オークス回顧 池添の“覚悟”に応えたシンハライト戴冠
レースは前半速く、中盤で緩み、後半で再び加速した。オークスは差し馬が有利なレースであるが、例年にまして先行勢は壊滅する結果になった。2着チェッキーノは勝ち馬とほぼ同じポジショニングだったが、戸崎が外から蓋をしてプレッシャーを与え続けた。フローラSのレコードは本物。戦前はトライアル血統と評価を下げる声も聞かれたが、藤沢厩舎が距離選定など慎重に扱ってきた成果が出たように思う。誤解を恐れず言えば、コディーノの轍を踏まなかった。早めにスパートしたビッシュが3着。フローラSで1番人気に推されていた。減っていた馬体が回復し、本来の能力を発揮することができた。これまでノーザンファーム産のディープインパクト産駒は6頭出走してすべて複勝圏内に入っていたが、今年も1、3着を占めることになった。ほかのノーザン産ディープ産駒、レッドアヴァンセは7着、アウェイクは12着に敗れてしまったが、これからも激走は続くだろう。4着ジェラシーは最後方からの決め打ちが嵌った。5着ペプチドサルは中1週ながら最高のパフォーマンス。不利があったデンコウアンジュは9着。馬体は減っていたが、スムーズなら4着はあったはず。3番人気エンジェルフェイスは10着。2番手から良く踏ん張った。桜花賞3着のアットザシーサイドは12着。血統通り、距離が持たなかった。穴人気、ロッテンマイヤーは外枠が響いて13着。忘れな草賞組は忘れられた頃に買うのが良い。桜花賞5着のアドマイヤリードは15着。小柄な馬に強い追い切りをかけ、輸送で馬体を減らす不可思議な調整だった。
シンハライトはキャロットクラブの所属馬。シーザリオ、トールポピーに続くオークス3勝目となる。2008年、トールポピーも池添が鞍上だったが、このときは複数の馬に被害を及ぼす大斜行で「降着なしも騎乗停止」の処分を受けている。これが”疑惑の裁決”だと批判する声が強くあがり、翌年からJRAが降着ルールなど改革を始めるきっかけとなった。つまり、新ルールを導入する端緒を池添がつくったと言えるわけで、今年、処分覚悟でラフプレーを余儀なくされたのは自らフラグを回収したのだと解釈することもできる。ちなみに前回も今回も、処分は騎乗停止2日間であった。シンハライトの母シンハリーズはシーザリオの勝ったアメリカンオークスで3着し、日本でアダムスピーク(ラジオNIKKEI杯)、アダムスブリッジ(若駒S)、リラヴァティ(福島記念2着)を産んだ。いずれもキャロットクラブで募集されている。私はリラヴァティに出資しているが、シンハライトは4400万円と高額だったこと、400キロそこそこの体重だったことから申し込みを見送った。しかし、ライバルを跳ね飛ばし、ひるまずに伸びてきたシーンを思い浮かべると、自分の選定眼のなさを恥じるばかりである。シンハリーズの繁殖牝馬としての能力は本当に素晴らしい。1歳の末弟はオルフェーブルとの仔だが、いくらで募集されるだろうか。もう手の届かないクラスになりそうだ。
>>オークス疑惑の裁決? 騎乗停止も降着処分はなし(2008/5)
>>”疑惑の裁決”が産んだ大改革 満たされぬ正しさ求めよ(2009/6)
| 固定リンク
「レース回顧」カテゴリの記事
- 有馬記念回顧 死力を尽くした3頭が新たな伝説をつくる(2016.12.28)
- 宝塚記念回顧 2度目の“試練”がドゥラメンテを襲う(2016.06.28)
- 安田記念回顧 独り旅!ロゴタイプが波乱の大金星(2016.06.07)
- 日本ダービー回顧 運も引き寄せた川田の勇敢な騎乗(2016.05.31)
- オークス回顧 池添の“覚悟”に応えたシンハライト戴冠(2016.05.24)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント