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2004.05.21

個人サイトの興り 情報を発信せよ!
<競馬サイトの夜明けを綴るNo.3>

前述したThe Derby Squareが開設されたのが94年。 The Derby Squareは競馬サイトのなかでは特異な存在だった。 というのも、これは競馬サイトのみならず 一般のウェブサイトにも言えることだが、 この時期、ウェブは大手メディアよりも 圧倒的に個人サイトを中心に賑わいをみせていたからだ。 個人サイトは専用線を持っていた大学、研究機関の サーバーに置かれた、いわゆる「ac.jp」時代から幕を開けている。 学生が授業などの一環として簡単なサイトをつくり、 知人に向けて内輪の情報を流す(ネットに接続できるのは限られた人だから当然)。 だから、本名や学歴、顔写真、なかには住所や電話番号まで載せたものも珍しくなかった。 内容は自己紹介程度のたわいのないもので、 まさに「インターネットは空っぽの洞窟」でしかなかった。 それが交換日記のようなテキストが掲載され、 時事や趣味の話題など特化したものが現れ始める。 競馬ファンのなかには予想をコンテンツのひとつにする者もいた。 おぼろげながら競馬個人サイトと呼べるものが誕生していったわけだ。

さらに 一般のユーザーが気軽にダイヤルアップで接続できるようになると、 競馬サイトはその裾野を広げていくことになる。 夜11時から朝8時まで、定額で電話線をつなげるテレホーダイの時間には、 学生だった私も徹夜でネットを徘徊したものだ。 「KIMU'S HOME PAGE 」(96年) は当時の個人サイトの典型的な特徴を見ることができる。 自分の名前をサイト名の一部にしている点、 プロ野球、Jリーグ、競馬といったスポーツという大きなカテゴリーを話題にしている点、 簡単なコメントをつけた予想をコンテンツの中心としている点などだ。 つまり、個人サイトとはその名の通り「ホーム」ページであり、 メディアとして読み手の側を特段に意識されたものではなく、 気の合う人々を家に招くような性質のものだった。 こうした「予想だけ載せてみました」的なサイトは94年以降に爆発的に出現したものの、 長期的なモチベーションの維持は不可能であり、次第に姿を消していったのは当然だろう。

たくさんの人たちが訪れてくれる競馬サイトをつくりたい。 自己満足でなく、ファンに開かれた競馬サイトをつくりたい。ネット人口の増大とともに、 そう考えた人々が次々と行動を起こしたのが96年である。 96年こそ競馬サイト元年だと私は思う。 この年、たくさんのファンの支持を得る2つの有名個人サイトが誕生した。 「 CARROT LUNCH 」と 「 うま中心主義 」である。 前者は今でも継続、後者は01年暮れから02年初頭の間に姿を消している。 このふたつのサイトが着目したのは競馬ニュースだった。 当時、大手メディアのサイトはなく、 ニュースは週刊誌かスポーツ新聞でしか手に入れることはできなかった。 両サイトのソースは知るべくもないが、 ほぼ毎日、ニュースは更新され、過去の情報もコーナーのなかに蓄積されていった。 ここに行けばファンのほしいニュースが手に入ったわけだから、 他サイトを一桁も二桁も上回るペースでカウンターが回ったのも不思議ではない。

こうした情報を発信していこうというサイトは登録馬や出走表を提供した 「 競馬情報 」(97~01年)、 有力馬の次走予定などを載せた 「 馬~なのねっ」、 「 Racing Channel」(96~02年) などが広く人気を集めたサイトとしてあげられよう。 「 あべしんBOX」(96年~)は 地元の利を活かして、福島県の馬の温泉に療養する馬の情報をまとめた 「馬の温泉だより」のコーナーで独自性を発揮した。 「Dondetch 」(97年~)は全国で供用されている主な種牡馬、乗用馬の見学情報を提供した。 蛇足ながら拙サイト「 馬耳東風 競馬データ予想 」 も96年につくったものたが、 先輩サイトに範を取って、ニュースや次走報のコーナーを設けている。 「情報を発するところに情報は集まる」とはよく言ったもので、 CARROT LUNCHの掲示板「うまごみボード」 「にゃんきゃろボード」は活発な議論がなされ、 後に開設されたメーリングリストは情報交換の場として多いに使われた。 うま中心主義の訪問者リストも、この時期、もっとも賑わった掲示板のひとつだ。 ネットで競馬メディアがない時代、個人サイトは我こそは競馬メディア足らんとしたわけである。 そして、掲示板、チャットを通して、そこに競馬ファンのコミュニティは形成されていった。

しかし、大手メディアが自前のサイトで ニュースを流すようになると、情報系サイトは行き詰まるケースも見受けられるようになった。 「サイトの価値が失われた」と書き残して閉鎖した有名サイトもある。 情報系サイトはCARROT LUNCH、 「 Milky Horse com 」(98年~)のように大手メディアと比肩するだけの情報力を持つものでなければ、 ストレートニュースをメインコンテンツとして継続していくことは困難になっていったのだ。 一方、ニュースを引用するだけでなく、論評を書き加えることで 情報系サイトの新しいあり方を拓いていくものも現れた。 「 テキスト競馬 」(00~03年) は「ニュースを見て思ったこと」がメインコンテンツ。 例えば「宝塚記念、来年にも外国馬招待競走に」というニュースを引用し、 「ヨーロッパでもこの時期はレースが行われているので、ジャパンCよりももっと来てくれなさそう」 などとコメントをつけて紹介していた。 ニュースを扱う個人サイトとしては 「 血統の森 」(02年~)などが有名だが、ニュース引用→論評という形式は、現在の競馬ブログにつながるものでもある。 こうして考えると、突如、起こったかのようにみえる競馬ブログブームも、 連綿と続く競馬サイトの流れのなかで素地が形成された故と捉えるべきなのかもしれない。

次回は「No.4 予想サイトの目指したもの」の予定です。 拙シリーズは筆者の個人的経験や乏しい知識によるところが多いため、 極めて主観的な部分や、思い違いもあると思います。他にもこんなに面白いサイトがあった、事実に間違いがあるなど、ご指摘や情報提供いただければありがたく存じ上げます。皆様からのお力添えを得ることで、内容にも厚みを増すことができると考えています。一通り、連載が終了しましたら、加筆訂正して本サイト「馬耳東風」のほうにまとめる予定です。よろしくお願い申し上げます。

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受信: 2004.05.21 23:09

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 http://www.horseracing-news.com/  さて、皆さんご存じのようにこれまでサイト運営協力金を募ってまいりましたが、今後続けていくだけのご協力が得られませんでしたので、今月いっぱいをもってニュースの更新を休止させていただく事と致しました。  メインコンテンツ「新・競馬にゅ〜す」が先月いっぱいで更新休止となりました。前身の『Rockieの新・競馬にゅ〜す』を含めると、1995年4月以来・約10年3ヶ月の歴史((http://www.horseracing-news.co... [続きを読む]

受信: 2005.07.23 00:26

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