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2006年7月の16件の記事

2006.07.30

欧州馬の底力 気を引き締めさせられた一戦

悔しいというよりは、良くやったという感情の方が上回ったキングジョージVI&クイーン・エリザベスDS。 3着という結果そのものは手放しで喜べるものではないが、欧州のチャンピオンとガチンコで勝負をして、決して恥ずかしくないレースができたことは素直に評価したい。と同時に、改めて欧州勢の底力を見せつけられたのも事実。アメリカンオークス、シーマクラシック、シンガポール国際Cと世界を席巻した最近の日本勢だったが、やはりGⅠの中のGⅠは簡単に手が届くものではなかった。

直線、ハーツクライが先頭に立った時は勝ったかと思ったが、残り100メートルで脚が上がった。内からハリケーンランが伸び、エレクトロキューショニストとの叩き合いにも後れをとった。敗因は幾つもあるだろう。休み明け、初コース、慣れない環境での体調不良、早仕掛け…。だが、アウェイとはそういうもの。ジャパンカップなら逆転できるだろうが、アスコットで勝つことに価値がある。最後に息が切れたのはスタミナを必要とする厳しいコースに負けたということだ。

それでも、何か歯車が上手く回ってさえくれれば、勝てない相手ではなかった。敗戦のなかに希望を見出せた遠征だったのではないか。橋口師はジャパンカップで再戦したいと言っているが、ハーツクライにとって意義があるのは凱旋門賞でリベンジすることだろう。この後、ジャパンカップ、有馬記念を連勝しても、歴史的な評価には付け足しにしかならない。凱旋門賞ではハリケーンランの他、斤量の有利な3歳勢も出走してくる。アウェイのディープインパクトにとっても、国内の下馬評ほど易しい勝負とはなり得ない。重ね重ね、気を引き締めさせられた一戦だった。

>>キング・ジョージ結果とレース映像(JRA)

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2006.07.29

キングジョージ展望 ハーツクライの勝機十分

いよいよ今夜(24:20発走)に迫ったキングジョージ。世界最強馬の1頭、ハリケーンランに日本代表ハーツクライが挑む。レースは女傑ウィジャボードが三強に恐れをなして回避、6頭立てで行われる。もちろん、三強とはハリケーンランエレクトロキューショニスト、そしてハーツクライの3頭だ。出走馬はいずれも古馬のため、斤量は全馬60.5キロを背負うことになった。これまで日本馬のキングジョージ参戦はスピードシンボリ(5着)、シリウスシンボリ(8着)、エアシャカール(5着)。アウェイの闘いは厳しいが、ハーツクライには日本馬初制覇の偉業を期待したい。

英王室が所有するアスコット競馬場は400億円を投じて、今年、大改修を終えたばかり。だが、直線の坂が少し緩やかになった程度で芝丈は長く、パワーとスタミナが必要になる馬場には変わりない。 2400メートルはおにぎり型コースの左下からスタートする。三角形の頂点まで緩い下り坂、その後は頂点から最終コーナー、直線と上り坂となる。ポイントは前半をきっちり折り合ってスタミナを温存すること、直線までに良いポジションを確保することだ。ハーツクライはドバイの馬場も克服しており、今回も適応できるだろう。直前の散水は勘弁してほしいが。

アスコット競馬場コース図解

最大のライバル、ハリケーンランは去年の凱旋門賞馬。その父、モンジューはエルコンドルパサーを凱旋門賞で2着に降した馬だ。前走のサンクルー大賞典は2着に敗れたが、初めての左回りに戸惑ったのかもしれない。この一戦で評価は落ちることはなく、今回はハーツクライを見ながら残り3ハロンで仕掛けてくるはず。ゴドルフィンのエレクトロキューショニストは去年、ゼンノロブロイを破った馬。それがフロックでなかったのは、ドバイワールドカップを制したことで証明済み。前走2着はドバイ帰りで本調子でなかった。叩いた上積みは大きい。

輸送直後のハーツクライは入れ込んで馬体減りも激しかったようだが、滞在2週間で調子を取り戻してきた。26日にはニューマーケットのロングヒルで最終追い切り。先導馬が先に行きすぎたために併せる格好にはならなかったが、同馬自身の動きは良く、後ろから追いかける調教ができたのも収穫だ。レースはゴドルフィンのペースメーカー、チェリーミックスが先手を取り、ハーツクライは2、3番手から早めに動くことが予想される。直線は3頭の叩き合いになるのは間違いなく、ハーツクライの勝機も充分だ。日本代表の実力を信じよう。

>>トラセンPodcast/ハーツクライ海外遠征(マニア向け編)
>>JRA/日本馬海外遠征特集

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2006.07.26

イギリスでジダン騒動 騎手が馬に頭突き!?

ワールドカップ決勝のジダンの頭突き騒動が、とうとう競馬界にも飛び火した。23日、イギリスで騎手が馬に頭突きを食らわせたことが大きく報道され、監督機関も調査に乗り出す事態になっているのだ。事件が起きたのはストラット・フォード競馬場。ポール・オニール騎手シティアフェアー号に騎乗してスタートを待っていると、同馬が暴れて振り落とされた。オニールは馬を引き寄せると、ヘルメットを被ったまま鼻面にヘッドバットを一撃、食らわせた。このシーンはテレビ中継されていたため、波紋を呼んだようだ。レースで同馬は4着となったが、オニールは「ファンにこんなところを見せて申し訳ない」と謝罪した。

気になる原因だが、専門家によるとシティアフェアーが「お前の母ちゃん、未勝利馬に種つけされたんだってな」「エゴイストの息子め」などと、侮辱的な発言をしたとかしないとか。だが、実際の映像を見てみると、オニールの頭突きはジダンとは比べものにならないほど軽微な様子。鞭の使用に回数制限があるお国柄とはいえ、これで騒がれるのは少し可哀想な気もする。名古屋JBCで座り込んだナイキアディライトに係員が蹴りをいれて非難されたことがあったが、見苦しさという点でも名古屋のほうが上か。その後、オニールとシティアフェアー号が出走停止や社会奉仕活動への参加が義務づけられるかは定かでない。

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2006.07.21

キングジョージ PVで日本代表を応援しよう!

来週29日に迫ったキング・ジョージVI&クイーン・エリザベスDS。ドバイ・シーマクラシックを制したハーツクライが海外GⅠ連勝の偉業に挑む。レースの発走は日本時間の24時20分。グリーンチャンネルでは生中継される予定だが、加入していないファンは結果を知るまでもどかしいところ。そんな気持ちをJRAも察してくれたのか、何とプラザエクウス渋谷パブリックビューイングを行うことが発表された。

通常は19時に閉館するエクウスだが、この日は22時に再オープン。備え付けの大型マルチビジョンでキング・ジョージを生中継する(グリーンチャンネル)。レース前にはホースニュース・丹下日出夫の展望や、来場者による予想クイズが催される。的中者にはオリジナルグッズがプレゼントされる他、レース後には来場者全員にハーツクライのポスターが配布されるという。世界ランク1位のディープインパクトを退けた実力馬だけに勝機も充分にある。

競馬のパブリックビューイングというと、中山競馬場でレース後に香港国際GIが中継されたり、武豊がハルウララに騎乗した際に高知競馬場に入場できなかった人々が陸上競技場で観戦した例がある。今回はワールドカップのように、アウェイの闘いを応援したいファンが一箇所に集う初めての形となる。気になるのは終電だが山手線はギリギリ間に合うし、近隣にはネットカフェや始発まで賑わうバーも多い。心をひとつにして日本代表に声援をおくるのも面白いかもしれない。

>>プラザエクウス「2006キングジョージ・スペシャルLIVE」開催!

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2006.07.19

一口馬主の課税強化 交渉の行方は見えず

14日、一口馬主に対する国税庁の課税強化についてJRAは説明会を行った。これまでもJRAとクラブ法人の間では何度も話し合いが持たれているようだが、今後、どのように国税庁と交渉していくのかなどは明らかにされないままだった。現在、クラブ法人は19あり、7万人の会員がいる。中央競馬に在籍する16%がクラブ法人の馬だ。今回、国税庁は分配される賞金に対して20%の源泉徴収を行うよう求めている。損を出している他馬との相殺もできないため、受取額は従来の4分の3以下になってしまうのではと危惧されている。

詳細な法律論については、他の優秀なサイトの説明をご覧いただくとして、ここでは簡単な説明に留めたい。これまで一口馬主は実質的な馬主と同じだとして、 20%の源泉徴収はされてこなかった。しかし、法律上、一口馬主は1頭ごとにつくられた「匿名組合」への出資者であり、分配金は出資金や経費と差し引きは認められず、20%が課税されるべきものだ。一口馬主で得た利益が20万円以上なら、雑所得として確定申告が必要だが、現実では申告しないケースがみられたため、国税庁は匿名組合として厳密な課税を行う方針を決めた。

出資馬がレースで得た賞金はどのように分配されているのだろうか。私が会員になっているシルクホースクラブを例に取る。まず、騎手、調教師らへの進上金が20%、次に源泉徴収として8%が引かれる。さらにクラブ手数料が5%かかるので、最終的には総賞金の67%を500口で分けることになる。未勝利戦(1着500万円)を勝った場合、一口あたり分配されるのは6700円だ。これが課税強化されると5000円ほどに減ると言われている。一ヶ月のクラブ会費(3150円)と1頭の維持費(1200円)を賄うのに精一杯の額だ。課税強化は500分の1ぐらいでは大したことはないが、口数の少ない社台の会員などは懐を直撃するだろう。

私自身、一口馬主の収支は大幅マイナスだ。これまで当歳を除いて11頭に出資してきたが、勝ち上がったのは準オープンまで出世した1頭だけ。相馬眼がないとはいえ、他はことごとく未勝利、未出走。単純に最近2年間の支払い状況を調べたところ、出資金を含めて27万円余の赤字になっている。 JRAの調査(04-05年)によれば、クラブ馬のうち黒字収支だったのは12.8%しかいなかった。 1万2000人の会員がいるシルクでは「年間20万円以上を手にする会員は20人前後だけ」(阿部幸也代表・週刊朝日7/28)だという。一口馬主で儲けようと考えること自体がナンセンスなのか。

実は「課税強化で競馬界が衰退する」といった論調には、私はピンと来るものがなかった。それもそのはず、もともと利益など出ていなかったからだ。恐らく社台グループなどの大口馬主や、何十口も所有しているヘビーユーザーなど影響は限定的で、一斉に一口会員が辞めるといった状況には陥るまい。むしろ、課税強化が喧伝されることで、出資を見送ろうという風潮になるほうが大きいかもしれない。いずれにしろ、今までのように国税庁のお目こぼしを期待することはできず、一口馬主の負担増は避けられないだろう。JRAの善処を求めたい。

今回の問題を通して、馬主制度やクラブ法人の実態が議論の俎上に載ったのは良いことだ。 JRAは馬主会に配慮をしすぎて、物言わぬ一口馬主を軽んじてきた。馬主不足が深刻化するなか、赤字覚悟で馬に金を払ってくれるコアなファンをJRAは見直すべきだ。一口馬主を権利制限付きの任意組合とするなどの改革を進めるのは第一として、諸外国のように一般のサラリーマンでも馬を共有できるシステムを認め、馬主の裾野を広げていく方向性を模索したらどうだろうか。純資産9000万円以上というハードルだけ設けても、馬主のステータスはあがらない。幅広い市民が参加することで、競馬は国民的なスポーツになりうるのだから。

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2006.07.17

増大する影響力 知られざる騎手エージェント

岡部幸雄の全盛時代、初めて日本に登場したのが騎手エージェントだった。競馬研究の記者・松沢昭夫が岡部と契約を結び、騎手本人に代わって騎乗依頼を取り付け、乗り馬が重なった場合は脈のありそうな馬を優先できるよう調整していた。松沢は岡部子飼いの柴田善、田中勝、横山典、蛯名などのエージェントも務めるようになり、仲間内で騎乗馬を融通し、時にはレースでも協力しあう岡部ラインなる言葉さえ生まれた。

こうしたエージェントの存在は長らく公式には認められなかったものの、 JRAも影響力の大きさを無視することができなくなり、今年5月、「騎乗依頼仲介者」として届け出ることを義務づけた。厩舎に属さないフリーの騎手が増加するなか、エージェントの活躍の場は広がりつづけている。日本も欧米並になってきたということか。だが、誰がどの騎手のマネージメントをしているのか、実際のところはファンからは見えないのが現状だ。

そうした中、競馬最強の法則(8月号)に「乗り馬集め【エージェント】を知らずに馬券が獲れるか」とする特集記事が掲載された。現在のエージェントの状況について良くまとめられている。当事者への取材はないが、一読の価値はある。エージェントのほとんどはトラックマンだが、武豊だけはフリー記者の平林雅芳(元「馬」)と組んでいる。今は大阪スポーツでコラム欄を持っているが、武豊ほどになるとエージェント稼業だけで生活していけるということだろうか。

栗東は競馬ブックの記者が強い。小原靖博は福永、四位、岩田、鮫島、川田らを、井上政行は安藤勝、柴山を、川田英太は秋山、松本晴夫は和田を担当している。「当然、同社の記者同士で騎乗馬振り分けを調整することもできる」(最強の法則)となれば、競馬ブック社そのものが、エージェント業者と言えるかもしれない。勝負がかりの情報も容易に手に入るだろう。一方、ニュートラルの立場から騎乗法を評価できるのかなど、競馬ジャーナリズムの発展にとっては心配な面もある。

美浦は相変わらず松沢昭夫の研究が中心のようだ。同僚記者の永楽裕樹とともに旧岡部ラインに北村宏、大西、村田、デザーモらを担当。これに対抗する日刊競馬植木靖雄は藤田、中館、内田博と、勢いのある騎手のエージェントになっている。エイト・ヒロシは後藤だ。エージェントは騎手の負担軽減にもなるし、人間関係のしがらみから解放されて騎乗馬を選べるようになる。騎手がプロのアスリートとして騎乗に専念できるのは良いことだが、ファンはこうした知識がないと馬券予想に不利な面もあるかもしれない。

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2006.07.16

再録: 戦火からの復興 レバノン競馬観戦記

「イスラエルがレバノンのベイルート国際空港を空爆した」 今週、ニュースを聞いて10年前、ベイルートを訪れた時のことを思い出した。私にとって初めての海外旅行だった。隣国のシリアから乗り合いタクシーでレバノンへ入国。まだ戦火の傷癒えぬ街並みに、少なからぬ衝撃を受けた。ベイルートにはパレスチナ難民キャンプがあり、国連軍が治安維持に当たっていた。そんな準戦時下、宗教、宗派の垣根を越えて、人々が集っていたのが競馬場だった。今、競馬場がどのような状況にあるのか私には知る術はないが、当時の記事を加筆の上、現地の観光用雑誌に掲載されていた写真も含めて紹介しようと思う。一刻も早く彼の地に平和が訪れることを祈りたい。


「ヤッラー、ヤッラー!」観客の声がスタンドを揺らす。長い直線を馬群が駆け上ってくると、馬券を片手に買った馬、騎手へ声援をおくるのは万国共通だ。ヤッラーはアラビア語で「行け、行け」ぐらいの意味だろうか。もう12月も間近だというのに、競馬場に注ぐ陽差しは強い。地中海に面し、古くからヨーロッパとアジアを結ぶ交易都市として発展してきたレバノン。かつて、世界各地の避暑客が押し寄せて中東のスイスと呼ばれたが、度重なる内戦とイスラエルの侵攻により瀟洒な街は瓦礫と化した。首都・ベイルートに競馬場が建設されたのは1923年のこと。だが、フランス統治下に完成したスタンドも、1982年にイスラエル軍の戦車部隊により甚大な被害を受けた。

日曜日は週に一度の開催日(通年)。午後1時から8レース行われる。安ホテルの集まる西ハムラ地区でタクシーを捕まえ、競馬場の隣にある「国立博物館まで」と告げる。博物館は休館中だとドライバーは怪訝そうな顔。だが、馬を御す真似をすると、ニッコリと微笑んでアクセルを踏んだ。競馬場には10分とかからなかっただろうか。2等の入場券を買って先に進もうとすると、入り口で軍服を着た兵士に呼び止められた。肩には重厚な機関銃をかけている。「場内は撮影禁止だ。カメラは預かる」と言う。物言いは丁寧だが、引換証をくれるわけでもない。戻ってこないかもしれないと思いつつ、フィルムを抜いて兵士に渡すことにした。

コンクリート剥き出しの殺風景なスタンドに入るには、レースの合間に馬場を横切らねばならない。馬場は土に近いダート。コースは右回りだ。ゴール板は1コーナーのすぐ手前、直線の長さを目一杯、活用している。パドックはスタンドの裏側にある。レース直前になると、パドックからゴール前に人々が一斉に移動する。当然、ターフヴィジョンなどというものはなく、スタートして向こう正面を走る様子はスタンドの中のモニター前に陣取らなくては分からない。この日の勝ちタイムは2000メートルのレースが2分33秒4、1000メートルが1分8秒6だった。外国産馬ということだが、サラブレッドではないようだ。

海外初体験で語学も不出来な私。下調べもしなかったので(調べようもないが)、馬券の買い方が分からない。とりあえず、パドック横の窓口で「ナンバーセブン、ウイン」と言ってみる。だが、相手は「買えない」と身振り手振りを交えて応えるばかり。フランス植民地だったレバノンでは英語より仏語のほうが通用する。大学の教養課程で仏語を履修したものの、"アンドゥトロワ"以上の数は知らない私は不明を恥じるばかりだ。こういう時はハズレ馬券を拾ってヒントを探ってみよう。馬券にはアラビア語と仏語が印字されている。「PLACE(プラッセ)」の文字。これは英語と同じ、複勝だ。「GAGNANT(ガニャン)」は単勝。2つの数字が並んでいるのは連勝らしい。

コースは粘土に近いダート もぎり馬券。写真は単勝と連勝

ともかく、馬券の種類は分かったが、疑問が残った。馬券の上半分に大きく書いてある数字が、何を意味しているのかが分からないのだ。きちんと馬番号は「GAGNANT」などの下に印刷されている。その答えはスタンド1階の馬券売り場で見つかった。馬券は壁に日めくりカレンダーのようにかけられてた。客が買いたい馬券を告げると売り場のおじさんが、その番号の馬券をちぎってきて渡す。この時、めくるに従って、問題の数字も大きくなっていくではないか。数字が大きい馬券ほど売れている、つまり人気があってオッズが低いということなのだ。 トータリゼータなどというコンピューターはなく、手売りだからこそ求められるシステム。思わず唸ってしまった。

競馬場にいる物好きな東洋人は私だけ。パドック、スタンドと、せわしなく動き回っていると、気のよさそうなレバニーズがアラビア語で声をかけてくる。込み入った話などできるはずもないのだが、彼らは異国人がどんな馬券を買っているのか興味が沸くらしい。しきりに購入した馬券をみせろと言ってくる。ところが、いざ馬券を披露するや否や、「おお神よ。この阿呆な日本人がトンでもない馬券を買っています」と冗談まじりに、オーバーアクションで両手を広げて仰ぎ見たりするのだ。凄惨な戦争、厳格な戒律、強い信仰心…。旅を通して、私の先入観は崩されていった。なんと物事を画一的にしか見ていない、井の中の蛙だったかと。

アラビア語のレーシングプログラムなど理解できない私にとって、馬券を当てる唯一の手段はパドック診断しかない。「毎週、ここより格段にレベルの高いレースで勝負してるんだぞ」と無頼派を気取って馬を凝視する。だが、いかんせん母国でも負け組の素人。馬体が太いんだか細いんだかも分からない。発見したのは、外国の馬もパドックでボロするんだということぐらいだ。 馬券は1枚で5000レバノンポンド(LL)。日本円で400円ほど。レストランでレバノン料理をフルコースで食べたが2万5000LLだったことを考えると、鉄火場といわれた国営時代の日本競馬に似ているのかもしれない。

スタートするや、騎手は出鞭をバンバンとくれて、激しい先行争いを繰り広げる。4コーナーを回って直線を向くと、場内は歓声に沸いてファンは拳を振り上げる。こちらも負けずに「差せー! 交わせー!」と日本語で叫ぶ。 結局、払い戻しを受けたのは複勝2倍だけだったが、的中した時は周りのファンとガッチリ握手。競馬場の楽しさを感じさせられた一日だった。戦火からの復興するベイルート。建設中のビルからは新しい息吹が聞こえてくる。競馬場でもスタンドを建て替え、馬券販売にコンピューターシステムを導入する計画があるそうだ。だが、笑い声を響かせて競馬を楽しむファンの姿は、いつまでも変わらないに違いない。

※この文章は1997年に書いた記事を加筆・修正しました。競馬場内の写真はレバノンの"OFFICIAL TOURIST MAGAZINE(VISITOR No.3 '96)"に掲載されていたものです。

ゴール前。後ろにはスタンドがみえる スタートはゲート式

昔のベイルート競馬場

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2006.07.13

バブル再来? キンコンカンが霞んだセレクトセール

3日間に渡って繰り広げられたセレクトセールが幕を閉じた。当歳の世界レコードとなる6億円馬をはじめ、14頭のミリオンホースが誕生。全体を通しても、合計469頭が上場され、330頭が落札された。売却率は70.4%と低下したものの、売上総額は117億5450万円で、去年の79億7200万円を大きく上回った。平均価格は3561万9696円だった。おなじみの金子真人、近藤利一、関口房朗の"キンコンカン"を圧倒するダーレー新興馬主の参入が、前代未聞の巨大セールを産み出す原動力となった。今後の競馬界を左右するであろう、今年のセレクトセールを振り返ってみたい。

初日は8年ぶりの1歳馬のセールが開かれた。この日は2、3日目の波乱を予感させる序章。その結果は先般の拙記事「セレクトセール初日 バクシンオー産駒に9600万円」を見ていただきたい。当歳に比べるとレベルが落ちるのは否めなかったが、バイヤーの多田信尊母ヴェイルオブアヴァロン(父Pivotal)を2億500万円で落札。馬主は山本英俊。パチンコ機『CR松浦亜弥』などのパチンコ機器メーカー・株式会社フィールズの社長だ。ダーレー・ジャパン母マイケイティーズ(父サクラバクシンオー)に9600万円の値をつけた。まるで中央参入を却下された怒りをぶつけるかのようで、今年のダーレーは本気だと感じさせる凄味があった。

2日目。6億円ホース、母トゥザヴィクトリー(父キングカメハメハ)から語らねば失礼か。近藤が2億、関口が3億、金子が4億まで競り、最後はダーレーと多田の一騎打ちに。激しい攻防の末、6億円まで競り上げたところで多田が勝利を収めた。馬主は「共同所有」としか明かされなかったが、前出の山本らとみられている。牝馬に6億とは常識では解せないが、馬主は海外で走らせることを視野に入れているという。山本は去年から中央の馬主としてミスターケビン(藤沢厩舎)などを所有。今、いちばん儲かっているのはパチ屋ということだろうが、次々と経済力ある人間を馬主として引っ張ってくる藤沢&多田には恐れ入る。

一方、ダーレーも負けてはいない。母ブルーアヴェニュー(父フレンチデュピティ)を3億円、母マストビーラヴド(父スウェプトオーヴァーボード)を1億4000万円で購入するなど、オイルマネーの力を見せ付けた。母トゥザヴィクトリーを最後まで競ったことも含めて、ダーレーはセールを通して、JRA、馬産地、馬主団体に中央参入へ無言の圧力をかけているように思える。南関東ではペイできない大枚をはたくことで、中央の扉をこじ開ようという強い意志を示すとともに、これだけ日本の馬産地に資金を投下できるのだというアピールになったのは間違いない。セレクションセールでも買いまくるようなら、ダーレー待望論が日高から出てもおかしくない。

最終日に意地を見せたのは近藤母ローザロバータ(父キングカメハメハ)を1億6200万円で落札した。近藤が使った額は3日間で6億4800万円(18頭)だった。「経済状況を考えると、お金だけが独り歩きしている。購買者のプランがあるのかどうか」(内外)と大相場に批判的だ。金子は計16頭を購入したが、1億円超えは1頭だけ。もともと6000万円前後のリーズナブル?な層を狙う人だけに、価格競争には冷ややかだったか。関口はフサイチ軍団に1頭もいない1歳世代を中心に計11頭(8億円)を購入。「心をくすぐるような超A級の馬は見当たらんかった」とのこと。高騰したキングカメハメハ産駒は1頭もおらず、多田とダーレーの陰に印象も霞んでしまった。

今年は3頭のミリオンホースを出したキングカメハメハの評価が圧倒的に高かった。日本で良績のあるキングマンボの系統ということや、サンデー系の優秀な肌馬と配合されたことが要因だ。まだ走っていない産駒を評することはできないが、優秀な繁殖相手と社台のバックアップがある以上、ポストサンデーのリーディングサイヤーとなる可能性は高いだろう(6億円ホースの未来は分からないが)。また、当歳の売却率は良かったが、主取りになった馬の生産牧場をみると、日高の有名牧場がズラリと並ぶ。社台ブランドの一極集中化は当然のことではあるが、今春のクラシックを日高勢が独占したことを考えると、少しばかり寂しい結果ではある。

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2006.07.11

真夏の夜はJDD 砂のクラシックで全国の雄が激突!

今年の夏は大井が熱い! 先日の帝王賞ではアジュディミツオーとカネヒキリの一騎打ちに沸いたが、今度は全国の競馬場を代表する3歳馬が大井に集い、ダートクラシックのチャンピオンを決するジャパンダートダービー(12日)が行われる。先月、ダービーウィークとして札幌から佐賀まで6つの競馬場で施行された各地のダービーで優先出走権を得た馬に加えて、中央のダートの雄も招待して勝負を決しようと言うのが新生JDDだ。

残念ながら札幌代表のフジノダイヒットは取消しになってしまったが、全国から個性的なメンバーが顔を揃えた。岩手ダービー馬・オウシュウクラウンは目下、4連勝中。ジェイドロバリー産駒の外国産馬で、南関東在籍時よりパワーアップが期待される。東海ダービーを圧勝したホウライミサイルも怖い。中央挑戦では土を付けたが、地元では敵なし。外弁慶への試金石。この他、兵庫代表・ウインドファンタジ、荒尾ダービー馬スターオブジャパンが何処まで食い下がれるかも見物だ。

迎え撃つ南関東勢は東京ダービーを勝ったビービートルネードが回避してしまったため、 3着のサンキューウィンが大将になる。東京ダービーに挑むまでは羽田盃を含めて3連勝を飾っていた上がり馬。今回も積極的にハナを叩くことになりそうで、先行有利の馬場なら逃げ切り勝ちも充分にありえる。アジュディミツオーの再現といきたいところだ。東京ダービー5着のトネノキング、6着のキングトルネードは堅実味はあるが決め手に欠ける。混戦で浮上とみたい。

ここ4年連続で勝ち馬を送り出している中央勢。だが、今年はフラムドパシオンの故障でカネヒキリ、ゴールドアリュール級の参戦はなし。それでも連勝でユニコーンSを制したナイキアースワークの力は一枚上手か。但し、差し馬で最内を引いてしまったのがどうでるか。それならば好位で立ち回れるフレンドシップに食指が動く。前走の兵庫CSまでダートで6連対中。鞍上は大井リーディングの内田博幸だ。ユニコーンS2着のヤマタケゴールデン、武豊ナイアガラは連下までだろう。

◎フレンドシップ ○サンキューウイン ▲ナイキアースワーク
△ヤマタケゴールデン、ナイアガラ、ホウライミサイル

>>ジャパンダートダービー出馬表 (大井2000m・7/12)

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2006.07.10

セレクトセール初日 バクシンオー産駒に9600万円

日本最大のセリ市、セレクトセールがノーザンホースパークで開かれている。初日(10日)は1歳馬165頭が上場され、109頭の取り引きが成立した。売却率は66.1%、売却総額は35億8470万円(税込み)。最高価格は母ヴェイルオブアヴァロン(父Pivotal)の牡馬2億500万円。生産はノーザンファーム。ディープインパクトの甥にあたることが評価されたか。落札者は多田信尊氏で、有名オーナーの代理とみられる。

JRAへの馬主申請が却下されたダーレー・ジャパン9600万円母マイケイティーズ(父サクラバクシンオー)を落札した。兄に弥生賞を勝ったアドマイヤムーンがいる良血馬。とはいえ、バクシンオー産駒に1億円近い値段がつくのは異例のことだろう。もし、ダーレーが中央参入となれば、一層セールも白熱するかもしれない。来年デビューの当馬はひとまず船橋、川島厩舎からか。それとも海外? この他、ダーレーは生産者として3頭を販売し、薗部博之氏などが購買した。

注目の関口房朗氏は1億2000万円でオークス馬、シルクプリマドンナの牡馬(父ダンスインザダーク)の他、母リアリーライジング(父Awesome Again)を1億円、インディスユニゾン(父クロフネ)を9000万円など8頭を競り落とし、総額5億円以上の大判振る舞いをした。キンコンカン仲間の金子真人氏は母ライクザウインド(父シンボリクリスエス)の9500万円、近藤利一氏は母ビーバップ(父クロフネ)の5000万円が最高落札価格。また、ゲイリーの中村浩章氏がウォーエンブレム産駒の母ガゼルロワイヤルに9800万円の値を付けた。

高額馬上位20頭を種牡馬別にみてみると、最も多かったのがアグネスタキオン産駒の4頭。いずれも6000~7000万円台の手堅い値段で取り引きされたが、抜けた馬はいなかった。次位はシンボリクリスエス産駒の2頭で、残りの14頭は違う種牡馬の産駒だった。一頃より人気が分散され、何はともあれサンデー系という意識は薄らいでいるように思える。 2、3日目は当歳馬のセールが行われる。セリの本番はこちら。キングカメハメハ、ネオユニヴァース産駒の評価が楽しみだ。

>>セレクトセール2006(1歳)結果一覧

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2006.07.07

ダーレーの馬主申請却下 外資は馬産地を滅ぼすか? 

4日、馬主登録申請を審議する馬主審査委員会は、ドバイのシェイク・モハメド殿下のダーレー・ジャパン・ファームの馬主申請を却下した。同ファームは殿下の日本代理法人・ダーレー・ジャパンの傘下にあり、日本人の高橋力氏が社長を務めている。委員会はJRA職員、馬主、学識経験者らで構成されるが、出席した委員全員が反対を表明した。一部では申請が認められるのではという見方もあったが、今年中の認可は見送られることになった。

ダーレーは3年前に地方競馬で馬主資格を取得し、北海道の牧場を買収するなどして馬産も行っている。アルカセットら種牡馬6頭、繁殖牝馬54頭を所有しており、今回は国内生産法人として登録申請をした。却下理由は「財務状況が基準を満たしていない」(スポニチ)というものだった。言うまでもないが、世界のダーレーに中小牧場でも認められるような経済的な裏づけがないはずがない。却下されたのは実質的な支配権が日本人代表者ではなく、海外在住の殿下にあると判断されたためだろう。

去年もダーレーは同様の申請を行ったが、海外資本の参入に反発している生産界に配慮して申請を取り下げていた。例えばラフィアンの岡田紘和社長は、外資が参入すればJRAの賞金も海外へ持ち去られ、日本産馬のレベルを支えてきた「いい馬の保持が困難」になると主張している。つまり、国内の生産者が今以上の種牡馬、繁殖馬を所有できなくなり、いずれは外資に席巻されて馬産は立ち行かなくなるという論理だ。去年、国内最大の社台グループも日本競走馬協会を通じて、JRAに申請を拒否することを求めている。

JRAの賞金は欧米と比べて高額なため、開放すれば安価で強い外国産馬が押し寄せて馬産は崩壊すると、常に国内の生産者・馬主は鎖国の正当性を訴えてきた。一方で、不況下で馬主の成り手がなく、生産界そのものが縮小傾向にあるなかで、オイルマネー流入によって再活性化が図れるとする声もある。また、社台の運動会になっている中央のレースに、ダーレーという新勢力が入ってくるのは、競争を促して全体をレベルアップさせる効果もあるかもしれない。

「委員の1人は『将来的には条件付きで認める方向で進むのではないか』と受け入れの余地をつくる考えを示した」(日刊スポーツ)とも報じられている。もし、外国人馬主を受け入れざるを得ない状況になるならば、外国産馬の所有頭数の制限など、一定の歯止めは必要だろう。拙速な市場開放は避けられるべきだが、現在でもダーレーが本気になれば地方から中央に殴り込みをかけることは可能だ。どのような仕組みなら外資導入で馬産振興が図れるのか。反対一辺倒の大牧場、大馬主も共生可能なヴィジョンを提示する局面にきている。

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2006.07.06

JRA天下り 毎日新聞が一面トップで批判

5日付け毎日新聞は一面トップで「JRA:94%が随意契約 ファミリー企業12社と」の見出しで、JRA職員の関連団体への天下りを批判した。記事は清掃や警備などJRAがファミリー企業12社に発注した契約金額のうち、随意契約が94.8%に達していることを明らかにした上、その12社の社長ら51人がJRAから「天下り」だったと指摘している。

「日本トータリゼータ」などJRA子会社4社と、JRAとの取引に経営を依存する「日本競馬施設」など関係会社8社の計12社に限ると、契約額は711億円に上り、随意契約は674億円(94.8%)を占めた。また05年10月現在で12社の役員67人中、社長全員を含む51人がJRA役職員からの「天下り」だった。… 01年12月に閣議決定した「特殊法人等整理合理化計画」で「一般競争入札等の大幅拡大と、関係会社に対する委託費の削減」を求められた。だが契約全体の随契率は02年度の72.8%から4.8ポイントしか減少せず、12社との随契率も98.2%(02年度)から3.4ポイントの低下にとどまっている。 05年12月の閣議決定でも「公正・中立性の確保上支障のない契約については、 10年までにすべて競争入札に移行させる」と求められていた。(毎日新聞)

随意契約とは、入札などの競争の方法によらず、任意に適当と思われる相手方を選んで結ぶ契約だ。随意契約は効率的ではあるが契約先の選定は担当者に委ねられるため、特定業者との間で癒着が生じやすく、また適正価格での契約ができにくくなる欠点もある。最近では環境省をはじめ中央省庁の随意契約のほとんどが、天下り先企業と結ばれていた件が発覚して大きな問題になっている。つまり、官公庁退職後の再就職先を確保するシステムとして、特定業者に利益をあげさせる目的で随意契約が使われているのが現状だ。

競馬は専門性の高い業務が多く、すべて随意契約が悪いわけではないが、上述の構図はJRAも例外とはしない。JRAの関連団体は40近くあり、そこにJRAから助成、発注という形で流れる額は1000億円とも言われている(日本馬匹輸送自動車、ターフ・メディア・システム、日本スターティング・システム、競馬飼糧、中央競馬ピーアールセンターなど)。こうした団体の役員ポストの多くは、 JRA職員と農林水産省からの天下りで占められていて、理事クラス、部長クラスといった企業ごとの格付けもある。なかにはJRA→関連団体→子会社と渡り、数千万円単位の退職金を手にするケースも少なくない。

独立採算性のJRAは税金で運営されておらず、一定の国庫納付金を納めていれば、自主性に任せて良いのではないかとの意見もある。しかし、JRAの収入はファンの馬券購入によるものであり、国によって販売の独占を許されている企業だ。適正に運営されていれば余剰となる利益は公正に還元されるのが筋だろう。世界で最も高い25%の控除率を引下げるのは第一として、ファンサービス、地方競馬、馬産地に再分配する余裕も生まれるなら、そちらに回すほうが競馬界のためになる。本来、こうした問題は競馬マスコミが取り上げるべきだが、話題自体が禁忌になってしまっている。ファンが投じた金は最終的にどう使われるべきか、もっと自由な議論があっていいのではないか。

政府はJRAに売り上げ減少に伴う事業費削減のため、「一般競争入札の大幅に拡大と、関係会社等への委託費削減」を求めている。

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2006.07.04

44億円の奇跡の馬 ラムタラが故郷で再出発

3日、アロースタッドに繋養されているラムタラ(牡14)が、イギリスに売却されることが明らかになった。今シーズンの種付け終了後、輸送される予定。英ダービー、キングジョージ、凱旋門賞を無敗で制した奇跡の馬、ラムタラ。国内史上最高の総額約44億円のシンジケートが結成され、社会的にも大きな話題となった。しかし、種牡馬としての成績は期待はずれで、重賞勝ち馬はメイショウラムセス(02年富士S)、ミレニアムスズカ(02年阪神ジャンプS)、マルカセンリョウ(04年かきつばた記念、03年名古屋大賞典)に留まった。買い戻し額は2750万円で、経済的価値は10年で100分1以下に下落したことになる。

96年、ラムタラを導入したのは日高の50人の生産者と馬主たちだった。「シンジケート・ラムタラ会」の会長・矢野秀春氏や藤原牧場の藤原悟郎氏らが中心になり、所有していたドバイのゴドルフィンと交渉に当たった。 1回目の提示額2000万ドル、2回目の2500万ドルは断られ、3回目に示した3000万ドルでモハメド殿下はようやく同意したという。 44億円を41株に分け、会員は1株あたり1億800万円を負担した。支払いは5年の分割払いで、年2000万円ほど返済することになった。 1株につき2頭に種付けする権利があり、余勢は1頭1500万円の値が設定された。

90年台初頭にバブルが崩壊して5年、馬が売れずに市場は冷え込んでいた。その一方、社台グループはサンデーサイレンスで大成功を収め、日高との差は開くばかりだった。焦燥感に駆られた生産者らが事態を打開する切り札として白羽の矢を立てたのが神の子だった。 96年、日高の生産者の負債総額は500億円以上に達しており、ラムタラが救世主になってくれることを願ったのだ。高額なシンジケートへの参加申し込みは2日間で120件と、株数を大きく上回ったのも期待の大きさが伺えよう。発起人の一人は「血統統、競走成績、馬体の良さと三拍子そろったサラブレッドのなかのサラブレッド。必ず成功する」と述べていた。

一方、ラムタラの導入に懐疑的な見方をする関係者も少なくなかった。ひとつにはニジンスキーの直仔、さらにノーザンダンサーの2×4という血統的な背景である。 90年代半ば、リアルシャダイ、トニービン、ブライアンズタイム、サンデーと、リーディングを争い始めていたのは、それまで多数の活躍馬を出したノーザンダンサー系の肌馬に配合できる種牡馬だった。ラムタラはノーザンテーストやマルゼンスキー牝馬にはつけられない。だが、そんな心配を打ち消すように、ちょうど走ったのが和製ラムタラのフサイチコンコルド。この馬はノーザンダンサー系同士の配合だった。とやかく言う外野は封じ込められた。

私もアロースタッドで何度かラムタラを見たことがあるが、種牡馬成績とは関係なしに、周りを圧倒するオーラが間違いなくある。矢野会長はラムタラと初めて対面した際、「後光が差しているようだ」と感じたという。これほどの馬なら日高の命運を賭ける価値がある、彼らは胸を高鳴らせたのではないだろうか。種牡馬の買い付けはギャンブル性の高いものだが、ラムタラに適した繁殖を用意できるのか、産駒を売って回収できるほどの価格なのかといった冷静な判断さえ欠落させるほどの魅力があったには違いない。吉田照哉氏の「売ってくれたとしても、成功するかどうか分からない馬に何十億円は払えない」という洞察は社台だからできるものではなかったか。

日本はこれまで十数頭の英ダービー馬を輸入し、そのほとんどが期待された成績を残せなかった。ラムタラも例外とはなりえなかった。日高復権をめざした44億円のギャンブルは、あまりに寂しい結末でピリオドを打つことになる。しかし、ラムタラ以外に日高を託せる馬を見出せたかと言えば答えはないし、彼らの乾坤一擲の勝負を否定する必要もないだろう。 70年代、グランディを九州の地で死に追いやり「名馬の墓場」と酷評されたことに比べれば、日本で見切りをつけて再輸出されるのは歓迎すべきことだ。ラムタラの種付け料は50万円まで下落しており、優秀な繁殖牝馬を集める力は失われていた。故郷で再び奇跡を起こすことを心から願う。

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2006.07.03

相武紗季の女神予想 最低人気馬を見事1着に

いよいよ夏到来。 JRA北海道シリーズも観戦には最高の季節になってきた。今年のシリーズのキャンペーンキャラクターに選ばれたのは人気タレントの相武紗季(20)。記者発表では「昔、家族で競馬場に行って桜花賞を見ました」と競馬とのつながりをアピールしていた(もちろん「エルプスが桜花賞を逃げ切ったのを母のお腹で聞いた頃から競馬ファンでした」などと踏み込んだ発言はなかった)。

JRAでは「アイブWebクラブ」なる特設ホームページを開設した。ここには映像、画像も盛りだくさん。 CMの他、競馬場で撮影されたショートムービーも公開されている。相武がパドックで馬を見ながら「あの馬、つよそ~う」とか、横断幕を広げて「アイブラブ夏ケイバ!」とキャッチコピーを叫んだりしている。 26本あるムービーは順次公開されているようなので、ファンは何度か足を運んで更新状況をチェックされたい。

日曜日(2日)、相武は競馬場にプレゼンターとして来場し、トークショーやローカル放送にも出演した。そして、函館SSの予想も披露。その注目馬は「ビーナスラインと 3連覇のかかるシーイズトウショウ」。結果はご存じの通りそのワンツーで決着。しかも、ビーナスラインは単勝最低人気(77.4倍)で、一部では「女神」と崇める声も出るほどの見事な的中だった。次回、相武の来場は札幌記念(8月20日)の予定。勝てばなるほどパイロット♪ パイロット♪

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2006.07.02

高知競馬が存続危機 今夏が正念場に

高知競馬が存続の危機に陥っている。 6月28日、高知県は高知競馬の第1四半期(4~6月分)の収支状況を発表した。実収入は11億8600万円、総支出は12億2300万円。つまり、3826万円の赤字となった。ハルウララブームの際、1億2000万円あった剰余金も、取り崩しを重ねてついに840万円にまで減少した。次の第2四半期(7~9月分)で大幅な赤字を計上することになれば、即廃止もあり得る。

高知競馬は平成15年度から四半期ごとの売り上げに応じて経費を決める「出来高制」を導入している。今回、県は緊急対策として、第2四半期の売り上げ目標を当初の85%に下方修正し、従事員賃金と賞典奨励費を一律10%削減する厳しい計画案を提示した。こうした経費カットで2000万円の支出を減らし、他場の馬券発売日数を増加させて1200万円の収入増をめざす。

すでに高知競馬の半数近いレースは1着賞金が9万円と信じられない低さにある。騎手は1レースを勝っても4500円にしかならず、馬主も預託料を稼ぐことさえままらなない。関係者にとって、さらなる賞金削減は死活問題になろう。当面の存続を目的とした経営努力は、限界に近づきつつある。ソフトバンクと楽天のネット販売でどこまで売り上げを回復できるか。この夏が正念場だ。

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ダンスインザムード キャッシュコールマイル楽勝

日本時間2日早朝に行われた米G3・キャッシュコールマイル(ハリウッドパーク競馬場)は、エスピノーザ騎乗のダンスインザムードが1番人気に応えて快勝した。レースは8頭立て。フラインググリッターがハナを切り、ダンスは後方2番手で折り合いをつける。ダンスは3角で外を回ってスパートすると、馬群を一気に交わして直線入り口で先頭へ。そのまま脚色は衰えず、1分33秒33で後続を寄せ付けなかった。

ダンスの米遠征は3歳時のアメリカンオークス以来で、当時は消化不良まま2着に惜敗したが、今回の楽勝劇は溜飲を下げるのに充分なものだった。古馬になってからの気性面の成長は本当に著しい。良い流れの続く日本馬は今年、海外重賞4勝目。明日のアサヒライジング(アメリカンオークス)、ハーツクライ(キングジョージ)、そしてディープインパクト(凱旋門賞)と、日本馬の海外遠征にとってエポックメイキングな年になるのかもしれない。

>>キャッシュコールマイル映像(JRA)

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