« 新馬戦開幕! 超良血ポルトフィーノがヴェールを脱ぐ | トップページ | 宝塚記念 裸同然51キロのウオッカの取捨は? »

2007.06.20

旅打ち金沢競馬! 百万石の男気に触れる北陸路

思い立ったが吉日。博徒が旅打ちに出かけるのに理由は要らない。地方競馬の開催スケジュールを確かめると「金沢」の文字が私を誘ってくれていた。朝7時半、羽田から小松行の飛行機に乗り込み、バスに乗り換えて金沢駅へと到着したのは2時間後の9時半だった。駅西口の1番乗り場から出発する競馬場行き無料バスの第一便には、タイムテーブルが組まれているかのようにちょうど良く間に合った。15分ほど揺られれば、いざ加賀百万石の競馬場へ討ち入りである。私が金沢競馬場を訪れたのは大きなレースもない今週月曜日(18日)。金沢はこれまで三度、立ち寄ったことがあったが、競馬場は初めて。私にとって金沢は場外やネットでも手を出しづらい、馴染みのない競馬場のひとつだ。正直、印象は薄い。だが、この金沢競馬、ただものではなかった。

バスに乗り込むと、すでに車内は騒がしい。前日に行われた重賞レース「百万石賞」や、今日の予想についてなど、パワフルなおじちゃん、おばちゃんが口角泡を飛ばして舌戦を繰り広げていた。私が恐る恐る空いていた席に座ると、早速、六十代とおぼしき紳士が話しかけてきた。「兄ちゃん、競馬場は初めてか? わしは競馬ある日は32年間毎日、いっとんねん。知らん顔はすぐ分かるんや」。いきなり余所者バレバレである。「東京から来た? ここは草競馬やで。大井に行っとけや」、言葉は荒いが顔は嬉しそうに笑っている。おっちゃんにとって金沢競馬場は我が子の如く自慢の対象なのだ。「内外、言うたら外枠や。昔ほどではないがな」「そりゃ先行せな話にならん。追い込みなんかきかへんで」。おっちゃんは知り合いに「この兄ちゃん、東京から来たんやて。朝から競馬しにやで」と触れ回り、「今日はしっかり頑張らなアカンで」と無料入場券を手渡して去っていった。いきなり百万石の男気の洗礼を受けることになった。

競馬場の門をくぐると、5つの専門紙がブースごとに販売されていた。キンキ、カナザワといった新聞もあったが、何となしにホクリクなる専門紙を買ってみた。値段は550円。「昭和23年創刊」「金沢競馬の伝統紙」と誇らしげに綴られている。新聞といっても冊子形式で、1レースごとに見開き2ページの紙面構成になっている。馬柱、短評、厩舎コメント、調教時計、展開図が実に見やすく配置されている。こんな専門紙が中央であったら、間違いなく毎週買ってしまう。新装ギャロップの編集部員は穴があくまで参考にしてほしい代物だ。母の父が記載されていないのは戸惑ったが、そんな血統分析は金沢競馬の予想には不要らしい。要らないものは載せない、これもまた男気である。 1レースの発走は10時50分。6頭立ての1500メートル戦だ。中央とは違って、朝から3連単は発売中。この日は最も多くても10頭立てだったが、配当を狙いに行けば必然的に馬券は3連単が中心になる。私は3連単1810円的中で幸先よいスタートができた。

少頭数ながら朝から熱いレースが 専門紙ホクリクとファンが発行した遊駿

リーディングジョッキー吉原寛人 パドックでのオヤジたちの会話は傾聴に値する!?

一見の素人がコース分析をするのは火傷しそうだが、おっちゃんも言っていたように先行しなければ話にならないのは確かだ。勝ち馬のほとんどは2、3番手からの競馬。鞭を叩きまくってでも、4角では先頭に並びかけなければならない。飛ばしてバテバテの逃げ馬も、砂が深いのか後続が捕まえられないケースが多い。 3着に人気薄の差し馬が届いて中波乱というのが、狙って美味しい馬券かもしれない。しかし、この日は普段にも増して堅かったようだ。まず頭が堅いから、1着を固定させれば、少頭数の3連単を的中させるのは難しいことではない。その分、配当は安い。ちなみに5レースの3連単は400円。これでは取ってマイナスだ。時折、紛れてマンシュウになることもあり、そこをすくえるか否かが勝敗の鍵を握っている。「とにかく3連単を当てて爽快な気分に浸りたい」というファンは、この競馬場は打ってつけだと思う。勝ち癖をつけるという意味でもお勧めしたい。

知る人ぞ知る金沢競馬の特徴は、キャッチコピーの多彩さだ。 26人の騎手全員には個性的なコピーがつけられ、横断幕やペナントに記されて場内あちこちに張られている。例えば23歳のリーディングジョッキー、吉原寛人は「中央へ、そして世界へ! 翔ろ!」である。「翔ろ!」は一体、どう読めば良いのか、見る者の足を留めさせる工夫が粋ではないか。決して珍走団の背中に刺繍されているようだ、などとは思わないでほしい。「神が与えた走りの遺伝子 桑野等」はF1みたいだし、「侍 粂川京利」には後ろからバッサリやられそうな畏怖を感じる。「超快速新流星」「飛び出せ新星!」「燃えろ鉄人星」と、考案者は天文マニアかと突っ込みたくなる気分にもなる。「頑張れマーチャン」あたりは、ネタもなくなり、微妙なコピーをつけて怒られるのは嫌だという、作り手の心境さえ伺える。そんな馬鹿なことを想像しながら、ボリュームたっぷりの肉焼きそば(500円)で腹ごなしをした。

メインは「A2ルビー特別」、1番人気は中央から転入初戦のリュウヨウ。1600万下で頭打ちになった馬で、二ヶ月前の前走は2秒3差の17着だった。この日のリュウヨウは25キロ増、豚だ。だが悲しいかな、逃げ切り圧勝してしまうのが、今の中央と地方の格差社会。3連単850円的中も、収支はマイナスで最終11レースを迎えた。気合を入れてパドックに行くと、馬券オヤジが姦しい。どうやら準メインで人気馬を飛ばした米倉知が矛先らしい。「ちゃんと乗りやがれ。お前は信用ならねえんだ!」周回する米倉にマジ切れ寸前のオヤジ。だが、米倉も百万石の男だ。眼光鋭くオヤジを睨む。「睨み返しやがったな!」、さらに怒るオヤジに2度、3度、米倉は馬上から振り向きながらガンを飛ばしまくる。柵がなければ掴み合いのバトルが始まっていただろう。「そんなことより3番の馬、勃っとるよ。前後ろ牝馬じゃ」別のオヤジの囁きに私の予想はまったくまとまらない。結局、このレース、1番人気馬の米倉が圧勝。戻ってきた米倉に家族連れが手を振ったが、まったく無視。よほど興奮していたやに見える。米倉のコピーは「新ファンタジスタ!」。ロナウジーニョも真っ青だ。

私の金沢競馬初勝負は、11レース中6レースで3連単的中という輝かしい戦績を刻みながら、馬券的には大幅マイナスの「勝負に勝って馬券に負けた」結果に終わった。ああ、川中島を取られた上杉謙信の気分か。敵を知り己を知らば百戦危うからずと孫子は言ったが、次回はもう少し敵を知って再チャレンジしたい。リベンジを誓って、競馬場を後にした。赤字経営に陥っている金沢競馬は、これまでの基金を切り崩しながら開催を続けている。税金の補填はないいものの、主催する石川県と金沢市は平成21年度までに黒字転換の見通しをつけなければ、廃止もやむを得ないとの報告をまとめている。今後、他の地方競馬場と同様、厳しい局面に立たされる可能性も十分にあるだろう。今回、私が訪れて感じたのは、中央からは失われてしまった”泥臭い鉄火場の熱さ”だった。買うほうも乗るほうも真剣そのもの。だから、地元の競馬場を愛している。古都・金沢の競馬場がいつまでも続くことを祈りたい。

とにかく先行しなきゃお話にならない 異次元方程式 端勝成

着順表示版も加賀百万石風の屋根 ボリュームたっぷり肉焼きそば

金沢は全国有数の歴史的遺産を抱える観光都市。金沢城、兼六園は言うに及ばず、武家屋敷、茶屋街、忍者寺など前田藩の遺した貴重な文化施設が数多くある。美味しく胃袋を満たしてくれる日本海の魚介類も見逃せない。また、少し足を伸ばせば古くからの温泉街が点在している。私は競馬観戦の翌日、市内を見学した後、バスで小一時間ほどの加賀温泉郷の旅館に宿を取った。かけ流し、加熱なしの純天然温泉は体を芯から温めてくれた。その後、隣県の永平寺を参詣して帰京した。旅打ちの醍醐味はその地方の文化を併せて触れることにあるのだろうし、地域に競馬ファンがお金を落とすことは競馬存続を側面から支えることにもなる。この夏、みなさんも旅打ちに出かけてみてはいかがだろうか。

天下の名勝、兼六園 永平寺はお隣、福井県にある

|

« 新馬戦開幕! 超良血ポルトフィーノがヴェールを脱ぐ | トップページ | 宝塚記念 裸同然51キロのウオッカの取捨は? »

地方競馬」カテゴリの記事

コメント

金沢競馬場に出かけたことが無いのですが、おもわず行きたくなる衝動が起きました。おもわず引き込まれる記事でした。

楽しい旅で、うらやましい。
出来れば、出かける元手は競馬で作りたいものです。

投稿: セントレア | 2007.06.21 20:14

久々に爆笑した。私も地方のサークル内の一味だが
貴方の旅打ちレポートにはリアリティを感じる。
是非 我が鉄火場にも参戦していただきたい。

投稿: 痴呆馬主 | 2007.06.21 20:57

ガトーさん、こんばんは。

楽しく読ませていただきました。

私は今年の正月の冬季休催前に金沢を訪れました。馬券収支はガトーさんと同じ様なもの。的中→トリガミの連発でストレスを溜めたまま帰った記憶があります。金沢で儲けるのは難しいですね。たまに出る万馬券も引っかかったことがないです。

それにしても旅打ちはいいですね!私も来週は休暇を取って姫路→福山と渡り歩く予定です。

投稿: triomphe | 2007.06.21 21:53

>セントレアさま セントレアさまが金沢未体験とは意外な。 >痴呆馬主さま ぜひぜひ御地にもうかがわせてください。 >triompheさま 姫路、福山とは渋い。以前、観戦記を書きましたが姫路は食堂がポイントらしいですよ。

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2007.06.22 02:05

お久しぶりです☆

実は・・金沢競馬場は相当数いってるものでとても嬉しく楽しく読ませて貰いました♪

金沢競馬場も・・学生時代にホームだった笠松競馬場も(オグリ産駒笠松デビューの時は講義さぼって見にいきました)「鉄火場」な空気が好きだったりします(^^)

ぜひ今度、金沢競馬場まで来られた際には足を伸ばして「鉄火場」ではヒケをとらない富山競輪場(競馬じゃないですが・爆)にもぜひ!

・・なんて事を書いてたら久しぶりに金沢競馬場にも笠松競馬場にも久々に行ってみたくなりました(^^;←頭の中は宝塚記念ですけど(苦笑)


            


投稿: ぽち中忍 | 2007.06.22 23:55

>ぽち中忍さま 笠松もいいですよね。また行きたいなぁ。富山競輪は怖そう^^;

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2007.06.29 03:18

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1902/15503485

この記事へのトラックバック一覧です: 旅打ち金沢競馬! 百万石の男気に触れる北陸路:

» [競馬] 旅打ち金沢競馬! 百万石の男気に触れる北陸路 : 馬券日記 オケラセラ [昨日の風はどんなのだっけ?]
なかなか地方競馬の中でも、話題に上がりにくいし、たまに上がる話題はスター騎手の廃業とか、3歳頭ぐらいまで金沢で活躍していた馬が、南関東に移籍しましたみたいに話が多いですが、案外白山大賞典なんかでも勝ちはしないけど、2着や3着には地元馬がよく突っ込んでくる金... [続きを読む]

受信: 2007.06.22 11:53

« 新馬戦開幕! 超良血ポルトフィーノがヴェールを脱ぐ | トップページ | 宝塚記念 裸同然51キロのウオッカの取捨は? »