« オークス予想 2013 | トップページ | 日本ダービー予想 2013 »

2013.05.24

2013 乗り替わり事情に見る日本ダービー展望

騎手が乗り替わって日本ダービーを制したのは1985年まで遡らねばならない。 加藤和宏が手綱をとったシリウスシンボリだ。 同馬を管理した二本柳俊夫師は、頑ななまでに徒弟制度を守ろうとした人物だった。 騎乗ミスに激高したオーナーサイドは皐月賞を前にして 岡部幸雄への乗り替わりを要求する。 しかし、二本柳師が自厩舎に所属する加藤を守ったため、 一度は畠山重則厩舎へ移籍してしまう。ところが、有力馬の転厩は労働組合を巻き込んだ大騒動になり、調教師会の裁定でシリウスシンボリは二本柳厩舎へと戻る。その直後の若葉賞は岡部が騎乗したものの、皐月賞をパスして 臨んだダービーは再び加藤が跨ることになったのだ。騎手にフリーという概念がなく、ましてエージェントなど考えられない時代。 最近のファンから見れば、旧弊に囚われた大昔の出来事に感じられるかもしれない。 だが、この稀有なケースを最後にして、 競馬の神様は”乗り替わり”でダービーの栄冠を掴むことを許していない。

今年の皐月賞馬、ロゴタイプも乗り替わりでダービーへと駒を進めてきた。 この馬もまた、通常とは毛色の違う乗り替わりである。 朝日杯、皐月賞のパートナーはミルコ・デムーロ。 周知の通り日本だけでG1を9勝し、2003年にはネオユニヴァースで日本ダービーを手にしている名ジョッキーだ。ロゴタイプに大きな勲章をプレゼントした朝日杯、皐月賞とも、 ロスのない競馬で能力をフルに発揮させた非の打ち所がないレースだった。 ミルコがダービーに乗らない理由はライセンスの問題からだ。 JRAの短期免許は年3ヶ月で、1ヶ月ごとに申請しなくてはならない。 皐月賞前、ミルコはダービーを想定していなかった。 迷いはあったろうが、最終的には免許を新たに申請することはせず、スプリングSで代打を務めた弟のクリスチャン・デムーロにバトンタッチすることを決めた。クリスチャンは弱冠二十歳。 府中の芝では十数回しか騎乗経験のない外国人ジョッキーが勝利すれば、 ”国際化”された競馬界を象徴するダービーになるはずだ。

もう1頭、外国人騎手への乗り替わりで注目を集めるのがコディーノだ。昨夏のデビューから6戦すべてに騎乗してきた横山典弘を降板させ、オーストラリアのベテラン、クレイグ・ウィリアムズへスイッチ。 名伯楽、藤沢和雄の大胆すぎる選択である。コディーノは乗り方の難しい馬だ。 燃えやすい気性から皐月賞は他馬と接触して折り合いを欠き、 スタミナを消耗してしまった。東スポ杯を勝ったときは 「ダービーはこの馬で決まり」と言われたものの、 昨今の下馬評は「府中2400メートルは長すぎる」というものに変わっている。 藤沢師はゼンノロブロイ、シンボリクリスエスでダービー2着、 3年前も2番人気ペルーサで苦杯をなめた。 今回の乗り替わりはオーナーサイドから出たものではなく、 藤沢師の申し出によることが明らかになっている。 当然、面子を潰された横山典弘との関係は壊れ、年齢的なことを考えると藤沢-ノリの黄金タッグは修復不能かもしれない。かつて、若駒の成長を優先してダービーに目標を置かなかった藤沢師。スタンスを転換して12年目の今年、 なりふり構わぬ執念が実るのだろうか。

これら2頭とは対照的にデビュー以来、 主戦が信頼関係を築きながらダービーまで辿り着いたのがエピファネイアだ。 母シーザリオの主戦でもあった福永祐一は、騎乗停止中だった弥生賞を除いて5戦中4戦の手綱をとってきた。 2年前にはJRAリーディングにも輝きながら、 未だに天皇賞、牡馬クラシックには縁のない競馬界のプリンス。 去年もワールドエースという逸材に恵まれ、 ダービーは1番人気に推されたものの4着に敗れている。勝負弱さを指摘する外野の声も聞こえる。福永が決してミスをしたわけではない。だが、いつも他人がつくる流れに卒なく乗ろうとし、自らリスクを引き受けてレースを支配することを避けてきたように私には思えるのだ。エピファネイアは近2走の弥生賞、皐月賞で掛かり癖を見せている。 もし今回も同じ場面があれば、2ハロンの距離延長はこなせないだろう。 思い切って行かせるのか、馬群の中で折り合いをつけるのか。 いずれにせよ、腹を決めて挑むことでしか大一番は勝ち切れない。 先般、婚約を発表した福永にとって、今春は人生を左右するシーズンになるのかもしれない。

最後にキズナ。4強にあって唯一の「非社台」生産馬、 鞍上は外国人騎手や地方出身者にその座を奪われた武豊である。 オーナーのノースヒルズマネジメントは有力馬の手綱を ほとんど日本人ジョッキーに任せてきた。 ビートブラックの石橋脩、トランセンドの藤田伸二、アーネストリーの佐藤哲三、 ヘヴンリーロマンスの松永幹夫…。キズナもデビュー2戦は佐藤哲が騎乗し、彼が落馬負傷してからは武豊が跨ることになった。ノースヒルズの前田幸治代表は 「日本の生産馬は日本人ジョッキーにこだわっている。 社台グループ一色とならぬように頑張らなければなりません」(スポニチ)と述べている。 社台に袖にされた武豊、そこに手を差し伸べたノースヒルズ。 何としても最高の栄誉を勝ち取り、恩義に報いたいと往年の天才は胸に期しているはずだ。最内枠を引いたキズナは追い込みに賭けることになるだろう。この馬が勝つことは、ライバルたちとは異なる意義を持つことになる。どこでゴーサインを出すのか、馬群をこじ開けることはできるのか、武豊の鬼気迫る騎乗を観てみたい。

|

« オークス予想 2013 | トップページ | 日本ダービー予想 2013 »

事前見解」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1902/57449324

この記事へのトラックバック一覧です: 2013 乗り替わり事情に見る日本ダービー展望:

« オークス予想 2013 | トップページ | 日本ダービー予想 2013 »