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2012.01.28

川崎記念快勝 交流重賞19勝目のスマートファルコン
究極の”外弁慶”は遂にドバイへ挑む

25日、単勝1.1倍に支持された川崎記念を快勝したスマートファルコン。楽にハナを奪うと3コーナーから一気に加速し、後続に影を踏ませることなく、2着のランフォルセに4馬身差をつけて逃げきった。まったく危なげない勝利であった。しかも、時計の出る不良馬場だったとはいえ、2年前にヴァーミリアンがつくったレコードを2秒更新する驚異的なタイム。レース後、「この馬の実力はすでに世界クラス」(netkeiba)と鞍上の武豊が語ったのも、あながちリップサービスばかりとは言えまい。暮れの東京大賞典ではワンダーアキュートにハナ差まで迫られ、どちらが勝っても不思議ではない辛勝だった。この一戦から年齢による能力の衰えがあるのではないかと囁かれていたが川崎記念はきっちりと調教を積んで臨み、不安を呈する外野の声を黙らせてしまった。これで一昨年のJBCクラシック以来、9連勝を達成。何と交流重賞は通算19勝目というから凄い。内弁慶という言葉はあるが、この馬は差し詰め「外弁慶」と呼ぶべきか。

スマートファルコンは中央馬でありながら、徹底して地方のレースにこだわったローテーションを組んできた。最後に中央のレースに出走したのは2008年8月、小倉競馬場のKBC杯である。それ以降、金沢の白山大賞典を皮切りにして、園田、佐賀、浦和、名古屋、盛岡、門別、大井、船橋、川崎と、24戦すべて地方競馬場を回っている。去年の帝王賞からはGⅠを中心に使われているが、それまではGⅡ、GⅢと交流重賞でも格下のレースを選んでいた。つまり、勝てるレースで賞金を稼ぎ、競走生活を短くするような消耗の激しいレースは避けようという、名より実を取る戦略を忠実に守ってきたのだ。ダート馬の評価が低いなかにあっては種牡馬としての価値は期待できず、現役生活で稼げるだけ稼ぐのは馬主経済にとっては理にかなっている。獲得賞金は中央では6048万円しかないが、地方では8億円にもなる。 トータルでは有馬記念や宝塚記念を勝ったドリームジャーニーを上回る額だ。

一方で陣営への批判がなかったわけではない。砂が深い地方競馬場ばかりに引きこもり、 フェブラリーSやジャパンカップダートをはじめ、中央のレースから逃げているのは”卑怯者”だというのだ。勝負付けの済んだ相手に圧勝しても、ファンにしてみればレースの面白味がない。もっと強いライバルとぶつかって、名勝負を見せてほしいと思うのは当然だろう。去年、人々はダート王者に登りつめたトランセンドとの世紀の一戦を待ち焦がれた。3月、トランセンドは果敢にドバイワールドカップに挑んで2着。大きな賞賛を浴びた。かたやスマートファルコンも一昨年の東京大賞典をレコード勝ちしてピークを迎え、6月の帝王賞ではエスポワールシチーを9馬身ちぎり捨てていた。私は両馬の対戦は10月の南部杯で実現するのではないかと思っていた。復興支援のため府中で開催されることになった南部杯を盛り上げることは、地方競馬に恩返しすることにもなるからだ。しかし、それは願望で終わった。 あくまで陣営はドライに秋初戦を船橋の日本テレビ盃に定めた。

本格化なって初めての顔合わせは11月、大井のJBCクラシックで叶った。南部杯を勝ったトランセンドはジャパンカップダートに直行せず、わざわざ地方に乗り込んできた。 敵が来ないのならばこちらから出向く、トランセンド陣営の気概だった。 レースはトランセンドが2番手につけて、ハナを切ったスマートファルコンに競りかけはしなかった。せっかく控える競馬を覚えたトランセンドに無理な競馬をさせたくなかったのかもしれないし、休養明けの南部杯で激しいレースをして疲労が残っていたのかもしれない。ともあれ、一騎打ちは自分の競馬をしたスマートファルコンが中央ダート王を退けてチャンピオンに輝いた。 だが、万人が勝負あったと納得したわけではなかったようだ。JRA賞の最優秀ダートホース部門、トランセンドは271票が投じられたのに、スマートファルコンはわずか13票しか得られなかった。トランセンドにはドバイでの活躍があったり、中央のレースしか対象にすべきでないと考える記者が多かったのは確かだろうが、それにしても票差はあまりに開いていた。

スマートファルコンはNARグランプリでダートグレード競走特別賞を受賞した。地方所属ではない同馬に年度代表馬の資格はなく、選出されたのはフリオーソだった。中央所属馬として最多勝記録の21勝(次位はヤマブキオーの20勝)、最多重賞勝利記録の19勝(次位はホクトベガ、ヴァーミリアンの13勝)という歴史的な偉業を達成しながら、JRA賞は授与されないのが現段階の評価である。とはいえ、主戦の武豊、管理する小崎憲調教師も、このまま地方専用馬に留めておくつもりはないようだ。去年は体調が整わないとして回避したドバイワールドカップだが、今年は「馬はいつものレース後の感じと変わらないですよ。 あとは選ばれるのを待つだけ」(スポニチ)と小崎師から威勢のいい言葉が聞こえ、来週には現地視察に赴くことにもなっている。ドバイは去年から芝とダートの中間とされるオールウェザーが導入され、深い砂ばかり走ってきたスマートファルコンには不利な条件に違いない。逆にだからこそ結果を出せば評価は一変し、種牡馬への手形は約束されよう。 中央には姿を現さないスマートファルコン、究極の外弁慶ぶりをドバイで発揮してほしい。

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