華麗なジャンプを再び 石山繁の快復を祈る
クラシックへ向けて、若駒たちが熱い闘いを見せる春。ホースマンたちは期待に胸を膨らませて、トライアルレースをみつめている。もちろん、真剣勝負であるが故、希望を打ち砕かれる敗者もいる。昨日、ウォッカが素晴らしいレースを披露したチューリップ賞で、 8年前、深い挫折を味わったジョッキーがいた。ファレノプシスに騎乗していた石山繁だ。デビューから3連勝で臨んだ同馬は1番人気。だが、出遅れ、直線で包まれるという失態を犯して4着に敗れた。石山は責任を取らされ降板。次走、ファレノプシスは武豊の手綱で桜花賞を快勝した。
辛い体験だっただろうが、デビュー4年目の若さを考えれば、将来の糧になると前向きに捉えることもできた。アローエクスプレスと柴田政人のように、乗り替わりの悔しさが騎手を成長させることもある。実際、チャンスはすぐに巡ってきた。翌年の暮れ、石山は素晴らしいスピードを持った牝馬と出会った。サイコーキララである。石山とサイコーキララは4歳牝馬特別まで無敗の4連勝を飾り、堂々の本命馬として桜花賞に出走した。ファレノプシスの雪辱を果たす絶好の舞台だったが、石山は消極的なレースをして4着という中途半端な結果に導いてしまった。
ファレノプシスもサイコーキララも、所属する浜田光正厩舎の管理馬だった。浜田師はビワハヤヒデに辛抱強く岸滋彦を乗せ続けたように、若いジョッキーを育てることに重きを置く、古き良きタイプの調教師だ。当たり前にように浜田師は石山にも有力馬を任した。しかし、そうした優しさは一度、歯車が狂うと悪い方へ悪い方へと回ってしまう。GⅠを席巻した浜田厩舎の勢いは影をひそめ、 2004年にはとうとう0勝にまで落ち込んでしまったのだ。翌年、浜田は主戦を上村洋行へと変え、皮肉にも厩舎の成績はV字回復していった。
一方、石山自身も年間1勝に陥るなど不振に喘いでいた。そうした中、石山は障害レースに活路を見出すことを決意する。コツコツと未勝利勝ちを積み重ねながら、 2005年、小倉サマージャンプではフミノトキメキとのコンビで、サイコーキララ以来の重賞勝ちも収めた。そんな時こそ気をつけなければならないのかもしれない。次走の阪神ジャンプSでは落馬。石山は骨折、フミノトキメキも一年間の休養を余儀なくされる。だが、挫折を乗り越えた男は負けなかった。今年1月、フミノトキメキとともに牛若丸ジャンプSで復活の勝利をあげたのだ。
障害レースで存在感を示しつつあった石山を、再び落馬事故が襲ったのは先月24日。着地の際に馬が躓き転倒。投げ出された石山は地面に頭を叩きつけられた。先週末、石山は尼崎市内の病院のベッドで、意識が戻らないまま30回目の誕生日を迎えた。病状は安定しているものの、今も昏睡状態が続く。厳しいプレッシャーに押しつぶされ、チャンスをものにできなかった若き日。しかし、どん底から這い上がった経験は、石山を強い人間へと変えたはずだ。必ず意識を取り戻し、ターフで華麗なジャンプを見せてくれると信じている。
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