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2013.01.21

AJCCも降着なしの新ルール 裁決に”裁量”の余地なし

1着馬が2着馬の進路を妨害することとなったAJCC。今年から運用が始まった新ルールに基づいて、「降着なし」「騎乗停止6日間」の処分が発表されたが、 ファンの間からは疑問の声があがっている。 まず、AJCCの走行妨害が起きた場面を振り返ろう。直線、内から4頭目を回って先頭に立ったダノンバラードが、ムチを受けて大きく寄れる。そのため、伸びかけていたトランスワープが押しやられ、クビをあげるほどの不利を受けた。さらに最内にいたゲシュタルトもトランスワープに押圧され、後方で行き場をなくしてしまった。ダノンバラードはラチ沿いを通って1位入線。トランスワープは態勢を立て直して伸びてきたものの、勝ち馬には1馬身4分の1届かなかった。レース後、トランスワープの調教師と騎手が降着を求める申し立てをしたため、審議のランプが点灯。しかし、裁決は「走行妨害の影響がなければトランスワープはダノンバラードより先に入線したとは認めない」 として、申し立てを退けた。以上が概況である。

レース後の記者会見、JRAは旧ルールに則ればダノンバラードは降着だったと述べたそうだ。そうした意味で重賞レースでの裁決は、新ルールを知らしめる機会になったと同時に、違和感を抱いたファンの批判を噴出させることになった。新ルールについては先日、拙ブログでも詳細に記したのでご存知ない方は目を通していただきたい。(「降着・失格に新基準 ”着順はそのまま、制裁は騎手へ”」2013/1/15)。旧ルールでは被害馬が重大な影響を受ければ降着とされたが、新ルールでは「走行妨害がなければ被害馬が加害馬に先着していた」と判断された場合に限って、降着処分となると定められた。しかし、これを字面通りに受け取ると混乱する。実際は被害馬が態勢を立て直して猛追、加害馬にわずかな差まで迫る、といった明らかな状況がなければ順位は変わらない。こうした場面は極めて稀だ。とりわけ、実力が伯仲するオープンクラスなどでは見られない現象で、つまり、ほとんどのケースで降着はないと考えたほうが正しい。AJCCもトランスワープは不利後、よく伸びてきているが、ダノンバラードを誰がみても交わす勢いだったとまでは言えない。よって到達順位の通りとするのが新ルールである。当然、ラフプレーのやり得ではないかとの懸念は生まれるが、JRAは騎手の制裁を重くして抑制するという。

当初、私は新ルールの文言を読んだとき、妨害がなければ被害馬が繰り出せていただろう差し脚を推し量り、加害馬に先着できたかどうかを裁決委員が判断するものだと思っていた。だが、JRAの説明を聞くと、それがまったくの勘違いであることが分かった。新ルールでは裁決委員は推量しない、想像力を働かせない、人によって判定が変わるような曖昧な余地は与えられない。裁量権を放棄することで自らを縛り、恣意性を生む要因を排し、裁決の一貫性を堅持することにしたのだ。現実として被害馬がよほど加害馬を上回る伸びを披露していなければ、裁決委員に降着とする権利はなくなった。その結果、誰が裁決委員を務めてもジャッジは同じに。降着は皆無に近くなり、審議する必要性すらも消えた。ファンの中には「降着処分」をなくすことを求めたのではない、裁決の技術レベルや審議の透明性を向上させてほしかったのだとの恨み節も散見される。今後、抜本改正の方向性への批判は巻き起こるかもしれない。少なくともJRAは「原則として到達順位は変えない。例外として降着はある」と、明文化して誤解を解くべきだろう。不利がなければトランスワープは先着していたと、裁決が推量してくれることを期待したファンにとって、 新ルールの「文言」と「運用」の差は乖離しすぎている

もう一つ聞こえてきたのが「なぜ審議にしなかったのか」という点。調教師の異議申立てがなければ、今回も審議のランプはつかなかった。JRAの論理からすれば、降着の可能性はないのだから審議は不必要だということだろう。確かに裁決委員があれこれ降着について話し合あう余地はなかった。一方、明らかな走行妨害が起きているのに、そのまま確定してしまうことに関係者、ファンが憤るのは自然なこと。降着はなくとも騎手に制裁が加えられる場合は、ランプはつけたほうが親切だと私は思う。審議はしないが審議ランプをつけるのは矛盾しているなら、「審議・走行妨害ランプ」とでも名前を変えればいい。JRAは妨害行為があったことは認識しているのだと、分かりやすくアピールするべきではないか。また、降着についてこれほど物議を醸したということは、近い将来、落馬を誘発する走行妨害があったときは、さらに大きな議論になることが予測される。新しいルールでは過去の失格事案はすべて故意や悪質な過失はなく、いずれもセーフになるとされている。失格制度の事実上の廃止である。落馬させて1位入線も降着なし、そうしたケースが発生するまでに新ルールをファンに理解させることは難しいだろう。

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コメント

>JRAは旧ルールに則ればトランスワープは降着だったと述べたそうだ。

すいません、取り急ぎ。。。
ダノンバラードの間違いではないでしょうか?

投稿: ひろく~ん。。。 | 2013.01.21 06:16

審議ランプもつかなかったのをみて驚きました


裁決はあの一瞬で、被害馬が加害馬に先着しないと判断したのか

新ルールでは降着は有り得ないと決め付けているのか

最後の直線に入った段階で、入線順を当てられるくらい有能になったのか

そもそも走行妨害ではないとみたのか


いずれにせよ、裁決すげーなと思いましたsweat01

投稿: メガネ | 2013.01.21 18:24

 これまでとは大きく異なるルールが導入された以上、定着するまでにはかなりの時間が必要となると思います。

 ただこれまでは、「やたらと審議が多くて、確定まで時間がかかりすぎる」とか、「日本人ジョッキーは闘争心に欠ける」とか言っていたマスコミの皆さんは、「国際的な基準に準拠した」ルールをどう評価するのか、聞いてみたいもんです。

 自分はキャリアだけは長いもんですから、ダービーでのミスターシービーの他馬との接触を口を極めて非難しながら、皐月賞でのシンボリルドルフのビゼンニシキへのぶちかましを「本当に強ければ多少の不利ははねのけるられる」とか言って、岡部の騎乗を褒めそやして、制裁を非難していた関係者は、どう考えているんでしょうか?

投稿: きゅーぴー | 2013.01.21 21:00

自分も新ルールを勘違いしていました。誰が見ても、被害馬は被害がなくても加害馬に先着できなかったと思われる場合に降着なしになるものだと勝ってに思っていましたが・・・。その方が絶対いいと思いますけどねwさらに言えば被害馬の着順が被害の有無で変わらないと考えられる場合のみに降着なし。それ以外は妨害行為をしたんだか降着でいいと思うんですけどね。

投稿: わ | 2013.01.21 21:36

不利がなければ被害馬が加害馬を上回る…ってのはわかったけど、今回のように連鎖玉突き的に複数の不利が重なったらどう裁定するんでしょうか?
例えばゲシュタルトとトランスワープがトンでもない追い上げを見せてハナ差くらいでダノンをかわし切れなかったならゲシュタルト→トランス→ダノンになるんですか?

投稿: ぐぴ | 2013.01.24 00:38

色々な方の意見を読みましたがガトーさんの書かれてる「原則として到達順位は変えない。例外として降着はある」が一番的をえていると思いました。
ハナからJRAは年間1回か2回しか発生しないような稀な事例には対処する気はないんじゃないですかね…
被害馬がハナ差まで迫ってゴール板過ぎて差しきった事例が発生したらJRAの真意がわかるんじゃないですか?
たぶん到達順位通りと思いますが

投稿: くぬま | 2013.01.24 11:08

>みなさま
コメントありがとうございました。騎手のなかからも新基準に対しては不満の声があがっているようです。しばらく様子をみて、改めて考察をしてみたいと考えています。

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2013.02.02 23:34

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