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2008.01.12

作家・月本裕氏死去 志を”レーシングポスト”誌に遺して

9日、作家の月本裕氏が脳出血のため47歳で亡くなった。月本氏は雑誌編集者を経て作家として活躍。「賭ける魂―闇に消えた20世紀最大のギャンブラーを追って」「挑戦―サクラローレル物語」「サラブレッド101頭の死に方」など、数々の競馬関係の著作でも知られている。すでに2000年からホームページ「月本裕ウェブサイト」を開設してネットで活動を始め、現在はブログ「ツキモトユタカ ノ マイニチ」で社会・時事問題や競馬に対する自身の考えを積極的に発信していた。もちろん、市井のファンにすぎない私は直接、月本氏を存じ上げないが、著作からは競馬を深く愛し、競馬を憂え、競馬メディアのあり方も真摯に考えておられるように見受けられた。大勢に流されることなく、然るべきジャーナリズムの方向性を求めていたように感じる。

大川慶次郎氏らとの共著「サラブレッド101頭の死に方」では、月本氏は1990年代の名馬を担当している。ライスシャワー、ハシルショウグン、ロイスアンドロイスら、どの話も競走馬の魅力や切なさが良く伝わってくるが、私が好きなのはサンエイサンキューの話だ。函館3歳Sから見守ってきた月本氏は、酷使の末に故障、緊急手術で一命を取り留めるも、苦しみぬいて亡くなったサンキューの一生と向かい合う。そして、「人間がどんなに傲慢に自然と立ち向かったとしても、できないことはできないのである。そのできないことを起きないようにするのが、真のプロというものだと思う」と行き着く。「私を含めたマスコミの人間、そしてオーナーサイドに、プロとしてどこか欠けたところがあったのではないか」と内省するのだ。

3年前、月本氏のブログで、私のエントリーを褒めていただいたことがあった。ハルウララが調教師の意に反して関東へと運び去られた時のことだ。事情に暗い一般マスコミが高知競馬バッシングを始めるなか、私はいてもたってもいられない気持ちになり、連日、資料を探してきてはハルウララに関する記事を書き続けた。一ブロガーがマスコミの情報に逆らう間には、批判を受けて弱気になったこともある。だから、プロである月本氏の拙ブログへの言及には非常に勇気づけてもらった。

ハルウララについてはもうぼくは書くことなどないし考えたくもないんだけど、そうも言っていられないのが一見客観的なマスコミ報道の甘さ。 …少しでも馬主側に理があるようなことを報道しているメディアは本気で取材してちゃんと報道して欲しい。 …とりわけ読んで欲しいのは馬耳東風競馬データ予想の管理人さんのブログだ。…情報なども過不足なく、実に 参考になる。すべてのマスコミの方々は、このブログを熟読してからハルウララ問題を語るべき。もちろん立場 はいろいろあろうし考えもいろいろあると思います。でもその前に基礎知識としてこのブログは必読。特に競馬 をあまり知らないマスコミ関係者はぜひ読まれたし。(ハルウララに関して、基本の諸問題をちゃんと押さえてから語ろう)

私は10年以上、ウェブで競馬について駄文を書き連ねているが、ネットで活動する競馬マスコミの方にコメントをいただいたことはほとんどない。無論、箸にも棒にもかからない文章だというのが大きな理由だと思うが、一般的に「匿名掲示板と変わらない無責任な発言」といったブロガーへの見方も少なくないのかなと感じることがある。先見の明を持って早くからネットを使っていた月本氏だからこそ、「実名匿名ハンドル名の方々がネットに参考になる意見を展開されている」とフェアな視線をもって、拙ブログを取り上げていただけたのではないかと思う。

去年末、月本氏は「レーシングポスト」というタブロイド版の競馬月刊誌の編集長に就任したばかりだった。既存の競馬メディアにはない試みを実現されようとしていたと聞く。 10日、出たばかりの第2号を読んだが、JRAや地方競馬、馬インフルエンザ問題など、歯に衣着せぬジャーナリスティックな記事が掲載されているとともに、豊富なデータを用いてクラシックを展望するなど、コアなファンが満足できる紙面づくりがなされている。ぜひ残されたライター陣が「本当に日本の競馬は面白いのだ、ということの本質をこれでもか、とわかりやすくしかも妥協しないでお届けする」という月本氏の志を継いで、レーシングポストを育ててもらえたらと願う。同誌はローソンのみで販売されているが、私はしばらく買い続けようと思っている。

馬はファンのものである、競馬は馬券を買うファンあってのものである、という考え方にも、私は全面的に賛成することはできないのだ。…競馬という世界全体に、もしもオピニオンを作り上げようとするのならオーナー対ファン、などという考え方をしていても無意味なのだ。そこにジャーナリズムの必要性が出てくる。ところが、日本ではそこのところがひどく、弱い。物書きの端くれである私自身も、忸怩たる思いがこみあげてくる。(サラブレッド101頭の死に方/ 月本裕)

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ひとこと ※やっと目が落ち着いてきたので、今週からは平常更新に戻る・・・予定。とりあえずはてなのほうにレーシック体験記でも書くかなあ。 注目記事 ◆作家の月本裕さん死去 ◇ツキモトユタカ ノ マイニチ(御本人のblog) ◇追悼・月本裕さん<たけくまメモ> ◇作家・月本裕氏死去 志を”レーシングポスト”誌に遺して<馬券日記 オケラセラ> ※ご冥福をお祈りいたします。 ◆馬事文化賞決定??2つの著作...... [続きを読む]

受信: 2008.01.13 23:32

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ただでさえ未整理で、ほとんどあの時代を定着させるという言論活動が行われていない80年代という時代、そろそろそういう動きが始まってきた頃に、貴重な語り部の一人を失ってしまったんだということを、改めて強く感じました。僕の中では月本さんは競馬関連の書籍を通じてだ... [続きを読む]

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