皐月賞回顧 ディーマジェスティに秘められた血のドラマ
一方、1番人気サトノダイヤモンドは中団。3番人気マカヒキは追い込みに賭けていた。 4コーナーを回って直線、逃げ込みを図るリオンディーズに後続が押し寄せる。 坂を駆け上がって外から一気に伸びてきたのは伏兵、18番枠ディーマジェスティ。 内で争うリオンディーズ、サトノダイヤモンド、エアスピネルを交わすと、 遅れて追撃してきたマカヒキを封じ、堂々と先頭でゴールした。 勝ちタイムは1分57秒9の皐月賞レコード。鞍上の蛯名はリオンディーズが前に行ったのを見て、 スローにはならないと確信して後方待機を決心したという。 結果的には最高の位置取りになったわけだが、前後にいた3強に完勝したのだから漁夫の利ではない。 ホープフルSを取り消したり、強い勝ち方をした共同通信杯のレベルが正当に評価されなかったことで 人気を落としていたが、3強と同レベルの力を持っていたということだろう。 つまり、皐月賞は4強だったのだ。2着マカヒキは最速の上がりを使ったものの、脚を余したかにも見て取れた。 だが、3強では最先着なのだからジョッキーを責めるのは筋違い。 3着にサトノダイヤモンド。思ったほど弾けなかったのは、ダービーを見据えた八分の仕上げだったからだろう。 次はグッと良くなる。4位入線リオンディーズ。強引なレースをしながら、最後まで抵抗を続けた。 ゴール前で寄れて降着になったが、能力は相当なものだ。ダービーは距離との闘いになる。 5位入線、エアスピネルが繰り上がり4着。素晴らしい内容だと思うが、馬体はマイラー。路線変更を勧めたい。
ディープインパクト産駒で初めての皐月賞馬となったディーマジェスティ。 蛯名と二ノ宮敬厩舎のコンビと言えば、エルコンドルパサー、ナカヤマフェスタを想起せずにはいられない。 この馬も凱旋門賞に挑んでくれるのではと楽しみになる。 エルコンドルパサーには血の物語があったが、ディーマジェスティの血統表にも数奇なドラマが秘められている。 祖母シンコウエルメスはヨーロッパを代表する名牝系のひとつに属する。 兄に英ダービー馬のジェネラス、妹に英オークス馬を持つサドラーズウェルズ産駒。 当時、シンコウラブリイなどを所有して飛ぶ鳥を落とす勢いだった安田修氏が、 わざわざ藤沢師とともに渡欧して購入してきた馬だ。だが、 デビュー戦後、調教中に骨折して瀕死の状態に陥ってしまう。 安楽死しかないと宣告されたが、血をつなげたいと 藤沢師は一縷の望みを託して手術に踏み切った。 麻酔時間の限界といわれる4時間を目いっぱい使い、 脚にボルトを埋め込んだ。術後もショック状態で高熱が続いたが、奇跡的に快復した。 そして、シンコウエルメスは2頭の牝馬を産んだ。 1頭はエ女王杯3着など藤沢厩舎で活躍したエルノヴァで、 もう1頭がディーマジェスティの母となるエルメスティアラだった。 今年の皐月賞は藤沢師の英断が歴史を変えた瞬間でもあったわけだ。 その後、シンコウエルメスはサンデーの仔を宿して海を渡り、さらに12頭の仔を誕生させた。 いま、奇跡の血は欧米豪と世界に広がっている。
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コメント
ものすごくお久しぶりです。
ちょくちょく記事は読ませていただいてます。
簡潔で着飾らない文章、今までもこれからも楽しみしてます。
シンコウエルメスのお話しすごいですね~!
甘っちょろいかも知れませんが、やはり競馬にはドラマやロマンがあると感動しますね。
POGで指名しているディーマジェスティの皐月賞戴冠は嬉しかったです。
決してフロックではないと思うし、ダービーでも勝ち負けできると思っています。
急な訪問、失礼しました。
投稿: 暴君ルーニー | 2016.04.21 10:49
>暴君ルーニーさま
ひさしぶりにコメントいただきましてありがとうございます。
ディーマジェスティを指名できるなんて凄いですね。ダービーでも頑張ってくれると思います。楽しみですね。
投稿: ガトー@馬耳東風 | 2016.04.25 01:06