« 日本ダービー予想 2012 | トップページ | 新馬戦開幕 ダービー馬の全弟・トーセンパワフル勝利 »

2012.05.29

ダービー回顧 岩田の気迫が呼び込んだハナ差の栄冠

勝った岩田も、2着に敗れた蛯名も、レース後に号泣した日本ダービー。歴史に残る死闘となった。明暗を分けた差はわずかハナ。12年前、河内アグネスフライトは先に抜けた武豊エアシャカールをハナ差だけ捉えて栄光を勝ち取ったが、必死の形相でゴールに飛び込まんとする 岩田ディープブリランテを蛯名フェノーメノは交わすことができなかった。ほんのコンマ数秒、仕掛けのタイミングが違っていたら、青葉賞組から初めてダービー馬が誕生していたかもしれない。だが、それが競馬だ。かつて、エルコンドルパサーで凱旋門賞2着と涙をのんだ蛯名は、またしてもすんでのところで大魚を逃した。どのジョッキーも追い込んでは届かないことを重々承知して臨んだ今年の高速馬場。ゲートが開いて先手を奪ったのはゼロス、2番手にトーセンホマレボシ、4番手にディープブリランテ。フェノーメノはその4馬身ほど後ろ。縦長の展開だ。ワールドエースとゴールドシップは中団やや後方につけた。1000メートル通過は59秒1と前週のオークスと同じ。しかし、そこからペースをあげても先行勢がバテないのが牡馬の底力。ウィリアムズのトーセンホマレボシは4コーナーから手綱をしごいて仕掛けていった。

NHKマイルCで失格処分を受け、オークスで圧勝したお手馬を悔しい思いで見つめた岩田。騎乗停止の間、毎日のようにディープブリランテに跨って調教をつけていたという。ハイペースでロングスパートをかけたトーセンホマレボシを見て、普通の判断ならつられて追い出すのは躊躇するのではないか。 ところが、岩田は早めに仕掛ける博打に出た。ディープブリランテは2ハロンしか脚を使えないことを熟知していたからだ。高速馬場を最大限に生かし、リードを広げて粘りこむしか死中に活路はない。ゴール前、燃料の尽きかけた同馬を叱咤し、岩田は激しく体を上下に揺らして追った。その様はまるでタクトを大きく振る指揮者のように見えたほど。岩田の気迫がハナ差の勝利を引き寄せた。ディープブリランテは燃えすぎる気性のために折り合いをつけることが難しく、一本調子の競馬で敗戦を重ねてきた。皐月賞後、矢作厩舎は矯正に取り組み、本番前には折り合いに自信を持つまでになっていた。速い流れはスムーズに追走しやすく、トーセンホマレボシを目標にできたのも幸運だった。戦前、私はダービーではなくNHKマイルを目指したほうがいいのではないかと考えていたが、まったく持って見込み違いであった。

フェノーメノも勝ち馬と同じサンデーレーシングの所属馬で、弥生賞までは岩田が手綱を取っていた。青葉賞は上がり34秒1の強い内容だったが、ダービーでも蛯名が理想的なポジションから全能力を引き出した。3着はトーセンホマレボシ。果敢にスパートしてコンマ1秒差、京都新聞杯のレコードはダテではなかった。ウィリアムズもまた、肉を切らせて骨を断つ、勇猛な騎乗を選んだ。4着に1番人気ワールドエース。調教は格好をつけたし、馬体も維持できた。 しかし、若駒S、きさらぎ賞と連戦した影響がダービーまで尾を引き、皐月賞から上積みを得る仕上げにはならなかった。福永はこの馬の競馬をした。高速馬場だからと好位につけるようなリスクは侵さなかった。騎乗ミスはない。上がりは出走馬最速も「4角でフェノーメノについていけず、最後もジリジリとしか伸びなかった」 (デイリー)と言うのも本当だろう。 だが、力が拮抗していれば、どこかでギャンブルをしないと勝てないのがクラシック。勝者が一人しかいない危うい賭けに踏み出すのは誰しも怖いが。5着にゴールドシップ。狙ったポジショニングができなかったが、内田は潔く自らの失敗を認めた。掲示板はディープインパクト産駒とステイゴールド産駒が独占。4着まではノーザンファームで育てられた馬である。勝ち馬のみパカパカファームの生産馬だが、わざわざ外から買ったディープ産駒がダービーを制すのだから相馬眼と育成技術はいつもながらに恐れ入る。

以下、着外の馬に目をやると、弥生賞1着、皐月賞4着と来たコスモオオゾラが6着。とにかく目立たないが、味のあるバイプレイヤーになる資質がある。先行したトリップが7着。皐月賞の大敗で人気は落としていたが、暮れのラジオNIKKI杯では1番人気を集めた馬。 立ち直るきっかけになれば。 デキは絶好に見えたグランデッツァは10着。先行したものの、坂でぱったりと止まったのは距離適性か。 皐月賞1番人気馬をあっさり袖にして帰国したデムーロの目、確かだった。リップ・サービスに惑わされてはならない。11着ジャスタウェイ、12着モンストールはマイラーゆえ、後方待機の競馬に徹した。ノーザンファームとの復縁が噂された武豊アルフレードも不発に終わった。NHKマイルの激走でお釣りはなかった。 良いところを見せたかっただろう武豊も、どうしようもなかったのではないか。出遅れたスピルバーグは14着。横山典、2週連続の「ポツン後方ママ」とあってはまたギャロップ記者に怒られそうだ。人気の一角、ヒストリカルはシンガリ負け。 馬体回復に専念して皐月賞をスキップしたのに、マイナス8キロ。走れる状態でなかった。

|

« 日本ダービー予想 2012 | トップページ | 新馬戦開幕 ダービー馬の全弟・トーセンパワフル勝利 »

レース回顧」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1902/54824494

この記事へのトラックバック一覧です: ダービー回顧 岩田の気迫が呼び込んだハナ差の栄冠:

« 日本ダービー予想 2012 | トップページ | 新馬戦開幕 ダービー馬の全弟・トーセンパワフル勝利 »