問われるダート競馬の選択 ブルーコンコルド乗馬入り
ダートG1を7勝もした馬がこの扱い… 日本の生産界はどうかしていると思いますよ。血統が評価されなくともこの実績を素直に評価されていいはずなんですが、もしこの「G1の勲章が7つ」という実績が「地方G1だから」という理由であったらそれはそれで悲しい。(座布団が行司にクリーンヒット)
ブルーコンコルド、引退。乗馬に。このニュース、なんだか久しぶりに、競馬に対してもやもや考えてしまう話だった。レース検討、馬券でなく、競馬について、だ。(○内○外日記プラス)
南部杯を3連覇するなどG1を7勝し、 2006年度のダートグレード競走最優秀馬にも選ばれたブルーコンコルドが引退を表明。しかし、その行く末が種牡馬ではなく、乗馬だったことにファンからは戸惑いの声があがっている。ブルーコンコルドは父フサイチコンコルド、母の父はブライアンズタイム。「ブルーマネジメント」(旧荻伏レーシング・クラブ)から総額2520万円、1口5万円余で募集されたクラブホースだ。デビューすると京王杯2歳Sで優勝し、皐月賞にも駒を進めたが成績は頭打ちに。3歳秋にダート路線に適性を見出し、5歳時には名古屋で行われたJBCスプリントでG1初制覇。先週のJBCクラシックで8着に敗れるまでに、およそ10億円の賞金を中央、地方で荒稼ぎした。ざっと考えても、一口当たりの利益は150万円超。G1競走7勝はダートに限ってもアドマイヤドンやカネヒキリと並ぶもので、超一流ホースの証だ。
ブルーコンコルドは南部杯で3勝目をあげた去年秋、8歳という年齢もあったのだろう、引退することになっていた。しかし、「関係各所に打診しているものの種牡馬入りのオファーがない」(Nonkee 呑 Stable)ため、やむを得ず現役を続行することになった。それから1年、状況は変わらなかった。個人馬主なら賞金をはたいて種牡馬入りさせるのかもしれないが、すでに利益を分配済みのクラブ法人はそうはいかない。それでもスターキングマン、ノボジャック、スターリングローズあたりが種牡馬入りしていることを鑑みると、実績で上回るブルーコンコルドに声がかからないというのは少し酷にも感じる。だが、母系に特徴なく、父は中級サイヤーとしてポジションが固まってしまっており、純粋に ”G1・7勝しか売りがない”同馬は繁殖を集めるのが難しいという判断だろう。想像してみよう、自分が生産者だとしたら同馬をチョイスするだろうか、せりで買い手はつくだろうか、クラブで産駒が募集されていたら出資するだろうか。1頭当たりの種付け頭数が増え、相対的にマイナー種牡馬の価値が低下している現在、感傷的に嘆いてみても仕方がない。
今回のブルーコンコルドの乗馬入りは、どれだけダートG1で勝利を積んでも種牡馬としての価値の決め手にはならない、ダート路線の厳しい実状を鮮明にしている。もともと芝コースの養生保護という観点にダートは位置づけられた経緯があり、スピードが足りずに芝で限界を露呈した馬、脚元が弱く硬い芝の衝撃に耐えられない馬などが集まる、救済レース的な色彩も濃かった。あくまでダートは芝を補完する存在。それは1997年にフェブラリーSがG1の格付けを与えられ、ダート体系が整備された今でも濃淡の差はあれ、本質的な違いはないだろう。天皇賞で勝負になる馬をJBCに出走させる陣営はないように、日本の競走体系が「芝>>>ダート」である以上、芝を主戦場にするグループにレベルの高い馬が集まるのも必然である。むしろ、フェブラリーSを格上げする際、G1の価値が損なわれると危惧する意見もあったことを振り返ると、私などはこの短期間に良くダートの地位は向上したものだと感じる。かたや、最初からダートG1が林立するなかで競馬を見始めたファンは、同じG1なのに差別ではないのかと矛盾を感じ、あるいは「俺はブルーコンコルドをG1馬だと思っていない」(おはようからおやすみまで競馬を広げる)と”ダートニヒリズム”に陥ってしまうのかもしれない。
クラシックや天皇賞と肩を並べるG1の格付けと、実際のレースレベルや扱われ方の乖離。ダートニヒリズムから脱する方策はあるのだろうか。まずはその現実を受け入れつつ、救済レースから一気に路線整備されてレベルアップしてきたのが現在であることを認識しなければなるまい。議論を明確にするため、二つの考え方を提示してみたい。ひとつは現状を積極的に肯定する考え方。「G1は種牡馬を選定するための競走」という見方を棄て、ダート馬の闘いを楽しみ、地方交流で馬券の売り上げも盛況になるのだから良しと割り切る選択。いわば障害の「J・G1」と同じく芝のG1とは異質の「D・G1」として生きていこうというものだ。理念から言えば、それこそ芝に対するルサンチマンに目を瞑るだけではないかとの批難は寄せられるだろうが。これに対峙するのが「芝G1=ダートG1」をめざす上昇志向型。交流重賞を含めて芝G1並の賞金水準を理想とし、飽くなきダートの地位向上を求めていく考え方だ。極端な話、日本ダービーの裏で、同賞金のG1・ユニコーンSが行われるのなら、生産界のダート馬に対する扱いはドラスティックに変わろう。現実的な可能性はともかく、芝に劣らぬダート路線確立という運動は究極にはそこに向かう。
ブルーコンコルドの乗馬入りが投げかけたのは、漸次、底上げされてきたダート路線が何を着地点として進化していくべきなのかという課題だ。繰り返すが、短期間で競走体系が整備され、多くのファンの注目を集めるようになったダート路線の改革は成功したと言っていい。だが、その拡大路線を今後も続けるのか、ダートは補完的なものとして中庸に収めるのか、問われているのは長期的な戦略のように思える。その選択は政策的なものであり、どちらが正しいとも言えない。ひとつ忘れてはならないのは、日本のダートはアメリカや中東などのダートとは全く異質の舞台であるということ。砂が深く時計がかかる日本のダートは、雨の多い風土に適応した優れたものだが、そのためガラパゴス現象的にダート競馬が育ってきた背景がある。拡大路線を支持するならば、そうした日本特有のダート競馬を是とするのか、オールウェザー導入含めた馬場改修をセットで考えるのか、踏まえることも欠かせない。最後に本題とは関係ない蛇足だが、ブルーコンコルドの件はクラブ馬が種牡馬入りする場合の死角を明らかにし、余生問題で俎上に上ったドリームパスポートに重ねることができ、別の側面からも興味深かった。
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コメント
種牡馬になれない→残念だね
という以外に感想はないですね
この手の問題にエキサイトするファンの気持ちもわからないでもないが、
この分野に関してはファンは身銭を切って生活かけて勝負している
生産の現場の方々の領域に立ち入ってはいけない気がします
投稿: 銭やって揉んでやって | 2009.11.08 16:29
ブルコン乗馬へ、って見たとき「??なぜ??」と。
Gすら勝っていない馬が種牡馬になり、馬車馬のように勝ち続けて来た馬が乗馬とは、と。
日本では優れた個体を選別するために競馬を行っているのではなく、馬券を売るために競馬を行っている証拠。
答えのない雲を掴むような話なのかなぁ
投稿: miura | 2009.11.08 16:55
クラブ馬はシンジケートが組めないと難しいでしょうね。アメリカなんかだとたまに変な血統が大物を出したりするんですが今の日本は生産者がどこもカツカツなんで無理そうです。
投稿: ジュサブロー | 2009.11.08 23:03
GI勝っても種馬になれない馬がいる一方で、重賞未勝利でも血統だけで種馬になる馬がいる…「じゃあ、もうレースやる意味ないじゃん」って思っちゃいます。
投稿: タップダンスシチー | 2009.11.08 23:33
これは血の宿命というか、受け止めなきゃいけないことってあると思う。
ただ全体として気分的に落ち込むっていうのはあるとして、その回避策としてやはり芝ダート限らず、日本の馬場を欧州なり米なりに合わせて、海外GⅠで活躍する馬を作り上げないとダメだと思います。
要は日本で需要がないのなら海外へ売り込む。
そのためには海外GⅠのレースでも勝算できるような環境を作る。それには高速馬場が楽しめる!なんて価値観止めて、深い芝、米国のような土に変えていかないとダメだと。いつの頃かニシノフラワーが2歳時勝った新装阪神の馬場。あれには期待したのですが、止めてしまって残念な思いをしましたよ。
投稿: ひでき | 2009.11.09 00:33
ブルーコンコルドは個人的には好きな馬だったので、種牡馬入り出来なかったのは残念ですが、その選択に口を挟む権利はないんだろうな、と思うのは最初にコメントされた方と同意見です。
また、同じダート路線で活躍し種牡馬になった3頭を引き合いに出されていますが、彼らの繁殖実績を考えるとあと何年続けられるのか、その後、乗馬にすらなれないのではないか、という懸念は残ります。
ブルーコンコルドが繋養される予定のハントバレートレーニングファームは競走馬の育成・調整のための牧場のようですが、そこでスタッフの教育のために使われるのでしょうか。
残念ながら後継馬は出せないものの、未来のホースマンの育成に役立てるのなら、それも大事な仕事だと思います。まぁ、それをG1 7勝の馬がやらんでも…と言われればそれまでですが。
今でこそ、強い馬は海外にと言う風潮が定着しつつありますが、馬が投資のための経済動物とすると、最も賞金水準の高い国内で走らせるのがベストなわけで、当事者の立場からすると国際化糞食らえ、ガラパゴスで何が悪い、という考え方も甘受しなければいけないのかなと思います。
最後に、いつも鋭い視点から問題提起をしてくださるガトーさんには感服させられるのですが、小生の読解力が弱いせいか、ガトーさんご自身はどうされたいのか、どういう方向が是と考えておられるのかが、今一つはっきりしないのです(余生馬問題の時もそうですが)。別エントリーでも結構ですので、その点ご考慮いただければ幸いです。
長文失礼致しました。
投稿: Yamachan | 2009.11.09 22:43
>銭やって揉んでやってさま クラブや生産者を非難するのはお門違いもいいところですじゃあ、金払って引き取れと。私が関心があるのは「種牡馬になれない→残念だね」と多くのファンが思う背景は何かということです。ハンドル素敵ですね
>miuraさま 香港などはまさに馬券を売るための競馬ですよね。それはひとつの在り方だと思いますが。一度、種牡馬の選別がG1の意義だという固定観念をサラにすると違ったアイディアが出てくるのかもしれません。雲をつかむような話でも、簡単に結論を出して思考停止するより、あれこれ思い巡らすほうが楽しいかと。だいたい、こんな話題で盛り上がってるのは、競馬ファンの0.01%ぐらいの変態だけでしょうし。。
>ジュサブローさま 日本の生産者がブルコン、2、3年、種馬として使ってみるか、という余力がないというのは悲しむべき経済状況であります。バラエティに富んだ産駒を見たい!というのは自然な望みだし、多様性があることがどんな産業にも活力を与えることになるのでしょうから。
>タップダンスシチーさま 一流種牡馬の代替種牡馬としてリーズナブルな値段なら買い手がつくということなんでしょうね。競走成績と血統と、そのどちらが重視されるかというバランスが微妙なところなのだと思います。そう言えば、ミホノブルボンはマグニテュード×シャレーという代替種牡馬同士の配合でした。
投稿: ガトー@馬耳東風 | 2009.11.11 11:09
>ひできさま 馬場を変えれば、走る血統も変わってくるわけで、ガラパゴス的に生きるのか、海外をめざす馬をつくるのか、問うてみることも大切だと思います。あの頃の阪神の馬場はエラク時計がかかりましたね。ああいう馬場もひとつくらいあっても面白いのでしょうが。想定ロンシャンみたいな。ファンには不評だったんでしたっけ?
>Yamachanさま ブルコンには幸せな余生を送ってほしいですね。たとえ馬房が立派じゃなくても、大事にしてもらえるスタッフに囲まれれば。「国際化糞くらえ!」と生産者や馬主が徹頭徹尾思っているかというと、夢は凱旋門賞だったりするわけで、現実とロマンのせめぎ合いが競馬の面白さなのかなと思います。
エントリー趣旨、届かなかったようで申し訳ありません。冒頭のコメ返しにも書きましたが、記事のきっかけは「種牡馬入りできなくて残念」とファンに思わせるもの、力あるいは構造、は何なのかということでした。そこから考えを広げていったとき、「ダートに価値がないのはしょうがない」という安易な思考停止を克服すること、急激に路線整備されたダート路線の格と実体の乖離を認識した上で将来の進路を選択しなければならないこと、の重要性が浮かび上がったわけです。私がどうしたいんだというご質問は、題名に掲げた「ダート競馬の選択」についてだと理解します。理想的には、馬場を改修して「日本で活躍できる=海外で活躍できる」となることで、ダート競馬の地位が高まるよう長期計画を立てる、です。但し、私には「リアリスティックにガラパゴス万歳」という選択を打ち負かすだけの根拠を今のところ持ち合わせていません。「~すべき」と勢い良く断定するのが説得性あるものだとは理解していますが、今、そう書くのは決断主義でしかありませんし、そこはYamachanさんをはじめ、みなさんの意見から触発されて、私の狭い価値観からは出ない発想が得られればと思っています。
余生については、もう少しフォルダに寝かせてからUPしようと思っています。
投稿: ガトー@馬耳東風 | 2009.11.11 12:24
走り続けるバルクとかも・・・
芝かダートかって話よりも
やはり生産者の余裕の問題なのかもしれないなと。
その意味で外国人馬主が良い方に影響して欲しいとは思います・・・
投稿: ○もと | 2009.11.13 20:16
自分も一人でこの問題にエキサイトした側の人間です。とはいえmixiでつぶやいた程度ですが。
今回の事に生産側の問題を関与していない人らが文句言うのはお門違いと理解していて、自分はどちらかというと現在のグレード体系に不満があります。
G1という頂点を勝つ優れた馬が後世に繋いでいけないのなら、それは競走馬選定としてのG1を意味を為していないと思います。
G1の乱立を終えた今はそういうものを見直す必要が出てきたのではないかと、競馬歴の短い若輩者ながら考えています。
とはいえ実際に見直されて天皇賞春や菊花賞がG2になったら凹みますし、今回の問題としては生産者側に体力が無いのが要因なんでしょうが、
とにかく何か動きがあってほしいと思うぐらい今回は悔しかったです・・・
投稿: 笹 | 2009.11.14 14:05
>○もとさま 外国人馬主が馬産地を潤してくれるといいですね。ただ、カネのない時代だから本質の部分が露わになっているとも感じますが。
>笹さま ダートにしても、長距離にしても、G1馬に相応しい扱いを受けて、その仔たちがまた活躍する、そんな理想がファンのなかに強いんだと思います。もちろん、私にもあります。そういうイメージを競馬界は喧伝してきましたし、そこに齟齬が生じているのかもしれませんね。
投稿: ガトー@馬耳東風 | 2009.11.15 13:22
みなさんの意見すごい勉強になりました!
自分はまだまだ初心者です!
今週のダービー楽しみ♪
投稿: こうじ | 2010.05.24 15:01