秋華賞回顧 ネット批判を跳ね返す小島茂厩舎の大激走
競馬は何が起きるか分からない。今年の秋華賞は改めて当たり前のことを認識させられたレースだった。そして、主役となったのは馬というより、厩舎ではなかったか。勝ち馬ブラックエンブレムと3着プロヴィナージュを管理していた小島茂之厩舎だ。成績だけではない。「回避決定」と報じられてしまったプロヴィナージュ参戦でポルトフィーノが除外になったこと巡り、心ないファンの中傷がオフィシャルブログに殺到して炎上。「勝ち負けの対象にもならないダート馬」「出走させるのはただの自己満足だ」「どれだけの人が迷惑を被るのか分かっているのか」「ここまで周囲を振り回して散々な結果だったら叩かれますよ」。なかには小島茂師を批難するためだけにブログを立ち上げた者や、「競馬場でプロヴィナージュにブーイングをしよう」と呼びかけたポルトフィーノファンもいた。小島茂師の胸は悔しさで張り裂けそうだったに違いない。賞金を積み重ねて、ようやくたどり着いた晴れ舞台。馬は栗東に長期滞在させてスタッフは懸命の調整を続けてきた。それが、何故こんな言葉を浴びねばならないのか。
レースはエアパスカルが先頭を切り、佐藤哲プロヴィナージュが直後につける展開。向こう正面からはプロヴィナージュがハナを奪った。1000メートルは58秒7 。淀みないラップが後続の有力馬の脚をなし崩し的に消耗させていた。岩田ブラックエンブレムは中団の前方。直線では最内をついて、距離のロスなくスパートして1分58秒4の好タイムでゴールした。内枠を利して理想的なポジションを取れたこと、外を回らされた有力馬が追い込める展開にはならなかったことが勝因にあげられる。もちろん、馬の力があったこと、さらに栗東留学でパワーアップしたことが一番であるのは言うまでもない。渦中の馬となったプロヴィナージュは粘って3着。「今回は悪役だぞ!大丈夫か?」、小島茂師の騎乗依頼に「慣れてます」と引き受けた佐藤哲。無理にペースを落とさず、絶妙のタイミングで仕掛けた手綱は見事だった。それがブラックエンブレムのアシストになったばかりでなく、プロヴィナージュの能力の高さ、調子の良さを着順で証明した。そして、小島茂厩舎の名誉を守ることになった。三連単はG1史上最高の1098万馬券。複勝でも6200円。応援馬券を購入しようか迷って、買わなかった私は負け組みだ。だが、非常に痛快な気持ちになったのだから不思議なもの。
配当が示すように、予想難解の秋華賞だったが、10着の1番人気トールポピーまでコンマ5秒差のなかにひしめいており、ペースやコース取り、仕掛けのタイミングなど、少しでも違えばガラリと着順も入れ替わる力関係だったことが推察される。逆に言えば、どの馬でもゲートにさえ入ることができれば優勝するチャンスがあったということ。この点、プロヴィナージュの具合の良さを確かめて、出走に踏み切った小島茂師は賢明だった。一方で、仮に出走馬がビリ、ブービーに負けたとしても、その挑戦は正しかったのだと私たちファンは認識すべきだろう。どの馬が勝つか分からないのが競馬。秋華賞の前身である旧・エ女王杯で大穴をあけたサンドピアリスや、あっと驚くギャロップダイナにダイユウサクと、二桁人気馬がG1を制した例はいくらでもある。まして、ちょっとしたアヤさえあれば、複勝圏内に入る機会は充分にある。予想談義で「絶対に来るわけない」というフレーズを使うのは楽しみのうちだが、前評判の低さを理由に厩舎や馬主をまともに中傷するなど、良識がないと見られても仕方あるまい。
春、桜花賞の前、小島茂師は馬体の細化を懸念してブラックエンブレムの追い切りを行わず、同馬は惨敗した。今回、その反省を生かしてか、きっちりと追い切りで時計を出して栄冠を掴み取った。こうした情報はすべてブログで明らかにされており、ファンは小島茂師の試行錯誤を知ることができるとともに、おかしいと思えば馬券から外すなどこともできたわけだ。ファンのコメントにも誠実に応対していた小島流の情報発信は、ウェブの発達した時代だからこそ可能になったもので、ホースマンとファンの関係に指針を与えるモデルケースではないだろうか。それだけに、謂われない中傷に晒された騒動は残念だったが、ドラマ以上のストーリーで着地できたことは競馬の神様の救いがあったのかとも感じる。幸いなことに小島茂師はブログを続ける意向を発表し、「厩舎にとって好結果が出た事で、今回の一件を批判をされた方たちが肩身の狭い思いをしていることと思います」と、批難した相手を気遣っている。ちなみに「回避決定」を報じて騒動のきっかけをつくったスポーツ新聞各紙は、ブログ炎上の事実を切り取って美談に仕立てるのみで、自らの勇み足を省みているところは皆無だった。
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コメント
今回の騒動 心ない誹謗中傷は議論するまでも無いが
大レースの出走枠というものを考えるに当たりこのまま
「小島茂之厩舎の快挙」ちゃんちゃん でいいのでしょうかね。
実際、同厩の有力馬のフォローのため老齢のG1馬をいつまで
も地方重賞に出していたなんて事例もあるんだし、今回の秋
華賞で他の一部調教師がやっていた数々の愚行がチャラに
なるわけでもないっすよね。
そういった悪しき前例があったからこそ今回の「事件」が起こった
って事も無視しちゃダメだと思いますね。
投稿: 素人 | 2008.10.23 18:43
>素人さま 交流重賞の出走権のあり方は良く問題にされますが、秋華賞とは別個に考えたほうが混乱しないと思います。ノボトゥルーのせいで、プロヴィナージュが出走できたわけではないですし。。。
投稿: ガトー@馬耳東風 | 2008.10.24 13:35
トラバ失礼しました。「馬券日記 オケラセラ」のブログは頻繁にチェックさせてもらっています。何故かはよくわかりませんが、例えば今回のようなスポーツ新聞などではチェックできない、出来事など知ることが出来ます。私としては、競馬関係の数多くのサイトを回っていちいち情報を集める、などしません。よって一括的にそこだけ見てればまあ少しは流れについていける、的なサイトがあることが便利なわけです。そうした類、以外の記事についても、失礼な言い方かもしれませんが「こういう人が、こういう風に思っている」ようなことが、年齢相応のやや詳しいファン?の方として、一般的で参考になると思っています。記事自体も面白いものです。では今後の更新も楽しみにしています。私としては続けてくださるとうれしいです。
投稿: カバメ | 2008.10.25 12:11
>カバメさま トラバありがとうございます。私としては、好き勝手に書いておりますので、あとの判断は読者の方々にお任せいたします。
投稿: ガトー@馬耳東風 | 2008.10.31 23:31