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2007.01.24

馬事文化賞『馬産地80話』 日本競馬を炙り出す

昨年度、JRA賞馬事文化賞を受賞した 「馬産地80話―日高から見た日本競馬」 。札幌大学経済学部の岩崎徹教授が記した異色の競馬書籍だ。学術書でもなければ、ノンフィクションでもない。その中間のスタンスに立ち、平易な文章で一章ずつ競馬を紐解いていく。著者は農業経済の視点から四半世紀に渡って、馬産地・日高を見つめてきた。この本が高い評価を受けた理由は、数々の統計資料とフィールドワークから馬産地の遍歴を振り返ることで、日本競馬の置かれている状況を炙り出すことに成功したからではないだろうか。

内容はテーマごとに80話に分かれ、どこからでも読み始められるようになっているが、競馬ファンが面白く感じるのは序盤の話が終わった19話以降だろう。競走馬経営、繁殖、育成、取り引きと、足を運んで得た日高の実態を客観的な事実を積み重ねて提示していく。例えば繁殖馬については、自己馬、仔分け馬、預託馬の3つの所有形態を図表つきで解説した上、その比率の経年変化から背景を的確に分析する。

二〇〇三年には自己馬七五%、仔分け馬九%、預託馬一六%となっています。 …自己馬の割合が増加したということは、生産者の「自立化」にもみえますが、仔分けや預託契約の解約により、結果的に自己馬比率が増えたという消極的要因のほうが強いとみてよいでしょう。…馬主経済の悪化により所有馬を手放すことが多くなったこと、外国を含めた市場で馬が簡単に手に入るようになったこと、厩舎側が「持込馬」(馬主主導で厩舎に持ち込まれる馬)を敬遠する傾向にあること、などの要因によります。

ファンからは良く分からない取り引きについても、なぜ日本は市場ではなく庭先が中心になったのか、それぞれの問題点は何か、家畜商とはどのような人たちなのか丁寧に言及している。庭先の不透明さは良く指摘されることだが、市場についても特典義務を獲得するための不正や禁止されている直後の取り引き、家畜商の談合があり、セリ本来の姿になっていないと踏み込んでいる。セリ制度自体が先進国と比べ「未熟である」とは、関係者にとって耳の痛い台詞だ。

著者は市場取引の活性化が庭先取引を含めた全体の改善になると主張している。欧米のデータとの比較が興味深い。フランスでは生産頭数に対するマーケットへの上場率は50%を超える。そのうち7割は落札されている。翻って、日本は上場率は16%、実際に落札されるのはその3割に過ぎないというのだ。売却率が低ければ、市場は形成されるはずもない。そのため市場改革が必須となるが「生産者の経営基盤の弱さや厩舎制度の問題等とかかわっている」が故に、「日本全体の構造改革」が求められると言う。

この本を読み終えて感じたことは、日本社会と同様、馬産地でも格差が広がり続けているということだ。勝ち組の最たる存在は社台グループであり、レース賞金、競走馬取引、預託料、種付け料などで、総売り上げは200億円を上回っている。かたや、売れ残りが恒常化している状況下、負債を抱えながら高額な種付け料も支払わねばならない中小牧場は、リスキーな経営を強いられている。ついに4年前から1歳の平均市場価格は費用を割り込むようになってしまった。二極化の陰で、家族経営の「自己完結的生産」時代は終わりを告げようとしている。

馬産地は今、不況にあえぎ「馬が売れない」状態が続いています。より正確に表現するなら「既存馬主に馬が売れない」といった方がいいかもしれません。 …やみくもに牧場に行っても、どの馬が売りもの(第三者販売対象馬)なのかは分かりません。新規馬主は、つてがない場合が多く、「エージェント・家畜商・調教師」に頼むのが一般的です。この時の問題は53話でみた取引の不透明さです(とくに仲介手数料)。同時にこの不透明さは、馬主からみれば業界自体への不信感につながる恐れがあるだけでなく、牧場サイドからみても本当にお金を出しているのが誰なのかをわかりにくくしており、新規顧客の獲得の障害となる可能性も否定できません。

最終章で提言されているのは、馬産地からの新規馬主の掘り起こし。そのために、馬探しから資格申請まで一括して代行するエージェント制度を創設して解決すべきだと示している。「透明性と客観性を最大の課題にする必要」があるというのは、競馬サークルのあらゆる事柄に共通するものと言えそうだ。競馬を深く知りたいと願うファンにとって、本書は読めば読むほど味が染み出てくる一冊のように思える。

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コメント

こんにちは!北海道三石の斉藤スタッドさんところのハーモニーが、シークレットソングとなって、この28日(日)小倉競馬4Rの新馬芝1800mでデビューします。
以前より、斉藤スタッドさんのHPを拝見しているのですが、(最近はブログなりました)生まれた時から注目していました。とにかく、顔や姿が飛びぬけて美しいのです。競走馬ですから、早く走るように、優勝できるように願っています。
そこで、ブログを運営されている方で、今週、小倉へ行かれる方、どなたか、このシークレットソングの写真を撮って、アップしていただけませんでしょうか?応援をよろしくお願いいたします。

投稿: まりん | 2007.01.25 17:35

まりんさんへ
小倉へ行ってきたので、少し撮ってみました
ブログじゃないんですけど、アップしてみたので
良かったら見てみてください

投稿: とおりすがりです | 2007.01.30 22:39

すてきな写真ですね。シークレットソングも可愛く写ってますね。初勝利を期待したいものです。

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2007.01.31 11:24

「とおりすがりさん」!シークレットソングの写真をた~くさん撮っていただいて、、、感激です!!

☆☆☆三つ、いや6つプレゼントさせていただきます!
☆★☆{とおりすがり}☆★☆さん!!本当にありがとうございました。斉藤スタッドさんのところにも連絡させていただきますね♪

シークレットソング=ハーモニーは、デイープインパクトのように、メンコをつけない方が、人気沸騰すると思うのですが、気が散るのでしょうかね?
ソックスをはいている様に、白い足が自慢です。
また、応援ヨロシクお願いします。ガトーさんもありがとうございます。

投稿: まりん | 2007.02.01 00:22

遅くなりましたが、
ガトーさん、まりんさん
お褒めいただきありがとうございます

投稿: とおりすがりです | 2007.02.06 21:41

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受信: 2007.01.26 00:21

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