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2012.06.12

繰り返された不可解な裁決 小島茂師は裁定員会へ訴え 

「騎乗停止も降着なし」、裁決委員が下したジャッジが波紋を広げている。10日の東京8レース、芝マイル戦。先頭を走っていた内田博幸のファイナルフォームはゴール直前、外側に大きく寄れて、後方から伸びてきていた松岡正海のランパスインベガスの進路を遮った。松岡は手綱を引いて急ブレーキをかける形になり、2着を確保しそうな脚色だったにも関わらず3着に敗れてしまった。裁決は「内田博幸の決勝線手前での急で大きな外側への動きは、危険な騎乗に該当する」と実効2日間の騎乗停止を課した。その一方、着順の変更は認めなかった。ランパスインベガスを管理する小島茂之師はレース後、走行妨害の申し立てを行ったが棄却。そのまま入線順位の通り確定した。なぜ明らかに着順に影響を及ぼした行為に対して降着処分がなされなかったのか。裁決委員の青木清也は記者会見で次のように述べた。

「外斜行したのは内田騎手が内側から不用意にムチを入れたため。明らかに過失がある」と説明。降着にしなかった理由については「3着馬に与えた被害は降着にするほど致命的とは言えないと判断した。斜行したのは決勝線の2完歩手前で、被害を受けている最中にゴールへ入った。着順が替わったかよりも被害を受けた位置や減速の度合いが降着の尺度になる」 (スポニチ)

近年、裁決の判断を巡って最も大きな議論を巻き起こしたのは、一昨年のジャパンカップだ。1位入線のブエナビスタは直線でローズキングダムの進路を横切ったため、1位と2位の着順が入れ替わり、ローズキングダムが優勝することになった。このとき外国人騎手から裁決への不満の声が上がった。ブエナビスタの脚色が秀でていたのは明白、妨害行為がなかったとしてもローズキングダムが差しきっていた蓋然性は低いのだから、制裁は騎手のみに課せば良いと。しかし、JRAの考え方は欧米のものとは違った。第一に考えるのは被害馬への影響だ。ブエナビスタが何馬身離してゴールしていようと、ローズキングダムが重大な不利を受けたのならば着順は変更されねばならない。 もちろん、JRAとて脚勢や被害馬の立ち直り状況など総合的に勘案して いるのは事実だが、どこに比重を置いてジャッジするかで結論は真逆になる。

今回、ファイナルフォームについて裁決委員は 「着順はひとつの要素であって、全てではない」(デイリー)としている。仮に2着、3着が入れ替わっていたとしても、それが決定的な事情にはならないと言うわけだ。「被害馬への影響」に重きを置く判断基準であれば、最も大切な着順の変更可能性を「ひとつの要素」とするのは矛盾しているようにも思える。だが、裁決委員は『3着馬は関係なく、あくまで加害馬との関係』が問題だと言う。決勝戦手前の出来事であって、 不利がなくてもランパスインベガスはファイナルフォームを交わすことはなかった。 故に着順変更はなし、「被害は降着にするほど致命的とは言えないと」と。しかし、小島茂之師も反論しているように、これでは僚馬の着順をあげるため妨害行為を働いても、理論上は許されるケースが出てきてしまう。ゴール直前だから着順に影響がないというのも、危険騎乗にお墨付きを与えることにならないか。私は加害馬、被害馬の2者関係に留めることなく、不利によって被害馬が着順を悪くしたのなら、加害馬はその下に降着するべきだと思う。

裁決制度のあり方については繰り返し言及してきたので詳細は控えるが、ブラックボックスになっている審議過程を議事録公開などを通じてオープンにすること、それによって裁決基準に統一性を持たせること、JRAから独立した組織に改編することが必要だと考える。競馬は公正なものだと、金を賭けるに値するものだとファンの信頼を勝ち取るために裁決委員会は存在しているのであって、馬券購入者からかけ離れたところに超然と鎮座していては意味がない。一度、ハリボテの無謬性が剥がれ落ちれば、権威など瞬く間に消え去ってしまう。須田鷹雄は 「社内カーストが上位でお客さんから遠いところにいる人間が好き勝手をやって、社内カーストが低い広報や競馬場の職員が矢面に立つ」とJRA組織の内情を皮肉っているが、ならばトップダウンで抜本改革に乗り出さなければ売上減少も止まるまい。 そう言えば、JRA理事長が事情聴取すると公言した堀宣行師のインタビュー拒否事件も音沙汰なし。実はファイナルフォームを管理しているのは堀師だが、当然、今回の騒動へのコメントはなかった。

被害を受けた小島茂之師は 「裁定」委員会へ不服を申し立てると明らかにしている。 「これを走行妨害でないと意地でも貫き通すなら 馬券を購入する人たちから今後信じ続けてもらうことは不可能だろう」 (小島茂之公式ブログ)と義憤に駆られての行動だ。平場の条件戦で3着が2着と認められたところで小島師にはほとんどメリットはないし、勝ち馬は社台レースホースの所有馬だけに臆するところもあったはず。それでも、競馬界のことを思って不服申立てに踏み切った決断にエールを送りたい。裁定委員にはJRA職員だけでなく、2009年から外部委員として元JRA参与、地方競馬全国協会公正部長、それに元ジョッキーの岡部幸雄が起用されている。去年、幸英明の訴えに対しては「不服申立てには理由なく、これを棄却する」と素っ気ない紙一枚を出しただけで、関係者やファンを失望させた。 もし同じことがなされれば、裁定委員会は自ら意義を否定することになろう。 丁寧且つ透明性ある審議を求めたい。

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コメント

>「被害馬への影響」に重きを置いてきた従来の判断基準とは、矛盾するのではないか
被害馬と2着が入れ替わっていたことの影響ということではなく、被害馬がどれだけの不利を受けたのか、なので矛盾してないでしょう。
逆に被害馬と2着が入れ替わるなら勝ち馬降着にさせるということなら着順が大きな要素であってブエナビスタのケースでは入れ替わらないから降着させないとなるはずですけど。
基本的には方向性はJCの時から何も変わってないんですよ。だから議論になるんであって。

投稿: | 2012.06.12 15:16

初めてコメントいたします。
馬券歴26年になりますが、今回の裁決には(今までも首を傾げる裁定はありましたが)
さすがに怒り、呆れ、失望しました。こんなファン無視裁決がまかり通るなら、
安心して馬券なんて買えません。(このレースの馬券は買ってませんが)
裁決委員の言う「3着馬に与えた被害は降着にするほど致命的とは言えない」
「着順が替わったかよりも被害を受けた位置や減速の度合いが降着の尺度」
これを読んで誰の為の裁決なのか、審議、降着は誰のためにやっているのか。

映像を見れば、斜行がなければ3着馬は2着はあったはず。なら馬連や馬単、3連単を
買ってたファンにしてみれば、降着にするほどの致命的な事があったわけで、馬券を
買った側からすれば、着順が替わったであろうことが被害を受けた位置や減速の度合
よりも最優先するのが当たり前なはず。

競馬が好き、馬券が好きなファンを蔑ろにしていてはJRAとて、将来は危うい。

今回の小島調教師の決断には私もエールを送りたいし、不服申立てについて裁決委員会
の回答によっては、微力ながら抗議として、当分馬券買うのを止めようと思います。

投稿: kazu | 2012.06.12 18:53

久し振りに正しき事に気骨のある競馬関係者が居た事に感激!! 小島調教師にファンとして声援を送ります。JRAはいつまで役人体質を変えないのか、嘘は嘘の上塗りでしか誤魔化せない(何れバレル)。バレル前からファンは離れ・気が付けば多くのファンが嫌気を差し振り向くことなく去って行くでしょう!! その時の被害者は純粋なファン・競馬関係者!そして名も無き馬から名馬まで、また素晴らしき競馬ドラマや歴史も忘れ去られるのでしょう! 勿体ない「過ちては改むるに憚ること勿れ」 マスコミの方々正しい事を継続して是非伝えて下さい。それが本来の姿ですよね!正しき事は不変。小島調教師応援してます。

投稿: 竹を割った性格 | 2012.06.12 19:25

今回の件は降着が妥当ですけど

今回の件が云々だからって
競馬ファンがはなれるつう事はないのでは

だってどうせ日本で休日に堂々の競馬やれるところなんか
ここくらいしかないんだし

東電と一緒で必要だから(と思わせられているから)
主催者はどうせ客が今回の件で離れる事はないとタカをくくるし実際離れないんだから主催者も主催者なら客も客だなと

相撲だって八百長したって普通に客来るんだからねぇ

この手の日本の娯楽つうのは殿様商売を客にも強制するシステムでついでに客もなきねいりするしかないんだから
そりゃ主催者が懲りるわけなんかないですかなと

投稿: チキン馬券師 | 2012.06.12 20:55

>チキン馬券師さん
八百長だけが要因ではないかもしれませんけど、相撲は豪快に客が減ってますよ。
プロ野球でもJリーグでも、殿様商売が成り立つ娯楽産業は着実に減ってます。
むしろ不況でも潰れないパチンコ屋と比較すべきなのかも知れませんが。

ただ、馬券買う人が減ってもJRAの役人は(末端以外は)失業しないんですよね。
馬産関係者や競馬場関係者は失業することもあるでしょうが・・・

投稿: M | 2012.06.13 04:05

>みなさま
コメントありがとうございます。大変、勉強になります。
本文中の表現を一部改めました。

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2012.06.14 01:32

この話は伝説になりますね。
忘れ去られるようなことも、昔と違って
今はインターネット上に記録が残る時代と言うことを
認識せざるを得なくなりますね。

投稿: せんたー | 2012.06.30 21:47

>せんたーさま
将来、振り返ってみたときにターニングポイントになった事件となるのかもしれないですね。

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2012.07.02 08:19

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