桜花賞回顧 ブエナビスタの能力を信じきった安藤勝
4角ではさすがに届かないのではないかと感じたブエナビスタ。終始、後方16番手。しかも、直線ではレッドディザイアとジェルミナルの間に開いた進路を閉められ、一旦、ブレーキをかけて立て直すロスがあったのだから尚更だ。だが、エンジンが違った。大外から33秒3の上がりを繰り出し、完璧なタイミングで先頭に立ったレッドディザイアをゴールでは半馬身、差し切っていた。阪神は内が悪く、外差しの馬場になっていたとはいえ、例年の桜花賞馬レベルでは差し負けていただろう。そして、1.2倍の人気を背負ってこんな大胆な競馬ができる鞍上にも驚きである。戦前、ブエナビスタはもう少し前でレースをするのではないかと思っていた。馬の力を信じると言うは易いが、安藤勝の心臓はどれほどの毛に覆われているのかと訝しくもなる。ブエナビスタの母、ビワハイジは早田牧場産。父スペシャルウィークは日高大洋牧場。判官びいきをすれば、これほどの馬が日高産でなかったのは少しばかり惜しいところか。
レッドディザイアはキャリアの浅さを考えると優れた内容。前2走よりスムーズな競馬ができた。マンハッタンカフェの仔だが、まだまだ伸びしろはある。現役時代は牝馬の名手として鳴らした松永幹師の管理馬で、調教師になっても女性の扱いには長けているようだ。3着にジェルミナル。チューリップ賞は不甲斐ない敗戦だったが、しっかり立て直した。ただ適距離はマイルだろうし、オークスで上位2頭を逆転するというタイプではない。フィリーズレビューを制したワンカラットが4着。脚を溜めて良く伸びてきた。能力はすべて発揮している。3番人気のダノンベルベールは8着。1枠が響いたのもあるし、体調も良くなかったか。期待していたツーデイズノーチスも全く見所なく惨敗。長距離輸送の影響か。桜で関東馬が走るのは難しい。同日の忘れな草賞ではデリキットピースが勝利。これで2戦2勝。オークスの伏兵になる。
桜花賞が行われる日の早朝、境勝太郎元調教師が心筋梗塞のため亡くなった。享年89歳。サクラユタカオー、チヨノオー、ホクトオー、バクシンオー、チトセオー、キャンドル、ローレルと、数々のサクラの名馬を育てた名伯楽。強気のコメントを出すことから、「境のラッパ」なる言葉も生まれた。引退後は美浦黄門の名でスポニチで馬体診断を行っていた。騎手時代はトサミツルで桜花賞を制したほか、オグリキャップやキョウエイマーチを子孫に送り出したクインナルビーで天皇賞秋も勝っている。名物トレーナー、桜に見送られながら旅立つ。安らかに。
| 固定リンク
「レース回顧」カテゴリの記事
- 有馬記念回顧 死力を尽くした3頭が新たな伝説をつくる(2016.12.28)
- 宝塚記念回顧 2度目の“試練”がドゥラメンテを襲う(2016.06.28)
- 安田記念回顧 独り旅!ロゴタイプが波乱の大金星(2016.06.07)
- 日本ダービー回顧 運も引き寄せた川田の勇敢な騎乗(2016.05.31)
- オークス回顧 池添の“覚悟”に応えたシンハライト戴冠(2016.05.24)
コメント