カテゴリー「競馬日記」の11件の記事

2017.05.23

オークス回顧 桜の借りを返すソウルスターリング完勝 
眞子さまのご婚約の皇室馬券は?

ソウルスターリングが人気に応えて優勝したオークス。 フローレスマジックが押し出されるようにハナに立つ展開は、 1000メートルが61秒7というスローペースで流れた。 ソウルスターリングは少し折り合いを欠きそうになるが、 ルメールがしっかりなだめながら逃げ馬の直後を追走する。 4コーナーを回って馬場の中ほどに出し、直線入り口では持ったまま先頭に並びかけた。 内から伸びるモズカッチャンが一度は先に出るが、 ムチを入れられると瞬時に加速。後続を突き放してゴール。圧倒的人気を裏切った桜の借りを返した。 内外とも絶好の馬場状態で、2番枠の利を活かしたルメールはライバルに付け入る隙を与えなかった。 吉田照哉総帥によればチューリップ賞はフケが来ていて、桜花賞でも少し残っていたとのこと。 前走の敗因は道悪には違いないが、体調面は桜からグッと上昇していたのだろう。 パドックでも馬のデキは際立っていた。ルメールは母スタセリタで仏オークスを勝っているが、 その時も2番手から抜け出す競馬だったそうだ。競馬は歴史を繰り返すスポーツなのかもしれない。

2着モズカッチャンはフローラSも強かったが、勝ち馬と同様に内枠を上手に使った。 今開催の東京は時計は出るが、ディープインパクト産駒のような瞬発力に秀でたタイプより、 多少パワーの要る馬場が得意なタイプが好走している。ハービンジャー産駒のモズカッチャンは馬場も合っていたのだろう。 3着に大外から差してきたアドマイヤミヤビ。良馬場で力は出せたものの、 外枠とペースに泣かされた。デキもそれほど良く映らなかっただけに、地力の高さを証明したと言えよう。 4着に最内を伸びたディアドラ。あとわずかで複勝圏内。中1週で頑張っている。 この馬もハービンジャー産駒だ。5着に3番人気リスグラシュー。 私は府中のスタンドで声が枯れるまで応援したが、残念ながら思うような競馬ができなかった。 最大の課題は馬体維持。432キロは及第点だが、腹は巻き上がってギリギリのつくりではあった。 輸送の影響でパドックでは入れ込みが目立ち、出遅れ、道中は折り合いに苦労した。 さらに直線では挟まれる不利。ちょっとアンラッキーが重なった。 夏はじっくり休養して、成長した姿を秋に見せてほしい。

逃げたフローレスマジックが6着。古馬になって本格化する血統で、これだけやれれば十分だ。 桜花賞・レーヌミノルは13着。もっと積極的な競馬をするものだと思っていたが、 距離延長に対応しようと中団で折り合いに専念する作戦をとった。 それでも2400メートルの壁は厚かったよう。馬体は頗る良さ気に見えたが。 穴人気だったホウオウパフュームは16着。鮮やかな寒竹賞は忘れられないが、当時のデキが戻ってこないようだ。 以下、余談。先週は眞子さまの婚約で世間は湧いただけに、JRA十八番の皇室馬券が 炸裂するのではないかとサインを探したファンは多かった。 井崎脩五郎は婚約相手が藤沢市主催のコンテストで海の王子に選ばれたことから「藤沢厩舎」。 クリストフ・ルメールの「キリスト」が出身の「国際基督教大学」を想起させることから、 ソウルスターリングを本命にしていた。見事的中ではあるが、JRAのサイン馬券とはもっと素直なものではないか。 私の友人は眞子さまのお印「モッコウバラ」に注目していた。花の色は白と黄色の2種類しかない。 ならばと枠連1-5を買ったのだがハズレ。しかし、ソウルスターリングのウイニングランを見て気づいた。 白の帽子に黄色の勝負服。馬上に美しいモッコウバラが咲いていた。

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2017.05.16

ヴィクトリアマイル回顧 アドマイヤリード作戦勝ちで金星 
あのジンクスは今年も更新

前日の激しい雨に打たれた馬場は回復に時間がかかり、 ヴィクトリアマイルは稍重で行われることになった。 水分を含んだ芝は見た目よりも重かったようで、スタミナとパワーが問われるタフなレースになった。 スプリント戦を使われてきたソルヴェイグがスピードの違いからハナに立つ展開。 ただ生粋の逃げ馬でもなく、ペースはあがらない。 馬群は馬場の悪い4、5頭分の内側をあけながら、ダンゴで淡々と流れていく。 前半800メートルは47秒9。まったくのスローペースだ。 高松宮記念2着だったレッツゴードンキは折り合いを欠いて自滅してしまったほど。 1番人気ミッキークイーンは反応鈍く、中団から伸びなかった。 前走の阪神牝馬Sは鮮やかな勝利だったが、重馬場を快走した反動があったのだろうか。 これまで牝馬相手では複勝圏を外したことはなく、差し遅れはあっても 脚なく負けることはなかった。詳しい原因はわからないが、何らか体調面に問題があったとしか思えない。

優勝したのはアドマイヤリード。初めての重賞勝ちがビッグタイトルになった。 逃げたソルヴェイグがコンマ3秒差の5着に粘ったように、先行有利の展開。 追い込みタイプのアドマイヤリードが突き抜けたのは、巧みな手綱さばきによるものだ。 ルメールは6番枠を活かし、前半は状態の良い内ぎりぎりを走ってロスを防いだ。 3角に差し掛かると今度は内へと切り込み、コーナーリングを利してポジションをあげていく。 ピッチ走法の同馬は他馬ほど重い芝を厭わない。直線入り口では先頭集団を射程圏内に捕えることに成功。 そこで馬場の中ほどに持ち出し、芝の傷みの少ない進路を確保した。 アドマイヤリードの最大の武器は一瞬の切れ。ルメールは仕掛けのタイミングを見計らう。 残り200メートル手前、スマートレイアーとソルヴェイグの間に1頭分の空間が生まれた。 その瞬間、解き放たれたバネのように脚を炸裂させたのだった。 ルメールはこの日、JRA記録タイの9連対。 極限の集中状態“ゾーン”に入っていたようなパーフェクト騎乗だった。 一方、陣営は一週前の追い切りではウッドで2頭を先行させ、最後に狭い隙間から抜き去る稽古を積ませていた。周到に準備をしてきた作戦勝ちだったわけだ。

波乱を起こしたのは11番人気デンコウアンジュ。外から差して上位に入ったのは、この馬だけだ。 2歳時はアルテミスSでメジャーエンブレムを差し切り、オークスは不利がありながら シンハライトからコンマ4秒差。言われていたように直線の長い府中は得意だし、 多少時計のかかる芝もメイショウサムソン産駒には合っていたのだろう。 前走の福島牝馬Sで早めに動く競馬をしたのも良い刺激になっていたはずだ。 とはいえ、G1ではなかなか印が回せないのも事実。難しい。 3着は上がり馬のジュールポレール。サダムパテックの半妹で、重馬場も苦にしないのだろう。 上位3頭は4歳馬。過去の傾向通りではある。4着に私が本命にしたスマートレイアー。 2番手から思い通りの競馬ができたと思うがスローペースだった分、 ゴール前のコンマ1秒の切れを争う展開のなかで、クビ、アタマ、連対に至らなかった。 6着にクイーンズリング。阪神牝馬Sに続いて馬場に殺された。 秋は良馬場で走らせたい。2番人気ルージュバックは10着。 マイルは短いし、位置取りも後ろ過ぎた。

なお、拙予想記事で改めて取り上げたジンクス。 「ヴィクトリアマイルでは2走前までに、大外枠または大外から2番目の枠に入っていた馬が連勝中」 というものだが、4頭いた該当馬のうちのアドマイヤリードが勝ったことで、 ジンクスは8年連続更新されることになった。 不思議なものだが、来年もしっかりチェックしておきたい。

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2017.05.10

NHKマイルC回顧 人気馬惨敗に競馬の難しさを痛感

NHKマイルC、馬券は大外れ。だが、口取りで見せたノリの破顔一笑に救われたファンは多かったのではないか。私はそうだ。先行馬が有利だった桜花賞で、普段とは違う追い込みに賭けた横山典弘とアエロリット。素晴らしい差し脚を見せたが5着に敗れた。今回は一転、抜群のスタートを切ると、控えることなく好位をキープ。逃げるボンセルヴィーゾの後ろにつけて、積極果敢に馬群をリードした。4コーナーでは早めに仕掛け、後続を寄せ付 けることなくゴールを駆け抜けた。前後半は【46.1-46.2】の平均ペース。これで完勝したのだから展開に恵まれただけの勝利とは言えまい。トップレベル牝馬のアドマイヤミヤビ、ソウルスターリングらと接戦してきた実績はダテではなかったということだろう。それにクロフネ産駒は持続力を問われるマイル戦は強い。当日の仕上げも素晴らしく、ノリも自信を持って乗っていた。アエロリットはサンデーレーシングでは格安の1400万円で募集された馬。会員は痛快だろう。

この日の馬場は内が伸びず、先に行った馬が有利であった。2着に13番人気のリエノテソーロ。二桁人気が激走するレースではあるが、ダートで勝ってきた印象が濃く印は回せなかった。尤もダート馬が好走しやすいのもNHKマイルCの特徴なのではあるが。3着に逃げたポンセルヴィーゾ。この5戦、重賞を走って1着はないものの、複勝圏を外したことがない。祖母リュバンドールはリトルオードリーの半妹で、当時、POGでも人気を集めた馬。そこからサクラローレル、ダイワメジャーと重ねられて、ボンセルヴィーゾのような個性派が誕生したのだから面白い。1番人気カラクレナイはブービー17着。桜花賞ではアエロリットと同じような競馬をして先着していたが、アエロリットが前走より上昇していたのに対し、カラクレナイは桜がピークだったよう。それに輸送、初めての左回りとマイナス材料もあっての惨敗か。体調の見極めが難しかったと言えば、私が本命にした4番人気アウトライアーズ。まったく良いところなく、後方のまま13着に沈んだ。レース前、管理する小島茂之師はブログで戸惑う気持ちを率直に記していた。

変に落ち着いていて
気になっていた心の部分は
少し気持ちが乗ってきた感じ

それでも
以前の張り切り過ぎて
若さあふれていたころと比較すると
何だかやけに大人しい(中略)

デビュー以来
気持ちが入ると
なかなかおさまらず苦労していたのに
今は一応カーッと怒るのだが
直ぐにおさまって有難いけど
やっぱり不安 (小島茂之厩舎の本音)

アウトライアーズはNHKマイルCに向けた軽い追い切りで疲労感が出たため、レース前は予定を変更して坂路で追いきったという。その後「いつもの良い時のアウトライアーズ」に戻ったと、小島茂師は期待を持って送り出したのだった。結果的にはアウトライアーズもカラクレナイと同様、本調子ではなく、闘争心に欠けていた。だが、毎日接している一流の調教師でさえも本当の状態を見抜くことができないなら、私のような素人に適切な判断などできるわけもない。改めて競馬の難しさを痛感させられるばかりである。

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2017.05.02

天皇賞春回顧 キタサンブラックがレコードで連覇 
死力を尽くした名勝負が胸を打つ

キタサンブラックが連覇を達成した春の盾。 2006年にディープインパクトが記録した不滅のレコードをコンマ9秒も上回る 驚異的なレースになった。ヤマカツライデンがハナを切り、最初の1000メートルが 58秒3というハイラップで馬群を引っ張った。キタサンブラックは離れた2番手。 鞍上の武豊が全体の流れをコントロールする主導権を握った。 最内をロスなく走るキタサンブラックは4コーナーで一杯になったヤマカツライデンを交わし、 早めのスパートを試みる。それまでのペースから繰り出せる脚を計算し、 全能力をゴールで使い切るであろう絶妙のタイミング。 淀3200のすべてを知る武豊の完璧な仕掛けだった。 最後の1ハロンは12秒2とキタサンブラックも一杯になったが、ライバルたちの脚も残っていなかった。 肉を切らせて骨を断つ、死力を尽くした名勝負に胸を打たれた。 去年の天皇賞春ではキタサンブラックは格下のカレンミロティックにハナ差まで迫られた。 故に決して生粋のステイヤーではないのだが、あの時よりも遥かにパワーアップしていることを 証明したと言えよう。それに秀でた先行力と稀有な自在性が備わることで、 毎回のようにレースを支配することができるわけだ。

2着は福永のシュヴァルグラン。 去年は消極的なレース運びで不完全燃焼だったが、今年は一転、積極的な競馬を見せてくれた。 阪神大賞典での予行演習の成果が出た。ステイヤーとして能力をフルに発揮できる展開になり、 前走で力負けしたサトノダイヤモンドに先着することができた。 2番人気、そのサトノダイヤモンドは最速の上がりは記録したものの、 勝ち馬を捕らえるだけのスタミナは残っていなかった。 外枠の不利は小さくなかったが、激しい消耗戦では分が悪かったということか。 それでも悲観する内容ではなく、歴史に刻まれる二強対決の片方の主役としての責任は果たした。 あわやの4着に10番人気アドマイヤデウス。岩田のパーフェクトな騎乗が光った。 6着ディーマジェスティは蛯名が「ずっと突っ張っているような感じで進んでいかない」と述べていたが、 本調子ではないのだろう。それでも、この着順に来ているのは地力の高さなのだが。 7着ゴールドアクターは出遅れて終わった。9着に3番人気シャケトラ。こちらも出遅れ、 ポジションを取るために早々に脚を使った。キャリアの浅さが露呈したが、まだまだ成長の余地がある。 いずれにせよ、1番人気10連敗中のジンクスを跳ね返したキタサンブラックの圧勝劇は、 一時、巷で騒がれた春盾の距離短縮論を黙らせるに十分なレースだった。 今後は二強とも体調を第一に、ロンシャンに狙いを定めてほしい。

一方、その2時間ほど後、香港ではネオリアリズムが クイーンエリザベスⅡ世カップ(2000メートル)を制し、初G1タイトルを手に入れた。 1000メートル通過が67秒3という超のつくスローペース。 ネオリアリズムも堪らずに折り合いを欠いていたが、 3コーナーで鞍上のモレイラは手綱を緩めて一気に先頭を奪う。 そこからペースをあげて持続力勝負に持ち込み、1番人気ワーザーらの差し脚を封じて ゴールまで粘り込んだ。ネオリアリズムは乗り方の非常に難しい馬だが、 展開に応じて馬を動かし、抑え込む、高度な技術があってこその勝利。 神がかり的な騎乗だった。堀厩舎はモーリス、サトノクラウンに続く香港G1制覇だ。 先週、もう1つ強烈な印象を与えたのが青葉賞のアドミラブル。 最後方に位置していたが3コーナーからスパート。4番手まで進出して直線を向くと、 残り400メートルで先頭へ。詰め寄られると二の脚で突き放して2馬身半差でゴール。 それが2分23秒6のレースレコードである。デムーロ曰く「今回はダービーの練習。ダービーでも乗りたい」。 皐月賞2着のペルシアンナイトを袖にすることになるようだ。本番でも1番人気に推されそうで、 牡馬クラシックも面白くなってきた。

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2017.04.26

フローラSを終えて 混沌とする牝馬クラシック

「ことしの3歳牝馬は最強世代」なる下馬評は本当だったのか。フローラSを終えて、そうした思いを強くしたファンは多いだろう。寒竹賞で牡馬を豪快に差し切り、この世代の評判をいっそう強固にしたホウオウパフューム。スローペースに絡め取られたとはいえ、見せ場もなく着外に敗れてしまった。前走の内容を考えれば走らなさすぎではあるが、陣営も「横綱相撲で勝てるほど甘くなかった」と言っているように力負けとされても仕方ない結果だった。レースは内を伸びたハービンジャー産駒のワンツー。長い芝丈が合うのか、この時期が得意なのか。モズカッチャンの勝利は鮮やかで、ヤマカツグレースも血統的に魅力的ではあるが、勝ち時計は平凡でオークスにはつながらないと思う。3着のフローレスマジックが本番までに調子をグッとあげてくれば怖いが、兄弟のように本格化は秋以降だろう。

桜花賞の前は、絶対女王ソウルスターリングに、別路線を進んできたアドマイヤミヤビとホウオウパフュームが挑むというのが、牝馬クラシックの構図だった。そして、フラワーCを制したファンディーナはダービーに向かうと。だが、すべての馬に土がつき、皐月賞1番人気のファンディーナは樫に出走できるかも怪しい状態だ。もう1頭、一部で注目されていたルヴォワールも、ミモザ賞を楽勝した後に脚元を腫らして、春を全休せざるを得なくなった。ただ、新興勢力の台頭がないなかでは、オークスは例年通り、桜花賞組が上位を争うことになると考える。順当ならソウルスターリング、アドマイヤミヤビ、リスグラシューが力は上だと思うが、牝馬は一度、体調面で躓くと、立て直しは容易ではない。中間、しっかりと負荷をかけられるか、調子を見極めなくてはならない。つい先日まで、これほどオークスが混沌とするとは思っていなかったわけで、改めてクラシックは難しい。

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2017.04.18

皐月賞回顧 アルアインが叩き合い制す 
松山の“剥き出しの必死さ”ゆえに勝利は尊い

桜花賞に続いて皐月賞も馬場が勝敗をわける結果になった。 前週までの重い馬場とは打って変わって、中山は最終週には似つかわしくない高速馬場。 芝2000メートルでは土曜の未勝利が2分0秒4、日曜の1000万特別が1分58秒7の勝ち時計だった。 外を回さなければならない差し馬の勝機は、かなり低くなることが予測された。 レースはアダムバローズが逃げ、トラスト、クリンチャーが続いた。 注目の岩田ファンディーナはアルアインと併走しながら内の4、5番手を進む。 その直後にダンビュライト。1000メートル通過は59秒フラットと締まった流れに。 だが、この速い馬場を考えれば、ダンビュライトあたりまでが有利なポジショニング だったのではなかろうか。後方に位置していたデムーロのペルシアンナイトも向こう正面から 動き始めた。勝負所は3、4コーナー。武豊のダンビュライトはファンディーナに 外から並びかけて蓋をし、本命馬にプレッシャーをかける。 一方、松山のアルアイン。一瞬、馬場に脚をとられて手応えが怪しくなり、先団と距離が開いた。 しかし、松山の叱咤に応えて再加速。 内から上がってきた僚馬ペルシアンナイトに進路を譲らず、 馬体をぶつけるようにして4コーナーを回った。

この後の直線、ファンディーナはダンビュライトに交わされて失速。 ペルシアンナイトとアルアインはクリンチャーを挟んで内外から伸びるが、 人気薄のアルアインのほうが叩き合いを制した。前後半59.0-58.8の平均ペースで、 時計は1分57秒8と去年のディーマジェスティをコンマ1秒上回るレースレコード。 高速馬場での持久力勝負はステップにした毎日杯も同じで、 スピード、スタミナを併せ持つ馬だからこそ勝つことができたと言っていい。 それに松山のファイトあふれる騎乗も恐れ入った。4コーナー、同厩舎の人気馬に対して 外から被せに行くなど大レースであるほど躊躇するはず。 もしアルアインが負け、ペルシアンナイトも他馬に遅れを取ったならば非難されて仕方がない。 だが、クラシックで頂点に立ちたいと欲すれば、なりふり構わず、どこかでリスクを取らなくてはならないのだ。 松山は序盤から本命馬をマークし、勝負所では僚馬にさえ激しく競りかけた。 勝ちたい気持ちを剥き出しにし、馬の力が尽き果てるまで追い続けた。 その純粋な必死さ故に勝ち得た、初めてのG1タイトル。若き獅子の涙は尊い。

尤も、皐月賞は激戦だったわけで、毎日杯から速い時計で連勝したアルアインが 万全の体調でダービーに向かえるかは冷静に考える必要があろう。 易易と二冠とはいかない。2着ペルシアンナイトは道中で脚を使いながら、 直線で一度は完全に抜け出した。能力は相当に高く、皐月賞の反動がなければダービーでも有力候補だ。 3着ダンビュライト。長く脚を使える特徴を武豊が最大限、活かした。 4着クリンチャー。すみれSの好内容がフロックでないことを証明した。 5着にホープフルS以来だったレイデオロ。道中は16番手。後方から追い込んだだけで、 最初から勝負に参加する気はなかった。使われて本番は良化する。 6着スワーヴリチャードも皐月賞は視界になかったよう。 これまでのレースぶりから右回りは苦手で、今回もずっと右手前で走っていた。 得意の左回りに変われば、レースぶりは見違えるものになるだろう。 皐月賞を流した分、ダービーでは最有力候補になるのかと思う。 7着はファンディーナ。初めてのハイラップ、牡馬から与え続けられたプレッシャー、 年明け4戦目のローテなど、厳しい状況が重なったなかで良く走っている。 完成するのはまだ先で、次走はどこであれ、体調を第一にじっくり成長を促してほしい。

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2017.04.13

ファンディーナとソウルスターリング 強すぎる牝馬に悩む

桜花賞は単勝1.4倍の1番人気に推されていたソウルスターリングが敗れ、 波乱の結果となった。過去5年、1番人気で連対したのはハープスターだけだが、 去年のメジャーエンブレム(1.5倍)、一昨年のルージュバック(1.6倍) と3年連続で圧倒的人気馬が“飛んだ”ことになる。 阪神JF、チューリップ賞と同じ舞台で快勝してきたソウルスターリングに死角はないはずだった。 だが、前日からの雨が馬場を湿らせ、同馬はいつもの差し脚を繰り出すことができなかった。 大跳びのベタ爪で滑るような馬場はからっきし下手だったのだ。 振り返れば、雨の影響が残っていた札幌のデビュー戦はクビ差の辛勝と、 ソウルスターリングが最も苦戦したレースだった。しかし、単勝3000万円の大口投票があったとの情報や、 「母はモンズーンの仔だから重馬場でも問題ない」との陣営コメントから、 リスクを過小評価してしまったように思えてならない。 馬場の読み方が難解だったこともあって、こうした正常性バイアスに私も絡め取られてしまった。 それでも、完全に勝負付けの済んでいたレーヌミノルを上位に取ることはできなかっただろう。 わずかに一口馬のリスグラシューから流していた馬券があたったが、予想は完敗だった。

ソウルスターリングはオークスに向かう。樫は距離延長を欲すリスグラシューと好勝負になるはずだ。 桜花賞のリスグラシューはエンジンのかかりが遅く、 勝負所で置かれてしまったのが痛かった。アルテミスSを快勝を見れば分かるように、 パフォーマンスは府中でいっそう上がるだろう。 2番人気のアドマイヤミヤビも大跳びで、馬場にまったく対応できなかった。 オークスは桜花賞で大敗していても巻き返し可能なレースで、 アドマイヤミヤビも立て直してくるのではないか。さて、今週は皐月賞。 1番人気が予想されるのは牝馬のファンディーナという前代未聞の事態である。 前回、牝馬が皐月賞を制したのは1948年のヒデヒカリまで遡らねばならない。 入着も1991年のダンスダンスダンス(5着)以来ない。 まして1月22日の年明けデビューで、これより遅いデビューで皐月賞を勝ったのは現代では 1988年のヤエノムテキぐらいだ。だが、フラワーCまで3連勝したレースの中身を鑑みれば、 常識やデータなど些末な揚げ足取りにしか見えないのも事実。 今週、重馬場の坂路での追い切りも好時計をマークし、仕上げに抜かりもないようだ。 「1番人気の年明けデビューの牝馬が勝てるわけがない」のか、 「規格外の勝ちっぷりから皐月賞も負けるわけがない」のか。正常性バイアスもダブルバインドで馬券は悩ましい。

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2017.04.04

G1大阪杯は貫禄勝ち キタサンブラックが初代王者に

G1に昇格して初めての大阪杯は、王者キタサンブラックが完勝。まざまざと力の差を見せつけた。戦前、マルターズアポジーがハイラップで引っ張り、ライバルたちもキタサンブラックを目標にして早めに仕掛けられるのではないかとの見方があった。雨が残るかもしれないという思いもあって、私もキタサンブラックを負かすチャンスのありそうな馬を探した。しかし、すべては徒労だった。マルターズアポジーは1000メートル59秒6の平均ペースを刻み、キタサンブラックはロードヴァンドールを挟んで離れた3番手。まったく楽なペースで追走していた。その後ろにいたサトノクラウンは動かない。マカヒキ、アンビシャスは後方待機だ。そんな展開を見越していたのか、武豊は格が違うのだといわんばかりの横綱競馬。直線、悠々と先頭に立つと、危なげなく先頭でゴールし、付け入る隙を与えなかった。

すべて流れがキタサンブラックに向いたのは確かだが、それは実力差が大きくライバルたちが何ら策を講じられなかった結果だ。貫禄勝ちとは、こういうことを言うのだろう。晴天で馬場の乾きが早かったのも、強者が運を引きつけたからのように感じる。次走は天皇賞春。サトノダイヤモンドに挑むキタサンブラックにとって、大阪杯は例年と同じく、勝つことが当然のステップレースだった。圧倒的な強さに北島三郎オーナーが年内引退を撤回したのも頷ける。2着はステファノス。キタサンブラックをマークして積極的に勝負に行ってのものだけに価値がある。3着ヤマカツエースも力をつけてはいる。4着マカヒキは鞍上のルメール曰く「もし内枠だったら2、3着はあった」。勝ち負けを期待したファンにとっては満足いかないコメントだろう。本来のデキを取り戻すには、もう少し時間がかかりそうだ。5着アンビシャス。乗り方の難しい馬で、先へ出していくとかかってしまう。去年、先行してキタサンブラックを降した大阪杯は神がかり的騎乗で、今回は追い込みに賭けたが展開頼みだった。6着サトノクラウンはマイナス12キロ。気負いが目立った。

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2017.03.28

ドバイWC回顧 世界最強馬の勝ち方は“ハリウッド”

「これで勝つようならハリウッド映画じゃないか」、そうアメリカの バファート師は思ったという。 ゲートで出遅れ、挟まれて最後方に押しやられたアロゲート。 それでも速脚を使って馬群に取り付くと、3コーナー手前から一気に加速する。 泥だらけになりながら隙間を縫うように中団まであがっていく。 勢いは衰えることなく、4コーナーは外を回して先団へ。 内から膨らんできた相手を弾き飛ばし、直線は粘り込みを図る2頭をめがけて襲いかかった。 残り200メートル、ガンランナーを外から捻じ伏せると、あとは独壇場だった。 2馬身のセーフティーリードを広げると、手綱を抑えて悠々とゴール。 何たるエンジンの凄さ。信じられないパフォーマンス。まさにハリウッドな勝ち方だ。 第22回ドバイワールドカップの覇者となったアロゲートは、アンブライドルズソング産駒の4歳牡馬。 BCクラシックではカリフォルニアクロームを破り、 前走は世界最高賞金のペガサスワールドカップを圧勝していた。 世界一のダート馬の勝ち方とはかくなるものか。 アロゲートのような馬を生み出す、アメリカ競馬の深遠さを感じずにはいられなかった。

アロゲートと対戦した日本勢は、アウォーディーの5着が最高だった。 一昨年、オールウェザーからダートに戻ったワールドカップは 日本馬が好走するには厳しいレースになった。その中で最後まで食らいついていったアウォーディー、 最後方から8着まで追い上げたラニの兄弟は大いに健闘したと言えるだろう。 一方、去年はラニが制したUAEダービー。国内無敗のエピカリスがハナを切り、ゴールまでサンダースノーと一騎打ち。 わずかに短頭差だけ交わされたが、世界レベルの実力があることを証明できた。 次走は渡米し、プリークネスSかベルモントSに挑むという。 キャロットクラブの出資者にとって夢のようなクラシックシーズンになるだろう。 そして、日本馬が得意とするドバイターフ。リアルスティールに続く日本馬の優勝は 難しかろうという大勢の見方を覆し、4歳牝馬のヴィブロスが海外初遠征で大金星をあげた。 鞍上のモレイラは強風を嫌って他馬を風よけに、後方3番手にポジショニング。 4コーナー、内を回って順位を押し上げる。直線では残り400メートルから外へ持ち出し、 ディープ牝馬らしい鋭い脚で差し切ったのだった。佐々木主浩オーナーの強運と名手の戦術が 栄冠を引き寄せた。秋はアメリカ遠征も視野にあるというから楽しみだ。

ドバイ国際競走の翌日、国内では高松宮記念が行われた。 私は凖メインに出資馬が出走することもあって、初めて中京競馬場に遠征することにした。 あいにくの雨模様で、午前中は内の逃げ馬が有利な馬場状態だったが、 レースが続くに連れて芝は掘り返され、傾向は読みづらくなった。 この馬場をまったく苦にしなかったのがセイウンコウセイ。 好発4番手から競馬を進めると、絶好の手応えで直線へ。馬場の真ん中に持ち出されると、 内でもがくライバルを悠々と追い抜き、先頭でゴール板を駆け抜けた。 これが初重賞勝ちとは思えない、威風堂々たる完勝であった。 ニシノ・セイウン軍団としてはセイウンスカイの菊花賞以来のビッグタイトルだが、 西山茂行オーナーの名義としては初G1制覇になる。桜井牧場(静内)は家族3人と従業員1人で 繁殖12頭を世話する小さな生産者。こちらも初めてのG1勝ち。 名門オーナーと家族経営の牧場の栄誉は、競馬界に彩りを与える。心からお祝い申し上げたい。 私が本命にしたレッツゴードンキは内を突いて2着。今回もプラス体重だったが、昨夏から30キロも馬体は大きくなった。 スプリンターとして本格化している。シュウジ、メラグラーナ、ソルヴェイグあたりは悪馬場に 対応できなかった。

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2017.03.22

フラワーC圧勝の衝撃 ファンディーナの次走はどこに?

種牡馬としてシンザンを繋養していたことでも知られる谷川牧場。 数多の名馬を輩出してきた日高の名門である。 古くはタケホープ、ミナガワマンナから、近年はサクセスブロッケン、インカンテーションなど枚挙にいとまがない。 ヒシアマゾンと競ったオークス馬・チョウカイキャロルも生産馬で、 いまも彼女は功労馬として牧場で余生を過ごしている。 23年前、チョウカイキャロルは1番人気に推されたフラワーCで3着に敗れたが、 同じ牧場で生まれた後輩は衝撃的な強さで快勝し、ファンの度肝を抜くことになった。 ファンディーナは500キロを超える、ディープらしくないディープ牝馬だが、 柔らかく、大きなストライドで飛ぶように走る姿は父を彷彿とさせる。 レースではスピードの違いでハナに立とうとするところ、 鞍上の岩田が宥めると2番手で折り合った。道中は楽々と弾むように走っている。 ゾクッとしたのは4コーナーだ。わずかに手綱をしごかれると、次の瞬間、ヒュンと加速。 あとは持ったまま差を広げていく。直線では岩田がターフヴィジョンをマジマジと見る余裕があった。 まるでファンディーナだけが、他馬と異なる時空にいるかのような光景だった。 時計は問題ではない。ただただ強さが違っていた。

ファンディーナはターファイトクラブの所属馬で、1口9万円の500口、 総額4500万円で募集された。フランス産の母・ドリームオブジェニーは タタソールズ・ディセンバー繁殖セールを経て導入され、1つ上の兄・ ナムラシングンを産んでいる。一族にはバゴらがいる。 ディープインパクト×Pivotalの配合はダノンジェラート(セントライト記念3着)、 ワールドインパクト(青葉賞2着)の兄弟と同じ。やはり芝の中距離以上で真価を発揮するタイプだろう。 レース後、メディアの関心はファンディーナの次走に集まっている。 普通ならば桜花賞ということになろうが、デビュー3戦とも1800メートルを使ってきており、 いずれもスローペースの競馬だった。速いラップの刻まれる多頭数の桜花賞で、 リズムを崩すようなことになれば将来に影響が出る。 マイルがベストに思えるソウルスターリングという強敵もいる。 初めてのG1欲しさにクラブが桜参戦を強硬に主張しなければ、日本ダービー、もしくはオークスを目標にして 次走が決まるのではないか。管理する高野師はショウナンパンドラを エリザベス女王杯でなくジャパンカップに向かわせて勝利した成功体験もある。 いずれにせよ、ひさしぶりに日高の名門が輩出した女傑の未来が楽しみでならない。

皐月賞トライアル、スプリングSはウインブライトが制した。 拙ブログでは本命を打っていたが、単勝8倍の5番人気は美味しい配当だった。 中山1800メートルをマクって勝ち切ったのは前走と同じ。 このコースは滅法得意なのだろう。ただ、馬体は仕上げられていた分、 ここがピークという気がする。皐月賞で上位に食い込むのは難しかろう。 むしろ、2着のアウトライアーズの方が上積みがある。1番人気の2歳王者・サトノアレスは4着に敗れた。 スタートダッシュつかず追い込みにかけたが、差し切るだけの脚はなかった。 朝日杯で2着だったモンドキャンノがブービーだったのは負けすぎにしても、 同レース組のレベルに疑問符がついたのは認めざるを得まい。 ワールドインパクトの半弟、トリコロールブルーは5着。府中で見直したい。 西の阪神大賞典はサトノダイヤモンドが有馬記念以来の勝利。 直線では先に抜けたシュヴァルグランに狙いを定め、1完歩ずつ追い詰めて交わしさった。 これで神戸新聞杯から4連勝となったが、王者の風格を纏うようになった。 天皇賞春でのキタサンブラックとの再戦が待ち遠しい。

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