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2011.06.02

創刊「ラウンダーズ」 競馬と真摯に向き合う本格派雑誌

『ROUNDERS』(ラウンダーズ)は今月、創刊されたばかりの競馬マガジン。だが、書店の競馬コーナーに陳列されている雑誌、人気ジョッキーとタレントの対談や馬券必勝法で埋め尽くされているもの、とは一線を画す。サラブレッドの凛とした横顔に目を奪われる表紙をめくれば、B5判150ページ余りを埋め尽くす”読み物”に圧倒されるだろう。作り手の真剣さを突きつけられた読者は一瞬、シャンと背筋が伸びるような感覚に襲われるかもしれない。もちろん、それは不快なものではなく、まるで未勝利戦のパドックにダイヤの原石を見つけたときのような胸を高鳴らせる緊張感だ。創刊号の特集は「調教」。競馬のなかでも最も可視化、文章化しづらいテーマだが、初めから難題に向きあう姿勢はやはり作り手の覚悟を伺わせるものである。サラブレッドは何年もの調教を重ねることによってハミを取ることを覚え、騎乗者の意思を汲み取れるようになり、競馬場で速く走るための芸術品へと磨かれる。至極、当たり前のプロセスだ。一方でラウンダーズは「馬と人間の歴史の中で、私たちは馬のために何をしてきたのだろう」「エゴを押し付けてばかりで、馬が本当に求めていることを置き去りにしてきたのではないか」という内省から言葉を始める。そして、それぞれの記事は具体的な命題に向かって、沈思して本質を手繰っていこうとするのだ。

馬に走る動機はない。馬は自分のために走る理由などないのだ。たとえ速く走りたいというサラブレッドの血が騒いだとしても、極限まで力を振り絞って走りたいとは思えないだろう。サラブレッドが死力を尽くして、最後の最後に一歩前に出ようとするのは、人の期待に応えたいからである。(馬は人のために走る モンティ・ロバーツが教えてくれたこと)

馬と話すことができると言われたアメリカの調教師が辿り着いたコミュニケーションの鍵。心身に傷を負った競走馬を再生させるホースマンの自問自答。日本を代表するトレーナーを比較し、馬を鍛えることの深奥に迫る精緻な分析…。これらの記事は読み捨てられることなく、5年、10年を経てもファンのバイブルになり続けているはずだ。また、馬は何を欲すのか正面から取り組んだ「走れドトウ」は故・橋田俊三師が1970年代に執筆した小説の復刻版。「みどりのマキバオー」を彷彿とさせる競走馬が一人称で語る異色の世界は、知らぬ間に読み手を引き込む不思議な力がある。こうしたチャレンジングな雑誌が既存のメディアではなく、ファンの側から生まれたことは記銘しておかねばならない。ラウンダーズはブログ「ガラスの競馬場」を運営してきた治郎丸敬之さんの手によるものだ。構想から2年、遂に書籍化を実現させた行動力には恐れ入るしかない。ファンなら誰しも経験があるだろう。趣味は競馬だと明かすと、必ず「儲かっているの?」と投げ返される愚問。そんな時、治郎丸さんは「単なるギャンブルに帰せられてしまう」ことに傷つきながらも、偏見に抗して競馬の魅力を語り続けたいと願い、創刊の原動力につながったと記している。「競馬は文化であり、スポーツである」。治郎丸さんたちと思いを共有するファンはぜひ一度、雑誌を手にとってほしい。きっとあなたの新しい競馬観を切り拓くパートナーになってくれるだろう。

>>ガラスの競馬場「ROUNNDERSを創刊します」(申込フォームへ)
>>ジュンク堂難波店・千日前店・大阪本店・梅田店でも販売
>>Amazonから

写真もすごくいい!

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