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2006.01.31

'93共同通信杯 人生を分けた勝負の一瞬

たった一度の勝負のあやが、その後の人生を大きく変えてしまうことがある。先日、大塚栄三郎引退の記事を書きながら、あの日の共同通信杯を思い出した。 1993年、大塚は4番人気だったマイネルリマークを2番手から早めに抜け出す競馬で勝利に導いた。マイネルリマークはメリーナイス産駒。それまで芙蓉S、若竹賞、ジュニアCと3戦連続して2着。大塚にもここらでそろそろという思いが強かったのだろうか。早熟のマイネル馬ではあったが、大塚にとってはクラシック行きの切符を手にした会心のレースだったに違いない。何しろ明暗を分けたのはジョッキーの手綱だったのだから。

勝者の陰には敗者がいるのは競馬の必然。この時、単勝1.3倍の断然人気に支持されていたのが、後に菊花賞、天皇賞春、宝塚記念を制するビワハヤヒデだった。主戦は23歳の岸滋彦。新馬からデイリー杯まで鮮やかな差し脚で3連勝を飾ったビワハヤヒデは、朝日杯でも同じく単勝1.3倍の圧倒的人気を背負っていた。しかし、ビワハヤヒデはクラシック出走権のなかった外国産馬、南井エルウェーウインにハナ差、競り負けてしまう。実はエルウェーウインも前走まで岸のお手馬だった。岸は最も負けてはいけない馬に足元をすくわれてしまった。初めての大きな挫折だった。

岸の騎手人生は順風満帆だった。デビューの88年は29勝をあげ、翌年にはサンドピアリスでエリザベス女王杯を勝った。大穴ジョッキーとして全国にその名を轟かせた。次の年もエイシンサニーでオークスを制覇。91、92年にはダイタクヘリオスでマイルCSを連覇。こうして岸が巡り会ったのがビワハヤヒデだった。この馬で初めてのクラシックを勝つ、岸は胸にそう強く刻み込んでいた。朝日杯で負けた後、岸は自分を追い詰めるように「試練を望んでいます」と繰り返しインタビューに答えている。プレッシャーに打ち克ってこそ、本当の一流ジョッキーになれる。そう心に期していたに違いない。

共同通信杯でライバル視されていたのは角田エアマジック。だが、ビワハヤヒデとは力の差は明らかだった。普通に回ってくれば勝てる、はずだった。岸を惑わせたのは最内枠というポジション。内々を進んだビワハヤヒデは4コーナーで馬群に包まれる。内か外か? 馬群を抜けるため、どちらに進路を取るか迷った岸は外を選択する。朝日杯では内を突いて負けていたからだ。残り1ハロン、ビワハヤヒデはようやく伸びてくる。だが、先に抜け出していたマイネルリマークはアタマ差だけ捕まえることができなかった。大塚の好プレーはあったにせよ、騎乗ミスの誹りは免れなかった。

岸に乗せてやりたいと考えていた浜田師も、これ以上、庇うことはできなかった。若葉Sでビワハヤヒデは岡部幸雄を主戦に迎え、馬が変わったような強さで快勝した。岸は素直に「勝って欲しくない。若葉Sも負けろと思った」と語っている。同じ年の1月に起きた同期の岡潤一郎の悲劇のショックもあったのだろうか。以後、落馬や交通事故などケガに悩まされ続けた岸は輝きを取り戻すことなく、2003年にひっそりと鞭を置いた。もし、あのアタマ差が逆転していたら…。そんなことを考えるのは無意味だと分かっていても、ついつい想像してしまう。あれから13年、今年の共同通信杯はどんなドラマが繰り広げられるのだろうか。

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コラム・書評」カテゴリの記事

コメント

そろそろ社台の大運動会じゃない競馬ストーリーが見たいなー

投稿: シロクン | 2006.01.31 16:24

自分はブライアンの頃から競馬始めたので、ずっとビワハヤヒデ=岡部って印象でした。クラシックに到るまでに鞍上を絡めたこんなアツい話があったとは・・・。浜田厩舎といえば石山Jは元気にしているのでしょうかね。

ちなみにマイネルリマークといえば、4年ほど前に某大学の牧場で跨らせてもらったことがあり、その時初めてハヤヒデを破ったことのある馬だと知り驚いた覚えがあります。

投稿: kemkem | 2006.02.02 01:37

そう、私が競馬を始めたのもちょうど13年前でした。今年の共同通信杯は牡馬クラシックにとっては重要な一戦になりそうですね。レースが楽しみです。

投稿: nozoweb | 2006.02.03 10:54

>シロクンさん まったくです。 >kemkem リマークは乗馬になったんですね。今も元気かな。
 >nozowebさん アドマイヤムーンとフサイチリシャールはクラシックでも中心になりそうですね。

投稿: ガトー@馬耳東風 | 2006.02.07 10:06

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