ハルウララ強奪騒動 泥にまみれた美談(前編)
先日 「泥沼化するイラク情勢とハルウララ」と題した記事を エントリーさせていただいた。 途中まで書いて続きは後日と記したものの、 この話題に触れるのも嫌になり、差しかけのままにしてしまった。 ところが、とんでもないニュースが飛び込んできた。 馬主の安西美穂子氏が調教師らの反対を押し切って ハルウララを馬運車に載せて栃木県内の牧場へ 「強制的に放牧させた」というのである。 泥沼化は私が考えていたよりも、相当深刻なようだ。
休養は、馬主で競馬エッセイストの安西美穂子さんの意向。 高知県競馬組合や調教師は反対していたが、安西さん側はこの日午前、 予告なしに厩舎を訪れ、正午すぎにハルウララを運び出した。 安西さんは自身のホームページで「ハルウララは休まず113戦、一生懸命走ってきました。 ご褒美に、どうしてもお休みさせてあげたい。もう一度、皆さまの前に姿をお見せしたい」 と説明している。宗石大調教師は「安西さんは『約3カ月間放牧させ、 その後は来年3月の引退レースに向け調整したい』と話していた。 強引に連れていかれた」と戸惑い気味。 同組合の前田英博管理者は「突然のことで驚いている。 馬主と調教師との間の問題なので何も言えないが、 16日に関係者から話を聞きたい」としている。 (スポニチ速報)
先日のエントリーではハルウララの映画出演を巡って、 安西氏と宗石師、高知競馬との間で軋轢が生じているとした 週刊ポストの記事を引用した。 今回のハルウララ強奪騒動は こうした両者の思惑の対立が伏線にあるのは言うまでもない。 以下は安西氏の記者会見での発言である。
「引退した競走馬を引き取って余生を支える活動をしていたので、 ウララが話題になり始めた1年ほど前から譲り受ける話を進めていました」 「グッズのロイヤリティのうち馬主に入るのは35%で、せいぜい月100万円前後」 「ウララを映画に出すのは絶対に嫌です。現役競走馬が出演などおかしい。 3月に武豊さんが騎乗して以後、取材が殺到して神経質になり、 知らない人が馬房の前に立つだけで嫌がるほど」(週刊ポストより抜粋)
発言を表面上だけで捉えれば、 ①金銭を度外視して馬主になった安西氏は、 ②取材攻勢を受けたハルウララの体調を心配して、 ③映画出演やレース出走に反対した、ということになる。 ギャロップ誌上では競馬評論家の白井透氏が安西氏の応援射撃を繰り返してきた。 「どのようにして勝たせるかは馬主の権利である」 「その正当な権利を行使しようとするのに、 主催者側が口を挟むようなことは、どのような事情があれ許されることではない」 つまりは、ハルウララは安西氏のモノであるから、 高知競馬や宗石師は黙って安西氏の言うことを聞け という論理である。
確かに馬は馬主の所有物であり、通常であれば 馬主の意に反してレースに出走させることなどあり得ない。 ただ、ハルウララに関して気にとめておかなければならないのは、 安西氏は無償でハルウララを譲り受けた という事実だ。 安西氏の上記の発言で「話題になる1年ほど前から譲り受ける話を進めてた」 とあるが、これは明らかな誤りである。 ハルウララが全国紙に取り上げられたのは 去年7月のことである。この後、フジテレビで小倉智昭氏が ハルウララの連敗を紹介したことで、一気にブームに火がついた。 この一年前、ハルウララはようやく70連敗に到達した程度で、 地元紙ですら注目しない一介の未勝利馬にすぎなかった。 競走馬の余生事業に携わっているだけで、ハルウララをピックアップすることはあり得ない。 実情はブームの起こり始めた時期、 新たな馬主の成り手を探していた宗石師の話に安西氏が乗った ということだ。 安西氏が陰のブームのプロデューサーのように言われているそうだが (私はその内容は安西氏自身のサイトでしか見たことがないが)、 ブームを作ったのは高知競馬広報であり、 きっかけになったのは小倉氏の紹介である。
安西氏が正式な 馬主になる前には浦河町の乗馬ファームが 引退後に引き取るという話もきており、 宗石師とすれば 「引退までのつなぎオーナー」に安西氏は最適な人物に見えたのかもしれない。 ボランティア的に馬主になってもらった安西氏には、 預託料を上回る程度のロイヤリティを受け取ってもらいお役御免。 ハルウララストーリーの美談のツマになれば万事成功だ。 高知競馬側は馬主が代わっても、これまで通りハルウララを高知競馬再生の切り札として自由に 使うことができると、何ら疑問を抱かなかったはずだ。 それまで苦しい思いをして90戦以上、レースに出走させてきたのは宗石厩舎の スタッフであり、ブームを支えてきたのは高知競馬に他ならないのだから。 もし宗石師が中央競馬のマスコミ事情に精通していたら、 師の目の前に現れた女性に対する評価は違っていたかもしれない。 だが、そうはならなかった。そして、 高知競馬の筋書きは徐々に狂い始めていく。 乗馬施設へ引き取られる話は立ち消えになり、 安西氏が引退後も世話をする ということになる。 それがハルウララの余生を見るだけの経済的利益を安西氏は 受け取らねばならない、という論理に変わってしまう。
従来から、 安西氏はハルウララで儲けてはいないと主張しきた。 しかし、武豊が騎乗した一日だけでハルウララグッズの売り上げは 1000万円にものぼり、 「経費を差し引いたほとんどの利益は、すべて馬主さんの手に渡る」(高知競馬広報担当) というから額面通りには受け取れない。 これまでの安西氏の発言でもグッズのロイヤリティの割合は 一貫しておらず、そうした点にも疑問が残る。 ハルウララ関連のグッズの販売、管理をしているのは サポートKRA という団体だ。「売り上げの一部を競走生活の支援にあてると共に、 高知競馬振興の文化的支援を目的に設立され」、事務局は高知競馬場内に置かれている。 今月発売の競馬最強の法則によれば 「サポートKRAに対して弁護士経由の内容証明が安西氏から届いた」という。 記事ではサポートKRAから安西氏に 「7月まででも総額700万円以上が支払われている」そうだから、 高知競馬の安い預託料を差し引いても、相当額が手元に残っているはずだ。 なぜ、安西氏は内容証明などという仰々しい行動に出たのだろうか。
<以下、続く>
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コメント
この話を聞いてから、初めて安西美穂子のHPなるものを見に行きました。
この人はギャロップで連載を持っていたんでしたっけ、ぬるい記事だなあと殆ど読み飛ばしておりましたけれどね。
そんな『おうちに帰ろうクラブ』年会費12000円は、なにやら胡散臭ささえ感じてしまいます。
通販生活だって年間1000円だ。。。。って、そりゃあ関係ないか?!
中央競馬だと馬運車の費用もJRAがある程度負担してくれるんだろうけど、地方の場合、その費用は馬主持ちなんでしょうね。
裏がありそうだな~
投稿: 銀 | 2004.09.16 11:35
>銀さん コメントありがとうございます。私もあの記事は読み飛ばしているんですが、ちょっと読み直さないと行けないかな。。。勝手に輸送しちゃったんだから、費用は当然、馬主持ちでしょうね。裏はたくさんあるでしょう。
投稿: うまむ@馬耳東風 | 2004.09.17 02:51
トラックバックさせて頂いた者です。
うまむさんの文章は非常にわかりやすく記載されていたので、最適だと感じました。
元々この馬主のことは、オグリの歌辺りからずーっと嫌いだったのですが(文面なんて見てるだけでサブイボ立ちます。競馬のドロドロした部分をメルヘンデコレーションで被せたような、この馬主の文章が大嫌いで・・・)、何であの程度の文章しか書けないのに本とか山ほど出せるのか、不思議でなりません。
ともかく、これだけ泥沼化すると、どうなるのかが注目されますね。本日会見が行われるみたいですけど、どうなるのでしょうか。。。
投稿: Diy_AT | 2004.09.17 16:26
Diy_ATさん、トラバ&コメントありがとうございます。まさかこんな事態になるとは思いませんでしたね。しばらくはウォッチすることになりそうです。
投稿: うまむ@馬耳東風 | 2004.09.18 04:27