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2007.08.25

海外にも飛び火? 終息しない馬インフル危機

馬インフルエンザの感染は沈静化しつつあるとして、今週末の開催が決行されることになった中央競馬。 23日、JRAは出馬登録した1321頭の検査を実施したが、そのうち3%にあたる41頭が陽性反応を示したため、この41頭を除外した上で出走馬を確定させた。このなかには新潟記念で人気を集めると見られていたサンレイジャスパーや、キーンランドCに登録していたツルガオハヤテが含まれているようだ。今週の出走馬は出馬投票後の午前11時から午後8時の間に全頭検査を行い、陰性馬だけでレースを開催することになっていた。しかし、東京スポーツ(25日付け)によれば、函館から新潟に出発したラブカーナ、美浦から札幌へ向かったリキアイタイカンワイルドシャウトなどは決められた時間外に検査をパスするなど、現場まで完全にルールが行き渡っていない様子が伺える。レースには先週、出走予定だった馬が回ってきているため、多数の除外馬も出ている。それだけ質の高いメンバーが揃ったとも言え、意外と堅い馬券になるのかもしれない。

この出走予定馬に対する検査とは別に発表される「インフルエンザ発症状況」では、 22日集計分で新たに発熱馬40頭、うち陽性馬9頭が明らかになったという(スポニチ)。栗東では前日より発熱馬は増えていて、JRAの言うように目に見えて沈静化しているとは言い難いようだ。地方競馬では大井で91頭笠松で2頭園田で1頭の感染が確認された。金沢に次ぐ大量感染を出した大井は来月2日からの開催を控えており、全面的な中止か、JRAと同様の出走馬の全頭検査を行った上でレースを行うか、選択を迫られることになる。一方、オーストラリアでも感染が認められたという気になるニュースが入ってきた。世界各地からシャトル種牡馬が到着している検疫施設で、3頭に感染症状が出ている。マクゴーラン農業大臣は感染源について「日本から来た一頭が疑わしい」(北海道新聞)と述べている。同じ施設にいた79頭は隔離されているが、この中にはロックオブジブラルタルなどの一流種牡馬もおり、繁殖期の競馬産業に数百万ドルの損害が出る可能性があると言う。

日本ではJRAが開催を決行したことについて、賛否両輪が巻き起こっている。 JRAの対応に厳しいスタンスを取るスポニチは「競馬当日には陰性馬と陽性馬が入り乱れる可能性すらある」とし、どの馬が感染しているか情報も開示されなければ安心して馬券を買うができず、「とても公正競馬とはいえない」と指弾している。「『沈静するまで様子を見て、秋から再開すればいい』という厩舎関係者の声が少数意見ではない」とも付記する。一方、ホースニュース馬の辻三蔵記者は、こうした日刊紙の報道に強く反論している。「日刊紙には匿名関係者が話す無責任な記事ばかり」とし、自身が取材した「奥平、古賀慎、小島茂師は有事でも最善を尽くして、管理馬を出走させている」と主張する。水上学氏なども「都合のいい時だけファンの味方になるのは噴飯もの。普段は何の問題意識も持たないくせに」と感情を露にして日刊紙批判を繰り広げている。どちらが正しいとは私には判断しかねるが、厩舎関係者もマスコミも各々、スタンス、意見が入り乱れているのが実態ではないか。

須田鷹雄氏はnetkeibaのメルマガで「競馬は一体誰のもの? ファンを置き去りにしたJRAの対応」と題したコラムを寄稿。二重の検査を行うことで「不安に思わず馬券を買っていい競走」は実現できるとしながらも、 JRAは積極的に情報を発信してファンの理解を得ようという試みをしなかったと指摘している。だから、一部の「煽りまがい」の報道で「インフルエンザ本体とは別次元のリスク」、言い換えれば「ファンの不興」を買ったとする。この点、私も須田氏の論に賛同するが、 JRAが金科玉条にする「公正競馬」は陽性馬を除外することだけで担保されるわけではなく、ファンの信頼を得られた上で馬券を発売することが必要条件であることは銘記しておきたい。そのためには感染馬の情報開示は行うべきだ。普段の競馬でも故障や状態など正しい情報は伝えられていないから、今回も感染情報の開示は必要ないとの考え方があるとすれば、それこそ最善の状態で出走させようとしている関係者にも失礼だろう。非常事態であれば、気を遣いすぎるくらい公正性を慎重に扱ったほうが良い。

今後、開催を続けるに当たって焦点になるのは、牧場や育成施設からの帰厩をいつ、どのような事実をもって認めるかということになる。完全な隔離が不可能なトレセンに帰ってくれば少なくない馬が新たに感染するだろうし、トレセン外にいる馬にも感染が既に広がっているなら事態は長期化する。今週末の開催決行で口角泡を飛ばしているマスコミもファンも、願うところは一日も早く競馬が通常通りに開催されることだ。一部マスコミの過剰なJRA批判も、それに対する反駁も、次のステップへ移る時期だろう。中央だけでなく、地方、海外を巻き込みつつある危機をいかにソフトランディングさせるか。そのための方法論を議論しているのだという理解を忘れずにおきたい。厩舎関係者やJRA職員は奮闘をされていると思う。組織の一員として現場の人間が開催をめざす努力をするのは当然のことだ。それが故にも、監督官庁やJRAトップは大局的な見地から、感染防止の措置や開催是非の判断を行ってほしい。

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» メイショウサムソン正式に凱旋門賞断念・・・ [徒然なる司馬に@「馬論」]
ついにメイショウサムソンから凱旋門賞のチャンスが取り上げられてしまった・・・。とても残念であるが仕方がないな・・・と思うしかない。 馬インフルエンザは国内だけでなくオーストラリアにも飛び火してしまっている。この事実がメイショウサムソンを凱旋門賞から遠ざけた大きな要因になったのかもしれない。 ここでひとつ気になってし..... [続きを読む]

受信: 2007.08.26 19:30

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