかない。 まるでペットロスならぬディープロス症候群だ。

エイプスが無敗で三冠を制するチャンスはなくなった。しかし、だからどうしたというのだろう。新馬戦の内容が秀逸だったことは間違いないし、次走で権利を取れば有力な皐月賞馬候補の一角を占めるだろう。ふらふらとディープ二世の幻影を追い求めてばかりでは、過去の競馬に縛られ、奥深いはずの競馬の幅を狭めることになる。ディープは素晴らしい馬だった、凱旋門賞優勝の夢も見させてくれた。だが、ディープ二世が生まれることだけが競馬の面白さではない。ディープがいない時代にも、ファンは競馬に胸を躍らせ、感動し、涙していたではないか。祭はとうに終わっている。そろそろ日常に戻って、競馬を楽しんだらどうか。

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2007.02.02

ドバイへの扉開く 亡き父の思い継ぐヴァーミリアン

31日に行われた川崎記念(ダ2100)はルメール騎乗のヴァーミリアンが逃げたアジュディミツオーに6馬身差をつける圧勝でGⅠ初制覇を飾った。ヴァーミリアンはスタートで大きく出遅れたものの、すぐさま行き脚をつけて2番手のポジションへ。 4角で先頭に立つと、直線では後続を突き放す一方で力の違いを見せつけた。同馬はこれで交流重賞4勝目。この他に芝のラジオたんぱ杯2歳Sを制している。 3歳時の不振から完全に立ち直り、この2走は本格化という表現が相応しい内容だ。次走は招待されれば、3月31日のドバイワールドカップ(ダ2000)へ挑戦する。

ヴァーミリアンはエルコンドルパサー産駒。父はわずか3世代のクロップしか残せなかったものの、アロンダイト(JCダート)、ソングオブウインド(菊花賞)の中央GⅠホースを輩出している。この他にもステイヤーのトウカイトリック、ダートの短距離馬ビッググラス、芝のスプリントを得意とするアイルラヴァゲインなど、幅広いタイプの仔が重賞レベルで活躍しているのも特徴だ。ヴァーミリアンもそうだが、エルコンドルパサーはレベルの高いサンデー肌馬との相性が抜群。返す返すも早世が惜しまれる。

今年のドバイWCは名実ともダートの世界最強馬を決めるレースになると言われている。去年の米年度代表馬でBCクラシックを含めGⅠ4連勝を記録したインヴァソールと、そのインヴァソールにUAEダービーで土を付けたディスクリートキャットが対決するからだ。アロンダイトが回避を宣言したことで、ヴァーミリアンは日本のエースとして両巨頭に挑むことになった。凱旋門賞2着と世界最高峰に手が届かなかった父の思いを息子が遂げることはできるのか。川崎記念の成長ぶりを観ると、ひょっとするとという期待もある。

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2007.01.16

京成杯回顧 松岡正海が亡き師匠に捧げた好騎乗

松岡正海サンツェッペリンの鮮やかな逃走劇だった。ニュービギニングの2着だったホープフルSは後方からマクり気味に息の長い脚を使って好走していた。今回「他に行く馬がいなければ行く」つもりだった松岡は、切れはしないがジリジリと伸びる同馬の持ち味をハナに立つことで引き出そうと考えたのだろう。1000メートル通過は62秒3のスロー。 4角では後続とのリードがなくなりながら、直線坂下から二の脚を繰り出してメイショウレガーロに2馬身差をつけてゴールした。冬の中山の馬場が合う血統ということもあるが、それも考慮に入れた思いきった松岡の好プレーに収斂するレースだった。

昨夏のアイルランド武者修行から帰国後、重賞を2勝するなど好調だった松岡。だが、暮れの中山で輪乗りの際に他馬に蹴られて、右足腓骨(ひこつ)骨折で戦列を離れていた。その間、お手馬のプリサイスマシーンが阪神Cで2着するなど、馬に乗れない苛立ちを感じていたという。それだけに京成杯には復帰したい思いが強かった。松岡は厩舎の全休日、北海道の牧場へ飛んで調教に跨っているが、サンツェッペリンは育成場で素質を見出して斎藤誠師へ紹介した馬だった。思い入れは一際強い。正月は休み返上でリハビリに専念。京成杯はそうした松岡の執念が実ったと言えるだろう。

斎藤誠師は去年6月に開業したばかり。JRA通算5勝目が重賞勝ちとなった。もともと、斎藤師と松岡は一昨年に亡くなった前田禎師の下で働いていた。マイスタージンガー、ビーバップ、ミラクルタイムなどを管理していた美浦の中堅厩舎だった。ふたりは兄弟弟子の関係になるが、師匠に重賞勝利を捧げたいという気持ちで結ばれていたに違いない。去年、最も成長した若手騎手に贈られる年間ホープ賞で、松岡は60勝をあげた吉田隼人に競り負けた。遠征、騎乗停止などで勝ち鞍で劣ったのが理由だ。今年、最高のスタートを切った松岡が悔しさをバネにどんな活躍を見せるのか、注目していきたい。

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2006.12.26

さよならディープ 英雄去れども競馬は続く

ディープインパクトが自ら花道を切りひらいた有馬記念。 3コーナーから進出していく、あのゾクゾクする走りを堪能させてくれたレースだった。上がりは33秒8。不得意な中山コースで34秒を切ったのは初めてであり、最後は手綱を緩める余裕さえあったことを考えれば、歴史的な名馬のラストランに相応しい内容だったと言えるのではないか。今回、”飛んだ”かと聞かれれば、”飛んだ”のだろう。 レースレベルが高いものではなかったため、天皇賞春の驚異的なパフォーマンスには及ばないものではあった。だが、人々が望んでいたのは走破時計やラップではなかったのだから、誰が文句を言おう。

コアなファンに根強く批判されてきたJRAのディーププロモーションは、有馬記念優勝という予定調和的なフィナーレで無事に幕を下ろした。凱旋門賞失格のイメージを払拭するためには、ジャパンカップ、有馬記念とディープ勝利は成し遂げられなければならなかった。故に、どちらのレースも他陣営がどんな手を使っても負かしに行く、という状況が生まれず、凱旋門賞後に新たなストーリーが展開することにはならなかったのは少し残念ではある。好敵手ハーツクライが能力を喪失した不幸があったのも大きかった。そんな期待を終章にかけるのは贅沢すぎるという向きもあるには違いないが。

他馬に目をやると、2着はメルボルンCでも銀メダルだったポップロック。ペリエの巧さを再認識した。3着にダイワメジャー。内ラチで粘る自分の競馬ができたが、 1ハロン距離が長かった。この秋、見違える競馬を続けてくれた。4着ドリームパスポートは直線でのロスが響いたが、メイショウサムソンを抑えて3歳馬最先着。来年の主役だろう。デルタブルースは6着。早めの競馬をしなければ持ち味は活きない。岩田の乗り間違い。 7着トウショウナイトも同じことが言える。馬体も重め残りだった。ペースメーカー、アドマイヤメインは出走する必然性があったのか。スイープトウショウ、コスモバルクは体調が完全でなかった。

レース後、観客の半数にあたる5万人がディープの引退式を見届けたそうだ。金子オーナーの勝負服に身を包み、ディープコールに酔いしれた”新競馬ファン”たち。一世代前のファンには決して一体化できないノリではあったが、停滞していた競馬界への良い変化を与えるきっかけになったのではないか。 16年前、オグリキャップのラストランを中山で体感した私が今でも馬券を買い続けているように、彼らの少なくない数が競馬場に残ってくれるのではないか。ディープは去れども競馬は続く。ディープのライバルが、弟が、仔らが織りなす物語に今度は耳を傾けてほしい。

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2006.12.12

エビショー最後方一気! こんなESPなら文句なし

簡単だが、朝日杯FSの回顧を。勝った蛯名正義のドリームジャーニーは、出遅れて最後方からの競馬。エビショーは出遅れ率が高いことで知られ、ESP(蛯名スペシャル)と月刊誌で名付けられたほど。ESPとは出遅れ、マクリ、直線失速の負けパターンを揶揄したものだった。だが、今回は出遅れたものの最後方で折り合いをつけ、ゴーサインを出したのは直線。そこから14頭をゴボウ抜きにしてしまった。こんなESPなら大歓迎だ。同馬は池江ジュニアの所属馬で、父ステイゴールド母の父メジロマックイーンは池江パパにGⅠをプレゼントしたアイドルホース。小柄な身体から繰り出す差し脚は父の香港ヴァーズを彷彿とさせた。追い込みが嵌るタイプかもしれない。

2着はローレルゲレイロ。鞍上が本田、父キングヘイローとは、勝てばカワカミプリンセス降着の無念を晴らす出来すぎた物語だった。 3着は1番人気オースミダイドウ。下見所から発汗が激しく、レースでもかかり気味。やむなくハナに行かせたが、直線で伸びきれなかったのは仕方あるまい。クラシック級の力は秘めているはずだが、気性面の成長が待たれる。左前脚の骨折は残念。データ解析本命のフライングアップルは4着。やはり2000メートル前後で押し切る競馬がベストか。朝日杯を踏まえて2歳戦を振り返ると、ハイレベルだったのはデイリー杯、東スポ杯のようだ。となれば、ラジオNIKKEI2歳Sのフサイチホウオーが真打ちという可能性も高いし、ホウオーを負かす馬が出てくればクラシックの最有力候補になろう。

ところで、CX系「スーパー競馬」「うまッチ!」を長らく休養していた司会の若槻千夏が有馬記念の週に復帰することになった(サンスポ)。若槻は潰瘍性大腸炎を患っていた。しかし、年内をもって卒業ということで、復帰回が最終回ということになる。競馬ファンを無視した「うまッチ!」の演出はともかく、司会は意外にソツなくやり遂げたなぁというのが印象。お疲れ様でした。一方、関西テレビ「ドリーム競馬」も司会の宮川一朗太水野麗奈の年内降板が明らかにされた。関テレ側から「もっとライブ感を出したい」と言われたそうだが、宮川は「よく分からん(笑)。一瞬気を失いかけました」(Shrine River)と未練がありそう。東京の人間としては、水野麗奈はぜひこちらにとお願いしたいところだが。

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2006.12.05

阪神JF回顧 ギムレットには早すぎる!?

リニューアルされた阪神競馬場で初めてのGⅠとなった阪神ジュベナイルフィリーズは、タニノギムレットの初年度産駒、ウオッカが2歳の日本レコードで優勝した。勝ちタイム1分33秒1は、前日の準オープンより1秒速い。準オープンがスローペースだったことを差し引いても、時計は優秀だ。大跳びの馬で内枠は不安材料だと思ったが、外回りと474メートルの直線では問題なかった。クビ差だったアストンマーチャンともども、クラシックレベルには到達している。

ウオッカの母は桜花賞に出走したタニノシスターで、母系はシスタートウショウらを輩出し、シラオキまで遡る由緒正しき一族。冠はつかないが、ウォッカもタニノで知られるカントリー牧場・谷水雄三オーナーの所有馬だ。まさにカントリー血統の結晶と言える。タニノギムレットは皐月賞で無理な位置取りから追い込んで敗れ、調教師の逆鱗に触れた四位が降板させられた。同じ勝負服でその馬の仔に跨った四位がGⅠを勝つのも不思議なもの。差しきった武豊は次走から乗り替わった騎手でもある。

ウォッカという牝馬らしからぬ名前だが、父より強い馬になってほしいとの願いからつけられたそうだ。ギムレットはジンをベースにしてライムをシェイクしたカクテル。ウォッカのほうが度は強い。ならば、もしウォッカが橙色の枠に入ったら、さしずめスクリュー・ドライバーということになるのだろうか。確かに大跳びの馬には外枠が良い。度数の割に飲み口は滑らか、レディキラーとしてライバルを蹴散らしてしまうかもしれない。だが、それでも父と比すれば「ギムレットには早すぎる」というところか。

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2006.11.12

カワカミプリンセス降着 15年前の因果は巡る!?

15年前の秋、競馬界を震撼させた大事件が起きた。史上初のGⅠ1着入線馬の降着処分である。この年の天皇賞秋で 1番人気に支持された武豊メジロマックイーンは、プレクラスニーに6馬身もの差をつけて1位入線した。しかし、スタート直後に大きく内に切れ込み、他馬の進路を妨害したとして18着に降着処分となった。この時、勝ち馬から7秒遅れてゴールした被害馬がプレジデントシチー。鞍上は本田優だった。因果は巡るというのか。

今年のエリザベス女王杯はシェルズレイが引っ張る淀みのない流れとなった。 1000メートルは57秒4。後続集団の先頭はアサヒライジング。有力馬はフサイチパンドラカワカミプリンセススイープトウショウの順序で、それぞれがマークしあう形。ほぼ折り合いを欠くことなく、各馬とも坂の下りから仕掛けのタイミングを図る。この流れではスタミナの誤魔化しは効かず、中距離で実力を発揮できる馬でなければ上位には来れなかっただろう。

カワカミは4角前で遅れて加速しはじめたものの、外にパンドラ、スイープが並んでいては、その内を回すのは常識的な判断だった。直線を向いて、開けていたのはシェルズレイとアサヒの間。だが、シェルズレイが失速し、アサヒが若干、内へ寄せる素振りを見せる。カワカミと並んでいたヤマニンシュクルも同じ進路を取ろうとしており、ここで致命的な不利を受けるわけにはいかない本田としては強引でも割って入るしかなかった。「前の馬が内にモタれていたので早めに動いた」という当人のコメントが全てだろう。

ゴール後にシュクルが下馬したことも含めて、降着処分はやむを得なかったと言えよう。とりわけ、直線に入ってからの加害行為は着順との相関性が見えやすいだけに、重い処分の対象になる可能性が高い。直前に左鞭を連打したのも印象を悪くした。裁決の不透明性や降着基準の曖昧さは常日頃から批判されていることではあり、改善されなければならない問題ではあるが、今回の処分は妥当とせざるを得ない。個人的にはスイープ流しの馬連4180円が的中した。

脚のなかったシェルズレイが馬場の真ん中に出さなければ、もう少し4角でカワカミの加速が早ければ…、降着は免れたかもしれない。さらに遠因に思いを巡らせれば、GⅠ1着入線馬の降着の前例がなければ、裁決も躊躇したかもしれない。そう考えると、やはりプレジデントシチーに本田が騎乗していたことや、ひとつ前のレースで本田が被害馬となってペリエが降着になっていたのも、因果を感じずにはいられない。ただ、カワカミの強さが古馬相手でも底を見せなかったことは喜ぶべきことだった。無敗伝説は終わらない。

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2006.10.10

ディープ参戦? 天皇賞秋の勢力図は混沌

毎日王冠、京都大賞典のふたつの天皇賞秋を占うステップレースが終わった。毎日王冠は厳しい流れのなか、ダイワメジャーダンスインザムードの先行した2頭がワンツー。1分45秒5の好時計で決着した。これまでダイワメジャーは府中では今一歩の成績だったが、外枠から気分良く先行できたのが良かった。持続力を要求される流れも合っている。ノド鳴りの影響も感じられず、皐月賞馬の完全復活か。本番の好走は内枠などで揉まれないことが条件になるだろう。

ダンスインザムードは完全に精神面での不安が払拭されたのが大きい。天皇賞秋は一昨年2着、去年3着とベストに近い条件。勝ちきるまでのイメージは持てないが、上位には食い込んできそうだ。マルカシェンクは3歳馬で最先着の4着。天皇賞秋は除外対象だろうが、古馬相手でも十分やれることが分かった。5着のカンパニーも流れ次第では着順をあげてきそう。1番人気アサクサデンエンは最内から先頭を伺うも、ズルズルと後退して13着。息ができていなかったのだろうか。巻き返しはあっておかしくないが、買いづらい存在になった。

京都大賞典はスローの上がり勝負となり、内を抜けた牝馬・スイープトウショウが快勝した。2分31秒5は凱旋門賞で誤って計時されたタイムと同じだ。スイープはオークス2着もあるように、距離自体はこなせるタイプ。府中二千へ舞台が変わるのは好材料で、末脚が活かせる展開になれば崩れることはない。一方、1番人気に推されたインティライミは良いところなく7着に惨敗。 2着のファストタテヤマ以下は能力が分かっている馬ばかりで、天皇賞秋で馬券に絡むことは難しそうだ。ストラタジェムは変わってきそうだが。

フランスから帰国したディープインパクトは、検疫のため府中に入厩。天皇賞秋を視野に入れて調整されることになった。凱旋門賞から天皇賞秋とは、まるでダビスタローテ。一度叩かれて馬が完全に仕上がってしまったのだろうか。有馬記念まで調子を維持するのは難しいと判断したのかもしれない。今年の天皇賞秋は悠仁親王ご生誕を祝う慶事競走とされており、JRAがディープ参戦を熱望しているということか。いずれにせよ、ジャパンカップをスキップするような結果にはなってほしくないものだ。

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2006.09.26

三冠馬誕生の可能性は十分 敵はプレッシャーだけ

地味な二冠馬、メイショウサムソンが菊花賞を制することができるのか。大きな試金石となった神戸新聞杯だったが、三冠馬誕生を実現させるのに十分な及第点だったと捉えたい。石橋守の騎乗は誉められたものではなかった。1コーナーでタマモサポートらと接触(過怠金3万円)、 4コーナーでアドマイヤメインと接触(過怠金1万円)、ゴール前で内に斜行(過怠金3万円)。二冠馬でなければ、降着処分になっていたかもしれない。内枠だったのと、スタートしてかかったことに石橋が焦ったようにみえた。それでも叩き合いを制して、勝ったと思わせた内容での2着だから、悲観する必要は全くない。

ドリームパスポートはサムソンとは対照的に、高田潤の完璧な騎乗が勝利へと導いた。通常より前に位置する6番手追走。 4角では他馬を先に行かせて、一呼吸おいてから追い出した。ドリームパスポートはきさらぎ賞でも先に抜けたサムソンを差しきっているが、早い時計の馬場ほど能力を発揮できるタイプ。距離の融通は利きそうで、菊花賞でも必ず上位に食い込んでくるのは間違いない。2番人気アドマイヤメインは完調さを欠いていた。本番まで何処まで戻してこれるか、調教に注意したい。

セントライト記念が低レベルな結果になり、春と上位陣の勢力図は変わらなかった。勝負根性とスタミナが特長のサムソンにとって、菊花賞は他馬より有利な条件だ。三冠を阻むものがあるならば、それは鞍上へのプレッシャーだろう。長丁場で折り合いを欠いた場合に、石橋が落ち着いて馬を御せるか。神戸新聞杯の失敗を糧にできるか、トラウマとしてしまうかで結果は正反対になる。トライアルで不利のあったアペリティフ、北海道で1000万条件を楽勝したアクシオンらが、菊の伏兵陣としては面白い存在だろう。

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2006.08.22

札幌記念回顧 切れ味比べでムーン完勝

先週は名牝ベガ、そして現役馬ラインクラフトと、相次いで桜花賞馬が亡くなった。何とも惜しまれる。冥福を祈りたい。ベガの主戦だった武豊は愛犬にベガと名付けるほど、お手馬のなかでも気に入っていたという。札幌記念はその武豊アドマイヤムーンがベガの応援もあってか鮮やかな勝利を収めた。切れ味が身上のムーンにとって、レースが上がりの勝負になったのは好都合だった。 1000メートル通過が61秒2、ムーンはラスト33秒5で上がっている。古馬相手の完勝だっただけに、もう少し厳しい競馬を見たかった気もする。

ハナを切ったのは、これまで逃げた経験のないタガノデンジャラス。「他が行かなかったので行った」(岩田)とのことだが、もともとペースをつくると見られていたブルートルネードが出走を取り消し、変わってハナに立つと思われていたシルクフェイマスは五十嵐が抑えた。この流れではジリ脚のマチカネキララはムーンには勝てない。それでもレクレドールあたりに遅れを取っていてはGⅠ参戦云々ではないが。去年のヘヴンリーロマンスに続いて牝馬が穴をあけた。来年はクイーンSからの連闘馬は忘れずにおきたい。

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2006.06.26

宝塚記念回顧 無事にゴールしたことが何より

雨で予想外に緩い馬場となった宝塚記念。ディープインパクトにとっては試練の場となったが、残り600からマクるいつも通りの競馬で、 2着以下を4馬身差切って捨てる完勝だった。ディープの最大の武器である瞬発力が殺される馬場で、こうした競馬ができたことは次のロンシャンを想定する上でも喜ばしいことに違いない。さらにパドックで非常に落ち着いていたのは、気性面の成長を感じさせられた。収穫はあった。

だが、宝塚記念参戦には個人的に強い違和感を抱いていたのも事実。サラブレッドは走ること自体にリスクがあるということを考えれば、クラシック三冠を達成し、春の天皇賞で古馬勢も叩きのめしたディープに宝塚は余計な一戦としか思えなかった。口外するのも憚れたが、壮行レースで散ったテンポイント、今年と同じ淀の宝塚記念で起きたライスシャワーの悲劇など、万が一のことがあれば連想される歴史もあった。とにかく無事に勝利を収めたことは良かった。次は凱旋門賞。世界は手の届くところにある。

ディープ以下は馬場適性が明暗を分けた。 2着に差してきたナリタセンチュリー、3着に逃げ粘ったバランスオブゲーム。ともに重実績のある馬だった。 2番人気リンカーンは脚元を取られて9着に惨敗。カンパニーアイポッパーも良馬場なら着順は違っていただろう。シンガポール帰りのコスモバルクは馬場というより、遠征の疲れが抜けきっていないように見えた。さすがのタフガイも嫌がらせまがいの足止めは堪えた。今年の売り上げは前年比89.7%。一強レースが響いたが、馬連時代ならどこまで落ちていたか。

先日、「ディープが走ると株価が上昇する!?」という記事を掲載した。月曜日の日経平均は28円36銭高の1万5152円40銭と小幅ながら反発した。金子真人オーナーが社長を務める図研は12円高の1149円(終値)。宝塚記念優勝が手掛かりだったようで、「ビッグレースを制した翌月曜日に図研株式は買われる傾向があった。『相場全体が手詰まりとなっているため、ちょっとした材料でも目先狙いの資金を誘う』との声が出ている」(ロイター)とのこと。ディープ効果は確かにあった。

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2006.06.06

安田記念回顧 遺恨試合になるか日本vs香港

香港の雄、ブリッシュラックが文句なく強い競馬で勝った安田記念。3着もジョイフルウィナーだから香港勢恐るべし。だが、どこか釈然としないものが残るのは私だけだろうか。その原因は同じ香港勢、ザデュークの御し方にある。ザデュークは3角手前でインセンティブガイに3度衝突。その影響を受けた1番人気オレハマッテルゼは折り合いを欠いて暴走、カンパニーも大きく躓いた。3角でも外から上がろうとするカンパニーに2度ぶつけている。そして、4角ではブリッシュラックに進路を譲って後退した。

カンパニーの内田博幸は「危ないと思って気をつけていたが、急に3頭分外に来られた。あれは確信犯」と納得がいかない様子だ。ある調教師も「わざとぶつけてコースをつくる香港流はいただけない」と苦言を呈したそうだ。ザデュークの鞍上は初来日だったオーストラリアのダン騎手(32)。サウスオーストラリア州で3季リーディングに輝き、香港に短期免許でスポット参戦中だという。今回の御法に関しては5万円と3万円、計8万円の過怠金が科されたが、重過失に近いラフプレーにはもっと厳しい処分があってしかるべきではないか。

去年の安田記念でブリッシュラックは、4角で他馬と接触して4着に敗れている。前売り1番人気に押し上げた香港ファンドのプレッシャーがあったかどうかは知らないが、アジア・マイル・チャレンジの100万ドルボーナスも含めて、陣営としては何が何でも勝ちたかったレースだった。走らせる側の思惑を読む評論家・清水成駿が本命を打ったのも理由はそこにある。日本馬完敗に終わった安田記念。ザデュークに怒り心頭のハットトリックの角居師は「秋に(香港で)もう一度やっつけたい」と語っている。日本VS香港はさながら格闘技の遺恨試合になってきた。

>>安田記念パトロールビデオ(JRA)

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2006.05.30

ダービー回顧 地味なコンビが二冠を完勝

メイショウサムソンと石橋守が二冠を達成した。小倉デビュー、オペラハウス産駒ということで地味なイメージが強かったが、終わってみれば二冠とも完勝だった。内で先行する馬が有利な馬場はダービーでも変わらず、例年以上に自在性、先行力、折り合いの良さなどが勝負に大きなアドバンテージになったのではないだろうか。もちろん、メイショウサムソンはどんな状況でも勝ち負けできる実力馬であったことには違いないのだが。

逃げたアドマイヤメインがクビ差の2着。レースは1000メートル1分2秒5というダービーには珍しいスローとなったが、ハナを主張して蓋をした柴田善臣は理想的な競馬をさせたと思う。惜しむらくは馬場が重くて、後続を引き離すような逃げにならなかったこと。パンパン馬場で時計勝負であれば、どうだっただろうか。ドリームパスポートは後方12番手から差して3着。きさらぎ賞、スプリングS、皐月賞はハイレベルだった。勝ち運はないが、いずれGⅠを獲れる器だ。

翻って、クラシック戦線の王道で人気を担ってきたアドマイヤムーン、フサイチリシャール、サクラメガワンダー、フサイチジャンクは完敗だった。馬場が向かなかったことはあるが、ファンやマスコミの評価ほど力がなかったのかもしれない。唯一の関東馬、ジャリスコライトも14着と大敗してしまった。こちらはレベル云々の前に調子が戻らなかった。今年もディープインパクトに続いてトリプルクラウンの可能性が残された。メイショウサムソンには無事に夏を越してもらいたい。

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2006.05.23

オークス回顧 データ覆したカワカミプリンセス

今年のオークスはデータ派には全くかすりもしないレースになったのではないだろうか。勝ったのはスイートピーSまで3連勝していたカワカミプリンセス。これまでスイートピーSは入着さえない用なしのトライアルで、強い内容ではあったが手を出す気にはなれなかった。父は高松宮記念馬のキングヘイローだが、もともとスプリント戦を勝つこと事態が驚きの血統だったわけで、種牡馬としてスタミナ豊富な馬を出すことは不思議ではない。

例年、初めての2400メートルということで、オークスはスローになる傾向が強い。ところが、今年はヤマニンファビュルが大逃げを打ち、アサヒライジングが早めに捕まえに行ったお陰で、希に見るハイペースに陥った。1000メートル58秒1。その結果、瞬発力勝負に持ち込みたかったアドマイヤキッスキストゥヘヴンあたりは末をなくしてしまうことになった。かかり癖のあるフサイチパンドラが折り合いを欠くことなく2着に残れたのも納得だ。

カワカミプリンセスは西浦厩舎本田優騎手。テイエムオーシャンと同じ、地味だが燻し銀のコンビだ。オーナーブリーダーは三石川上牧場。遅生まれで売れ残った馬が無敗でオークスを制したのだから、喜びもひとしおだろう。幸いにも競走中止のコイウタは右肩ハ行で大事には至らなかった。今週はダービー。Cコースになっても内有利は変わりないようで、アサヒライジングを3着に粘らせた柴田善アドマイヤメインでどのようなレースをするのか、非常に気になるところだ。

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2006.05.15

ヴィクトリアマイル回顧 光る北村宏の好騎乗

ヴィクトリアマイルの初代女王の座を射止めたのはダンスインザムード。桜花賞勝ちのほか、アメリカンオークス、天皇賞秋、マイルCSで2着のある馬。 4歳時は不振に喘いだが、昨秋は天皇賞、マイルCSで3、4着と復調しており、同性相手なら実力は上だった。その上で、北村宏の好騎乗が優勝に導いた。 1番枠から好発後、圧倒的に有利な内に張り付き、直線もギリギリ残り150あたりまで追い出しを我慢。北村宏はデビュー8年目にして初GⅠ制覇。藤沢厩舎で地道に努力を重ねてきた甲斐があった。関東のホープとして、この勝利を飛躍へのきっかけにしてほしい。

2着は武豊エアメサイア。大外18番枠ということで連下まで印を下げたが、さすがにユタカといったところか。ダンスを本命にしながら、ガミった私は馬券下手だ。「1番と18番の枠が逆なら結果も逆だと思う」というのも、負け惜しみではないだろう。最後の伸びは素晴らしかった。枠順抽選で勝負あった。 1番人気のラインクラフトは良いところなく9着。初めて掲示板を外した。中間、カイ食いが落ちたと報じられたようだが、高松宮記念、阪神牝馬Sと使って調子が落ちていたのだろう。結果論だが、阪神牝馬Sの一戦は余計だった。ここを狙っていたのであれば、陣営の戦略の失敗。

レース後、気になる事件も起きた。オーゴンサンデーを出走させた谷原義明師が検量室前で同馬に騎乗した後藤に対して粗暴行為を働き、過怠金10万円の制裁を科されたというのだ。オーゴンサンデーは7歳。今年2月のニューイヤーSで2着に好走したため、引退の予定を撤回して現役を続行していた。後藤は3年前のオーロCで同馬を2着に持ってきたことがある。今回は追い込み脚質とは裏腹に、先団につける積極的な競馬させている。下種の勘繰りだが、指示通りの騎乗ではないと谷原師は怒ったのではないか。ちなみにニューイヤーSで同馬の手綱を取ったのは吉田豊。狭い厩舎社会とはいえ、不思議な因果ではある。

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2006.05.08

NHKマイルC回顧 ロジックのある騎手、ない騎手

すっかり勝負付けが終わったと思っていたロジック。調子は良かったのだろうが、決して馬が急に強くなったわけではない。重圧をはね除けた春の天皇賞の会心の騎乗とは裏腹に、今度は「嬉しい誤算」というほどの無欲の騎乗でユタカマジックが炸裂したのだ。勝負のポイントは4コーナー。小雨の府中の直線は排水溝の関係で、内側から乾いていくことは良く知られている。だから、武豊は内に馬を突っ込ませた。勝利のロジックを熟知しているが故の判断だった。

競り合いに負けた2着のファイングレインも内を回したクチ。ハイペースでも先行して粘れるだけの馬場差のアドバンテージがあった。横山典のGⅠでの天才的な2ゲッターぶりも、すっかり忘れていた。 3着キンシャサノキセキはパンパンの良馬場向きで、内外と離れていたため抜け出してソラを使ってしまったのも痛かった。 4着に府中向きの差し脚を持つアポロノサトリ、 5着にマイラーとしての資質が高いドラゴンウェルズが入線した。 終わってみれば、掲示板の1、2、4、5着がニュージーランドT組。今年は相対的にレベルが高かったということなのだろう。

ところが、NZTを楽勝したはずのマイネルスケルツィだけが10着と大敗してしまった。敗因は明らか。馬場のせいでも調子落ちでもない。出負けを焦って、もっとも流れが速くなる2ハロン目で慌てて先団に取り付いたのが決定的だった。お陰で馬は折り合いを欠いて脚をなくしてしまった。本来なら最内枠だったのだから、先行でも差しでもグリーンベルトで脚を溜めるべきではなかったか。鞍上の柴田善のリーディングジョッキーとは思えない騎乗ぶりだった。武豊と違って騎乗にロジックがない。だから、馬券を買ったファンは納得ができずに後味が悪くなる。

ところで気になる関東リーディングだが、内田博幸は日曜日には参戦しなかったため、柴田善がトップを守っている。しかし、土曜日には瞬間風速的に内田博が1位になる場面も見られた。ということは、中央の関東と地方の南関東で同時にトップに立ったことになる。武豊が天才といえど、真似のできない記録だ。日曜の最終レース、柴田善は完璧な騎乗で先に抜けていた武豊の馬を差しきった。あれぐらい落ち着いた乗り方を大レースでしなければ、関東リーディングの座は地方騎手の手に落ちるだろう。スケルツィの敗戦を柴田善は次に活かしてほしい。

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2006.05.02

天皇賞春回顧 日本競馬史上に最強馬誕生す

「ゆっくり上って、ゆっくり下れ」誰もが知っている淀の坂越えの掟。今年の春の天皇賞でディープインパクト日本競馬史上最強であることを証明したのは、このセオリーを完全に無視しながらレコードタイム、3分14秒4で優勝したことに尽きる。かつて、ミスターシービーは菊花賞で最後方から20頭をゴボウ抜きにして 4角先頭の競馬をして驚かせたが、ディープは戦術的に仕掛けたというより自然と馬のリズムで走らせた結果であり、また時計的に裏付けがある点で大きく異なっている。ナリタセンチュリーの田島裕和は淀の坂越えについて、下記のように語っていた。

私が騎手になって初めて淀の坂越えを経験した時の思いは、3コーナーから一気に下ってる感じで、それにコーナーも急な感じがして外に膨れると思ったもんです。手応えのない馬でも下りでは一気に下がって行きますので手応えがあると思い錯覚もしました。また外回りの4コーナーもかなり急ですので気をつけないと外に膨れてしまいます。…きつい4コーナーをインぴったり回ると馬のスピードが落ち、外を回り過ぎるとコースロスします。(tajihiro HP)

ディープは坂の上りから一気に上がっていったが、並の一流馬なら負けパターンだ。 2着リンカーンの横山典はディープについて「早めに動いてくれたし、そうなればいいという思った通りになった」とコメントしている。というのも、ディープが仕掛ける手前、2200メートルの通過は2分15秒9。これは不滅のレコードと言われた97年の天皇賞春と同じラップだ。この年の優勝馬、マヤノトップガンは後方待機の死んだふりでサクラローレルらを直線で差しきった。ところが、ディープは件のロングスパートでトップガンより1秒も早くゴールしたのである。

上がり4ハロン44秒8【11.3-11.0-11.2-11.3】も驚異的。11秒台が連続して刻まれた年もあるが、スローペースだったり、どこかで11秒後半が入ってくるのが常だ。これほどスタミナを要す流れになったにも関わらず、最後まで垂れることなく走り抜ければ、過去のどんな名馬が束になっても交わすことはできなかっただろう。「世界にこれより強い馬がいるのか」という武豊の発言は本心に違いない。私は今まで3200なら全盛期のメジロマックイーンのほうが強いのではないかと思っていたが、今回のパフォーマンスで認識を改めねばならなくなった。

ディープにとってベストディスタンスは3200より2400の方が近いのは自他ともに認めるところ。この次はキングジョージ凱旋門賞ということになるのだろうが、環境に適応し調整が上手く行けば、ハリケーンラン、エレクトロキューショニストらを負かすことは決して夢物語にはなるまい。むしろ、いちばんの難敵は"逃げ馬"ハーツクライかもしれないが。クラシック三冠を獲り、天皇賞をレコード勝ちして海外挑戦とは、ゲームの世界の最強馬のようだ。それが日本人の描く最強馬の理想のイメージであるならば、この不世出の名馬を遺したサンデーサイレンスにも、やはり感謝せねばなるまい。

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2006.04.18

皐月賞回顧 神様はバイプレイヤーを祝す

中山競馬場に出かけて、ひさびさにライブ観戦させていただいた皐月賞。予想は見当はずれだったが、レース自体は見応えのあるものだった。断続的な雨に見舞われた中山は良発表とはいえ、例年より1秒は余計にかかるクッションの効いた馬場だった。追い込みの決まらない皐月賞だが、今年はその傾向が一段と強かったと思う。肌寒かったこともあって、入場人員は7万2900人と前年比15%減。どうりで馬券も並ぶことなく買えたはずだ。

レースは前半60秒0-後半59秒9という差のないラップ。問われたのは瞬発力より持続力だった。メイショウサムソンは先行力を活かして、正攻法での押し切り勝ち。石橋守のベテランらしい落ち着いた騎乗だった。オペラハウス産駒ということで、こうした馬場も合っていた。キャリア9戦と使いすぎの嫌いもあったが、クラシックを狙えると分かった時点で馬体を緩めたのが功を奏したのではないか。日高産にこだわってきたメイショウ軍団の勝利は素直に嬉しい。

2着にはドリームパスポート。正直、高田潤に乗り替わり、内枠に入ったことで無印にしてしまった。内外がバラける展開だったとはいえ、焦ることなく内でじっと我慢させたのは騎手の技量によるものだ。高田の騎乗を称えたい。 3着にフサイチジャンク。人気先行の心配もあったが、 GⅠ級の実力があることを証明した。距離が伸びても対応できる。 5着フサイチリシャールは4角スパート。結果的にはマイラーの同馬は失速したが、勝ちに行った競馬で悔いはないだろう。

1番人気アドマイヤムーンは後方から差をつめて4着。武豊は振ったフサイチジャンクにも後れを取ってしまった。この日の武豊は内外の伸び具合を確かめるレースをしていたようだったが、本番では全く活かされなかった。後ろから行って、あれだけ外を回せばディープインパクト級でなければ届かない。ハイペースを警戒したか。馬の具合は悪くなかったと思うが、名手らしからぬ工夫のない競馬だった。マイルよりの中距離馬のムーンでダービーはどこまでやれるか。

以下、着外ではサクラメガワンダーが6着。弥生賞よりはずっと良くなっていた。良馬場、広い府中で巻き返しはある。次走もぜひ内田博幸で見てみたい。ジャリスコライトは7着。レース後のコメントを聞くと、藤沢師も最初から期待していなかったようだ。ファンには迷惑なローテだ。私が本命にしたスーパーホーネットは出遅れて10着。 460キロで競馬をしていた馬が、今回は438キロ。厩舎は否定しているが調整の失敗だろう。返し馬でも口を割っていた。マイルで再度、狙いたい。

競馬学校一期生の石橋守にとって、意外にも?GⅠは初勝利だそうだ。 90年のエリザベス女王杯ではトウショウアイに騎乗し、1番人気になったことがある。この時はキョウエイタップの2着だったが、私が生涯初めて馬券を当てたレース。それが横山典-石橋だったと、今日になって気づいた。苦労人で人格者。武豊も一目置くと言われる寡黙な仕事人。デビュー前からずっと調教をつけてきた馬で勝つのは、実に彼らしい。小島貞博、大西直弘とイメージが重なるなら、2人のように春2冠を掴むのか。

2着の高田潤も松田博厩舎で縁の下の力持ちとして、半ば調教助手となって努力を積み重ねてきたジョッキー。皐月賞の神様は、そんなバイプレイヤーをワンツーフィニッシュさせる粋な計らいを見せた。ゴール後にハイタッチが失敗したのも、抱きつこうとした石橋が瀬戸口師に拒否されてしまったのも、どこかぎこちなくて初々しい。瀬戸口師には石橋の喜びを受け止めてあげてほしかったが。次は東京優駿。堂々と胸を張って主役として舞台に立ってもらいたい。

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2006.04.10

桜花賞回顧 キッス、キッス、恋唄

まるで一昔前のアイドルが歌う曲名のような結末ではないか。 "キッス-キッス-恋"とは。例年より時計がかかる馬場で行われた桜花賞だったが、スタミナは必要とされても道悪適性は不要だったようだ。アサヒライジングが引っ張る淀みない流れを後方待機のキッストゥヘヴンが差しきり勝ちを収めた。人気もなく気楽に乗れる利を活かして、安藤勝がアドマイヤキッスをマークした完璧な騎乗だった。それにせよ偶然で勝ったような内容ではなく、調子も含めて一歩、抜けていたようにみえた。小柄な馬体を減らさなかった陣営の調整も見事だった。

安藤勝が笠松からライデンリーダーで殴り込みをかけ、 1番人気で敗れた桜花賞から11年。今の技量と余裕があれば、ライデンリーダーも優勝に導けていたかもしれない。キッストゥヘヴンの父は去年、逝去したアドマイヤベガ。母の父はノーザンテースト。馬主の吉田和子氏は社台総帥の故・善哉氏の妻。馬名は天国にいる人馬に捧げようと名付けられた。まるで出来すぎたストーリーだ。フラワーCはフサイチパンドラの暴走に助けられたと思いこんで、思い印を打てなかったのが悔やまれる。

2着アドマイヤキッスも力は出し切っている。折り合いには苦労がなさそうで、オークスでも上位に食い込めるだろう。マイナス14キロは細くは映らなかった。3着コイウタはしぶとさに驚かされた。馬主の歌手・前川清も喜んでいるだろう。 5着シェルズレイは切れ味勝負になると分が悪い。本命にしたテイエムプリキュアは8着。発馬直後から押していたように、行きっぷりが本当ではなかった。原因は分からないが、立て直しには時間がかかる。フサイチパンドラは14着と大敗。気性が成長しなければ同じレースを繰り返す。

今週の皐月賞も桜花賞同様、何が来てもおかしくない混戦だ。やはり、キンコンカン(金子・近藤・関口)の所有馬が中心になる。 1番人気は桜に続いてコン、アドマイヤ軍団のムーン。カンのフサイチリシャール、フサイチジャンク、キンのナイアガラがどこまでムーンに迫れるか。桜花賞を勝った吉田和子氏はキャプテンベガを出走させる。個人的にはPO馬のナイアガラとキャプテンベガに勝ってほしいが、アドマイヤvsフサイチの壁は厚いかもしれない。

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2006.03.06

弥生賞回顧 ムーン圧勝で皐月賞は混戦に!?

春のクラシックを占う最も重要なトライアルである弥生賞が終わった。下馬評以上に強かったアドマイヤムーン。直線でよれるところはあったものの、グロリアスウィークを突き放した二の脚はGⅠ馬のものだった。共同通信杯→弥生賞の連勝はミスターシービー以来。しかし、快挙と喜んでばかりはいられない。ムーン陣営は本番で武豊を確保するために、敢えて出る必要のない異例のローテーションを組んできたわけで、馬はしっかり仕上げられていた。そのため、少なくとも皐月賞、ダービーの2戦とも万全の状態で出走させるのは容易ではなくなったとみる。

過去10年、年明けの重賞を勝ち、弥生賞で連対した馬は5頭いる。いずれも京成杯かきさらぎ賞を勝った馬だ。当然、皐月賞でも人気を背負うことになったが、その5頭の皐月賞での成績は【0032】。ダービーで連対するスペシャルウィーク、ナリタトップロードと、菊花賞まで復調は待たねばならなかったアドマイヤジャパンが3着。着外は二桁大敗したローマンエンパイアとボーンキングだ。ムーンはラジオたんぱ杯でも厳しいレースを強いられており、果たして皐月賞にお釣りがあるのかどうか、直前まで見極める必要があるだろう。但し、言えるのは決して鉄板の本命馬が誕生したのではないということだ。

対して、スタートから出遅れ、離れた最後方待機。強引なまくりで4着に完敗したサクラメガワンダーはどうだろうか。こちらは7分の仕上げで、鞍上が公言しているように明らかな試走だった。あんなレースで勝ってしまえば、ディープインパクトとは言わずとも、ウイニングチケット級の衝撃だっただろう。初勝利までに3戦を要しているように叩き良化型。本番はグッと良くなるのは違いないが、陣営はダービーを見据えている感じもしなくはない。近年の皐月賞は先行馬の優位性がさらに強まっていて、後ろから行くメガワンダーは歓迎すべきレースとはいえない。まして、荒れ馬場の今年は追い込み馬は厳しいだろうし、グリーンベルトが出現するようなら尚更だ。

2着グロリアスウィークには驚かされたが、伏兵の域は出ない。 5着スーパーホーネットも侮れないが、マイル向きの感はある。この後、トライアルは若葉SとスプリングSを残している。若葉Sには武豊のお手馬であるフサイチジャンク、連勝中のキャプテンベガが出走する。スプリングSは2歳王者フサイチリシャール、きさらぎ賞ワンツーのドリームパスポートメイショウサムソンが参戦。この他、皐月賞へ直行するジャリスコライトナイアガラといった面々もおり、おそらく他のトライアルがどんなレースになっても、大混戦のまま本番を迎えるのではないか。それにしても恐ろしいのは、こうして列挙した馬の大半が社台グループの生産馬である点。静内生産のメガワンダーは一矢、報いることができるか。

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2006.02.28

競馬外伝 ミッキー祭り実行委員会の熱い一日

「アンカツさん! いったい何を考えてるんですか?!」荒くれ者の藤田が掴みかかる。喧嘩の原因は第3レース。この日の主役、ミッキーこと松永幹夫が乗ったメイショウソーラーを 9馬身も突き放してアンカツが圧勝してしまったのだ。すかさず止めに入ったのは熊沢だ。「藤田、落ち着け。まだレースはある。こんなところで仲違いしたら、ミッキー祭り実行委員会がバラバラになってしまうじゃないか」ミッキーと同期の熊沢は実行委員会の委員長だ。みんなをまとめて祭りを成功させなければならない。

ミッキー祭り実行委員会はミッキーが調教師受験を決めた半年前から密かに準備を進めてきた。競馬界の功労者、ミッキーのために最高の花道を用意するのが使命だ。度重なる会議の末、熊沢委員長が出した結論が「史上12人目の1400勝を達成して有終の美を飾る」というものだった。土曜日に2勝をあげたミッキーは通算1398勝で引退当日を迎えた。日曜日には是が非でも2勝はしてもらわねばならない。熊沢が語る。「おい、みんな。3年前の河内祭りの最終レース、俺が何をしたか知ってるか?」「シャッー、落馬です」勢いよく答えたのは和田。「そうだ。何事にも恐れない勇気を持ってレースに臨んでくれ」。

熊沢にはまだ余裕があった。第6レース、ミッキーのセイウンワキタツは単勝2倍の1番人気。自然に回ってくれば負けることはない。だが、思わぬことが起きた。3番手の好位につけたはずのミッキーだったが、暴走気味の和田クロズキンに競りかけられ後退。 4角では高橋亮スナークムサシらに進路を塞がれ、ようやく抜け出したものの、柴山プレザントウインドに差しきられ2着に敗れてしまったのだ。ミッキーは「外の馬に邪魔をされたよ」とポツリと呟いた。「また草競馬ジョッキーかよ! 空気嫁よ!」藤田がキレた。「そんな言葉を吐くな。お前ら連帯責任だ」熊沢が押し殺した声で諭した。

委員会のメンバーに焦りが募る。続く第9レース、ナイキアースワークに騎乗したミッキーは出遅れてしまった。藤田、池添も慌てて出遅れるが、勝負には関係がない。ミッキーは7着が精一杯。「これはまずい。責任問題だな」熊沢の額から汗が流れた。残るレースはあと2鞍。メインレースの阪急杯で勝たなければ、1400勝達成は不可能になる。しかし、ミッキーのブルーショットガンは11番人気。状況は絶望的だ。「自分のことばっかり考えやがって!」「俺だって勝ちたいんすよ!」ジョッキールームに怒号が飛び交った。もう熊沢にも発する言葉はなく、実行委員会は音を立てて崩れ落ちていった。

そして、阪急杯。重苦しい雰囲気のままゲートが開いた。もはやチームワークはなかった。不良馬場を好き勝手に飛ばす騎手たち。そこで奇跡が起きた。中団につけていたミッキーが、直線で鮮やかに抜け出してきたのだ。外からアンカツのコスモシンドラーが追いすがるが、ブルーショットガンの脚色は衰えない。見事に1着でゴールイン! ミッキーの手綱さばきが勝利を呼び込んだ瞬間だった。「ミッキー!」「ミキオ~~」スタンドから大きな歓声がわきあがる。誰も予想しなかったメインレースでの優勝。劇的としか言いようがなかった。

そして、最終レース。空気の読めなさそうな騎手は委員会によって除外された。ミッキーは1番人気フィールドルージュで1400勝目をあげ、ミッキー祭りは最高の形で幕を閉じた。「競馬の神様が降りてきましたね」インタビューでミッキーはこう語った。だけど、熊沢は知っている。これは奇跡なんかじゃない。実行委員会メンバーが心を一つにして頑張ってきた積み重ねと、最後の重賞で最高の騎乗をしたミッキーの実力が織りなした結果であることを。引退式の後、メンバーの手で別れの胴上げが行われ、ミッキーは宙に舞った。熊沢の目には涙が光っていた。

※この記事は全て妄想に基づくフィクションです。

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2005.12.27

ディープショック外伝 武豊は六本木で痛飲? 

史上最強と謳われたディープインパクトの敗戦。そのディープショックは様々な波紋を広げていますが、レース以外のエピソードを拾ってみましょう。入場人員は16万2409人、徹夜組は1480人で、競馬場から船橋法典駅まで 1時間以上かかったというから、現地観戦された方はご苦労様でした。レースの売り上げは449億927万円と前年より15億円のマイナス。 1強のレースは売り上げは落ちますから、やむを得ません。ディープ絡みの馬券はこのうち76.6%でした。ディープの単勝支持率は62.6%(1.3倍)でしたが、 50%を超えた過去5頭はすべて優勝していただけに、ディープショックは大きかったと言えるでしょう。

とはいえ、いちばんショックだったのは「負けるわけにはいかない」と公言していた鞍上の武豊に違いありません。絶好調ではないと分りつつ、それでもディープは勝つと武豊は信じていたのだと思います。何しろ空飛ぶサラブレッドなのですから。

「それでも勝ち馬まで半馬身差です。こんなときこそ、ボクが力になってあの馬の戦跡にキズがつかないようにしてやれなかったのかと、それだけが悔いとして残ります。ジョッキーとしての力不足を感じた、ブルーなクリスマスでした」 (オフィシャルサイト)

武豊は「とんねるずのみなさんのおかげでした」の食わず嫌い王決定戦に出演した際、ディープが勝ったら苦手な「酢豚」の文字を手のひらに書いて口取りに臨むことを約束しました。レース前、武豊は酢豚と書くマジックは用意していたのか、それとも既に書いてあったのかは分りません。但し、祝勝会は準備してあったようです。武豊のブルーなクリスマスとはどんな夜だったのでしょう?

無傷の有馬制覇を逃した夜、武豊騎手(36)は東京・六本木で痛飲していた。「レース後、あるオイスターバーに大勢の関係者を招待。不敗神話が崩れたことが相当悔しかったようで、1本数万円の高級ワインを 10~20本空け、ジャンジャン飲んでいました」(関係者)… 本紙が店側に取材を申し込んだところ、「武さんは酔っていて電話に出られない」(店員)との答えが。… ホロ酔い加減の幸四郎が出てきた。後を追いかけてきたマネージャーに話を聞くと、「勝ってたら(店の中)を見せられるけど、今日は負けたので勘弁して欲しい」とのことだった。(27日付・日刊ゲンダイ)

さすがの武豊もショック。ニュース番組でも…(嘘)

祝勝会は残念会になってしまいましたが、悪いことは早く忘れてしまったほうが良いに違いありません。でも、こういう酒の飲み方をすると、翌日の二日酔いで自己嫌悪に陥ってしまうもの。酒豪を自任する武豊はどうだったでしょう。 貧乏人の私からすれば、やけ酒も一本数万円のワインなら、吐くまで飲んでみたいものですが。

一方、オーナーの金子真人氏も負けてもタダでは起きません。日刊ゲンダイによれば、当日「三冠達成ぬいぐるみ」900個、キーホルダー(900円)2100個がそれぞれ完売したそうです。この他にもディープグッズはストラップ、DVD、焼酎、パスネットなど、経済効果は数十億円規模になり、その数パーセントが金子氏のもとへ転がり込むとのこと。有馬記念の優勝賞金を失ったことぐらい、金子オーナーには蚊に刺されたほどでもなかったようです。ホント、負けても羨ましい限りですなぁ。

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2005.12.26

伝説第二章 "空飛ぶ英雄"の軛から放たれて

深い傷跡。ディープショックが日本列島を覆った12月25日。ディープインパクトは並のGⅠ馬ではない。小回り中山2500で最後方という不利な位置につけ、淀みのない流れをまくって道中で脚を使った。にも関わらず、最高のポジショニングをしたJC2着馬に半馬身差まで迫った。これは驚くべきことであり、賞賛されるべきことだ。だが、ひとつの事実が明らかされたことで、中山競馬場は失望と静寂に包まれた。ディープインパクトは空飛ぶサラブレッドでもなければ、セクレタリアトの再来でもなかったということだ。

レース後、武豊は「申し訳ない。いつものディープとは違った。なぜなのか分からない」と肩を落としたと言う。確かにディープは絶好調とは程遠い馬体ではあったが、走れない状態でもなかった(絶好調と言っていたパドック解説者は職を辞してほしい)。敗因は武豊が弁明したような不可解なものではなく、これまでのディープが問題にしてこなかった体調、馬場、コース、ポジション、ペース、そして相手関係という現実的なものだ。レース前、ディープ陣営は正攻法、つまり常識的な位置取りと戦法を採ると漏れ聞こえていただけに、最後方に下げたのは意外だった。

もし、武豊に「空飛ぶサラブレッドは追い込み、捲りで必ず勝てる」という思いがあったなら、それは過信だったということではないか。そこまで古馬勢の層は薄くはなかった。再度、確認するが、ディープは歴史的な強さを持つ名馬である。但し、神の脚を賜ったサラブレッドではない。そろそろ私たちは過剰演出された無敗の三冠馬の幻影から抜け出す時期に来ている。今回の敗戦を契機に社会現象となったディープブームは終わるかもしれない。しかし、ファンは落胆する必要は全くない。軛(くびき)から放たれ、私たちの元へ帰ってきたディープ伝説の第二幕を楽しみすればいいのだから。

勝ったハーツクライはルメールの好騎乗につきる。追い込み一辺倒だった馬を、大舞台で先行させたのだから大したもの。 JCの反動もなかった。競馬は八百長じゃない、ガチなんだ! 空気嫁なんて笑え、そう思わせてくれたのは幸せなことだった。 3着リンカーンも横山典が相変わらずの手綱さばき。 JCも走っているが、中山向きだと思う。4着にコスモバルク。上手く折り合って、4角では勝ったかと思わせる手応え。絞れれば、もっと走れた。今後は五十嵐とのコンビで落ち着かせてほしい。 6着にヘヴンリーロマンス。天皇賞秋はフロックではなかった。

2番人気に支持されたゼンノロブロイは8着。一杯に追いきっておらず、プラス12キロでの出走だった。精神的な糸が切れていたこともあるし、下見では良く見せていたが疲労は蓄積していたのだろう。軽い血統なだけに種牡馬として良い成績を残してほしい。やはり、ここが引退レースとなったタップダンスシチーは12着。果敢なハナで単勝を握りしめていた私は4角まで楽しませてもらった。残念だが全盛期の力は失われていた。長きに渡ってトップホースとして競馬界を引っ張ってくれたタップとロブロイには感謝したい。

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2005.12.12

朝日杯回顧 内田博の豪腕に痺れる

フサイチリシャールが4連勝で2歳王者に輝いた朝日杯FS。スローペースを番手で追走、直線も危なげなく抜け出してスーパーホーネットの追撃を振り切りました。展開がドンピシャ。父母はクロフネ×フサイチエアデールという馴染み深いアイドルホースで、まるでダビスタかウイポで配合した馬みたいです。芦毛とストライドの大きな走法から、クロフネのほうに姿は重なりますね。ただ、リシャールの印象はマイラーで、距離が伸びて良くなるというタイプではなさそう。有力馬の一頭には違いありませんが、これでクラシックも決まりとまでは言えません。

1番人気に推されたジャリスコライトは3着。ちょっと苛ついているところが、伸びを欠いた原因でしょうか。今回はキャリアの浅さ、現状の線の細さも出たようです。忙しい中山よりも、本質的には広い府中向き。またしても、藤沢主戦のデザーモはGⅠ3着ですか。直線の入り口でムチを落としてしまい、なんと"素手"をムチ代わりにして叩いていましたね。検量室でVTRを観ていた藤沢師の呆れた表情が印象的でした。「やっぱり、ペリエにしとけば良かったなぁ」と、思っているかもしれません。兄のアグネスデジタル同様、身が入るのは来秋か。やはり、来年はまだ見えないなぁ。

2着に入ったスーパーホーネット、鞍上は大井の内田博幸。この日は2勝2着2回と絶好調。しかも、その全てがウッチーの腕で持ってきた内容でした。朝日杯もそうですし、準メインの冬至Sも1番人気の武豊を差しきった手綱さばきには痺れました。今さらながら、そこらの助っ人外人より、遥かに上手いジョッキーです。凄いですよ、この騎手は。新潟チャンプ、ショウナンタキオンは4着。休養明けにしては走ったと言えるでしょうか。ただ、こういう予想通りのレースしかできないようでは、カッチーの連敗は止まらないですよね。ちょっと期待していたディープエアーは追い込んで6着。距離が伸びて再度。

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2005.12.11

速報 ハットトリックが香港マイル制覇!

11日、香港・シャティン競馬場で行われた香港マイルは、ペリエ騎乗のハットトリックが差しきり勝ちを収めた。同レースに出走したアサクサデンエンは5着だった。また、香港ヴァーズはジャパンカップにも出走した欧州年度代表馬、ウイジャボードが制した。2着にはシックスセンスが食い込んだ。香港スプリントに参戦したアドマイヤマックスは11着に敗れた。

>>香港国際競走の結果・レース映像はこちら(HKJC)

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2005.12.06

阪神JF回顧 波乱呼んだ直前の雷雨

やはり大荒れとなった阪神JF。回顧は簡単に失礼。直前に降り出した雨の影響で、切れ味タイプの馬には厳しい馬場になってしまった。データ解析の本命は アイスドール。対抗にフサイチパンドラ、単穴に シークレットコードで、この3頭の馬連、三連単BOXが勝負馬券。押さえにシークレット流しも。アイスドールは大外枠の不利に発馬一息、それに雨にたたられて着外に終わったが、それでも7着なら次走は絶対に買い。 1番人気アルーリングボイスは14着。調子落ち。

結局、能力の高さを見せながら、シークレットコード2着、フサイチパンドラ3着。惜しいorz。私の馬券を破壊してくれたのは テイエムプリキュア。前走の口向きの悪さから印を回さなかったが、結果論ではそれでも連勝してきたことを評価すべきだった。パラダイスクリーク×ステートリードンという鈍重な配合に馬場も向いた。熊沢はあのダイユサクの有馬記念以来、14年ぶりのGⅠ制覇。いつのまにあんな髪の色に…。コスモドリームといい、勝つときはあっと言わせるね。

250万円で落札されたというテイエムプリキュア。市場では100頭の馬から、この1頭を選んだというのだから凄い。竹園オーナーの引きに強さには毎度、恐れ入る。馬名は「ふたりはプリキュア」という幼児向けヒーローアニメからつけられたそう。新聞の絵解きに 「追い切りもマックスハート」って、ぜんぜん意味不明だったけど、このアニメに関連したものだったのね。プリキュアは 少女趣味の大きなお友達にも高い人気だとかで、確かに 「萌え」が流行語だった2005年を暗示する馬だったかもしれないなぁ。

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2005.11.29

死闘ジャパンカップ! 2分22秒1の新たなる伝説

まず間違いなく、今年のベストバウトとなったであろうジャパンカップ。2分22秒1というレコードもさることながら、一流馬が死力を尽くした直線の攻防は語り継がれていくはずだ。わずか3センチ、ハーツクライの追撃を凌いだアルカセットは素晴らしい走りだった。デットーリはこれで3度目のJC制覇、いずれもハナ差勝ちというのだから、天才的としか言いようがない。道中も動きにまったく無駄がなく、内へ馬を入れながらコース取りによってポジションをあげていった。この馬の硬い馬場への適性を見抜いて、デットーリはJC参戦を進言したという。名手は名馬を知る。このGⅠは1勝しかしていない馬を、3番人気にした日本のファンの見識にも脱帽。天の邪鬼の私は1円も買っていなかった。

また2着に泣いたハーツクライ。この馬は3度回のGⅠ2着。ちなみに鞍上のルメールは5回目橋口厩舎は18回目(1着は4回)。横山典から乗り替わっても、シルバーコレクターの鬼であることは変わりなかったか。自分からレースをつくることができない馬は、勝つ力はあっても取りこぼしが多くなる。残り100メートルで脚が上がったゼンノロブロイが3着。終始、外を回った影響はあるにせよ、現時点のポテンシャルは100%発揮した結果だろう。母系の軽さが、こういうギリギリの勝負では限界を見せるのかもしれない。天皇賞秋の惨敗から巻き返したリンカーンが4着。有馬記念は要注意だ。5着に欧州年度代表馬の女傑ウイジャボード。4角手前で早めに動く無謀な仕掛けは、非常にもったいなかった。デットーリがこちらをチョイスしていたら、勝ち馬は入れ替わっていたかも。

今回、2分22秒2のホーリックスの日本レコードが16年ぶりに更新された。東京競馬場は2年前に改修があってレコードがリセットされたこともあり、同列に時計を比べることにあまり意味はない(改修で直線は伸び、コーナーは緩やかになった)。だが、ホーリックスとオグリキャップの死闘を上回るタイムが記録されたのは、私にとって実に感慨深いものだった(初めて馬券を買ったレースということもあるが)。あのレースのイブンベイ役を務めたのが、タップダンスシチー。2000メートル通過はシンボリクリスエスのレコードよちコンマ3秒速い1分57秒7。並のGⅠ馬にできる芸当ではない。名勝負を演出してくれた佐藤哲に感謝したい。有馬記念でディープインパクトの前に立ち塞がるのは、このコンビだろうか。

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2005.11.23

デュランダル引退 来春のマイル戦線は?

史上初の中央GⅠ三連覇の偉業を阻止したのが、その名もハットトリックとは何とも皮肉なマイルCSでした。デュランダルの敗因は淀みないペース、動きたいところで動けなかったこと、4コ-ナーで外を回りすぎた点、少し太めのつくり、あるいは年齢的な衰え…。上がり33秒2はメンバー最速だったとはいえ、今までの豪脚から比べると物足りないものだったのも事実。敗因は複合的なものなのかもしれませんが、「展開いらずの追い込み馬」というデュランダルが作り上げたイメージが崩れたことだけは確かです。来年の海外遠征は取りやめたのは残念ですが、社台SSで種牡馬入りが決まったようで切れ味を受け継ぐ産駒を期待しましょう。

勝ったハットトリックは京都4戦4勝。秋の天皇賞で最速の上がりを叩きだしたのはダテではありませんでした。しかし、天皇賞があんなスローの競馬だったせいで、今秋は出走馬の能力の見極めに苦労しますね。いちばん強い競馬をしたのがダイワメジャー。ローエングリンがハナで引っ張ってくれたお陰で、ダイワメジャーは番手で理想的なラップを刻むことができました。その意味ではデュランダルの切れが殺されたのは、同馬主のローエングリンに遠因があったとも言えますね。先週は土日で10レースやって、的中は1レースだけ(;>_<;)。それでも、プラスだったのは土曜の京都最終で馬単2900円、3連単25370円を取れたから。ミッキー→佐久間→藤岡、サンキュー!

来年度、JRAはヴィクトリアマイル、阪神牝馬Sの新設など、牝馬、短距離重賞の充実を図りました。マイルCSではラインクラフトが3着だったわけですが、おそらく春は第1回ヴィクトリアマイル優勝をめざして、スイープトウショウと対決することになるでしょう。スタミナも必要な府中マイル戦ですから、シーザリオエアメサイアも出走してくるかもしれません。そうなると、ヴィクトリアマイルは相当盛り上がることになりますね。これだけ層が厚いと、安田記念で牡馬とも互角にやれるのではと思ってしまいます。個人的には新設GⅠは1800で、もう少し前倒して欲しかったけどしょうがないですね。ヴィクトリア→安田と連覇する馬が出てくるといいですが。

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2005.11.14

エリザベス女王杯回顧 勝負を分けた1コーナー

完全に勝ちパターンに嵌っていた大逃げオースミハルカ。それを差しきってしまったスイープトウショウは本当に強い。ペースは平均以下、GⅠにしては遅めぐらいでしょうか。 10馬身ほど離して単騎で逃げていたオースミハルカは気分良さそう。川島はマイネルブラウの小倉大賞典でも逃げ切って大穴をあけていますが(取らせてもらったので記憶が鮮明です)、こういう競馬をさせると本当に怖い騎手です。今回も坂の下りでしっかり息を抜かせているし、ラップの刻ませ方を掴んでいるのかもしれませんね。

4角でスパートしたハルカはセーフティーリードに見えましたが、宝塚記念、安田記念で男馬を撫で斬りにしたスイープは半端じゃなかった。一度は前をカットされたものの、中団から電光石火の豪脚でゴール寸前で交わしてしまいました。馬連1650円的中。ある程度、前で競馬できるようになったからこそ、スローにも対応できるようになったんですね。アドマイヤグルーヴは牝馬相手なら3着も当然。但し、スイープに互する全盛期の力はありませんでした。長期休養明けも仕上げの良かったヤマニンシュクルは4着。父トウカイテイオーのドラマを受け継ぐような好走は嬉しいですね。

後方に位置していた馬には苦しい展開でした。 1番人気エアメサイア、3番人気ヤマニンアラバスタの敗因は1コーナー。エアメサイアはスイープを内へ閉じこめようと寄せていきました。武豊一流のライバル潰しです。この時点で内からエアメサイア、スイープ、アラバスタの3頭が横並び。想定外だったのは、アラバスタの外からサミットヴィルが内へ切り込んできたこと。ゴチャついて接触したため、アラバスタは最後方に、口を割ったエアメサイアも手綱を引いて後ろへと押しやられてしまいました。スイープは影響なし。サンダースは武豊の同一GⅠ5連覇を阻むために来日したようです。

エリザベス女王杯では前評判の高かった3歳勢は古馬の壁に打ち返されさてしまいましたが、エアメサイアも位置取りさえ良ければ2、3着争いには加われていたはず。直線はしっかり伸びていましたから。今週のマイルCSはエアメサイアと切磋琢磨してきたラインクラフトが登場します。デュランダルにどこまで迫れるか、非常に楽しみです。デュランダルが勝つと池添は2週連続GⅠ制覇ですか。それはありなんですかねぇ。

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2005.11.07

花に荒らしの喩えもあるさ 万馬券で連勝!

寝ぼけ眼で始めたメインレース。東はアルゼンチン共和国杯。休み明け59キロ、これで1番人気のデルタブルースが勝たないことだけは分かったけど、どこからでも入れるメンバー。データ解析は軽量のハイフレンドトライに◎を打ちました。以下、 ○サクラセンチュリー、▲マーブルチーフで、この3頭のBOX馬連が勝負!気持ち重目のハイフレンドトライは沈んだものの、 ○▲の順で入って馬連11220円。 えー、マーブルチーフが13番人気とは…。 前走の京都大賞典は充分買える内容だったのに。

返す刀で西のメイン、ファンタジーS。 スピード指数上位のニシノタカラヅカを買いたくなりました。私の計算が間違ってるのは分かったけど、それでもランクAZなんだもん。 10番人気だったのでワイド、複勝。 それにアルーリングボイス1着固定で、ニシノ2、3着の3連単。 しぶとく3着に粘って3連単37480円。 おまけワイド1550円複勝700円。 ひさびさにドキドキしちゃったよ。

うぎゃーと喜びながら最終レース。 東京は1番人気マイティスプリングが確勝でしょう。 スピード指数からすると、たぶん圧勝するはず。相手はメジロハンターが気になるなぁ。 などと悩みながら馬連、3連単を選んで投票ボタンをポチって、 締め切られちゃったよorz。 漫画のようにマイティ→メジロで入線。3着に2番人気がきて 3連単は万馬券かよーーーー。 ショックから立ち直れません。

うぎゃーと発狂しながら京都最終レースへ。 6番人気マコトエンペラーが馬柱から浮ぶんです。 しかし、時間がない。こうなりゃマコト1着固定の3連単と馬連流しだな。鞍上は菊地昇ですよ、いいんですか? いいでしょう。 4角先頭のマコトが2着に粘って馬連2150円。 1着は1番人気、3着は2番人気なんだから、簡単に3連単9750円取れただろ。買い方悪すぎ。 ちくしょーーー。 大スランプだったのに、この日は何で当たり馬券が見えまくりなんだ??

とりあえず、半分まで減り続けてきた PAT口座が元に戻りました。 確かに年に2、3回は不思議とこんな日があるんですよね。この勢いで年末まで突っ走りたいっすねぇ。うちの予想掲示板でも書き込んでくれた方が全員的中と、良い風が吹き始めたようです。図に乗って「当たり馬券が舞う予想掲示板」と改名してしまいました。データ解析で予想しないレースはこちらに書き込んでしますが、みなさんもぜひ参加してくださいね。

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2005.11.01

天皇賞秋回顧 天覧競馬のサインはド真ん中

明治天皇以来、106年ぶりの競馬場行幸となった秋の天皇賞。 天覧競馬を観戦しようと、私も午前中から府中へ出かけてみました。 今年はエンペラーズカップ100周年ということで、 入場の際、記念のオッズカードをゲット。 場内は警察官の姿が目につき、警備の厳しさを感じさせます。 さてさて、この日の府中は前残りの傾向。 人気薄で鈍重そうなメジロの馬が内埒沿いに 粘りきるレースもあったんですが、ここに天皇賞のヒントが 隠されていたんですねぇ。馬券はくるみ賞で 馬単860円 、 紅葉特別で 馬連3250円 を獲ったものの、トータルマイナスでメインを迎えました。

天皇、皇后両陛下は 競馬博物館で武豊、柴田善、松永幹らの出迎えを受けられた後、 メモリアルスタンドの貴賓室にご来臨。 ターフビジョンにお姿が大写しになると、観客から大きな歓声が沸き起こりました。 レース前にはゼンノロブロイについて、多くの御質問をされたそうですが、 馬券は購入されなかったとか。 ファンファーレが鳴り、スタート。 ストーミーカフェ、タップダンスシチーが先陣を切り、 ロブロイは中団外、行き脚のつかないリンカーンは後方から。 予想に反してペースは未勝利戦なみの超スロー。 1000メートル62秒4って、歩いているようなものです。 こうなると上がり勝負になることは誰しもが分かること。

4角前で行き場を失ったロブロイは仕掛け遅れ。 粘るダンスインザムードをゴール寸前で、なんとか捉えた! と、思ったところに、最内から抜け出してきた ヘヴンリーロマンスが2頭の間を割って差しきり勝ち。 まさかまさかの大波乱。ウイニングランを終えた松永幹夫は スタンド前、馬上でヘルメットを脱いで深々と両陛下に一礼。 うわー、この大役が似合うのはミッキーかユタカしかいないよ。 紀宮殿下ご成婚を祝うヘヴンリーロマンス(天上のロマンス)とは、 皇室サイン馬券って本当にストレートなものじゃなきゃいけないんですね。 次回の天覧競馬に活かします(;>_<;)。

波乱の陰の立役者は佐藤哲とタップダンスシチーでしょう。 好調時ならペースが落ちるのを許さず、先頭でレースを引っ張る馬ですが、 今回、手綱は抑えたまま。レース後、 「まだ十分にやれることは分かった」と佐藤哲が前向きだったのは、 それだけ本調子ではなかった ということでしょうか。 4着アサクサデンエン。平均ペースだったら、この馬が勝っていたかもしれません。 5着スイープトウショウ、6着ハーツクライも展開を考えると、良く走っています。 出遅れたリンカーンは15着。上がりは32秒8ですから、 いかに特異なレースだったかが分かります。

ミッキーにとっては、初めて自厩舎の馬でのGⅠ勝ち、 初めて牝馬限定以外のGⅠ勝利。それを牝馬でやってしまうのがミッキーらしいですね。 ヘヴンリーロマンスはサンデー×サドラーズウェルズの配合。 今週のデータ解析では札幌記念(1着)で本命を打っていました。 力の要る馬場が得意だろうという根拠でしたから、 まさか上がりの競馬でロブロイらを負かしてしまうとは思えませんでした。 内が伸びる馬場、ぽっかりと進路が開いた直線、 ライバルから全くノーマークだったこと。 幸運はありましたが、いちばんの勝因はミッキーの神懸かり的騎乗と サドラーズウェルズの成長力だったのかな。

ウイニングランに両陛下は立ち上がって拍手されていました。 短い時間でしたが、競馬を楽しんで頂けたのではないでしょうか。 ところで、最終の多摩川特別。 私は馬連3900円 を獲って、ロブロイ単で勝負したマイナス額を少し減らせたのですが、 場内はメインの敬虔な雰囲気とは打って変わり、親父どもの罵声が吹き荒れました。 最終男・勝浦が2番人気の馬でスタート直後に落馬したからです。 振り落とされた際の受け身は華麗なものでした。 それだけに、レース後、通常の映像で2回、パトロールで2回、嫌がらせのように 合計4回も連続して勝浦ジャンプがターフヴィジョンで流されたのは心が温まりました(違うか)。

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2005.10.24

菊花賞回顧 期待は三冠後の次なるステージへ

人々の予想通り、 無敗の三冠という偉業を成し遂げてくれたディープインパクトと武豊。先週、ブログで触れなかったのは、語れば語るほど 陳腐になってしまうような気がしたからです。 京都競馬場は開門前から1万2000人が列をつくる前代未聞の事態。 1レースから異様な雰囲気になっていたようです。 菊花賞、ディープインパクトは今までにない好スタートを切りました。しかし、 1周目をゴールと勘違い して、スパートしようと折り合いを欠くアクシデント(もちろん馬がですよ、ハッシーじゃないんだから)。 武豊も必死で口を割るのを抑えていました。 並のGⅠ馬なら伸び脚を失うところですが、 上がり33秒3で先に抜け出したアドマイヤジャパンを 2馬身差、斬って捨てるのだから恐れ入りました。 アドマイヤジャパンはノリが完璧な競馬でしたね。 3着のローゼンクロイツも力は出し切りました。

そして、三冠はすでに過去の歴史となりました。 今後、古馬との対決、そして海外へという期待が 否応なしに高まってきます。 池江郎師は年内にもう一戦を考えているようで、 必然的にジャパンカップか有馬記念ということになります。 個人的にはクラシックディスタンスで紛れのないコースの ジャパンカップに参戦して、ゼンノロブロイタップダンスシチーら 国内勢、それに海外の強豪と雌雄を決していただきたい。 その後はエルコンドルパサーのような欧州長期滞在をぜひ! 菊花賞を見ると長距離をバリバリこなすタイプでないし、 天皇賞春は使わないほうが良いと思います。 変な掛かり癖がつくのは困りものです。 金子オーナーも海外遠征に前向きのようですから、 国内戦は年内でケリをつけてもらえないかなぁ。 本当にそれだけの馬だと思います。 それにしてもJRAの煽りは最後まで徹底していましたね。
>><ディープインパクト号 三冠制覇達成!>サイト

ところで、せっかくの歴史的なレースで いただけなかったのが競馬中継。 初めてフジテレビと関西テレビの共同制作ということで、 スーパー競馬とドリーム競馬が一緒になって番組を放送しました。 特別ゲストの岡部幸雄も、井崎先生と杉本清のコラボも良かった。 水野麗奈がカワイイのも関東の人間には分かった。 若槻千夏の地下道リポートは失敗だが、まあいい。 問題はW司会となった宮川一朗太福原アナの呼吸がまったく合わなかったこと。 「有力な関東馬がいないのが寂しい」という 福原アナのコメントには、「関係なく良い馬を応援しましょう」 とツレナイ返事。細かいところでも、お互いが 喋ろう喋ろうとして聞きづらかった。 表彰式で武豊が三本指を立てた映像も、 配当のテロップとコメントが被って見えなかったり。。。 最後の「衝撃は歴史と大地を揺るがして… ディープインパクトです!」の一朗太の〆コメントには、 福原アナは「おめでとうございます」と余計な一言を追加。 スタッフには申し訳ないですが、 視聴者には淡々と見せてくれるほうが良かったかもしれません。

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2005.10.18

秋華賞回顧 二度あるユタカマジックは三度ある

下馬評通り、福永ラインクラフト武豊エアメサイアの一騎打ちとなった秋華賞。 レース前からメディアでユタカが色々と 挑発していましたが、私には心理戦というより、ユタカが ユーイチをライバルに