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2011.11.16

書評「サラブレッド穴ゴリズム」 ”思想”をデータに秘す

今年、創刊20周年を迎えた「競馬最強の法則」。巷の予想を一変させる「スピード指数」や「ラップ解析」など、数多くの馬券理論を世に送り出してきた。その中でも創刊まもない頃から今日まで長年に渡って連載を続けているのが、全重賞レースを取り上げる「大穴必中大作戦」だ。豊富なデータを用いて「買う馬」「穴馬」を浮き彫りにし、「消す馬」をばっさりと提示する。筆者は「競馬予想職人」を名乗る日夏ユタカ。私は十数年来、同誌の読者だが、良質なデータを厳選する日夏の手法には多分に影響を受けたクチである。その日夏が今月、単行本「サラブレッド穴ゴリズム (競馬ベスト新書)」 を世に送り出した。

競馬ファンのなかにはデータ予想を毛嫌いする人もいる。実際、「データは必ず覆されていくものなのに、過去の結果に捕らわれては馬券は取れない」という意見を何度も耳にした。だが、日夏に限っては、そうした批判は当たらない。ひとつひとつのデータは「単なる傾向の羅列に終わらず、サラブレッドはどういう生き物であるか」考え抜いた末、提示されたものだからだ。それがデータに秘められたアルゴリズムであり、これまでヴェールに包まれてきた思想が惜しみなく公開されているのが「サラブレッド穴ゴリズム」なのだ。例えば菊花賞。全馬初めての距離である3000メートル戦で穴馬を絞り出すデータは何か。日夏は「距離適性」ではなく、「距離延長適性」だとする。

3歳の距離未経験馬による戦いだけに、騎手もおのずと慎重にレースを進めるのが常。それでスローペースから高速上がり決着という傾向になりやすく、スタミナに軸足を置いても不発に終わる可能性も少なくないのです。/スローペースになりやすい長距離戦でなにより求められるのは、じつは折り合いなので、過去に距離延長で緩い流れになったときに高いパフォーマンスを示していた馬を炙り出す作戦です。(第1章「だから荒れる!全馬初経験ー距離延長馬の狙い方」より)

去年の菊花賞で、それまで距離延長のレースで複勝率が8割以上だった馬は4頭。そのうちの7番人気ビッグウィークが勝利し、13番人気ビートブラックが3着に入った。1番人気ローズキングダムが絡んだ3連単は33万円を超える配当になった。穴ゴリズムが「経験の浅い若駒では距離延長での実績が大きなアドバンテージになる」とするのは本質を看取するがゆえ。サラブレッドを数字としてしか見ない予想とは対局にあることが分かるだろう。本書では思想に裏付けられた30余りの必中法が、具体的なデータやレースとともに解説されている。斤量、仮柵、血統、馬体重…、その視点は様々。従来の思考法を変更することを読者に迫るものも少なくない。データ派にもアンチデータ派にも薦めたい一冊だ。

[敬称略]

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