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2015.10.27

菊花賞回顧 キタサン祭りを演出した北村宏の名騎乗

「祭りだ、祭りだ、キタサンまーつりー、これが競馬の祭りだよー」 クラシックを勝った馬主が表彰式で熱唱するなど、これまで世界の競馬史にあったのだろうか。北島三郎さんは馬主歴52年にして初めてのG1優勝だという。日本を代表する演歌歌手が長きに渡って馬主を続けてきたことは競馬界への大きな貢献であり、それに値する栄誉を贈るには少し遅すぎたようにも感じる。馬券の的中に関わりなく、競馬場の大観衆が一体となって勝利を祝福し、あまねくファンが幸福感を与えられたのは、北島さんの競馬愛を知ってこそだ。クラブ馬主が全盛の時代ゆえ、有名人ではなくても個人馬主が喝采を浴び、ファンに声を聞かせてくれる舞台があって良いとも思わされた。

キタサンブラックは前哨戦を制したものの、本番では5番人気。スプリングSやセントライト記念で儲けさせてもらった私も、迷った末に印を回せなかった。距離適性への疑問というより、シンボリルドルフ以来、セントライト記念勝ち馬が菊花賞を勝てていないデータをマイナスに評価していたからだ。今年とて、そのジンクスが継続していても不思議ではなかった。現時点でキタサンブラックを実力で凌ぐライバルは1、2頭ではなかったのだから。だが、同馬は1番人気リアファルを捕え、2番人気リアルスティールをクビ差、競り落として真っ先にゴールを駆け抜けた。万全に仕上げた陣営の手腕もさることながら、逆転勝利を決定づけたのは北村宏の名騎乗であった。

スピリッツミノルがハナを切り、リアファルが追走するなか、キタサンブラックは5番手で1周目のスタンド前を通過した。これまで2番手のポジショニングに拘ってきた”型”を捨てた。3000メートルを乗り切り、直線で勝負できるだけのスタミナを温存させるためだった。4番枠を活かし道中はインにじっとして、スタミナのロスを防いだ。ペースが変わったのは1000メートルを過ぎた後。13秒台のラップが3度も続いて、一気にスローダウンしたのだ。ここでキタサンブラックは十分な脚をためられた。直後、我慢できなかったアルバートドックやタガノエスプレッソ、ならば行かせてしまえとミュゼエイリアンらが上がっていってペースが速くなる。ところが、北村は10番手まで位置を落としても動じることなく、手綱を動かさなかった。

4コーナー、馬群に包まれながらインを進むと、直線入り口で北村は最内に馬を向けた。目の前にいたのはミュゼエイリアンとリアファル。両馬の間、ぎりぎり1頭分が通れる進路にキタサンブラックを飛び込ませた。そこは岩田・サトノラーゼンも狙っていたスペース。だが、余力で勝るキタサンブラックがヴィクトリーロードを掴んだのだった。リアファルを交わし、猛追するリアルスティールを凌ぎ切った ところがゴール。道中で徹底的にスタミナを浪費させなかった鉄の意志と、直線で進路を失うリスクを厭わずにギャンブルに賭けた大胆さがなければ、レース後に「祭り」のコブシが響くことはなかっただろう。2015年の菊は名勝負であった。

キタサンブラックは母の父がスプリンターのサクラバクシンオーということで評価を下げる向きもあった。しかし、同馬の血統表を見れば中距離で粘り強さを生み出すリファールのクロスがあり、母系にはスピードよりダート寄りのスタミナばかりを産駒に伝えたジャッジアンジエルーチの名もある。そこにサクラバクシンオーの軽快さが加わり、2000メートル超でポテンシャルを発揮するキタサンブラックの素地が形作られたと言えるのではないか。父ブラックタイドも全弟ディープインパクトより持久力を産駒に伝えるタイプのようで、期せずして絶妙の配合となったのかもしれない。

2着のリアルスティールは距離を克服し、福永も百点の騎乗をしたと思う。勝てなかった理由は120点の騎乗をしたジョッキーがいたことだけだ。3着リアファルはテンで競り、道中も出入りの激しい展開に惑わせられながら脚色は衰えなかった。想像以上に強い馬だと感じた。ダービー2着のサトノラーゼンは掲示板が精一杯。最後は距離が影響したのだろうか。穴人気スティーグリッツは大出遅れで競馬にならず11着。私が期待したワンダーアツレッタは終始、良いところなく14着に大敗した。適距離は1800メートル前後なのかもしれない。惜しかったのは7着ブライトエンブレム。3コーナーでサトノラーゼンに進路をカットされながら、最後は追い込んできた。復活の兆しがあり、次走に注目したい。

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