ハルウララ強奪騒動 泥にまみれた美談(後編)
「今すぐ安西さんとの預託契約を解除したいと思うほど、感情的になっている」 温厚な宗石師から出たとは思えない怒りの言葉だ。 契約を解除してしまえば、もう二度と手塩にかけて世話したハルウララに会えない ことになるというのに…。 ハルウララ強奪騒動から一夜明けた16日、 高知競馬側が記者会見を開いた。宗石師は 「必要な手続きもできないまま、いきなり連れて行かれた」と、 馬主の安西美穂子氏を批判した。 安西氏は放牧は両者の合意の上だったとしていてるが、 突然、馬運車を厩舎に横付けしておいて合意も何もないだろう。
ハルウララを休養させたい安西氏と、 使いながら調子を維持したい宗石師。 表向きは崇高な競馬論から生じた意見の相違のように聞こえるが、 実態はそんなものではないらしい。 ハルウララが生み出す経済的利益を巡るトラブルだと言うのだ。 安西氏はハルウララグッズの販売・管理をしている 高知競馬の関連団体「サポートKRA」に内容証明をつきつけている。
「はっきりいって”もっと金寄こせ”なんですよ。 グッズの売り上げの取り分がお気に召さないようなんですね。 実際、自分の会社(「エムエイオフィス」)の資金繰りが苦しいのは、 ご自身でも認めてますしね」 「サポートKRA」が安西氏とかわしている契約によれば、 売り上げの7%が氏のもとに入ることになっている。… JRAではこういう契約の相場は3%というから、それよりはかなりいい条件。 …この7月まででも総額700万円以上が「エムエイオフィス」に 支払われているという。… 内容証明は、「グッズの個々の売り上げ内容の明細や会社の経理内容を示せ」 というものらしいが、ここにきてやはりというべきか、 「ハルウララ利権」が表沙汰になる形となってしまった。 (競馬最強の法則10月号)
「グッズについては7%、CMなどについては35%のロイヤリティが 馬主に入ることになっています。最近では売上がガクンと落ちていますが、 それでも安西さんには700万円以上が渡っている。 でも、彼女はそれでも不満のようなんです。 実際、お金にも困っているようで、”8月分のロイヤリティは いくらですか。当方も金策に困っています”という文書を送ってきたこともある。 表向きは休養させたいと言っていますが、 本音はグッズの販売権を狙っている のではないでしょうか」 (週刊新潮9/23号)
当然のことだが、グッズが売れても売れなくても、 調教師である宗石師のもとに直接、利益が入ってくるわけではない。 サポートKRAに入る額も微々たるものだと聞く。 高知競馬としてはグッズ販売云々より、 ハルウララが出走してくれて、馬券の売り上げ を伸ばしてくれる方が重要なことだ。 高知競馬は昨年度こそ黒字を計上したものの、 それは賞金を削るなど関係者にしわ寄せした結果というもの。 存続の危機にある高知競馬は、今年もハルウララ効果で馬券を売らねばならないのだ。 だから、ハルウララを放牧に出すなどあり得ない話だった。 第一、放牧して英気を養うというのは、 中央競馬のエリートたちに許される行為であって、 地方の下級条件馬を故障以外で休養させるなど常識外だ。 それに8歳の未勝利馬をトレーニング施設も不十分な所へ出せば、筋肉は衰え、 能力検定試験さえ合格できるか復帰も危うい状態になりかねない。
安西氏のハルウララ強奪はなぜ行われたのか。 もし、記事の通り、安西氏の目的がハルウララから 最大限の利益を得ることだとしたら、その行動も理解できないこともない。 ハルウララを厩舎から連れ出すことで、 所有者は誰であるかを世間にアピールし、 今後、自由にハルウララを取り扱うことができるようになるからだ。 栃木の観光牧場を放牧先に選んだのも、 引退後のここでの繋養を見据えてのことだろう。 ハルウララは一般の観光客を集めるのに大きな目玉になる。 この牧場にはレストラン、宿泊施設、乗馬施設から ダイビングレジャープールまであり、 経営者としても集客力のあるハルウララは喉から手が出るほど欲しい存在だ。 安西氏としても、多くの人々が接することのできる場所として、 ファンの理解を得やすいと考えたのではないだろうか。 既に引退後に目がいっているならば、 ロイヤリティを上げるか否かは、安西氏にとっては 枝葉末節な問題になっているのかもしれない。
気の毒なのは、わずか半年前に馬主になった安西氏に、 文字通りハルウララを取られてしまった高知競馬だ。 庇を貸したら、母屋どころか母ちゃんまで寝取られてしまったという感じか。 せめて、来年3月までハルウララが定期的に出走してくれていたら、 冒頭のような言葉も宗石師から出てこなかったかもしれない。 互いに腹に一物あっても、ハルウララのためと黙ることができたかもしれない。 だが、安西氏がハルウララを連れ去ったことで、 高知競馬にとって事態は最悪の結末へと動いている。 ハルウララはダーティーでスキャンダラスなイメージにまみれつつある。一方で 安西氏サイドとしては、このまま高知競馬との関係が修復できなくても、 引退させてしまって観光牧場の客寄せパンダにしてしまえば痛くも痒くもない。 むしろ、高知競馬と縁が切れたほうが、 ハルウララグッズの管理権は安西氏に全て移るのだから好都合ではないか。 一縷の望みは安西氏が心底、競馬を愛しているかどうかだ。 安西氏が本当の競馬ファンなら、ハルウララを宗石厩舎へ帰してあげてほしい。 そして、引退後はグッズなどで得た利益とともに、ハルウララの所有権を 公営か第三セクターの乗馬施設へ譲り渡してほしい。 いちばんの安西氏の願いが、ハルウララが幸せに余生を送ることなら、 決して無理な話ではないではないか。 最後に安西氏の高知競馬への反論をご紹介する。
「経理がどうなっているのか債務状況を明らかにして欲しいと 内容証明を送ったことはありますが、そんな文書は送ってません。 もともとウララのグッズ販売で得たお金は、 高知競馬の馬のために使うという約束です。私のロイヤリティを上げさせるために 放牧に出して、高知競馬を揺さぶるなんて絶対ありえない話です」 (週刊新潮)
最悪の道筋はイメージダウンした高知競馬からファンの支持が離れ、 廃止への道と突き進むことだ。そうなれば影響はハルウララ関係者だけでなく、 地方競馬全体にまで及ぶことになる。それだけは避けなければならない。 ハルウララの厩舎(おうち)は、 飼い葉をつけ、寝わらをあげ、世話を続けてきた厩務員や調教師がいる場所だ。 彼らこそ、ハルウララにとって本当のパパやママではないのか。 残念だがハルウララの法的所有権が安西氏にある今では、 高知競馬もファンも安西氏の良心に訴えるしか術はない。
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コメント
>『気の毒なのは、わずか半年前に馬主になった安西氏に、文字通りハルウララを取られてしまった高知競馬だ。』
名義だけの馬主が裏切った!ということでしょうか?世間では名義貸しというのではありませんか?
高知競馬ではそんな事が常識なのですか?
投稿: フユハコガラシ | 2004.11.28 03:04
おっしゃるようなことではありません。前馬主と宗石師の善意で無償で譲り受けたという意味です。
投稿: がとー@馬耳東風 | 2004.11.29 02:16