« ジャパンカップ予想 2010 | トップページ | 再生へ最後の切り札 PATで地方重賞レースを発売  »

2010.12.01

ジャパンカップ回顧 ブエナビスタ降着をどう見るか

ブエナビスタ降着、ローズキングダム繰り上がり優勝という衝撃的な結果が待っていた第30回ジャパンカップ。スミヨン操るブエナビスタは外から一気に脚を伸ばして1位入線しただけに、着順変更までなされたことに疑問を持ったファンも多かったようだ。今回の事件はレース一連の流れで複合的に起きたものだが、前半と後半とに分けて考えねばならない。残り300。パトロールフィルムを見ると、外ブエナ、内ローズが馬体を併せたところに、最内からヴィクトワールピサが寄ってきている。この瞬間、挟まれたローズはブレーキをかけて減速。先にブエナが出る形になった。ここまでが前半。ヴィクトワールピサの行為に対してはギュイヨン騎手に過怠金1万円が課せられた。後半、今度はブエナがヴィクトワールピサに馬体を併せようと内に切れこんでいく。この時、ローズの前を横切る形になり、武豊は追えなくなってしまっている。ここが「進路妨害」と見做された最大の点だった。おそらくスミヨンは前半の不利でローズが後退したため、相手をヴィクトワールピサと判断して内に寄せたのだろう。しかし、ローズにはまだ脚は十分にあり、実際、立て直した後に矢のような伸びで2着を確保している。もし一定時間、継続して進路が塞がれなければ、ブエナと並んでゴールしていた可能性もあると裁決委員は判断したわけだ。私としても異論はない。

一方、スミヨンは裁決には恭順の意を示しつつも「日本のジャッジがヘタだということを世界に配信することになるだろう」(ZAKZAK)とコメントし、ムーアなど他の外国人騎手からも間違った裁定だという声があがった。確かにブエナの差し脚は秀でていた。もし裁決とは反対にローズは不利がなくても交わせなかったという見解に立てば、着差はつまっても着順は変わらないのだから騎手のみ制裁すれば良いと考えるだろう。その場合、仮にローズが3位入線していたなら着順変更が必要ということにはなろうが。ただ、ローズとブエナの勢いを比べて、不利がなかったときのゴールシーンを想像するのは非常に難しい。それは確定までに20分以上もの時間を要した裁決にとっても同じことだ。ブエナが妨害行為を犯しているのは間違いないが、降着とするか、騎手への制裁に留めるかは政治的な判断を含めてアンパイアである裁決委員の”感覚”に拠らざるを得ない。だから、外部の人間はいずれのジャッジメントが下されたとしても、その結果は正しいと受け入れる以外にない。 2008年のオークスでトールポピーは大きな斜行をしたものの降着とされず、疑惑の裁決としてJRAは批判に晒されたことがあった。この時をきっかけにJRAは判定基準の明確化や採決業務の見直しなど大改革を行ってきた。「なぜトールポピーはセーフでブエナがアウトなのか」という疑問が投げかけられるのならば、トールポピー以前と以後では裁決は変わったのだと答えるべきかもしれない。

メジロマックイーンの天皇賞秋、カワカミプリンセスのエ女王杯に続き、史上3度目のG1の1位入線馬降着となったジャパンカップ。異様に長い時間を審議に費やし、最終的にどのような紆余曲折を経て裁決が下されたのか、本当のところが明かされることはない。ひとつ、踏まえておくと面白い見方ができるのは、人間の意思を支配するのは理性ではなく無意識だということ。他のレースで繰り返されていたスミヨンのラフプレー、軽微な制裁に留められたムーアの検量違反、ブエナが手中に収めかけていた2億円のボーナス、ローズが種牡馬入りした時の価値、武豊と松田博師に横たわる溝…。決して言葉には出されないが、人々が抱いている様々な思惑や感情は絡みあって現象を紡ぎ出していく。当事者も気づかぬままに。ブエナビスタもローズキングダムも次走は有馬記念を予定している。次回はフェアな流れのなかで、両馬の迫力ある叩き合いをゴールまで見せてほしい。それにしても、2位からの繰り上がりが初G1制覇とは、実に薔薇一族”らしい”結末ではあった(ローズが朝日杯を勝っているとはいえ)。武豊も中央G1の連続勝利記録をこういう形で継続するのだから、”持っている”スターのは間違いない。降着騒動の陰に隠れてしまったが、ヴィクトワールピサが海外の敗戦から立ち直ったこと、出遅れてしまったもののペルーサがきっちり入着してきたことは、来年に楽しみをつなげてくれるレースになった。気がかりは惨敗したナカヤマフェスタ。凱旋門賞の疲労が抜けていなかったか。じっくり休養してもらいたい。

|

« ジャパンカップ予想 2010 | トップページ | 再生へ最後の切り札 PATで地方重賞レースを発売  »

レース回顧」カテゴリの記事

コメント

武豊がきても誰もどいてくれなくなったんですね。ウオッカの安田記念も外国人騎手に囲まれていれば負けていたでしょうし。2度目の斜行さえなければセーフだったのにスミヨンも行儀が悪いですね。

投稿: ジュサブロー | 2010.12.04 11:09

スミヨンの不注意は謗りをまぬかれませんね、もったいなかったです

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2010.12.12 01:18

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1902/50180336

この記事へのトラックバック一覧です: ジャパンカップ回顧 ブエナビスタ降着をどう見るか:

» 全然、郷に従ってないじゃん! [【楽天】電脳無敵要塞ほいぴすたあ]
ジャパンカップのレース後、降着処分を言い渡されたスミヨンは、「郷に入れば郷に従え」と、コメント。『日本のルールは世界の基準とは違うが、日本のルールに従う』みたいな、一見... [続きを読む]

受信: 2010.12.01 21:49

« ジャパンカップ予想 2010 | トップページ | 再生へ最後の切り札 PATで地方重賞レースを発売  »