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2006.07.04

44億円の奇跡の馬 ラムタラが故郷で再出発

3日、アロースタッドに繋養されているラムタラ(牡14)が、イギリスに売却されることが明らかになった。今シーズンの種付け終了後、輸送される予定。英ダービー、キングジョージ、凱旋門賞を無敗で制した奇跡の馬、ラムタラ。国内史上最高の総額約44億円のシンジケートが結成され、社会的にも大きな話題となった。しかし、種牡馬としての成績は期待はずれで、重賞勝ち馬はメイショウラムセス(02年富士S)、ミレニアムスズカ(02年阪神ジャンプS)、マルカセンリョウ(04年かきつばた記念、03年名古屋大賞典)に留まった。買い戻し額は2750万円で、経済的価値は10年で100分1以下に下落したことになる。

96年、ラムタラを導入したのは日高の50人の生産者と馬主たちだった。「シンジケート・ラムタラ会」の会長・矢野秀春氏や藤原牧場の藤原悟郎氏らが中心になり、所有していたドバイのゴドルフィンと交渉に当たった。 1回目の提示額2000万ドル、2回目の2500万ドルは断られ、3回目に示した3000万ドルでモハメド殿下はようやく同意したという。 44億円を41株に分け、会員は1株あたり1億800万円を負担した。支払いは5年の分割払いで、年2000万円ほど返済することになった。 1株につき2頭に種付けする権利があり、余勢は1頭1500万円の値が設定された。

90年台初頭にバブルが崩壊して5年、馬が売れずに市場は冷え込んでいた。その一方、社台グループはサンデーサイレンスで大成功を収め、日高との差は開くばかりだった。焦燥感に駆られた生産者らが事態を打開する切り札として白羽の矢を立てたのが神の子だった。 96年、日高の生産者の負債総額は500億円以上に達しており、ラムタラが救世主になってくれることを願ったのだ。高額なシンジケートへの参加申し込みは2日間で120件と、株数を大きく上回ったのも期待の大きさが伺えよう。発起人の一人は「血統統、競走成績、馬体の良さと三拍子そろったサラブレッドのなかのサラブレッド。必ず成功する」と述べていた。

一方、ラムタラの導入に懐疑的な見方をする関係者も少なくなかった。ひとつにはニジンスキーの直仔、さらにノーザンダンサーの2×4という血統的な背景である。 90年代半ば、リアルシャダイ、トニービン、ブライアンズタイム、サンデーと、リーディングを争い始めていたのは、それまで多数の活躍馬を出したノーザンダンサー系の肌馬に配合できる種牡馬だった。ラムタラはノーザンテーストやマルゼンスキー牝馬にはつけられない。だが、そんな心配を打ち消すように、ちょうど走ったのが和製ラムタラのフサイチコンコルド。この馬はノーザンダンサー系同士の配合だった。とやかく言う外野は封じ込められた。

私もアロースタッドで何度かラムタラを見たことがあるが、種牡馬成績とは関係なしに、周りを圧倒するオーラが間違いなくある。矢野会長はラムタラと初めて対面した際、「後光が差しているようだ」と感じたという。これほどの馬なら日高の命運を賭ける価値がある、彼らは胸を高鳴らせたのではないだろうか。種牡馬の買い付けはギャンブル性の高いものだが、ラムタラに適した繁殖を用意できるのか、産駒を売って回収できるほどの価格なのかといった冷静な判断さえ欠落させるほどの魅力があったには違いない。吉田照哉氏の「売ってくれたとしても、成功するかどうか分からない馬に何十億円は払えない」という洞察は社台だからできるものではなかったか。

日本はこれまで十数頭の英ダービー馬を輸入し、そのほとんどが期待された成績を残せなかった。ラムタラも例外とはなりえなかった。日高復権をめざした44億円のギャンブルは、あまりに寂しい結末でピリオドを打つことになる。しかし、ラムタラ以外に日高を託せる馬を見出せたかと言えば答えはないし、彼らの乾坤一擲の勝負を否定する必要もないだろう。 70年代、グランディを九州の地で死に追いやり「名馬の墓場」と酷評されたことに比べれば、日本で見切りをつけて再輸出されるのは歓迎すべきことだ。ラムタラの種付け料は50万円まで下落しており、優秀な繁殖牝馬を集める力は失われていた。故郷で再び奇跡を起こすことを心から願う。

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コメント

テスコボーイやパーソロンが活躍していた頃の時代ならまだ何とかなったかも知れませんがこれだけ全体の血統レベルが上がってきてしまうと氏より育ちの部分を考えなければ中々上手くいくもんじゃありませんですね。同じ社台グループでもノーザンファームの成績が徐々に抜けてきているのを見ると特にそう感じます。

まあ、お金が有り余っているモハメドさんが手放した時点で怪しい雰囲気はありましたが(笑)実際44億あったら別にもっといいのがいた記憶があるんですけどね。売る立場になるとやはり話題性は重要なんでしょうか。

投稿: スイフトセイダイ | 2006.07.07 01:19

配合的なことをいうと、あと10年早いか遅いかだったら、ちょっとは違ってきたかなぁと思うんですよ。ラムタラ×母父サンデーとか、一発ありそうな気も。

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2006.07.09 02:30

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